このページで決めること
主力商品1品の新価格を、次の2案で比べて決めます。
- 現在の総限界利益額を守る価格
- 選択した限界利益率に届く価格
この2つは同じ式ではありません。また、食材・包材のような固定円コストと、決済・デリバリー手数料のような売価に対する料率費用を1つの円額に混ぜません。価格が上がると料率費用も増えるからです。
「共有用サマリー」「商品別判断」「数量シナリオ」「3行告知」「方法メモ」の5シートです。数値は架空の入力例で、黄色セルを編集できます。
式A:現在の総限界利益額を守る
まず、固定円変動費と売価連動手数料率を分けて現在の総限界利益額を出します。
現在の1食限界利益 = 現在価格 × (1 - 現在手数料率) - 現在固定円変動費
現在の総限界利益額 = 現在の1食限界利益 × 現在数量
値上げ後の数量が変わってもこの総額を守る新価格は、
必要な新価格 = (新固定円変動費 + 現在の総限界利益額 ÷ 改定後の見込み数量) ÷ (1 - 新手数料率)
です。この式が答えるのは「数量が減っても、現在の総限界利益額を残すには何円必要か」です。
式B:選択した限界利益率に届かせる
新しい1個変動費に対し、1個あたりの限界利益率を何%にするかを決める式です。
必要な新価格 = 新固定円変動費 ÷ (1 - 新手数料率 - 選択した限界利益率)
ここで使うのは追加原価ではなく、新固定円変動費全体と新手数料率です。手数料率と目標限界利益率の合計は100%未満でなければなりません。数量はこの単価の率を出す式には入りませんが、総限界利益額を確認する際に必要です。
計算例:1,000円の商品をどこまで上げるか
| 入力 | 例 |
|---|---|
| 現在価格 | 1,000円 |
| 現在の固定円変動費 | 370円/食 |
| 現在の売価連動手数料率 | 3% |
| 新しい固定円変動費 | 430円/食 |
| 新しい売価連動手数料率 | 3% |
| 現在数量 | 1,000食/期間 |
| 改定後の見込み数量 | 900食/期間 |
| 選択した限界利益率 | 58% |
現在の総限界利益額は、
(1,000 × (1 - 0.03) - 370) × 1,000 = 600,000円
です。
A案:60万円を維持する
(430 + 600,000 ÷ 900) ÷ (1 - 0.03) = 1,130.58円
必要値上げ幅 = 1,130.58 - 1,000 = 130.58円
メニュー表示を1,130円に丸めると、見込み総限界利益額は次の通りです。
(1,130 × (1 - 0.03) - 430) × 900 = 599,490円
1,130円への丸めでは510円不足します。総額を下回らないことを優先するなら、税込表示と端数も確認したうえで上方向の候補を比較します。
B案:限界利益率58%にする
430 ÷ (1 - 0.03 - 0.58) = 1,102.56円
必要値上げ幅 = 1,102.56 - 1,000 = 102.56円
1,110円に丸める候補です。ただし900食の場合の総限界利益額は、
(1,110 × (1 - 0.03) - 430) × 900 = 582,030円
となり、現在の600,000円には届きません。率を守る価格と、総額を守る価格は異なります。
数量早見表:総額を守る場合
上の例で、改定後の数量だけを変えます。
| 改定後数量 | 必要な新価格 | 値上げ幅 |
|---|---|---|
| 800食 | 1,216.49円 | 216.49円 |
| 900食 | 1,130.58円 | 130.58円 |
| 1,000食 | 1,061.86円 | 61.86円 |
| 1,100食 | 1,005.62円 | 5.62円 |
販売数が現在と同じ1,000食でも、固定円コストの増加60円だけでは足りません。値上げした価格にも3%の手数料がかかるため、この例の必要値上げ幅は61.86円です。
早見表は需要を予測するものではありません。予測を価格の根拠と一緒に残し、改定後に実数で更新するための表です。
変動費の範囲を前後でそろえる
食材費や包材のように1食あたり円で入れる費用と、決済・デリバリー手数料のように売価へ掛かる料率を分けます。同じ手数料を固定円変動費と料率の両方へ入れてはいけません。
現在と改定後で費用範囲を変えません。売上と費用の消費税基準も統一し、管理会計では通常どちらも税抜で計算します。店内飲食10%と持ち帰り8%が混在する場合はチャネル別に税抜価格、料率、数量を計算し、税込表示価格は最後に決めます。
3行のお客様告知
計算根拠は店内で共有し、お客様へは短く伝えます。
価格改定のお知らせ
2026年9月1日より、対象商品の価格を改定いたします。
品質と提供体制を維持するための改定です。ご理解をお願いいたします。
ワークブックには「3行告知」を独立シートとして入れています。日付と対象を編集し、店頭、SNS、予約サイトの文面をそろえます。
20分の価格会議
- 経理が現在価格、前後の固定円変動費、売価連動手数料率、消費税基準を確認する。
- 店長が現在数量と改定後の見込み数量を入れる。
- 「総額維持」と「率達成」の2案を並べる。
- 税込表示や端数を調整し、採用価格を決める。
- 「3行告知」とPOS、メニュー、各サイトの更新担当を決める。
- 2週間後に実際の販売数と総限界利益額を再計算する。
値上げ後に販売数が落ちても、総限界利益額が維持できていれば、数字上の目的は達成しています。逆に限界利益率が上がっても、数量減で総額が大きく落ちていれば見直します。
日々の仕入価格を反映する場合
値上げ会議の前提になるレシピ原価を継続管理する場合は、KitchenCostなどの原価管理ツールで仕入単価を更新し、このワークブックには価格会議時点の数字を固定して残します。
関連ガイド
方法メモ
数値は数式を説明するための入力例です。値上げ後の数量は予測であり、需要を保証しません。実施後は同じ費用範囲と期間で再計算します。