要点まとめ
- ラーメン一杯の原価は200〜350円、原価率は**30〜35%**が目安
- スープの種類で原価が大きく変わる(醤油・塩が低コスト、味噌・豚骨が高コスト)
- サイドメニューで全体の原価率を調整する
- FLRコスト70%以内を維持する
「一杯の原価、なんとなくで出してませんか?」
ラーメン屋を始めたとき、スープの材料費は計算した。麺の仕入れも確認した。でも、チャーシューの歩留まりは?ネギやメンマの一杯分のコストは?ガス代は?
——そう聞かれると、ちょっと自信がなくなりませんか?
2024年、ラーメン店の倒産は72件で過去最多を記録しました。2025年は46件(1〜9月)とやや減りましたが、帝国データバンクの調査ではラーメン店の約3割が赤字経営です。食材が上がり続けているのに、全国平均価格はまだ717円(2025年8月時点)。「1,000円の壁」を超えられない店が多いのが現実です。
原価を「なんとなく」で把握していると、この状況では耐えきれません。逆に言えば、一杯の原価を数字で押さえている店は、値上げのタイミングもメニュー構成の見直しも、根拠を持って判断できます。
ラーメン一杯の原価はいくら?
一般的なラーメン一杯の原価は200〜350円が目安です。ただし、スープの種類・使用する肉の品質・トッピングの量で大きく変わります。
全体像:一杯1,000円のラーメンの場合
| 要素 | 原価目安 | メモ |
|---|---|---|
| スープ(出汁+タレ) | 60〜150円 | 最も差が出る部分 |
| 麺 | 50〜90円 | 太さ・量で変動 |
| チャーシュー | 40〜80円 | 肉の種類で2倍以上の差 |
| その他トッピング | 20〜50円 | メンマ・ネギ・海苔等 |
| 合計 | 170〜370円 | |
| 原価率 | 17〜37% |
黒字経営を安定させるには原価率30%以下が理想。でも「30%に合わせること」が目的になると、チャーシューを薄くしたりスープを薄めたりする方向に行きがちです。それは本末転倒——お客さんが気づいたら来なくなります。
スープ種類別の原価比較
スープはラーメンの原価で最も差が出る部分です。「うちのスープは何円かかっているか」を把握できていない店は、まずここから始めてください。
スープ+タレの原価目安(一杯あたり)
| スープの種類 | スープ原価 | タレ原価 | 合計 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 醤油ラーメン | 50〜80円 | 10〜15円 | 60〜95円 | 鶏ガラベースで比較的安い |
| 塩ラーメン | 50〜80円 | 10〜15円 | 60〜95円 | 醤油と同水準。出汁の質がポイント |
| 味噌ラーメン | 50〜80円 | 30〜50円 | 80〜130円 | 味噌自体が高い。量も1.5倍必要 |
| 豚骨ラーメン | 80〜120円 | 10〜30円 | 90〜150円 | 大量の骨+8〜12時間煮込みのガス代 |
| 鶏白湯 | 70〜100円 | 10〜20円 | 80〜120円 | 鶏ガラ大量使用。豚骨よりはやや安い |
| 煮干し・魚介 | 60〜100円 | 10〜20円 | 70〜120円 | 煮干しの価格が近年上昇傾向 |
| 二郎系 | 80〜120円 | 15〜25円 | 95〜145円 | 大量の豚骨+背脂。もやし等で原価増 |
醤油・塩ラーメンは利益を出しやすい。味噌・豚骨は原価が高い分、売価を上げるか回転率でカバーするしかありません。
豚骨の場合、スープ原価に加えてガス代も見落としがちです。8〜12時間煮込むと1バッチあたり200〜400円のガス代がかかります。これをスープ原価に含めないと、実質原価を低く見積もることになります。
麺の原価
製麺所から仕入れる場合
| 条件 | 原価目安(一杯分) |
|---|---|
| 標準的な麺(150g) | 50〜70円 |
| 太麺(200g) | 70〜90円 |
| 細麺・博多麺(120g) | 40〜55円 |
| 全粒粉入り | 60〜85円 |
| 特注麺(卵多め等) | 80〜100円 |
自家製麺にした方が安い?
