和菓子の原価は、一見すると安く見えます。小豆、砂糖、もち粉、小麦粉。高級食材が入るわけでもない。
でも月末に数字を見ると、「あれ、思ったほど残っていない」。
理由は2つ。あんこの歩留まりと包材コストです。
小豆1kgを炊いてあんこにすると約2kg。でも火加減や煮詰め具合で1.8kgしかできないこともある。この200gの差が、1日の仕込みで数百円、月に数万円の原価ブレになります。
さらに和菓子はギフト需要が多い業態。箱、のし紙、リボン、手提げ袋——商品原価の3〜4割が包材ということも珍しくありません。
先に結論
- あんこの歩留まりが原価の鍵。 煮詰め後の出来高を毎回量る
- 包材は原価の3〜4割を占めることもある。 箱代込みで価格設計する
- 季節商品は廃棄リスクが高い。 仕込みは少なめ、追加製造で対応
- 餅の端材は別商品に回す。 ロスをゼロにするより活用する方が現実的
あんこの仕込み原価を分解する
つぶあん1バッチ(出来上がり約2kg)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 小豆 | 1kg | 1,200円 |
| 砂糖(上白糖) | 800g | 200円 |
| 水・光熱費 | — | 50円 |
| 合計 | 1,450円 |
出来上がり量:約2kg(歩留まりは火加減による)
あんこ1gあたり = 1,450円 ÷ 2,000g = 約0.73円
大福1個にあんこ40g使うなら、あんこ原価は約29円。
歩留まりのブレが原価を動かす
煮詰め方で出来上がり量が変わります。
| 煮詰め具合 | 出来上がり | あんこ1gあたり |
|---|---|---|
| しっかり(硬め) | 1,800g | 0.81円 |
| 標準 | 2,000g | 0.73円 |
| ゆるめ | 2,200g | 0.66円 |
1gあたり0.15円の差。 小さく見えますが、1日にあんこ10kg使う店なら1,500円の差。月に37,500円です。
対策:毎回、仕込み後の出来高をkg単位で量る。 これだけで歩留まりの傾向が見えてきます。
和菓子の1個原価を分解する
大福(税込200円 → 税抜182円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| もち生地(40g) | 15円 |
| つぶあん(40g) | 29円 |
| 片栗粉(打ち粉) | 2円 |
| 合計 | 46円 |
原価率:46 ÷ 182 = 25.3%
いちご大福(税込350円 → 税抜318円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| もち生地(45g) | 17円 |
| 白あん(30g) | 25円 |
| いちご(1個 L) | 80円 |
| 片栗粉 | 2円 |
| 合計 | 124円 |
原価率:124 ÷ 318 = 39.0%
いちごが入ると原価率が一気に上がる。 いちごは季節で価格が3〜5倍変動する食材。12月の高い時期に同じ価格で売ると原価率50%を超えることもあります。
どら焼き(税込220円 → 税抜200円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 生地(小麦粉・卵・砂糖・みりん) | 20円 |
| つぶあん(50g) | 37円 |
| 合計 | 57円 |
原価率:57 ÷ 200 = 28.5%
最中(税込180円 → 税抜164円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 最中皮(2枚) | 20円 |
| つぶあん(35g) | 26円 |
| 合計 | 46円 |
原価率:46 ÷ 164 = 28.0%
包材コストは無視できない
和菓子店の最大の特徴はギフト需要です。お中元、お歳暮、手土産、法事。箱入りの売上が全体の30〜50%を占める店もあります。
ギフト包材の原価
| 包材 | 1セットあたり |
|---|---|
| 6個入り箱 | 80〜120円 |
| のし紙 | 15〜25円 |
| リボン or 水引 | 10〜30円 |
| 仕切り | 20〜30円 |
| 手提げ袋 | 25〜40円 |
| 合計 | 150〜245円 |
例:6個入り最中セット(税込1,320円 → 税抜1,200円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 最中 × 6個 | 276円(46円 × 6) |
| 箱・のし・仕切り・袋 | 200円 |
| 合計 | 476円 |
原価率:476 ÷ 1,200 = 39.7%
原価の42%が包材。 商品本体より包材のほうが高い——和菓子のギフトでは珍しくない構図です。
包材のコスト削減は効果が大きい。同じ品質の箱でも仕入れ先を比較すると、1箱10〜20円の差があることもあります。年間5,000セット出る店なら5〜10万円の差です。
餅・求肥のロスを活かす
餅や求肥は成形時に端材が出ます。「ロスをゼロにする」のは現実的ではないので、端材を別商品に回すのが正解です。
| 端材 | 活用メニュー |
|---|---|
| 餅の切れ端 | おはぎ、ぜんざいの餅、焼き餅 |
| 求肥の端材 | ミニ大福、試食用 |
| あんこの余り | あんバタートースト(カフェ併設の場合)、あんこ販売 |
端材を活用するメニューを1〜2品持っておくだけで、廃棄コストが大幅に減ります。
季節商品の仕込みリスク
和菓子は季節商品が命です。でも季節商品は販売期間が短い=廃棄リスクが高い。
| 季節 | 代表商品 | 販売期間 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 春 | 桜餅、草餅、よもぎ大福 | 2〜4月 | 桜の葉の仕入れ時期が限定 |
| 夏 | 水まんじゅう、わらび餅 | 6〜8月 | 日持ちが短い(2〜3日) |
| 秋 | 栗きんとん、月見だんご | 9〜11月 | 栗の仕入れ価格が毎年変動 |
| 冬 | いちご大福、花びら餅 | 12〜2月 | いちご価格が12月にピーク |
季節商品の仕込みルール:
- 初日は少なめに仕込んで、売れ行きを見てから増やす
- 販売最終日の1週間前から仕込み量を減らす
- 売れ残りは翌日の試食 or 割引販売で回収
今週やること
- あんこの仕込み後の出来高(kg)を記録する(3回分で傾向を掴む)
- 主力3品の1個原価を計算する(あんこ・生地・包材すべて含めて)
- ギフト包材の1セットあたり原価を計算する
- 包材の仕入れ先を2〜3社比較する
- 端材を活用できるメニューを1品考える
関連ガイド
あんこ・もち・包材の原価を登録すれば、和菓子1個の原価が自動で出ます。ギフトセットの包材込み原価率も確認可能。KitchenCost を使ってみてください。