ブログ

とんかつ専門店、肉の原価は把握してるのに利益が出ない——油と衣の見落とし

豚ロース150gの仕入れ値は把握している。でも揚げ油が年間18万〜26万円かかっていることに気づいていない店は多い。とんかつ1食の原価を肉・衣・油・副菜まで分解して、利益が残る構造を作る方法。

更新 2026年2月18日
とんかつ 原価豚ロース 原価定食 価格設定原価計算揚げ物 コスト飲食店経営
目次

「うちはロースとんかつの仕入れ値、ちゃんと把握してますよ」

そう言う店ほど、油のコストを計算していない。

揚げ油の1食あたりのコストは15〜22円。たいした金額じゃないと思うかもしれない。でも1日40食で600〜880円、月に15,000〜22,000円。年間にすると18万〜26万円。 油だけでこの金額だ。

さらに衣の厚みが変わると油の吸収量も変わる。厚衣のとんかつは見栄えがいいけれど、油吸収が50%増えることがある。

豚ロースの仕入れ値が2割上がっている今、肉だけでなく衣と油のコントロールが利益を守るカギになる。

先に結論

  • とんかつの原価は肉が60〜65%。 次に大きいのが揚げ油と衣
  • 豚ロースの歩留まりは85〜90%。 脂身のトリミング量で100gあたり10〜20円変わる
  • ロースとヒレは「粗利額」で比較する。 ヒレは原価が高いが、1食あたりの粗利は220円多い
  • 揚げ油は月1〜2万円の差が出る。 交換頻度と差し油の管理次第
  • 定食の副菜は原価率が低い。 セット全体で原価率を調整する

とんかつ定食1食の原価を分解する

例:ロースとんかつ定食(税抜1,200円)

項目原価
豚ロース150g210円
パン粉20g10円
1/3個10円
小麦粉15g5円
揚げ油(1食分)18円
ご飯1杯(200g)45円
味噌汁1杯28円
キャベツ千切り80g18円
ソース・からし1食分8円
漬物1食分15円
合計367円

原価率:367 ÷ 1,200 = 30.6%

※ 豚ロースは100gあたり140円(業務用の一般的な価格帯)。ご飯は5kgあたり2,500円で計算。

30.6%は飲食店の目安(30〜35%)のちょうど下限。とんかつ専門店としては良い数字だけど、肉の値上がりや油のコスト増で簡単に35%を超える。

ロースとヒレの原価比較

部位別の原価と利益

項目ロースとんかつ定食ヒレとんかつ定食
肉の量150g150g
肉の原価210円285円
衣+油43円48円
副菜106円106円
総原価359円439円
売価1,200円1,500円
原価率29.9%29.3%
粗利841円1,061円

ヒレのほうが原価は80円高い。でも売価を300円高くできるから、1食あたりの粗利は220円多い。

ただし注意点もある。

  • ヒレは歩留まりが80〜85%(筋取りが多い)。ロースの85〜90%より低い
  • ヒレは仕入れ価格の変動が大きい。特に国産は季節で値動きがある
  • ヒレ比率が上がりすぎると仕入れロットの確保が難しくなる

利益を最大化するなら、ロースとヒレの注文比率を7:3でコントロールするのが現実的。 メニュー表でロースを上に配置し、ヒレは「おすすめ」として差別化する。

揚げ油のコスト管理

揚げ油は見えにくいけれど、とんかつ専門店では利益を大きく左右するコストだ。

油のコスト計算

1食あたりの油コスト = 油の購入価格 ÷ 揚げられる食数

例:18L缶(3,600円)÷ 200食 = 18円/食

ただし200食揚げたら油をすべて捨てるわけではない。実際は差し油と全量交換の組み合わせだ。

油の交換サイクル(1日40食の店の例)

日数作業油の使用量累計コスト
1日目新油投入18L3,600円
3日目差し油(3L追加)3L600円
5日目差し油(3L追加)3L600円
7日目全量交換18L3,600円
7日間の油コスト = 3,600 + 600 + 600 = 4,800円
7日間の揚げ数 = 40食 × 7日 = 280食
1食あたり = 4,800 ÷ 280 = 約17円

油コストが上がる3つの原因

1. 衣が厚すぎる

パン粉を厚くつけると見栄えは良いけれど、油の吸収量が増える。薄衣のとんかつは油吸収率が約15%、厚衣は約25%。150gのとんかつなら、薄衣で油吸収23g、厚衣で38g。1食あたり3円の差だが、月に3,000円以上の差になる。

