飲食店・カフェ・テイクアウト専門店を経営しているなら、レシピの原価計算は利益を左右する最も重要な作業です。
「なんとなくこのくらい」で価格を決めていませんか?この記事では、実際の食材価格を使った具体的な計算方法と、業態別の原価率の目安をまとめます。
レシピ原価計算とは?
レシピ原価計算とは、メニュー1品(または1バッチ)を作るのに必要な食材費の合計を正確に出す作業です。
原価がわかれば:
- 目標原価率に合った販売価格を設定できる
- 儲かるメニューと赤字メニューを見分けられる
- 食材費の変動に素早く対応できる
- 仕入先の見積もりを具体的な数字で比較できる
5つの基本公式
1. 可食部量(歩留まり計算)
可食部量 = 購入量 × (1 − ロス率)
例:鶏もも肉1kgを購入、ロス率15%(皮・脂・筋の除去)→ 可食部量 = 850g
2. 単価計算
g単価 = 購入価格 ÷ 可食部量
購入価格 780円の鶏もも肉:780 ÷ 850 = 0.92円/g
3. 材料別原価
材料原価 = g単価 × レシピ使用量
レシピに200g使用:0.92 × 200 = 184円
4. 合計原価
合計原価 = すべての材料原価の合計
調味料・油・薬味も忘れずに含めます。
5. 1食あたり原価
1食原価 = 合計原価 ÷ 出来上がり数量
6食分できるレシピなら:合計原価 ÷ 6 = 1食あたりの材料費
具体例:鶏の照り焼き定食
6食分のレシピで計算します。
材料費の内訳
| 食材 | 購入単位 | 購入価格 | ロス率 | 可食部量 | 使用量 | 原価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 鶏もも肉 | 1kg | 780円 | 15% | 850g | 900g | 825円 |
| 白米 | 5kg | 2,980円 | 0% | 5,000g | 1,200g(6膳分) | 715円 |
| 醤油 | 1L | 398円 | 0% | 1,000ml | 90ml | 36円 |
| みりん | 1L | 498円 | 0% | 1,000ml | 90ml | 45円 |
| 砂糖 | 1kg | 248円 | 0% | 1,000g | 30g | 7円 |
| サラダ油 | 1L | 398円 | 0% | 1,000ml | 30ml | 12円 |
| キャベツ | 1玉(1kg) | 198円 | 20% | 800g | 300g | 74円 |
| ミニトマト | 1パック(200g) | 298円 | 5% | 190g | 120g | 188円 |
| 味噌汁(味噌+具材) | — | — | — | — | 6杯分 | 150円 |
| 合計 | 2,052円 |
1食あたり原価
2,052円 ÷ 6食 = 342円/食
価格設定への反映
| 販売価格 | 原価率 | 判定 |
|---|---|---|
| 880円 | 38.9% | ⚠️ ランチなら許容範囲だが利益は薄い |
| 1,000円 | 34.2% | ✅ 一般的な飲食店の目安 |
| 1,200円 | 28.5% | ✅ しっかり利益が出る |
342円の原価に対して1,000円の販売価格なら、原価率34.2%。一般的な飲食店の基準内です。
原価率の目安:業態別
原価率の計算式:
原価率(%) = 食材費 ÷ 販売価格 × 100
業態別の目安
| 業態 | 原価率の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| カフェ・喫茶店 | 20〜30% | ドリンクは原価率が低い。家賃・人件費の比率が高い |
| 一般的な飲食店 | 30〜35% | 最も一般的な基準 |
| ラーメン店 | 30〜38% | スープの仕込みコストに注意 |
| 居酒屋 | 28〜35% | ドリンクで全体の原価率を下げる |
| 高級レストラン | 35〜45% | 客単価が高いため原価率は高くても利益が出る |
| テイクアウト専門 | 25〜32% | 容器代が別途かかる |
| デリバリー専門 | 28〜32% | プラットフォーム手数料15〜30%が別途 |
| 弁当・惣菜 | 35〜45% | 品数が多い分、食材費が上がりやすい |
原価率だけを見るのは危険です。FLコスト(食材費+人件費)を60%以内に抑えることが利益確保の本当の基準です。詳しくはプライムコスト完全ガイドをご覧ください。
販売価格の決め方
方法1:目標原価率から逆算
販売価格 = 1食原価 ÷ 目標原価率
1食原価342円 ÷ 0.30(原価率30%目標)= 1,140円
方法2:目標利益率から逆算
販売価格 = 1食原価 ÷ (1 − 目標利益率)
342円 ÷ (1 − 0.70) = 342円 ÷ 0.30 = 1,140円
⚠️ 原価率と利益率は表裏一体ですが、マークアップ率とは異なります。混同すると価格設定を間違えます。詳しくはマージン率とマークアップの違いで解説しています。
歩留まりを無視すると原価がズレる
歩留まりとは、購入した食材のうち実際に使える部分の割合です。これを無視すると、実際の原価が計算上の原価より高くなります。
例:刺身用マグロ
- 購入価格:3,980円/kg
- 歩留まり率:65%(皮・骨・血合い除去)
- 可食部量:650g/kg
- 実際のg単価:6.12円/g(3,980 ÷ 650)
