「うちはロースとんかつの仕入れ値、ちゃんと把握してますよ」
そう言う店ほど、油のコストを計算していない。
揚げ油の1食あたりのコストは15〜22円。たいした金額じゃないと思うかもしれない。でも1日40食で600〜880円、月に15,000〜22,000円。年間にすると18万〜26万円。 油だけでこの金額だ。
さらに衣の厚みが変わると油の吸収量も変わる。厚衣のとんかつは見栄えがいいけれど、油吸収が50%増えることがある。
豚ロースの仕入れ値が2割上がっている今、肉だけでなく衣と油のコントロールが利益を守るカギになる。
先に結論
- とんかつの原価は肉が60〜65%。 次に大きいのが揚げ油と衣
- 豚ロースの歩留まりは85〜90%。 脂身のトリミング量で100gあたり10〜20円変わる
- ロースとヒレは「粗利額」で比較する。 ヒレは原価が高いが、1食あたりの粗利は220円多い
- 揚げ油は月1〜2万円の差が出る。 交換頻度と差し油の管理次第
- 定食の副菜は原価率が低い。 セット全体で原価率を調整する
とんかつ定食1食の原価を分解する
例:ロースとんかつ定食(税抜1,200円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 豚ロース | 150g | 210円 |
| パン粉 | 20g | 10円 |
| 卵 | 1/3個 | 10円 |
| 小麦粉 | 15g | 5円 |
| 揚げ油(1食分) | — | 18円 |
| ご飯 | 1杯(200g) | 45円 |
| 味噌汁 | 1杯 | 28円 |
| キャベツ千切り | 80g | 18円 |
| ソース・からし | 1食分 | 8円 |
| 漬物 | 1食分 | 15円 |
| 合計 | 367円 |
原価率:367 ÷ 1,200 = 30.6%
※ 豚ロースは100gあたり140円(業務用の一般的な価格帯)。ご飯は5kgあたり2,500円で計算。
30.6%は飲食店の目安(30〜35%)のちょうど下限。とんかつ専門店としては良い数字だけど、肉の値上がりや油のコスト増で簡単に35%を超える。
ロースとヒレの原価比較
部位別の原価と利益
| 項目 | ロースとんかつ定食 | ヒレとんかつ定食 |
|---|---|---|
| 肉の量 | 150g | 150g |
| 肉の原価 | 210円 | 285円 |
| 衣+油 | 43円 | 48円 |
| 副菜 | 106円 | 106円 |
| 総原価 | 359円 | 439円 |
| 売価 | 1,200円 | 1,500円 |
| 原価率 | 29.9% | 29.3% |
| 粗利 | 841円 | 1,061円 |
ヒレのほうが原価は80円高い。でも売価を300円高くできるから、1食あたりの粗利は220円多い。
ただし注意点もある。
- ヒレは歩留まりが80〜85%(筋取りが多い)。ロースの85〜90%より低い
- ヒレは仕入れ価格の変動が大きい。特に国産は季節で値動きがある
- ヒレ比率が上がりすぎると仕入れロットの確保が難しくなる
利益を最大化するなら、ロースとヒレの注文比率を7:3でコントロールするのが現実的。 メニュー表でロースを上に配置し、ヒレは「おすすめ」として差別化する。
揚げ油のコスト管理
揚げ油は見えにくいけれど、とんかつ専門店では利益を大きく左右するコストだ。
油のコスト計算
1食あたりの油コスト = 油の購入価格 ÷ 揚げられる食数
例:18L缶(3,600円)÷ 200食 = 18円/食
ただし200食揚げたら油をすべて捨てるわけではない。実際は差し油と全量交換の組み合わせだ。
油の交換サイクル(1日40食の店の例)
| 日数 | 作業 | 油の使用量 | 累計コスト |
|---|---|---|---|
| 1日目 | 新油投入 | 18L | 3,600円 |
| 3日目 | 差し油(3L追加) | 3L | 600円 |
| 5日目 | 差し油(3L追加) | 3L | 600円 |
| 7日目 | 全量交換 | 18L | 3,600円 |
7日間の油コスト = 3,600 + 600 + 600 = 4,800円
7日間の揚げ数 = 40食 × 7日 = 280食
1食あたり = 4,800 ÷ 280 = 約17円
油コストが上がる3つの原因
1. 衣が厚すぎる
パン粉を厚くつけると見栄えは良いけれど、油の吸収量が増える。薄衣のとんかつは油吸収率が約15%、厚衣は約25%。150gのとんかつなら、薄衣で油吸収23g、厚衣で38g。1食あたり3円の差だが、月に3,000円以上の差になる。
さらに厚衣はパン粉自体のコストも増え、フライヤーの油も汚れやすくなるから交換頻度が上がる。
対策:パン粉の付け方を統一する。 余分なパン粉をしっかり払い落としてから揚げる。
