給料明細に食事手当と同額の控除があっても、その表示だけで正しいとも誤りとも判断できません。税務、賃金控除、給与記録は別々の確認です。
先に要点:3つを独立して確認する
- 税務の確認:現物か現金か、食事価額、本人負担、会社負担を確認する
- 賃金控除の確認:労働基準法24条の全額払いと、必要な書面協定を確認する
- 給与記録の確認:提供台帳、支給欄、控除欄、対象月、差額を照合する
同じ金額が支給欄と控除欄にあることは、金額が一致しているという事実しか示しません。非課税、適法、正しい給与処理の証明にはなりません。
まかない税務・給与記録ワークブック(Excel)で、100件の提供記録、30人分の月次集計、30人分の給与明細照合ができます。判定欄は「確認補助」であり、法務・税務の結論ではありません。実運用は税理士・社会保険労務士等へ確認してください。
なぜ同額が表示されるのか
給与システムでは、従業員へ提供した食事などを支給・利益の欄へ表示し、本人負担や控除を別欄へ表示することがあります。たとえば次のような表示です。
食事手当・利益表示 +4,800円
食事代控除 -4,800円
差額 0円
これは表示上の差額が0円というだけです。実際に何を提供したか、食事価額はいくらか、本人からどの根拠で控除したかは別資料で確認します。
確認1:税務は提供実態で見る
国税庁 No.2594「食事を支給したとき」は、令和8年4月1日現在法令等として、現物の食事を給与課税しない扱いに次の2条件の両方を求めています。
- 従業員が食事価額の半分以上を負担している
- 食事価額から本人負担を引いた会社負担が、1人あたり月7,500円以下である
月7,500円の判定は消費税・地方消費税を除きます。どちらかを満たさなければ、食事価額から本人負担を引いた金額が給与扱いです。
食事価額も確認する
- 購入した食事:業者へ支払う購入価格
- 自社調理の食事:直接の食材費と調味料費
給料明細の表示額を、そのまま食事価額とみなせるとは限りません。請求書、レシピ、提供食数と照合します。
現物と現金補助を分ける
会社が弁当業者等と契約し、会社から業者へ支払って食事を提供する形と、従業員が立て替えた食事代を現金で精算する形は分けます。現金による食事補助は原則として給与です。22時から翌5時の深夜勤務者で現物支給が困難な場合は、1食650円以下など国税庁の限定要件を個別に確認します。
確認2:賃金控除は全額払いの例外を確認する
労働基準法24条は、賃金を全額支払う原則を定めています。税務上の食事の扱いとは別の規定です。
法令に別段の定めがある場合を除き、食事代などを賃金から控除するには、事業場の過半数組合、または労働者の過半数代表者との書面協定があるかを確認します。個々の給与明細で同額になっていることは、この協定の代わりになりません。
給与照合では、正の控除額があるのに書面協定を「未確認」または「なし」とした行を、金額一致で通過させないようにします。
確認3:提供台帳と給与記録を同じ月で照合する
対象月ごとに次の記録を並べます。
| 記録 | 確認する項目 |
|---|---|
| 食事提供記録 | 日付、従業員ID、現物/現金、1食価額、本人負担、食数、証憑 |
| 従業員別月次 | 食事価額合計、本人負担合計、会社負担、負担率、現金補助の有無 |
| 給与明細 | 食事手当・利益表示、食事代控除、対象月 |
| 賃金控除資料 | 過半数組合・過半数代表者との書面協定確認 |
本人負担の回収は次の式で確認できます。
本人負担回収差額 = 月次本人負担合計 - 給与控除 - 給与外回収
差額が0円でも、手当・利益表示、税務、賃金控除は別確認です。差額がある場合は、締め日、翌月控除、対象者、現金補助を照合します。手当・利益表示と給与控除が同額でも、その一致だけを正しさの証明にしません。
架空の照合例
架空従業員Aについて、提供台帳では次の月次合計だったとします。
- 食事価額合計:10,000円
- 本人負担合計:5,200円
- 会社負担:4,800円
- 本人負担率:52.0%
- 給与明細の手当・利益表示:4,800円
- 給与からの食事代控除:5,200円
- 給与外での回収:0円
- 賃金控除の書面協定:確認済み
本人負担回収差額 = 月次本人負担5,200 - 給与控除5,200 - 給与外回収0
= 0円
この場合に照合できたのは、台帳の本人負担額と実際の回収額です。手当・利益表示4,800円は会社負担との表示関係を別途確認します。結論は「本人負担回収額一致。手当表示・税務・労基法は別」です。食事価額の算定と提供実態を税理士へ、賃金控除の運用を社会保険労務士等へ確認します。
同額でも止めるケース
- 現金補助なのに現物食と同じ判定をしている
- 食事価額の算定資料がない
- 本人負担率または会社負担月額を確認していない
- 正の控除があるのに書面協定を確認していない
- 提供月と給与控除月がずれているが説明がない
- 従業員IDが台帳と給与明細で一致しない
判断できる範囲とできない範囲
- ワークブックは記録と照合の補助です。
- 金額一致は税務・労基法上の結論ではありません。
- 源泉徴収、課税給与への算入、社会保険の扱いは専門家へ確認します。
- 控除協定の内容、代表者選出、周知方法は事業場の実態に合わせて確認します。
- 個人情報を含む給与ファイルは社内規程に従って保管します。
給与締め前のチェックリスト
- 現物提供と現金補助を分けた
- 食事価額の根拠を請求書または直接食材費・調味料費で残した
- 本人負担50%以上を確認した
- 会社負担月7,500円以下を税抜境界で確認した
- 条件未達額を給与処理へ連携した
- 正の食事代控除について書面協定を確認した
- 提供台帳、月次集計、給与明細の対象月をそろえた
- 同額表示を非課税・適法の証明として扱っていない
- 税理士と社会保険労務士等へ必要箇所を確認した
食事原価の根拠を更新する場合
自社調理の直接食材費・調味料費を継続更新するときは、KitchenCostでレシピ原価の変更履歴を管理できます。給与・税務・賃金控除を確定するものではなく、食事価額の算定資料をそろえる用途に限って使ってください。
公式資料
確認日:2026-08-17
- 国税庁 No.2594「食事を支給したとき」(令和8年4月1日現在法令等) — 現物食の2条件、食事価額、条件未達時の給与扱い
- 国税庁「使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合」 — 現金補助の原則と限定的な深夜勤務者の例外
- e-Gov 労働基準法 第24条 — 賃金全額払いと控除の例外