材料費だけなら一杯30〜50円と安くなります。でも見えないコストがあります。
| 追加コスト | 金額目安 |
|---|---|
| 製麺機の減価償却 | 月3〜5万円 |
| 人件費(製麺作業) | 月15〜25万円 |
| 電気代 | 月1〜2万円 |
| スペース | 店舗面積の10〜15% |
月に3,000杯以上出る店なら自家製麺のコストメリットが出てきますが、開業直後は製麺所からの仕入れが無難です。自家製麺は「味へのこだわり」としての価値はありますが、コスト削減目的なら慎重に判断してください。
チャーシューの原価
チャーシューはトッピングの中で最も原価がかかる食材です。ここをどう設計するかで、一杯の原価が大きく変わります。
| 肉の種類 | 仕入価格(kg) | 歩留まり率 | 一枚あたり原価 | 2〜3枚で |
|---|---|---|---|---|
| 国産バラ肉 | 1,200〜1,500円 | 60〜65% | 25〜35円 | 50〜105円 |
| 輸入バラ肉 | 800〜1,000円 | 60〜65% | 18〜25円 | 36〜75円 |
| 国産肩ロース | 1,500〜2,000円 | 70〜75% | 30〜40円 | 60〜120円 |
| 輸入肩ロース | 1,000〜1,300円 | 70〜75% | 20〜28円 | 40〜84円 |
| 鶏むね肉(低温調理) | 300〜500円 | 85〜90% | 8〜12円 | 16〜36円 |
よく見落とされるのが歩留まり率です。1kgのバラ肉を買っても、脂身やスジを取ると使えるのは600〜650g。仕入れ値1,200円÷650gで、実質1gあたり1.85円。仕入れ値だけで計算した1.2円/gとは5割以上の差です。
コスト削減のヒント:
- 煮豚の煮汁はチャーシューダレとして使い回す
- 端材はチャーハンや賄いに回して廃棄率を下げる
- 「薄切り3枚」と「厚切り1枚」は見た目の満足度がほぼ同じ。厚切りの方が作業時間は短い
その他トッピングの原価
| トッピング | 一杯あたり | 原価 |
|---|---|---|
| 味付け玉子 | 1/2個 | 15〜25円 |
| メンマ | 20g | 8〜12円 |
| 長ネギ | 10g | 3〜5円 |
| 海苔 | 2〜3枚 | 5〜10円 |
| もやし | 50g | 3〜5円 |
| コーン | 15g | 5〜8円 |
| バター | 10g | 10〜15円 |
| きくらげ | 5g | 3〜5円 |
| ほうれん草 | 30g | 10〜15円 |
もやし・ネギ・きくらげは原価が低いのに見た目のボリュームが出る食材。原価率を抑えながら「量が多い」と感じてもらうには、こういう食材を上手に使うのがコツです。
具体例:スープ別のラーメン一杯の原価
具体的な数字で見ると、スープの種類による差がはっきりわかります。
醤油ラーメン(売価 950円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| スープ(鶏ガラ出汁) | 65円 |
| タレ(かえし) | 12円 |
| 麺(中太150g) | 60円 |
| チャーシュー(輸入バラ2枚) | 40円 |
| メンマ | 10円 |
| ネギ | 4円 |
| 海苔2枚 | 6円 |
| 合計 | 197円 |
| 原価率 | 20.7% |
サイドメニューと組み合わせれば十分利益が出る水準です。
豚骨ラーメン(売価 950円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| スープ(豚骨白湯) | 110円 |
| タレ | 20円 |
| 麺(細麺120g) | 45円 |
| チャーシュー(輸入バラ2枚) | 40円 |
| きくらげ | 4円 |
| ネギ | 4円 |
| 紅しょうが | 3円 |
| ごま | 1円 |
| 合計 | 227円 |
| 原価率 | 23.9% |
スープ原価は醤油より45円高いですが、細麺(120g)で麺のコストを抑えています。ただしガス代を入れるとさらに上がります。
味噌ラーメン(売価 1,000円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| スープ(豚骨+野菜出汁) | 70円 |
| 味噌ダレ | 45円 |
| 麺(太麺180g) | 75円 |
| チャーシュー(国産肩ロース2枚) | 70円 |