仕入れ値のg単価(3.98円/g)とは54%もの差があります。
主な食材の歩留まり率
| 食材 | 歩留まり率(目安) | ロスの内容 |
|---|---|---|
| 鶏もも肉 | 85〜90% | 脂・皮・筋 |
| 豚ロース | 85〜90% | 脂身 |
| 牛肩ロース | 80〜85% | 脂・筋 |
| 刺身用魚(丸もの) | 40〜55% | 頭・骨・内臓・皮 |
| 刺身用魚(柵) | 90〜95% | 血合い程度 |
| 玉ねぎ | 88〜90% | 皮・根 |
| キャベツ | 80〜85% | 外葉・芯 |
| 大葉・ハーブ類 | 50〜60% | 茎・傷んだ葉 |
| バター・油・調味料 | 98〜100% | ほぼロスなし |
歩留まり計算の詳細は → ロス率計算ガイド
原価計算でよくある間違い
1. 調味料・油のコストを省く
「少量だから」と省略しがちですが、1日100食を出す店では1品あたり10〜30円の調味料コストが月3万〜9万円の差になります。
2. 購入単位の価格をそのまま使う
「醤油1本398円」ではなく、レシピに使う分だけの金額を計算しないと意味がありません。
3. 食材価格の変動を反映しない
野菜は季節変動が大きく、キャベツが1玉150円の時期もあれば400円を超える時期もあります。最低でも月1回は原価を見直しましょう。
4. 出来上がり量のブレ
レシピ上は6食分でも、実際は5.5食分しかできていなかったら、1食あたり原価は9%も上がります。
5. 一度計算して終わり
原価計算は一度きりの作業ではありません。食材費の変動、仕入先の変更、レシピ改良のたびに更新が必要です。
Excelとアプリの比較
多くの飲食店がExcelで原価管理を始めますが、3ヶ月もすると更新しなくなるケースが多いです。
| 課題 | Excel | レシピ原価計算アプリ |
|---|---|---|
| 食材価格が変わった | 使用している全セルを手動修正 | 1箇所変更で全レシピ自動更新 |
| 仕込み品(タレ・ダシ) | 複雑な数式のネスト | 仕込み品登録で自動連携 |
| 歩留まり計算 | セルごとに計算式を入力 | ロス率入力で自動計算 |
| 目標価格の設定 | 手動で逆算 | 目標利益率を入れると推奨価格を表示 |
| レシピの増加 | シートのコピー&ペースト | データベースで一元管理 |
ハワイ大学の研究では、スプレッドシートの88%にエラーが含まれているとされています。利益率が数%の飲食店で、高稼働メニューの計算ミスは月数万円の損失になりかねません。
詳しくは → Excel vs アプリ 原価管理比較
まずは始めてみる
5分でできること
一番売れているメニューの食材を書き出し、現在の仕入れ値で原価を計算してみてください。想定と違う金額になるはずです。
30分でできること
売上トップ5のメニューの原価を計算し、それぞれの原価率を出します。1つは想定より儲かっていて、1つは赤字に近いメニューが見つかるでしょう。
本格的にやるなら
全食材をツール(ExcelまたはアプリI)に登録し、歩留まり率を反映して全メニューの原価を計算します。目標利益率を設定し、販売価格を見直しましょう。
関連ガイド
- 飲食店の原価計算アプリおすすめと使い方 — Excelからアプリへ切り替える実務手順
- 原価率の目安 業種別ガイド — 飲食店タイプ別の適正原価率
- ロス率計算ガイド — 歩留まり率の目安と計算方法
- 仕込み品原価管理 — タレ・ダシ・ソースの原価を正確に
- マージン率とマークアップの違い — 価格設定の致命的な間違い
- プライムコスト完全ガイド — FLコスト60%ルール
- 人件費率ガイド — 人件費に含める項目と目標設定
- メニューエンジニアリング — 儲かるメニューと赤字メニューの見分け方
- ラーメン原価計算ガイド — スープ・麺・チャーシューの原価分解
- 焼肉店の原価計算 — 部位別の原価率と利益最大化
- 寿司屋の原価計算 — ネタ別の原価率と仕入れ管理
- 焼き鳥屋の原価計算 — 串1本の重量設計と利益管理
- 串カツ屋の原価計算 — 衣と油の原価管理
- モーニング・ブランチ原価ガイド — 卵・コーヒーの原価管理
- うどん屋の原価計算 — 一杯の原価内訳とメニュー戦略
- カレー屋の原価計算 — スタイル別の原価比較と利益最大化
- ゴーストキッチン原価ガイド — 手数料・容器代・価格設計の実践
まとめ
- レシピ原価 = 各材料の(g単価 × 使用量)の合計。歩留まりを必ず反映する
- 原価率の目安は**30〜35%**が一般的だが、業態によって異なる
- 歩留まりを無視すると原価が10〜50%もズレる。高価格食材ほど影響が大きい
- 月1回は原価を見直す。食材費は常に変動する
- レシピ原価計算ツールを使えば、更新の手間とExcelのエラーを同時に解消できる
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参考資料
- 総務省統計局「消費者物価指数」 — 食料品価格の推移データ
- 農林水産省「食品産業動態調査」 — 食材仕入価格の動向
- マネーフォワード「飲食店の原価計算方法」 — 原価管理のポイント
- NEC「飲食店の原価率とは」 — 業態別の原価率目安
- freee「飲食店の原価率の理想は?」 — FLコスト管理