立ち飲み屋の良いところは、席がないから回転が早いこと。悪いところは、1品の単価が安すぎて利益が見えにくいこと。
ポテサラ380円、煮込み420円、ハイボール350円。1品ずつは安い。でも1日100人来て客単価1,500円なら、売上は15万円。ここからフード原価を引いて、家賃と人件費を引いて……残るのは数万円、という店は珍しくありません。
問題は、どこで利益が出ていて、どこで漏れているかが分かりにくいことです。小皿が20種類あって、全部ちょっとずつ利益が出ているように見える。でも実際は、盛りの多い3品が赤字で、ドリンクの利益を食っている——そんな構造になっていることが多い。
フード原価、ドリンク比率、回転率——この3つを分解すると、どこを直せば利益が残るかが見えてきます。
先に結論
- 立ち飲み屋の利益はドリンクで作るのが基本。フードは「来店動機」
- 小皿フードは1品ずつの原価が小さく見えるが、盛りのブレが利益を削る
- ドリンク売上比率を60%以上に保つと、全体原価率が25%以下に収まりやすい
- セット提案で客単価を上げるのが、値上げより効果的
- 回転率は「滞在時間」ではなく「1時間あたりの客数」で管理する
立ち飲み屋の利益構造を理解する
普通の居酒屋と立ち飲み屋では、利益の出方が違います。
| 項目 | 着席型居酒屋 | 立ち飲み屋 |
|---|---|---|
| 客単価 | 3,000〜5,000円 | 1,200〜2,000円 |
| 滞在時間 | 90〜120分 | 30〜60分 |
| 1時間あたり客数 | 0.5〜0.7人/席 | 1.5〜2.5人/スペース |
| ドリンク注文数 | 3〜5杯 | 2〜3杯 |
| フード注文数 | 4〜6品 | 2〜3品 |
客単価は半分以下ですが、回転率が2〜3倍。だから1日の売上はそれほど変わらない。問題は原価率です。
1品の単価が安いので、フード原価が50円ブレただけで原価率が10ポイント以上動きます。着席型なら5,000円の客単価で50円のブレは1%。立ち飲みの1,500円で50円のブレは3.3%。この差が、月末に効いてきます。
小皿フードの原価を分解する
例:代表的な小皿メニュー5品
| メニュー | 標準量 | 原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| ポテトサラダ | 80g | 65円 | 380円 | 17% |
| もつ煮込み | 150g | 95円 | 420円 | 23% |
| 枝豆 | 100g | 40円 | 330円 | 12% |
| 鶏皮ポン酢 | 70g | 55円 | 380円 | 14% |
| マカロニサラダ | 90g | 60円 | 350円 | 17% |
フード単体で見ると原価率12〜23%。優秀に見えます。
でもこの数字は**「標準量を守った場合」**の話です。
原価が崩れる4つの原因
1. 盛り付けが毎回違う
立ち飲みの小皿は、忙しい時間帯にスタッフが感覚で盛ります。ポテサラ80gのつもりが100gになっていたら、原価は65円→81円。売価は同じ380円なので、原価率は17%→21%。
1品で4ポイントのズレ。 これが20種類のメニューでランダムに起きていると思ってください。
対策は単純です。小鉢のサイズを統一して、「この鉢に8分目」というルールにする。計量は毎回やる必要はなく、小鉢を決めれば自動的にブレが小さくなります。
2. ドリンク注文率が低い
立ち飲みは「ちょっと1杯」のつもりで来る客が多い。でもフードだけ食べてドリンクを1杯しか頼まない客が増えると、利益構造が崩れます。
ドリンクの原価率は低い:
| ドリンク | 原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| 生ビール(中) | 120円 | 450円 | 27% |
| ハイボール | 45円 | 380円 | 12% |
| レモンサワー | 50円 | 380円 | 13% |
| 日本酒(1合) | 150円 | 500円 | 30% |
| ウーロンハイ | 35円 | 350円 | 10% |
ハイボール1杯で335円の粗利。ポテサラ1皿で315円の粗利。金額はほとんど同じですが、ドリンクの方が提供に手間がかからない。
ドリンク売上比率が50%と65%では、全体の利益率が5〜8ポイント変わります。
3. サイドメニューの原価が見えていない
「お通し代わり」に出している漬物やナッツ。無料で出していませんか?
