餃子専門店は「低原価・高回転」で利益を出す業態です。
原価率は25%前後。ラーメンの30〜35%、牛丼の38〜40%に比べれば圧倒的に低い。1皿の原価が100円前後なのに、420〜500円で売れる。数字だけ見れば儲かりそうに見えます。
でも実際には「思ったほど利益が残らない」と感じる店主は多い。
原因は餡のグラム管理です。
餃子の原価で最も大きいのは皮ではなく餡。豚ひき肉とキャベツ・ニラ・生姜で作る餡は、1個あたりの量が12gと15gでは原価が2〜3円違います。たった3円。でも1日300個売れば900円、月に22,500円、年間27万円。「たった3g」が年間27万円の差になります。
さらに、焼き・水・揚げで原価構造が変わります。焼き餃子と揚げ餃子では油のコストが全然違う。水餃子はスープのコストが加わる。同じ「餃子」でも、調理法ごとに原価を分けて管理しないと、どのメニューが利益を出しているのか見えなくなります。
先に結論
- 餃子の原価は**餡が50〜60%**を占める。皮より餡の管理が重要
- 餡1個あたりのグラムを固定する(12〜15gが標準的)
- 焼き・水・揚げで原価率が異なる。それぞれ別で管理する
- プレミアム餃子(海鮮・黒豚)は原価率が高いが、粗利額で補う
- サイドメニュー(ビール・ご飯もの)で客単価を上げるのが利益の鍵
焼き餃子1皿の原価を分解する
例:焼き餃子6個(税抜420円)
| 項目 | 内訳 | 原価 |
|---|---|---|
| 皮(市販) | 6枚 | 24円 |
| 餡:豚ひき肉 | 50g(6個分) | 40円 |
| 餡:キャベツ | 30g | 6円 |
| 餡:ニラ | 10g | 5円 |
| 餡:生姜・にんにく・調味料 | 一式 | 8円 |
| 焼き油 | 8ml | 5円 |
| タレ(醤油・酢・ラー油) | 1皿分 | 5円 |
| 合計 | 93円 |
原価率:93 ÷ 420 = 22.1%
※ 豚ひき肉は100gあたり80円(業務用)で計算。数字は目安です。
22%は飲食店としてはかなり優秀な数字です。ただし、これはすべての材料をきっちり計量した場合の話。実際の現場では餡の量がブレやすく、原価率が5ポイント以上動くことがあります。
調理法別の原価比較
同じ餡・同じ皮でも、調理法で原価は変わります。
焼き餃子 vs 水餃子 vs 揚げ餃子(6個あたり)
| 項目 | 焼き餃子 | 水餃子 | 揚げ餃子 |
|---|---|---|---|
| 皮 | 24円 | 24円 | 24円 |
| 餡 | 59円 | 59円 | 59円 |
| 油 | 5円 | 0円 | 18円 |
| スープ・タレ | 5円 | 12円 | 5円 |
| 合計 | 93円 | 95円 | 106円 |
| 売価 | 420円 | 450円 | 450円 |
| 原価率 | 22.1% | 21.1% | 23.6% |
揚げ餃子は油の吸収量が多い。 焼き餃子はフライパンに薄く敷くだけですが、揚げ餃子は餃子全体が油に浸かるので、1皿あたりの油コストが3〜4倍になります。
水餃子は油を使わないぶん原価が低く見えますが、スープで提供する場合はスープの原価(鶏ガラ・ネギなど)が加わります。タレだけで食べる水餃子なら、3種の中で最も原価が低い。
それぞれの利益特性
- 焼き餃子:回転が早い。提供スピードが速く、客数で稼ぐ
- 水餃子:客単価が上がりやすい。スープ仕立てにすると「1品」として成立する
- 揚げ餃子:ビールとの相性で注文率が高い。おつまみポジションで客単価に貢献
3種すべてをメニューに載せている店は、それぞれの原価率を別々に管理してください。「餃子」でひとくくりにすると、どの餃子が利益を出しているのか分からなくなります。
餡のグラム管理——利益の8割はここで決まる
餡の量と原価の関係(1個あたり)
| 餡の量 | 1個の餡原価 | 6個の餡原価 | 6個の合計原価 | 420円での原価率 |
|---|---|---|---|---|
| 10g | 8.3円 | 50円 | 84円 | 20.0% |
| 12g | 9.9円 | 59円 | 93円 | 22.1% |
| 15g | 12.4円 | 75円 | 109円 | 25.9% |
| 18g | 14.9円 | 90円 | 124円 | 29.5% |
