寿司屋の原価管理で一番危ないのは、「マグロが高い」「ウニが高い」だけで判断することです。
高いネタを全部削れば、原価率は下がります。ただし来店理由も一緒に削れます。逆に人気ネタを出し続けるだけでは、売上は立っても月末に残りません。
寿司は、赤字ネタと利益ネタの組み合わせで見る商売です。

まず分けるべきネタ
| 区分 | 例 | 店側の判断 |
|---|---|---|
| 集客ネタ | マグロ、ウニ、イクラ、高級白身 | 単品粗利だけで外さない |
| 主力ネタ | サーモン、ハマチ、エビ、ホタテ | 量目と仕入れ単価を週次で見る |
| 利益ネタ | 玉子、巻物、軍艦、椀物 | 全体粗利を支える柱にする |
| 体験ネタ | 旬魚、炙り、手仕事が伝わる品 | おまかせやセットで価値化する |
寿司のメニュー表は、原価表そのものです。どのネタが人を呼び、どのネタが粗利を作り、どのネタが体験価値を上げるのかを分けないと、値付けの判断が遅れます。
1貫原価は仕入値ではなく使える量で見る
寿司ネタは、仕入れ価格だけで見ると判断を間違えます。歩留まりを入れて、実際に使えるネタ量で単価を出します。

実質単価 = 仕入価格 ÷ 使える量
1貫原価 = ネタ原価 + シャリ + 薬味 + ガリ/醤油などの配賦
例として、仕入れが3,000円/kgで歩留まり40%なら、使える量は400gです。
実質単価 = 3,000円 ÷ 400g = 7.5円/g
10gのネタ原価 = 75円
仕入れ伝票では3,000円/kgに見えても、1貫の判断では7,500円/kgとして扱う必要があります。
ネタ別に見る早見表
以下は説明用の管理表です。実際には自店の仕入れ単価、歩留まり、1貫量で置き換えてください。
| ネタ | 原価が重くなる理由 | 見るべき数字 | 打ち手 |
|---|---|---|---|
| マグロ | 仕入単価が高い | 1貫量、ロス、部位別粗利 | 集客ネタとして残す範囲を決める |
| ウニ/イクラ | 小分けロスが出やすい | 1軍艦量、廃棄、保存日数 | 提供日と数量を絞る |
| イカ/貝類 | 歩留まりが低い | 使える量、下処理時間 | 仕入値ではなく実質単価で判断 |
| 玉子/巻物 | 原価が安定 | 注文数、粗利額 | セットやコースに組み込む |
| 椀物/サイド | ネタ依存が低い | 客単価、追加率 | 粗利調整の導線にする |
「原価率が高いネタ」を消す前に見ること
赤字に見えるネタにも役割があります。
- そのネタ目的で来店するか
- 写真や口コミに出やすいか
- おまかせの満足度を作るか
- 代替ネタで同じ価値を出せるか
- 利益ネタと一緒に注文されるか
ここで残す理由があるなら、単品粗利だけで外すべきではありません。代わりに、提供数量、セット構成、コース内の順番を調整します。
個人店は「おまかせ」で粗利を整えやすい
アラカルト中心だと、注文されるネタが読めません。仕入れた高原価ネタだけが先に出て、利益ネタが残ることもあります。
おまかせやセットは、店側が構成を設計できます。
| 構成 | 役割 |
|---|---|
| 旬魚 | 満足度を作る |
| 高原価ネタ | 来店理由を作る |
| 玉子・巻物 | 粗利を支える |
| 椀物 | 体験と粗利を補う |
| 酒/追加 | 客単価を上げる |
KitchenCostで管理するなら、ネタごとに「仕入単価」「歩留まり」「1貫量」「売価」を分けて入れます。平均原価率だけでは、どのネタが利益を削っているか見えません。
7日でやる原価見直し
| 日 | 作業 |
|---|---|
| 1日目 | 上位20ネタの仕入単価を入れる |
| 2日目 | 歩留まりと1貫量を記録する |
| 3日目 | 1貫原価を出す |
| 4日目 | 赤字ネタ、主力ネタ、利益ネタに分ける |
| 5日目 | セット/おまかせの構成を見直す |
| 6日目 | 廃棄と端材活用を確認する |
| 7日目 | 次週の仕入れ量を修正する |
まとめ
寿司屋の原価率は、平均だけ見ても判断できません。マグロが高いから悪い、玉子が安いから良い、という話ではありません。
見るべき順番は、ネタ別原価、歩留まり、1貫量、全体粗利。
赤字ネタだけで判断せず、利益ネタと体験価値をどう組み合わせるかが、寿司屋の価格設計です。
関連ガイド
参考
- 本文の数字は寿司原価構造を説明するための運用例です。実際の単価は、自店の仕入れ伝票、歩留まり記録、1貫量で置き換えてください。