2. 揚げ温度が安定しない
温度が低すぎると揚げ時間が長くなり、油の吸収量が増える。170℃で揚げるべきところを150℃で揚げると、油吸収が30〜40%増えることがある。
対策:温度計を使い、170〜175℃を維持する。 フライヤーの温度設定だけに頼らず、実測する。
3. 揚げかすを放置している
油の中のパン粉かすは焦げて油を劣化させる。劣化した油は食材の色が悪くなるだけでなく、交換頻度が早まってコスト増に直結する。
対策:揚げるたびにこまめにかすを取る。 かす揚げを常にフライヤーの横に置く。
キャベツの原価管理
とんかつ専門店で見落とされがちなのがキャベツだ。
キャベツのコスト
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| キャベツ1玉 | 200円(時価で100〜350円) |
| 可食部(外葉除く) | 約80% → 800g |
| 1食分(千切り80g) | 約20円 |
| おかわり自由の場合 | 平均1.5杯 → 30円 |
キャベツ1食20円は小さく見えるけれど、おかわり自由にすると平均30円に。さらに時価は季節で大きく変動する。
キャベツ原価の年間変動(80g盛りの場合):
安い時期(春・秋):12〜15円/食
高い時期(夏・冬):25〜35円/食
夏場にキャベツが高騰すると、1食あたり20円増。1日40食で800円、月に20,000円のコスト増だ。
キャベツの対策
- おかわり回数の目安を設ける:「2杯まで」など上限を設定する。または2杯目は小盛りにする
- 千切りの太さを統一する:細すぎるとかさが減り、盛りが少なく見えて追加される
- 季節で盛り量を調整する:高い時期はコールスローにアレンジして量を抑える
定食の価格設計
原価率30%で逆算した売価
| メニュー | 総原価 | 原価率30%の売価 | 実際の売価(目安) | 実原価率 |
|---|---|---|---|---|
| ロースとんかつ定食 | 367円 | 1,223円 → 1,200円 | 1,200円 | 30.6% |
| ヒレとんかつ定食 | 439円 | 1,463円 → 1,480円 | 1,500円 | 29.3% |
| カツ丼 | 340円 | 1,133円 → 1,100円 | 1,100円 | 30.9% |
| カツカレー | 385円 | 1,283円 → 1,280円 | 1,300円 | 29.6% |
| エビフライ定食 | 410円 | 1,367円 → 1,380円 | 1,400円 | 29.3% |
利益を増やすメニュー構成
とんかつ定食の原価率は30%前後。さらに利益率を上げるには、低原価のメニューを組み合わせる。
| 追加メニュー | 追加原価 | 追加売価 | 粗利 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| 豚汁に変更 | +15円 | +100円 | 85円 | 15% |
| ご飯大盛り | +18円 | +50円 | 32円 | 36% |
| とろろセット | +25円 | +150円 | 125円 | 17% |
| ミニサラダ | +30円 | +200円 | 170円 | 15% |
| 卵 | +15円 | +80円 | 65円 | 19% |
豚汁への変更は原価15円増で100円もらえる。 原価率15%の高利益メニューだ。メニュー表で目立たせる価値がある。
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:25日
- 1日の平均食数:40食
- 平均客単価:1,350円(セット込み)
月間売上 = 40食 × 1,350円 × 25日 = 1,350,000円
原価率30%の場合:
原価 = 405,000円
粗利 = 945,000円
原価率35%の場合(油管理甘い・キャベツ高騰・衣厚め):
原価 = 472,500円
粗利 = 877,500円
差額 = 67,500円/月 = 年間810,000円
原価率5ポイントの差が、年間81万円の利益差になる。そのうち油とキャベツだけで年間30〜40万円を占めることも珍しくない。
今週やること
- 豚ロースの歩留まりを実測する(脂身トリミング前後の重量を量る)
- 揚げ油の1食あたりコストを計算する(油代 ÷ 交換までの食数)
- 衣の付け方を統一し、パン粉の使用量を1食分で計量する
- キャベツの1食分を80gに固定し、千切りの太さを統一する
- ロース定食とヒレ定食の粗利を並べて比較する
- 豚汁やサラダなど低原価の追加メニューをメニュー表で目立たせる
関連ガイド
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