| 20g | 16.6円 | 99円 | 133円 | 31.7% |
12gと18gの差は1個あたり5円。6個で30円。1日50皿(300個)で1,500円/日。月37,500円、年間45万円の差。
「ちょっと多めに入れておこう」という善意が、年間45万円のコストになります。
餡の量を安定させる方法
1. 仕込み時に計量する
餡を作ったら、全量を計量してから個数分に分ける。
例:餡の総量3,600g → 1個12g → 300個分
3,600 ÷ 12 = 300個
包む前に「餡が余る」か「足りなくなる」かで、ブレを検知できます。餡が余ったら、包むときに多めに入れている人がいない。足りなくなったら、誰かが多めに入れています。
2. スプーンを統一する
計量スプーンで「すりきり1杯=12g」になるサイズを見つけて、全スタッフで統一します。ひとつひとつスケールで計量するのは現実的ではないので、スプーンのサイズで管理するのが現場向きです。
3. 肉と野菜の比率を固定する
餡の原価は「肉の比率」で大きく変わります。
| 肉:野菜 | 餡12gの原価 | 特徴 |
|---|---|---|
| 4:6 | 8.5円 | さっぱり。野菜多めでヘルシー |
| 5:5 | 9.9円 | バランス型。一般的 |
| 6:4 | 11.3円 | ジューシー。肉感あり |
| 7:3 | 12.7円 | 肉餃子。原価高め |
肉比率を60%から50%に下げると、1個あたり1.4円の原価削減。1日300個で月10,500円。ただし味のバランスが変わるので、野菜の旨味を引き出す下処理(塩揉みで水分を出す)が必要です。
皮のコスト——自家製 vs 市販
コスト比較
| 項目 | 自家製 | 市販(業務用) |
|---|---|---|
| 1個あたり | 2〜3円 | 4〜6円 |
| 6個あたり | 12〜18円 | 24〜36円 |
| 300個/日の月間コスト | 15,000〜22,500円 | 30,000〜45,000円 |
| 差額(月) | — | +15,000〜22,500円 |
自家製にすると月15,000〜22,500円の節約になります。
ただし自家製にはコストがある
- 製麺機の初期投資:小型で15〜30万円
- 作業時間:300個分の皮を作るのに1〜2時間
- スキルの問題:厚みが均一でないと焼きムラが出る
1日500個以上売る店なら自家製のメリットが大きいです。300個以下なら市販のほうが、作業時間を考えると総合コストは同じか、むしろ安い場合もあります。
市販皮を使う場合のコスト削減:
- ケース買い(100枚×30袋など)で1枚あたり1〜2円安くなる
- 冷凍皮のほうが冷蔵皮より安い(品質は若干落ちるが焼き餃子なら問題なし)
油の原価——見落とされがちだが積み重なる
焼き油のコスト
焼き餃子の油は「フライパンに薄く敷く分」と「蒸し焼き用の水」で構成されます。
| 項目 | 1皿あたり |
|---|---|
| サラダ油(敷き油) | 3〜5円 |
| ごま油(仕上げ) | 2〜3円 |
| 小麦粉水(羽根つき用) | 2〜3円 |
| 合計 | 7〜11円 |
1日50皿で月8,750〜13,750円。
揚げ油の管理
揚げ餃子の場合は、油の交換サイクルが原価に直結します。
フライヤー油量:5L = 約850円
交換頻度:3日に1回
月の油代 = 850 × 10回 = 8,500円
1日50皿 × 25日 = 1,250皿/月
1皿あたりの油代 = 8,500 ÷ 1,250 = 約7円
これに1皿あたりの吸収油(11〜15円)を加えると、揚げ餃子は1皿18〜22円の油コストがかかります。
油の劣化を遅らせるコツ:
- パン粉や小麦粉のカスをこまめに除去する
- 営業後にフィルターで濾す
- 温度を180℃以上に上げすぎない
プレミアム餃子で客単価を上げる
3段階の価格構成
| ランク | メニュー例 | 原価 | 売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|---|
| 定番 | 焼き餃子6個 | 93円 | 420円 | 22% | 327円 |
| 中間 | チーズ餃子6個 | 115円 | 520円 | 22% | 405円 |