| もやし+キャベツ | 10円 |
| コーン | 6円 |
| ネギ | 4円 |
| バター | 12円 |
| 合計 | 292円 |
| 原価率 | 29.2% |
味噌はタレ・麺・肉すべてが高め。1,000円以上の価格設定が現実的です。
二郎系ラーメン(売価 1,000円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| スープ(乳化豚骨醤油) | 100円 |
| タレ | 20円 |
| 麺(極太300g) | 100円 |
| 豚(チャーシュー) | 80円 |
| もやし(200g) | 12円 |
| キャベツ(50g) | 8円 |
| にんにく | 5円 |
| 背脂 | 15円 |
| 合計 | 340円 |
| 原価率 | 34.0% |
麺300gと大量の具材で原価率は高い。でも「追加トッピング不要」で客単価が安定し、野菜のボリュームで見た目の満足度を確保できます。
「1,000円の壁」をどうするか
2025年のぐるなび調査では、消費者の9割が「ラーメンは1,000円未満が適正」と回答しています。一方で、ラーメンの原価指数は2020年比で約3割上昇。「上げたいけど上げられない」——これが多くの店の本音ではないでしょうか。
価格別の消費者の反応
| 価格帯 | 反応 | 対応 |
|---|---|---|
| 〜850円 | 「普通」と認識。リピートしやすい | 原価率25%以下を目指す。サイドで利益確保 |
| 850〜1,000円 | 「ちょっと高いけど妥当」 | こだわりが伝わる見せ方が必要 |
| 1,000〜1,200円 | 「高い」と感じる人が急増 | トッピング込みの満足感で納得させる |
| 1,200円〜 | 高級ラーメンとして認知される | 食材・空間・サービスすべてで差別化 |
1,000円を超えても受け入れてもらう工夫
- セット価格で体感値を下げる — 「ラーメン+半チャーハンセット 1,180円」なら、ラーメン単体1,000円超の印象が薄まります
- 味玉やネギ増しを標準搭載 — 「全部入り」として出せば、有料トッピングを選ぶストレスがなくなります
- 「特製」「限定」で付加価値をつける — 「特製ラーメン 1,100円」は「ラーメン 1,100円」より自然に受け入れられます
- 替え玉無料 — 博多系で有効。替え玉の原価は麺50円だけですが、満足度と来店動機への影響は大きい
サイドメニューで全体の原価率をコントロールする
ラーメンの原価率が高めでも、サイドメニューで全体の原価率を下げるのが実際の経営手法です。
サイドメニューの原価率比較
| メニュー | 売価 | 原価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| ライス | 150円 | 30円 | 20.0% | 120円 |
| 半チャーハン | 350円 | 80円 | 22.9% | 270円 |
| 餃子(5個) | 400円 | 90円 | 22.5% | 310円 |
| 唐揚げ(3個) | 350円 | 80円 | 22.9% | 270円 |
| ビール | 500円 | 120円 | 24.0% | 380円 |
| 替え玉 | 150円 | 50円 | 33.3% | 100円 |
| 味付け玉子 | 120円 | 25円 | 20.8% | 95円 |
| チャーシュー増し | 200円 | 60円 | 30.0% | 140円 |
実際のシミュレーション
客単価1,350円(ラーメン+サイド)の場合:
| 注文内容 | 売価 | 原価 |
|---|---|---|
| 醤油ラーメン | 950円 | 197円 |
| 餃子 | 400円 | 90円 |
| 合計 | 1,350円 | 287円 |
| 原価率 | 21.3% |
サイドメニューが加わることで、利益額は大きく増えます。「ラーメンだけ食べて帰る」お客さんが多い店は、サイドメニューの訴求を見直してみてください。
光熱費とFLRコスト
ラーメン店はガス代が他の飲食店より高いのが特徴です。豚骨スープの長時間煮込みがあると、月のガス代が10〜20万円になることも珍しくありません。
FLRコスト(飲食店の3大コスト)
FLRコスト = Food(食材費)+ Labor(人件費)+ Rent(家賃)
| コスト | 理想 | ラーメン店の実態 |
|---|---|---|
