値入率は値付け前の計画、実績粗利率は販売後の結果です。価格会議では、この2つを同じ数字として扱わないことが出発点になります。
先に要点
値入率 = (計画売価 - 原価) ÷ 計画売価原価率 = 原価 ÷ 計画売価必要売価 = 原価 ÷ (1 - 選択した目標値入率)- 実績は、値引き後の実際税抜売上と廃棄を含む食材原価で計算する
- 目標値入率は自店の内部基準であり、業界標準ではない
- 食材粗利額は、人件費や家賃を引く前の金額であり、営業利益ではない
商品別の計画と実績を並べるには、値入率・価格判断ワークブック(Excel)を使えます。30商品分の原価、計画売価、実際税抜単価、販売数、廃棄数を入力でき、未入力・文字・負数・不正な目標率はエラー表示になります。入力例は架空です。
値入率・原価率・実績粗利率を分ける
| 指標 | 計算式 | 使う時点 | 判断すること |
|---|---|---|---|
| 計画値入率 | (計画売価 - 原価) ÷ 計画売価 | 販売前 | 計画上、食材粗利が何割残るか |
| 計画原価率 | 原価 ÷ 計画売価 | 販売前 | 計画売価に食材原価が占める割合 |
| 実績食材原価率 | 販売・廃棄分の食材原価 ÷ 実際税抜売上 | 販売後 | 値引きと廃棄を含め、食材費が何割だったか |
| 実績食材粗利率 | (実際税抜売上 - 販売・廃棄分の食材原価) ÷ 実際税抜売上 | 販売後 | 食材費を引いた後に何割残ったか |
同じ原価と計画売価を使う限り、計画原価率と計画値入率の合計は100%です。ただし、実際税抜単価が値引きで下がったり、廃棄が出たりすると、実績食材粗利率は計画値入率から離れます。
売価値入率と原価値入率は分母が違う
飲食店で原価率と対にするのは、通常は売価を分母にする売価値入率です。仕入資料などで原価を分母にした原価値入率が使われる場合があるため、名称だけで判断しません。
売価値入率 = (売価 - 原価) ÷ 売価 × 100
原価値入率 = (売価 - 原価) ÷ 原価 × 100
売価値入率 = 原価値入率 ÷ (1 + 原価値入率)
販売前の見込みである売価値入率と、販売後に値下げやロスを含めて出す実績食材粗利率も分けます。
架空の入力例で計算する
以下は計算方法を示すための架空例で、市場平均や推奨値ではありません。
- 原価:480円
- 計画売価:1,200円
- 値引き後の実際税抜単価:1,140円
- 販売数:92食
- 廃棄数:8食
計画は次のとおりです。
計画値入率 = (1,200 - 480) ÷ 1,200
= 60.0%
計画原価率 = 480 ÷ 1,200
= 40.0%
実績では、販売した92食だけでなく、仕込んで廃棄した8食の原価も含めます。
実際税抜売上 = 1,140 × 92
= 104,880円
販売・廃棄分の食材原価 = 480 × (92 + 8)
= 48,000円
実績食材原価率 = 48,000 ÷ 104,880
= 45.8%
実績食材粗利額 = 104,880 - 48,000
= 56,880円
実績食材粗利率 = 56,880 ÷ 104,880
= 54.2%
計画対実績差 = 54.2% - 60.0%
= -5.8ポイント
この差だけでは原因は決まりません。実際単価、値引き記録、廃棄数、原価の更新日を順に照合します。
目標値入率から必要売価を逆算する
原価に一定率を上乗せする計算と、売価を分母にする値入率は別です。目標値入率から売価を出す式は次です。
必要売価 = 原価 ÷ (1 - 選択した目標値入率)
架空例として、原価500円、選択した目標値入率60%なら次の計算になります。
必要売価 = 500 ÷ (1 - 0.60)
= 1,250円
一方、原価500円に60%を上乗せした売価は800円です。この場合の値入率は 300 ÷ 800 = 37.5% で、60%にはなりません。
何%ならよいかは自店の費用と数量で決める
値入率だけでは、人件費、家賃、光熱費、包材、決済手数料、販促費は見えません。したがって、一律の目標値を業界平均として置くのではなく、次の順で内部基準を決めます。
- 原価の範囲と税抜・税込の基準をそろえる
- 実際の販売数量、値引き、廃棄を月次で集計する
- 食材粗利額から別管理の人件費・固定費等を確認する
- 商品ごとの必要売価を試算する
- 数量が変わる場合の金額影響を別途確認する
目標値入率が高くても販売数が少なければ、必要な金額は残りません。率と食材粗利額を必ず一緒に見ます。
判断できる範囲とできない範囲
- この計算で分かるのは、食材原価に対する計画と実績の差です。
- 食材粗利額は営業利益、経常利益、限界利益を示しません。
- 廃棄数が未記録なら、実績食材原価率を低く見積もる可能性があります。
- 複数税率や販売チャネルがある場合は、同じ税基準へ直してから合算します。
- 目標値入率は市場相場、競合価格、顧客の反応を保証するものではありません。
価格会議のチェックリスト
- 原価と計画売価を同じ税基準で入力した
- 値引き後の実際税抜単価をPOSと照合した
- 販売数と廃棄数の両方を入力した
- 選択した目標値入率を「業界平均」と呼んでいない
- 必要売価を
原価 ÷ (1 - 目標率)で再計算した - 実績食材粗利額を営業利益と表示していない
- 差が出た商品の伝票、値引き、廃棄記録を確認した
原価更新を継続する場合
価格案が固まった後は、KitchenCostでレシピ原価を更新し、仕入価格が変わった商品だけを継続確認できます。まずワークブックで計画と実績の境界をそろえ、その後の更新作業に使う程度で十分です。
関連ガイド
参考・計算根拠
確認日:2026-08-17
- JMR生活総合研究所「値入率」 — 販売前の値入率と販売後の粗利益率の区別
- CASIO「値入率とは?」 — 値引きやロスが実績へ与える考え方
外部の率を目標値として採用していません。ワークブックの結果は、自店が入力した原価、売価、実際単価、販売数、廃棄数だけから計算します。