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海鮮丼専門店の原価ガイド:ネタ1切れの重さが、月の利益を変える

海鮮丼1杯の原価をネタ・酢飯・薬味まで分解。日替わり仕入れでも原価率を安定させる3段階のネタ設計、酢飯のグラム管理、歩留まり計算の具体例を解説します。

更新 2026年2月18日
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目次

海鮮丼は「原価が高い業態」として知られています。でも本当の問題は原価の高さではなく、原価が読めないことです。

魚の仕入れ値は日によって変わる。マグロが昨日キロ3,000円だったのに今日は4,500円。サーモンが品薄で量を減らしたら「ネタが少ない」と言われる。ネタの切り付けは職人によって厚さが違い、同じ「5切れ」でも重さが80gから120gまでブレる。

結果、月末に数字を締めてみたら原価率が48%を超えていた——こんな話は珍しくありません。

海鮮丼の原価管理は、ネタのグラム管理3段階の価格帯設計で安定させます。


先に結論

  • 海鮮丼の原価は**ネタが75〜80%**を占める。切り付け量の管理が利益管理そのもの
  • ネタはベース(マグロ赤身・サーモン)/ 中位(ハマチ・ホタテ)/ プレミアム(ウニ・イクラ)の3段階で管理
  • 酢飯は220gを基準に、計量カップかスケールで定量化する
  • わさび・海苔・ガリの「小物」も原価に入れる。月間で無視できない額になる
  • 味噌汁・サイドメニューで全体の原価率を下げるのが利益確保の王道

海鮮丼1杯の原価を分解する

例1:並丼(税抜1,200円)

項目原価
マグロ赤身30g(2切)75円
サーモン30g(2切)60円
ハマチ25g(2切)75円
イカ20g(2切)30円
甘エビ15g(2尾)40円
玉子焼き20g(1切)15円
酢飯220g52円
海苔(刻み)1g5円
わさび3g6円
ガリ10g5円
醤油(小皿)10ml3円
合計366円

原価率:366 ÷ 1,200 = 30.5%

※ マグロ赤身はキロ2,500円、サーモンはキロ2,000円、ハマチはキロ3,000円で計算。仕入れ値は時期・産地で大きく変動します。

ネタだけで295円、全体の80%を占めます。ネタの量が10%増えると原価が30円上がり、原価率は33%に。


例2:上丼(税抜1,800円)

項目原価
マグロ赤身25g(2切)63円
中トロ20g(1切)80円
サーモン25g(2切)50円
ハマチ25g(2切)75円
ホタテ20g(1個)60円
イクラ15g90円
甘エビ15g(2尾)40円
ウニ10g80円
酢飯220g52円
海苔・わさび・ガリ16円
醤油10ml3円
合計609円

原価率:609 ÷ 1,800 = 33.8%

上丼はプレミアムネタ(中トロ・ウニ・イクラ)が入る分、原価率が上がります。ウニとイクラの25gで170円——これだけで並丼のネタ原価の半分以上です。


例3:特上丼(税抜2,500円)

項目原価
中トロ30g(2切)120円
ウニ20g160円
イクラ20g120円
ホタテ25g(1個)75円
ボタンエビ1尾(25g)100円
マグロ赤身25g(2切)63円
サーモン20g(1切)40円
酢飯220g52円
海苔・わさび・ガリ16円
醤油10ml3円
合計749円

原価率:749 ÷ 2,500 = 30.0%

特上丼は売価が高い分、原価率は意外と抑えられます。高単価メニューほど原価率が下がるように価格を設計するのがポイントです。


ネタの3段階管理

日替わり仕入れでも原価を安定させるには、ネタを3段階に分類してグラム単価の上限を決めます。

3段階の分類基準

段階ネタ例グラム単価1切れ(15g)の原価丼での役割
ベースマグロ赤身、サーモン、イカ、タコ2〜3円30〜45円量を担当。全体の50〜60%
中位ハマチ、カンパチ、ホタテ、甘エビ3〜5円45〜75円彩りと食感。全体の25〜35%
プレミアムウニ、イクラ、中トロ、大トロ、ボタンエビ5〜10円75〜150円華やかさ。全体の10〜20%

分類ルールの使い方

仕入れ値が変動したとき、分類ルールに従って対応します。

例:サーモンがキロ2,000円→3,000円に高騰した場合

  • グラム単価が2円→3円に上昇 → ベースの上限ギリギリ
  • 対策①:サーモンの切り付け量を30g→25gに減らす(原価60円→75円を回避)
  • 対策②:サーモンを中位に格上げし、代わりにイカを増量する
  • 対策③:仕入れ先を変更して価格を維持する

