このページで決めること
今週の限界利益率が自店の通常範囲から外れたかを確認し、来週までに調べる項目を1つ決めます。
比較先は出所の不明な「飲食店平均」ではありません。毎週同じ変動費範囲で測った、自店の直前データです。
「共有用サマリー」「12週トラッカー」「値引きテスト」「運用・履歴」「方法メモ」の5シートです。黄色セルが入力欄です。数値は架空の入力例で、黄色1ポイント・赤3ポイントのアラートも編集できる社内ルールです。トラッカーには52週分の入力行があります。
何%ならよいか:一律の答えを置かない
限界利益率は、変動費に何を入れるかで変わります。食材費だけを入れた率と、包材、決済手数料、デリバリー手数料まで入れた率は比較できません。
このページでは、変動費の範囲が統一された公的な飲食店平均を根拠に「何%以上なら合格」とは言いません。代わりに、次の3点を自店基準にします。
- 変動費の範囲を文書で固定する。
- 同じ締め方で12週を並べる。
- 今週を除く直前週平均と今週を比べる。
率が高いか低いかより、同じものを測り続けているかが先です。
限界利益率の計算式
限界利益 = 売上 - 変動費
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上 × 100
変動費は、販売に連動して増減する費用です。自店で採用する範囲を決め、毎週変えません。
売上と費用の消費税基準も毎週そろえます。管理会計では通常、どちらも税抜で入力します。店内飲食10%と持ち帰り8%が混在する場合は、チャネル別に税抜化してから合算します。
| 変動費の候補 | 確認する境界 |
|---|---|
| 食材費 | 棚卸を使うか、レシピ理論原価を使うか |
| 包材 | テイクアウト・デリバリー分を含めるか |
| 決済手数料 | 売上計上と同じチャネル・期間か |
| デリバリー手数料 | 販売手数料と販促費を分けるか |
| その他変動費 | 販売数に連動する根拠があるか |
固定人件費や家賃などは週次の変動費には入れず、同じ期間の固定費として損益分岐点売上の計算に使います。時間帯や売上に応じて直接増える労務費を変動費にする場合は、その定義を方法メモに残します。
計算例:今週56.7%をどう読むか
今週の売上が900,000円、同じ範囲で集計した変動費が389,700円だったとします。
限界利益 = 900,000 - 389,700 = 510,300円
限界利益率 = 510,300 ÷ 900,000 = 56.7%
56.7%だけでは良いとも悪いとも言えません。ワークブックの入力例では、直前11週の自店平均が59.18%なので、今週は2.48ポイント低下しています。
初期設定の内部ルールでは、1ポイント以上の低下を黄色、3ポイント以上の低下を赤にしています。したがってこの週は黄色です。これは業界基準ではなく、店長が確認を始めるための運用ルールです。
黄色なら、全メニューを調べません。売上上位3商品から次のどれか1つを確認します。
- 仕入単価または使用量が変わった
- 包材単価またはテイクアウト比率が変わった
- 決済・デリバリーチャネルの構成が変わった
- 値引きやクーポンで実売価が下がった
- 週の締め時点や費用計上の範囲がずれた
12週トラッカーの使い方
ワークブックでは第1週から第52週まで入力行を用意し、完成した直前11週と最新週を比べます。最初の12週だけで使い終わるファイルではありません。
| 入力 | 自動計算 |
|---|---|
| 売上 | 変動費計 |
| 食材費 | 限界利益率 |
| 包材 | 限界利益額 |
| 決済手数料 | 直前週の自店平均 |
| デリバリー手数料 | 平均との差 |
| その他変動費 | 内部判定 |
第12週の基準は第1週から第11週の平均です。第12週自身を平均に含めないため、今週の悪化で基準まで引き下げられることを避けられます。
第1週には比較先がないので「基準作成中」と表示します。データが少ない段階で無理に判定を作りません。
第13週のロールオーバーと保存
第12週を締めたら、入力を動かす前に完了版を 限界利益率_第1-12週_終了日.xlsx のような名前で別名保存し、読み取り専用の履歴として保管します。
第13週は「12週トラッカー」の19行目へ入力します。第1週を削除したり、第2〜12週を上へ移したりしません。第13週の基準は第2〜12週へ自動で切り替わります。第14週以降も該当行の売上と5費用だけを入力し、計算列は上書きしません。第52週を締めたら年間完了版を別名保存し、次年度は新しい配布ファイルから始めます。この手順は「運用・履歴」シートにも固定しています。
損益分岐点売上は期間をそろえる
損益分岐点売上 = 同期間の固定費 ÷ 限界利益率
今週の固定費が300,000円、限界利益率が56.7%なら、
300,000 ÷ 0.567 = 約529,101円
です。週次売上に月次固定費を割り当てずに使うと期間がずれます。週次トラッカーなら週次固定費、月次管理なら月次売上・月次変動費・月次固定費でそろえます。
損益分岐点売上は「平均より良いか」ではなく、「今の費用構造で同期間にいくら売る必要があるか」を示します。
値引き後に必要な販売数
通常価格1,000円、1個変動費400円、通常100個販売の商品を10%引きにする例です。
通常の1個限界利益 = 1,000 - 400 = 600円
通常の総限界利益額 = 600 × 100 = 60,000円
値引き後価格 = 1,000 × (1 - 10%) = 900円
値引き後の1個限界利益 = 900 - 400 = 500円
維持に必要な販売数 = 60,000 ÷ 500 = 120個
必要な販売数増加率 = 120 ÷ 100 - 1 = 20%
10%引きだから10%多く売ればよい、とは限りません。変動費400円が残るため、この例では20%増が必要です。
この計算は120個売れることを保証しません。値引きを実施する前に、120個へ増える根拠があるかを店長と担当者で確認するための境界です。
15分の週次共有
- 経理担当が比較対象の直前12週で変動費の範囲、締め時点、消費税基準が同じか確認する。
- 店長が「共有用サマリー」で今週、直前平均、差、内部判定を見る。
- 黄色・赤なら売上上位3商品と販売チャネルだけを見る。
- 原因の仮説を1つに絞り、担当者と来週の確認項目を決める。
- 同じ計算範囲で翌週を入力し、仮説と結果を見直す。
税理士や共同経営者には共有用サマリーを送り、費用範囲と税基準を「方法メモ」、第13週以降の保存方法を「運用・履歴」で確認してもらいます。率の違いについて話す前に、同じ費用を入れているかを合わせます。
内部アラートの決め方
初期例の黄色1ポイント、赤3ポイントは、見落としを防ぐための仮置きです。次の条件で自店向けに変えます。
- 週ごとの通常変動が大きい店は幅を広げる。
- 仕入や販売チャネルが安定している店は幅を狭める。
- 毎週会議をしない店は、判定期間も会議頻度に合わせる。
- 一度変えたら変更日と理由を方法メモに残す。
アラートは「悪い店」の判定ではありません。確認作業を始める合図です。
日々の商品原価を追う場合
週次の率が動いたあと、どの商品・食材が原因かを継続的に追う場合は、KitchenCostなどの原価管理ツールでレシピと仕入単価を更新します。ただし、週次トラッカーの費用範囲と締め時点は別途そろえる必要があります。
関連ガイド
方法メモ
この記事の数値は計算方法を示すための入力例です。外部平均や業界基準ではありません。限界利益率、損益分岐点売上、値引きテストは、費用範囲と期間を統一して使います。