| プレミアム | 海鮮餃子6個 | 165円 | 620円 | 27% | 455円 |
プレミアム餃子は原価率が高くなりますが、粗利の額は大きい。定番の327円に対して、海鮮は455円。1皿売るごとに128円多く残ります。
プレミアム餃子の餡原価
| 種類 | 餡の主材料 | 餡12gの原価 | 6個分 |
|---|---|---|---|
| 定番(豚肉) | 豚ひき肉+キャベツ | 9.9円 | 59円 |
| チーズ | 豚ひき肉+モッツァレラ | 13.5円 | 81円 |
| しそ | 豚ひき肉+大葉 | 11.2円 | 67円 |
| 海鮮 | えび+ホタテ+豚少量 | 19.8円 | 119円 |
| 黒豚 | 黒豚ひき肉+ニラ | 16.5円 | 99円 |
「しそ餃子」は原価率が低く、差別化しやすいメニューです。大葉は1枚2〜3円で、見た目と香りのインパクトが大きい。SNS映えもするので、プレミアムとして+80〜100円の価格が通りやすい。
サイドメニューで利益を作る
餃子専門店の客単価は、餃子だけだと500〜700円。これにサイドメニューを加えて800〜1,200円に引き上げるのが利益の構造です。
サイドメニューの原価率
| メニュー | 原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| 生ビール | 100〜130円 | 500円 | 20〜26% |
| ハイボール | 50〜70円 | 400円 | 13〜18% |
| ライス | 20〜30円 | 150円 | 13〜20% |
| 杏仁豆腐 | 25〜35円 | 300円 | 8〜12% |
| 枝豆 | 30〜40円 | 300円 | 10〜13% |
| 半チャーハン | 60〜80円 | 380円 | 16〜21% |
ドリンク(特にアルコール)の原価率は圧倒的に低い。 餃子+ビールの組み合わせは、客単価を上げながら全体の原価率を下げます。
ドリンク率を上げるには
- 餃子を注文すると生ビール100円引き——のようなセット割引
- テーブルにドリンクメニューを置く(餃子メニューと分離すると注文されにくい)
- テイクアウト比率が高い店はドリンクに頼れないので、炒飯・唐揚げなどのサイドで補う
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:25日
- 1日の平均皿数:50皿(300個)
- 平均客単価:900円(餃子+サイド+ドリンク)
月間売上 = 客数55人 × 900円 × 25日 = 1,237,500円
原価率25%の場合(餡管理◎・ドリンク率高い):
原価 = 309,375円
粗利 = 928,125円
原価率32%の場合(餡ブレ・サイド弱い):
原価 = 396,000円
粗利 = 841,500円
差額 = 86,625円/月 = 年間約104万円
原価率7ポイントの差が、年間100万円以上の利益差になります。
原価が崩れる5つの原因と対策
1. 餡の量がスタッフで違う
対策: 計量スプーンを統一。仕込み時に総量÷個数で検算。
2. 肉比率が日によって変わる
対策: レシピカードに肉:野菜=5:5と明記。仕込み前に材料を計量。
3. 油の交換が遅い
対策: 交換ルールを決める(揚げ油:3日、焼き油:毎日清掃)。劣化した油は風味を落とし、クレームの原因にもなる。
4. 包装資材を計算に入れていない(テイクアウト店)
テイクアウト比率が高い店は、容器代が1皿20〜40円かかります。 対策: 包装資材を原価に含めて計算する。
5. 仕込みすぎて廃棄が出る
包んだ餃子は冷蔵で1日、冷凍なら2〜3週間保存できます。 対策: 当日売り切れなかった分は冷凍ストック。翌日以降に提供するか、まかないに回す。
今週やること
- 餡1個あたりのグラム数を決め、計量スプーンを用意する
- 肉と野菜の比率をレシピカードに明記する
- 焼き・水・揚げそれぞれの1皿原価を計算する
- プレミアム餃子を1種類メニューに追加して粗利額を上げる
- ドリンク・サイドメニューの原価率を確認し、セット提案を強化する
- 油の交換ルールと購入ロットを見直す
関連ガイド
皮・餡・油・タレを登録すれば、餃子1皿の原価が自動で出ます。焼き・水・揚げの原価率比較もひと目で。KitchenCost は無料で使えます。