飲食店の変動費は、売れるほど増える費用です。固定費は、売上が少なくても毎月ほぼ出る費用です。まずはこの1本線で分ければ十分です。
変動費 = 食材費、包材、販売手数料、売上連動の時給人件費など
固定費 = 家賃、保険、リース、通信費、月額システム、固定給など
この分類ができると、原価率だけでは見えない赤字原因が見えます。食材費を下げるべきなのか、固定費が重いのか、売上が足りないのかを分けて判断できるからです。

先に結論
| 費用 | 基本分類 | 迷ったときの見方 |
|---|---|---|
| 食材費 | 変動費 | 売れるほど増える |
| 包材・容器 | 変動費 | テイクアウト、デリバリーで増える |
| 決済手数料 | 変動費 | 売上に率でかかる部分 |
| 家賃 | 固定費 | 売上ゼロでも発生する |
| 通信費・サブスク | 固定費 | 月額固定なら固定費 |
| アルバイト時給 | 分けて持つ | シフトで増減する分は変動費寄り |
| 正社員固定給 | 固定費 | 毎月ほぼ一定なら固定費 |
| 光熱費 | 分けて持つ | 基本料金は固定、使用量は変動 |
最初から完璧に分類する必要はありません。上位5費目だけでも、利益が残らない理由はかなり見えます。
変動費とは
変動費は、販売数や売上に連動して増える費用です。
飲食店では次のような費用が代表例です。
| 変動費の例 | なぜ変動費か |
|---|---|
| 食材費 | 料理が売れるほど増える |
| 包材、容器、箸、袋 | テイクアウトやデリバリーの注文ごとに増える |
| 決済手数料、販売手数料 | 売上に対して率でかかる |
| ソース、トッピング、消耗品 | 商品数に連動しやすい |
| 時給スタッフの追加シフト | 来店数や営業時間に応じて増減する |
ここで大事なのは、会計科目名よりも「売上に連動して動くか」です。たとえば人件費でも、固定給と追加シフトでは性質が違います。
固定費とは
固定費は、売上に関係なく毎月ほぼ出る費用です。
| 固定費の例 | なぜ固定費か |
|---|---|
| 家賃 | 売上が少ない月も発生する |
| リース料 | 契約で月額が決まっている |
| 保険料 | 売上と直接連動しない |
| 通信費、POS、会計ソフト | 月額固定のことが多い |
| 固定給 | 毎月ほぼ一定で発生する |
| 光熱費の基本料金 | 使用量に関係なく発生する部分 |
固定費は「削れない費用」ではありません。すぐに動かしにくい費用です。通信費、保険、サブスク、電力契約などは年1回見直す余地があります。
迷う費目は分けて持つ
変動費か固定費かで迷う費目は、どちらか一方に無理やり入れないほうが実務的です。
| 費目 | 固定部分 | 変動部分 |
|---|---|---|
| 光熱費 | 基本料金 | 使用量に応じた料金 |
| 人件費 | 固定給、最低配置分 | 追加シフト、繁忙日の増員 |
| 決済サービス | 月額基本料 | 決済額に応じた手数料 |
| デリバリー | 月額ツール費 | 注文ごとの販売手数料、包材 |
| 広告費 | 月額契約 | 注文連動の販促費、クーポン原価 |
「全部きれいに分ける」より、「大きな費目だけズレないように分ける」ほうが早く役に立ちます。
5分で分ける計算例
月売上1,200,000円の小さな飲食店で見ます。
| 費目 | 金額 | 分類 |
|---|---|---|
| 食材費 | 360,000円 | 変動費 |
| 包材 | 48,000円 | 変動費 |
| 決済手数料 | 36,000円 | 変動費 |
| 追加シフト人件費 | 180,000円 | 変動費 |
| 光熱費の従量部分 | 50,000円 | 変動費 |
| 家賃 | 210,000円 | 固定費 |
| 固定給 | 150,000円 | 固定費 |
| 通信・サブスク | 24,000円 | 固定費 |
| 光熱費の基本料金 | 10,000円 | 固定費 |
合計:
変動費 = 674,000円
固定費 = 394,000円
変動費率 = 674,000円 ÷ 1,200,000円 = 56.2%
固定費比率 = 394,000円 ÷ 1,200,000円 = 32.8%
この店は、売上の半分以上が売れるほど増える費用に使われています。次に見るべきなのは、食材費、包材、追加シフト、手数料のどれが重いかです。
損益分岐点に使う
変動費と固定費を分ける最大の理由は、損益分岐点が出せることです。

損益分岐点売上 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
先ほどの例で計算します。
固定費 = 394,000円
変動費率 = 56.2%
損益分岐点売上 = 394,000円 ÷ (1 - 0.562)
= 約899,543円
つまり、この店は月売上が約90万円を下回ると赤字になりやすい構造です。詳しく計算したい場合は、損益分岐点売上の計算ガイドも参照してください。
原価率だけ見ていると危ない
飲食店では「原価率30%なら安心」と考えがちです。でも、変動費は食材費だけではありません。
たとえば売価1,000円、食材費300円の商品があります。
食材原価率 = 300円 ÷ 1,000円 = 30%
ここに包材80円、決済手数料30円、販促クーポン50円が入ると、変動費は460円です。
変動費率 = 460円 ÷ 1,000円 = 46%
見かけの原価率は30%でも、実際に固定費を回収する力は54%しか残っていません。この考え方は原価率30%だけでは危ない理由でも扱っています。
どこから直すか
分類したあとは、次の順番で見ます。
| 状態 | 先に見ること |
|---|---|
| 変動費率が高い | 食材、包材、手数料、値引き、追加シフト |
| 固定費比率が高い | 家賃、リース、保険、通信、サブスク |
| どちらも高い | 売上上位商品の価格と販売チャネル |
| 売上が落ちた月だけ赤字 | 固定費を回収できる売上ライン |
固定費比率の見直しは飲食店の固定費比率ガイドに分けています。限界利益率まで見るなら、限界利益率は何%ならよいかが近い内容です。
今週やること
- 先月の費用を金額が大きい順に10個並べる
- 上位5費目だけ変動費と固定費に分ける
- 迷う費目は固定部分と変動部分に分ける
- 変動費率と固定費比率を出す
- 損益分岐点売上を1回計算する
- 数字が大きい費目から1つだけ改善する
関連ガイド
変動費と固定費を分けておくと、KitchenCostでメニュー原価を見たときに「この商品は固定費を回収できる粗利を残しているか」まで判断しやすくなります。
Source Notes
この記事の数値は、飲食店の費用分類と損益分岐点を説明するためのモデルケースです。法令・税務判断ではなく、毎月の原価管理と価格判断に使う実務上の分類として整理しています。