重要なのは「なんとなく減らす」ではなく、分類ルールに基づいて判断することです。


歩留まりと可食量の計算

魚は丸ごと仕入れると、頭・骨・内臓で重量が大きく減ります。キロ単価が安く見えても、可食部で計算すると高くなることがあります。

主要ネタの歩留まり

ネタ仕入れ形態歩留まりキロ仕入値可食グラム単価
マグロ赤身サク(柵)95%2,500円2.6円
サーモンフィレ85%2,000円2.4円
ハマチ丸魚50%1,500円3.0円
イカ65%1,000円1.5円
タコ90%2,000円2.2円
ホタテ貝柱95%3,000円3.2円
甘エビ殻付き60%2,500円4.2円
ウニ板ウニ95%8,000円8.4円
イクラ醤油漬け100%6,000円6.0円

ハマチを丸魚で仕入れると歩留まり50%。キロ1,500円が実質キロ3,000円になります。フィレで仕入れれば歩留まり85%でキロ1,765円。仕入れ形態の選択が原価を大きく左右します。

丸魚のメリット・デメリット

丸魚フィレ・サク
キロ単価安い高い
歩留まり低い(50〜65%)高い(85〜95%)
可食グラム単価ケースバイケース安定
アラの活用あら汁・出汁に使えるなし
技術捌く技術が必要不要
鮮度良い(捌きたて)仕入れ時点の鮮度

小規模店ではフィレ・サク仕入れが原価管理しやすい。ただし丸魚を捌ける職人がいて、あら汁を出すなら丸魚のほうがトータルの原価が下がることもあります。


酢飯の原価と管理

酢飯は「米が安いから大丈夫」と思われがちですが、量のブレが積み重なると月単位で無視できない差になります。

酢飯1杯の原価内訳

項目原価
米(炊飯後)200g38円
15ml7円
砂糖5g3円
2g1円
昆布(炊飯用)3円
合計220g52円

※ 米は5kgあたり2,500円、1合(150g)の炊飯後を300gとして計算。

酢飯のブレが原価に与える影響

酢飯量原価標準(220g)との差月間影響(80杯/日)
200g47円−5円−10,000円(節約)
220g52円基準基準
240g57円+5円+10,000円
260g61円+9円+18,000円

スタッフが「大盛りサービス」で40g多く盛っているだけで、年間20万円以上のロスになります。

対策:酢飯は計量カップで盛る。 220gが入る大きさのカップを用意して、すりきり1杯で統一する。


小物(わさび・海苔・ガリ)の原価

「小さいから関係ない」と思いがちな小物も、合計すると1杯あたり15〜30円になります。

小物の原価一覧

項目1杯あたりの量原価月間(80杯/日・25日)
わさび(チューブ)3g6円12,000円
海苔(刻み)1g5円10,000円
ガリ10g5円10,000円
醤油(小皿)10ml3円6,000円
大葉1枚5円10,000円
合計24円48,000円

月48,000円、年間58万円。これを原価計算に入れていないと、実際の原価率が2〜3ポイント過小に見えます。


丼のグレード別価格設計

価格設計の基本ルール

グレードネタ量ネタ構成売価目標原価率
並丼120gベース60%・中位30%・プレミアム10%1,200円30〜35%
上丼150gベース40%・中位35%・プレミアム25%1,800円33〜38%
特上丼180gベース30%・中位30%・プレミアム40%2,500円28〜33%

特上丼の原価率が一番低いのは、プレミアムネタの原価が高くても売価をそれ以上に上げられるからです。ウニ20gの原価160円に対して、売価への上乗せは400〜500円。

グレード間の差額設計

並→上の差額600円に対して原価差は約240円。差額から得られる粗利は360円。 上→特上の差額700円に対して原価差は約140円。差額から得られる粗利は560円。

つまり上位グレードほど粗利の絶対額が大きい。高単価メニューを出すことの本質は、原価率ではなく1杯あたりの粗利を増やすことです。


日替わり海鮮丼の運用

日替わりメニューは集客力がありますが、原価管理が難しい。以下のルールで安定させます。

日替わり運用の3ルール

1. 仕入れ予算を1日分で決める

「今日のネタ仕入れは◯万円まで」と予算上限を決める。売上目標の38%以内に収める。

1日の売上目標 = 80杯 × 1,400円(平均)= 112,000円
ネタ仕入れ予算 = 112,000 × 38% = 42,560円

2. 構成比ルールに従う

日替わりでも「ベース60%・中位30%・プレミアム10%」の構成比を守る。高いネタが安く手に入った日はプレミアム比率を上げて集客に使い、高騰日はベース比率を上げて原価を守る。

3. 「今日のおすすめ」で利益の出るネタを押す

仕入れ値が安いネタを「今日のおすすめ」に設定する。原価率の低いネタの注文比率を上げることで、全体の原価率を下げられます。


味噌汁とサイドで利益を守る

海鮮丼は原価率が高い分、味噌汁とサイドメニューの役割が大きいです。

サイドメニューの原価と効果

メニュー原価売価粗利原価率
あら汁15円200円185円8%
味噌汁12円150円138円8%
茶碗蒸し35円300円265円12%
漬物盛り合わせ20円200円180円10%
刺身3点盛り(追加)180円600円420円30%