枝豆100g=40円、柿ピー50g=30円。無料提供していると、1日100人で月に10〜21万円の原価です。300円のお通しとして出すか、メニューに載せるか。「無料」は利益を確実に削ります。
4. 廃棄が多い
小皿メニューは作り置きが多い。煮込み、ポテサラ、マカロニサラダ——仕込んだものが売れ残ると、そのまま廃棄です。
仕込み量を曜日別に記録して、過去4週の同じ曜日の平均で決めるのが基本です。金曜に50食仕込んで月曜にも同じ量を仕込んでいたら、廃棄は避けられません。
ドリンク比率を上げる5つの工夫
1. 1杯目を安くする
ハッピーアワーではなく、全時間帯で1杯目だけ50円引きにする方法。来店直後の注文ハードルが下がります。
2. ドリンクのおかわり声かけ
グラスが空いたら「次どうされますか?」の一言。これだけで平均注文杯数が0.3〜0.5杯増えるという飲食業のセオリーがあります。
3. フードとドリンクのペアリング提案
メニュー表やPOPに「もつ煮込みにはハイボールが合います」のような一言を添える。選択肢を減らしてあげると注文が早くなり、ドリンク追加率も上がります。
4. ドリンクのバリエーションを増やす
レモンサワーだけでなく、グレープフルーツサワー、梅サワー、ライムサワー。原価はほぼ同じで、選ぶ楽しさが増える。
5. ボトルキープ制度を導入する
常連客向けにボトルキープを用意すると、来店頻度とドリンク注文率の両方が上がります。焼酎やウイスキーのボトル原価率は20〜25%程度で利益率も良い。
セット提案で客単価を上げる
値上げが難しい立ち飲みでは、セットで客単価を上げるのが現実的です。
セット例
| セット内容 | 単品合計 | セット価格 | 割引率 | 実質原価率 |
|---|---|---|---|---|
| ドリンク1杯 + 小皿2品 | 1,130円 | 1,000円 | 12% | 18% |
| ドリンク2杯 + 小皿3品 | 2,120円 | 1,800円 | 15% | 17% |
| ドリンク3杯 + 小皿2品 | 1,840円 | 1,500円 | 18% | 15% |
セットに含まれるドリンクの比率が高いほど、全体の原価率は下がります。
「セットを頼んだ方が得」と感じてもらえば、客単価は単品注文より150〜300円上がります。月間でいえば、100人/日 × 200円アップ × 25日 = 月50万円の売上増。原価率は下がっているので、利益はそれ以上に増えます。
回転率の管理
立ち飲みの強みは回転率です。でも「回転率が良い」とは具体的に何を指すのか。
回転率の測り方
1時間あたり客数 = 1時間の来店数 ÷ 立ち飲みスペース数
10人分のスペースで1時間に15人来店なら、回転率は1.5。目安として、ピーク時間帯で2.0以上あると利益が安定します。
回転率が落ちるサイン
- 常連客の滞在時間が90分を超えている
- 食事目的の客が増えている(ドリンクなし)
- ピーク時間帯に「満席で入れない」が頻発
対策として、メニューに「お一人様90分制」を記載するのが一番角が立ちません。声をかけるのはスタッフの負担になるので、ルールとして掲示する方が自然です。
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:25日
- 1日の平均客数:80人
- 客単価:1,500円
月間売上 = 80人 × 1,500円 × 25日 = 3,000,000円
ドリンク比率60%の場合:
ドリンク売上 = 1,800,000円(原価率15%)→ 原価 270,000円
フード売上 = 1,200,000円(原価率28%)→ 原価 336,000円
合計原価 = 606,000円
全体原価率 = 20.2%
ドリンク比率45%の場合:
ドリンク売上 = 1,350,000円(原価率15%)→ 原価 202,500円
フード売上 = 1,650,000円(原価率28%)→ 原価 462,000円
合計原価 = 664,500円
全体原価率 = 22.2%
ドリンク比率が15ポイント変わるだけで、月の原価が58,500円変わります。年間70万円以上の差。
今週やること
- 小皿ごとに「この小鉢に8分目」のルールを決める
- ドリンク売上比率を先週のPOSデータで確認する(目標60%以上)
- 無料提供しているもの(お通し・漬物)をリストアップする
- フード+ドリンクのセットを1つ試験導入する
- 曜日別の仕込み量を過去4週分で確認し、適正量に調整する
関連ガイド
小皿ごとの原価を登録すれば、フード全体の利益率がひと目で分かります。ドリンクとフードのバランスも数字で確認できる。KitchenCost は無料で使えます。