一般社団法人 日本アイスクリーム協会の統計によると、2024年度の国内アイスクリーム販売金額は6,451億円、販売物量は935,916kL。家計調査(二人以上の世帯)では2024年のアイスクリーム類年間支出は12,295円です。
つまり「売れる業態」。しかし、溶け・ロス・トッピングの積み上げで利益が消えやすいのも事実です。
ソフトクリーム・ジェラート・カップアイスの原価構造を分解し、具体的な数字で価格設計できるように整理します。
要点まとめ
- ソフトクリームは原価率20%以下でも成立する
- ジェラートは材料費が高く**30〜35%**が現実的な目標
- トッピングは低原価で高価格を付けられる利益レバー
- 季節ごとに売り方を変えるだけで年間利益が大きく変わる
アイスクリーム屋の原価構造
アイスクリームは「原価が低い」業態と思われがちですが、実際は見えにくいコストが多いです。
- ベース原価:ミックス(乳脂肪・乳固形分・糖)
- トッピング原価:フルーツ、ソース、クッキー、ナッツ
- 器材原価:コーン、カップ、スプーン、蓋
- ロス原価:溶け、廃棄、フリーザー焼け
- 光熱費:冷凍庫・ソフトマシンは固定費が重い
「ミックスだけの原価率」ではなく、トッピング・器材・ロスまで含めて計算するのが勝ち筋です。
原価計算の基本式
原価率(%) = 原価 / 価格 x 100
目標価格 = 原価 / 目標原価率
まずは「1食あたりの原価」を出し、そこから価格を逆算します。
商品タイプ別の特徴
| タイプ | 原価の特徴 | 利益ポイント |
|---|---|---|
| ソフトクリーム | ミックスが安い、器材コストが固定 | 回転率とサイズで利益を作る |
| ジェラート | 材料と製法で原価が上がりやすい | プレミアム価格が必須 |
| カップアイス | パッケージ原価が重い | 単価とセット販売で補う |
ポイントは「ソフトは回転率、ジェラートは単価」です。
例1:ソフトクリーム(コーン)原価
前提(例):
- ソフトミックス 1L = 360円
- 1食 100ml使用(10食)
| 項目 | 量 | 単価 | 原価 |
|---|---|---|---|
| ソフトミックス | 100ml | 36円 | 36円 |
| コーン | 1個 | 25円 | 25円 |
| チョコソース | 15ml | 12円 | 12円 |
| スプレー | 2g | 8円 | 8円 |
| 合計 | 81円 |
価格450円の場合:
81 / 450 = 18%
ソフトクリームは原価率20%以下でも十分成立します。
例2:ジェラート(ダブルカップ)原価
前提(例):
- ジェラートベース 1L = 560円
- 1食 120ml(8食)
| 項目 | 量 | 単価 | 原価 |
|---|---|---|---|
| ジェラート(2スクープ) | 240ml | 140円 | 140円 |
| カップ | 1個 | 12円 | 12円 |
| スプーン | 1本 | 3円 | 3円 |
| フルーツ | 30g | 35円 | 35円 |
| ソース | 10g | 12円 | 12円 |
| 合計 | 202円 |
価格620円の場合:
202 / 620 = 33%
ジェラートは30〜35%前後が現実的な目標になります。
トッピングは利益のレバー
原価の安いトッピングを「見た目価値」で高く売るのが鉄則です。
- 低原価トッピング:チョコスプレー、シリアル、カラースプレー
- 中原価トッピング:クッキー、ブラウニー
- 高原価トッピング:フルーツ、ナッツ、クリーム
おすすめ設計:
- ベース価格 + 3段階トッピング(+50 / +100 / +150円)
- 高原価トッピングには「限定」「季節」ラベルで価格を守る
カップ・持ち帰りは原価が上がる
持ち帰りは便利ですが、原価は確実に上がります。
- カップ + 蓋 + スプーン:15〜25円
- 保冷剤 / 袋:10〜30円
イートインとテイクアウトで価格差をつけるだけでも、利益の残り方が変わります。
ロス率を見える化する
アイスは「溶ける」だけでなく、削れ・割れ・在庫切れが多い商品です。
ロス率 = (仕入れ量 - 販売量) / 仕入れ量
ロス率が5%超えたら要注意。
- 仕込み量の最適化
- 週末ピークの前日仕込み
- シーズン限定の短期回転
価格設計のコツ
- アンカー価格を作る(プレミアムメニュー)
- セット価格で客単価を引き上げる(ドリンク +200円)
- 季節限定は原価率より「話題性」優先
ソフトクリーム単品だけでは利益が薄くなります。プレミアム商品とセット設計で利益を作りましょう。
1ヶ月で回せる運用ルーティン
- 月初:原材料価格を更新
- 週次:売れ筋トップ5の原価率をチェック
- 毎日:ロス率をメモ(仕込み量と廃棄量)
原価管理は「毎日5分」が最強です。
季節別のメニュー運用
アイスは季節性の影響が大きい商品です。
- 夏:回転率重視。定番フレーバーと作り置きでスピード優先
- 冬:単価重視。ホットドリンクや焼き菓子とのセットを強化
- 雨天:小サイズやテイクアウトを推し、客単価の下振れを抑える
「季節ごとに売り方を変える」だけで、年間利益は大きく変わります。
まとめ:アイスは「原価」より「設計」
- ソフトは回転率と固定費回収
- ジェラートは単価で利益を作る
- トッピングとセットが利益のレバー
数字で設計すれば、アイス屋は強いビジネスになります。
今すぐやること
- ソフトミックス1Lあたりの原価を計算する
- トッピング別の原価と追加価格を一覧にする
- 容器・スプーン・保冷剤の1食あたりコストを出す
- 今週のロス率(廃棄量/仕入量)を記録する
原価の見える化はKitchenCostで。無料で使えます。
関連ガイド:
出典
- 一般社団法人 日本アイスクリーム協会「アイスクリームの統計資料(2024年度 販売額・販売量)」
- 一般社団法人 日本アイスクリーム協会「家計調査(二人以上の世帯)アイスクリーム類 年間支出」
- ベーカリー原価ガイド