あら汁は丸魚を捌いた後のアラで作れるため、原価が極めて低い。丸魚仕入れ+あら汁販売のセットは、海鮮丼専門店の利益構造として理に叶っています。

セット率の効果

海鮮丼+あら汁セット(+150円)の場合:

丼の原価率38%、客単価1,200円の場合:
丼の粗利 = 1,200 × (1 − 0.38) = 744円

セット追加(あら汁+150円、原価15円):
追加粗利 = 150 − 15 = 135円

セット後の客単価 = 1,350円
セット後の原価率 = (456 + 15) ÷ 1,350 = 34.9%

あら汁を付けるだけで原価率が3ポイント改善し、粗利が135円増えます。セット率50%なら月間で:

80杯/日 × 50% × 135円 × 25日 = 135,000円/月

月13万5千円、年間162万円の粗利増。


月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:25日
  • 1日の杯数:80杯
  • 平均客単価:1,450円(セット込み)
月間売上 = 80杯 × 1,450円 × 25日 = 2,900,000円

原価率35%の場合(管理ができている):
原価 = 1,015,000円
粗利 = 1,885,000円

原価率42%の場合(ネタのブレ・酢飯多め・小物未計上):
原価 = 1,218,000円
粗利 = 1,682,000円

差額 = 203,000円/月 = 年間2,436,000円

7ポイントの原価率差が年間243万円の利益差になります。海鮮丼は客単価が高い分、原価率のブレが利益に与える影響も大きい。


原価が崩れる4つの原因

1. ネタの「気分盛り」

切り付けの厚さやサイズが職人の気分で変わる。サーモン1切れが15gのつもりが20gだと、6杯で1切れ分のロス。1日80杯なら月間でサーモン100切れ以上の差が出ます。

対策:ネタごとに1切れの基準グラムを決め、新人には最初の1週間は全切れ計量させる。

2. 高級ネタの出し過ぎ

ウニやイクラを「見栄え」で多めに盛ると、1杯で50〜100円の原価増。特上丼が1日10杯出る店なら、月間25,000〜50,000円のロスです。

3. 仕入れ値の反映遅れ

マグロの相場が上がっているのに、メニュー価格を3ヶ月据え置きにしていると、原価率が5ポイント以上悪化することがあります。

対策:仕入れ値を週次で確認し、原価率が3ポイント以上悪化したら価格見直しを検討する。

4. 廃棄ロス

売れ残りのネタは翌日使えない場合が多い。仕入れ量が多すぎると、1日の廃棄が2,000〜5,000円になることもあります。

対策:曜日別の販売実績から仕入れ量を決める。金曜・土曜は多め、月曜・火曜は少なめ。


今週やること

  • 主要ネタのグラム基準を決める(1切れ◯g)
  • ネタをベース/中位/プレミアムの3段階に分類する
  • 酢飯の1杯量を220gに固定し、計量カップを用意する
  • わさび・海苔・ガリ・醤油の原価を計上する
  • 丼のグレード別に、ネタの構成比と売価を設計する
  • あら汁セットを導入し、セット率を記録する
  • 仕入れ値を週次で確認し、原価率の推移を追う

関連ガイド


ネタ・酢飯・薬味を登録すれば、1杯の原価が自動で出ます。グレード別の原価率もひと目で比較。KitchenCost は無料で使えます。

よくある質問

海鮮丼1杯の原価はどれくらい?

並丼(ネタ120g・酢飯220g)で400〜550円が目安です。内訳はネタ300〜420円、酢飯50〜60円、薬味・海苔・わさび20〜30円。ネタが全体の75〜80%を占めるため、ネタの種類と切り付け量がそのまま利益を決めます。

海鮮丼の原価率は何%が目安?

並丼で38〜45%、上丼で42〜48%が一般的です。飲食店の平均(30〜35%)より高めですが、海鮮丼は客単価が高い(1,000〜2,000円)ため、粗利の絶対額で見ると十分な利益が出せます。味噌汁やサイドで全体の原価率を調整します。

日替わりネタの原価管理はどうする?

ネタを3段階(ベース・中位・プレミアム)に分類し、各段階のグラム単価の上限を決めます。マグロ赤身やサーモンはベース(グラム2〜3円)、ハマチやホタテは中位(グラム4〜6円)、ウニやイクラはプレミアム(グラム8〜15円)。仕入れ値が変わっても分類ルールに従えば原価率のブレが小さくなります。

酢飯の原価はいくら?

酢飯1杯(220g)で約52円です。内訳は米40円(5kg 2,500円、炊飯後300g/合で計算)、酢・砂糖・塩で12円。酢飯は量のブレが出やすく、220gが250gになると1杯あたり9円の原価増。1日80杯なら月18,000円の差になります。

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