| F(食材費) | 30%以下 | 30〜35% |
| L(人件費) | 25〜30% | 20〜28%(少人数運営が多い) |
| R(家賃) | 10%以下 | 8〜15% |
| 合計(FLR) | 65〜70% | 60〜75% |
FLRコストが70%を超えると赤字リスクが高まります。ラーメン店は食材費が高い分、少人数オペレーションで人件費を抑えるのが基本戦略。2〜3名で回せる仕組みを最初から設計しておくのが大事です。
光熱費の目安
| 項目 | 月額目安 |
|---|---|
| ガス代(スープ煮込み中心) | 8〜20万円 |
| 電気代 | 3〜8万円 |
| 水道代 | 2〜5万円 |
| 合計 | 13〜33万円 |
豚骨スープの8〜12時間煮込みはガス代の大きな要因。圧力鍋やスチームコンベクションで仕込み時間を短縮すれば、光熱費は目に見えて下がります。
原価を下げる7つの実践テクニック
1. 仕入れ先を複数持つ
業務スーパー・卸売市場・製麺所・精肉店から相見積もりを取る。毎月比較するだけで5〜10%の差が出ることがあります。1社だけに頼っていると、値上げをそのまま飲むしかなくなります。
2. 端材を使い切る
チャーシューの煮汁→タレに転用。鶏ガラの残り→賄いに。野菜の端→スープの出汁に。廃棄率を1%下げれば、月数万円の原価削減につながります。
3. もやし・キャベツを活用する
もやし50gの原価は3〜5円。見た目のボリューム感に対してコストパフォーマンスが圧倒的に良い食材です。二郎系が野菜マシで成立しているのは、この原価構造が理由です。
4. スープの仕込み量を最適化する
余って捨てるスープはそのままロスです。天候・曜日別の来客データを取り、仕込み量を調整する。最初は感覚でも、2〜3ヶ月データを取れば精度が上がります。
5. チャーシューの切り方を工夫する
同じ重量でも「薄切り3枚」より「厚切り1枚」の方が手間は減り、見た目の満足度は変わりません。作業時間の短縮にもなります。
6. トッピングをグラム管理する
ネギ10g、メンマ20gと基準を決めて計量する。「ちょっと多めに」が1日50杯で積み重なると、月単位で数万円の差になります。
7. 価格改定は小刻みに
一気に100円上げるより、50円ずつ2回に分ける方が客離れが少ないです。同時にトッピングの追加やサービスの向上を行えば、値上げの印象を和らげられます。
繁盛しているラーメン店の経営パターン
| パターン | ラーメン原価率 | サイド戦略 | 全体原価率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 回転率重視型 | 25〜30% | サイド少なめ | 25〜30% | 駅前。ランチ需要。10分で提供 |
| 客単価重視型 | 30〜35% | セット+ドリンク | 25〜30% | 郊外。ファミリー層。セット中心 |
| こだわり型 | 35〜40% | トッピング充実 | 30〜35% | 専門店。食材にこだわり。高単価 |
| テイクアウト併用型 | 28〜33% | 容器代込み | 30〜35% | デリバリー対応。キッチンカー |
自分の店がどのパターンに近いかを意識すると、目指すべき原価率が見えてきます。
原価管理、Excelで止まっていませんか?
開業時にExcelで原価表を作った方は多いと思います。でも、3ヶ月もすると更新しなくなっていませんか?
食材の価格が変わるたびに数十のレシピを手動で直すのは、現実的に続きません。仕入れ値が上がっても面倒で放置して、気づいたら赤字メニューが増えていた——という話はよく聞きます。
レシピ原価計算アプリを使えば:
- 食材の価格を1ヶ所変えるだけで、全レシピの原価が自動更新
- 歩留まり率を反映した正確な原価を計算
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最初の登録は手間がかかります。でも一度やれば、毎月の原価管理が格段に楽になります。
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今すぐやること
- スープの1杯あたり原価を計算する(ガス代も含めて)
- チャーシューの歩留まり率を計量して確認する
- トッピングのグラム管理を始める
- サイドメニューの原価率を計算する
- FLRコストを確認する
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