さらに厚衣はパン粉自体のコストも増え、フライヤーの油も汚れやすくなるから交換頻度が上がる。

対策:パン粉の付け方を統一する。 余分なパン粉をしっかり払い落としてから揚げる。

2. 揚げ温度が安定しない

温度が低すぎると揚げ時間が長くなり、油の吸収量が増える。170℃で揚げるべきところを150℃で揚げると、油吸収が30〜40%増えることがある。

対策:温度計を使い、170〜175℃を維持する。 フライヤーの温度設定だけに頼らず、実測する。

3. 揚げかすを放置している

油の中のパン粉かすは焦げて油を劣化させる。劣化した油は食材の色が悪くなるだけでなく、交換頻度が早まってコスト増に直結する。

対策:揚げるたびにこまめにかすを取る。 かす揚げを常にフライヤーの横に置く。

キャベツの原価管理

とんかつ専門店で見落とされがちなのがキャベツだ。

キャベツのコスト

項目金額
キャベツ1玉200円(時価で100〜350円)
可食部(外葉除く)約80% → 800g
1食分(千切り80g)約20円
おかわり自由の場合平均1.5杯 → 30円

キャベツ1食20円は小さく見えるけれど、おかわり自由にすると平均30円に。さらに時価は季節で大きく変動する。

キャベツ原価の年間変動(80g盛りの場合):
安い時期(春・秋):12〜15円/食
高い時期(夏・冬):25〜35円/食

夏場にキャベツが高騰すると、1食あたり20円増。1日40食で800円、月に20,000円のコスト増だ。

キャベツの対策

  • おかわり回数の目安を設ける:「2杯まで」など上限を設定する。または2杯目は小盛りにする
  • 千切りの太さを統一する:細すぎるとかさが減り、盛りが少なく見えて追加される
  • 季節で盛り量を調整する:高い時期はコールスローにアレンジして量を抑える

定食の価格設計

原価率30%で逆算した売価

メニュー総原価原価率30%の売価実際の売価(目安)実原価率
ロースとんかつ定食367円1,223円 → 1,200円1,200円30.6%
ヒレとんかつ定食439円1,463円 → 1,480円1,500円29.3%
カツ丼340円1,133円 → 1,100円1,100円30.9%
カツカレー385円1,283円 → 1,280円1,300円29.6%
エビフライ定食410円1,367円 → 1,380円1,400円29.3%

利益を増やすメニュー構成

とんかつ定食の原価率は30%前後。さらに利益率を上げるには、低原価のメニューを組み合わせる。

追加メニュー追加原価追加売価粗利原価率
豚汁に変更+15円+100円85円15%
ご飯大盛り+18円+50円32円36%
とろろセット+25円+150円125円17%
ミニサラダ+30円+200円170円15%
+15円+80円65円19%

豚汁への変更は原価15円増で100円もらえる。 原価率15%の高利益メニューだ。メニュー表で目立たせる価値がある。

月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:25日
  • 1日の平均食数:40食
  • 平均客単価:1,350円(セット込み)
月間売上 = 40食 × 1,350円 × 25日 = 1,350,000円

原価率30%の場合:
原価 = 405,000円
粗利 = 945,000円

原価率35%の場合(油管理甘い・キャベツ高騰・衣厚め):
原価 = 472,500円
粗利 = 877,500円

差額 = 67,500円/月 = 年間810,000円

原価率5ポイントの差が、年間81万円の利益差になる。そのうち油とキャベツだけで年間30〜40万円を占めることも珍しくない。

今週やること

  • 豚ロースの歩留まりを実測する(脂身トリミング前後の重量を量る)
  • 揚げ油の1食あたりコストを計算する(油代 ÷ 交換までの食数)
  • 衣の付け方を統一し、パン粉の使用量を1食分で計量する
  • キャベツの1食分を80gに固定し、千切りの太さを統一する
  • ロース定食とヒレ定食の粗利を並べて比較する
  • 豚汁やサラダなど低原価の追加メニューをメニュー表で目立たせる

関連ガイド


豚肉・衣・油を登録すれば、1食の原価が自動で出ます。定食の副菜も含めた総原価率がひと目でわかる。KitchenCost を使ってみてください。

よくある質問

とんかつ1枚の原価はどれくらい?

ロース150gなら肉だけで210〜240円。衣(パン粉・卵・小麦粉)で35円、揚げ油で12〜18円、合計260〜290円くらいです。定食にするとご飯・味噌汁・キャベツ・漬物で約100円加わるので、総原価は360〜390円になります。

ロースとヒレ、どちらが利益が出る?

原価だけならロース(100gあたり140円)が安いですが、ヒレ(100gあたり190円)は高単価で売れるので粗利額が大きくなります。ロース定食1,200円で粗利837円、ヒレ定食1,500円で粗利1,062円。1食あたり225円の差です。

揚げ油のコストはどう計算する?

油の総使用量を揚げた食数で割ります。18Lの油(約3,600円)で200食揚げるなら1食あたり18円。ただし実際は2〜3日で差し油をして、5〜7日で全量交換するのが一般的。差し油を含めた実質コストは1食15〜22円くらいです。

定食の副菜は原価に入れるべき?

入れないと実態がわかりません。キャベツ80g(18円)、味噌汁(28円)、ご飯(45円)、漬物(15円)で合計106円。副菜を省いて計算すると、原価率が実際より8〜10ポイント低く見えてしまいます。

今すぐ原価を計算してみましょう

材料単価を入力するだけで、レシピ原価・利益率・販売価格を自動計算します。