要点まとめ
- チキンカレーの原価率は18%前後。カレー屋の最高利益メニュー
- スパイス自体の原価は1人前15〜30円。原価の大部分は玉ねぎ・トマト・肉
- 2種盛り+副菜で客単価1,200円以上。見た目の豪華さと利益率を両立
- ワンオペ可能な業態。人件費率10〜15%で営業利益率15%以上も実現可能
カレーライス1皿の材料費は約180〜300円。販売価格800円なら原価率は23〜38%——メニューの作り方次第で利益が2倍以上変わる業態です。
カレー屋は「大量仕込み」「スパイスの低原価」「シンプルなオペレーション」の3つが揃う、飲食業の中でも開業しやすいビジネスモデル。しかし、2025〜2026年の食材価格高騰で、安易な価格設定では利益が残りません。
カレー屋の原価構造——他業態との比較
カレー屋は「まとめ調理」が最大の強みです。1バッチで20〜50食分を一度に仕込めるため、1食あたりのコストを極限まで下げられます。
| 指標 | カレー屋 | ラーメン店 | うどん屋 | カフェ |
|---|---|---|---|---|
| 原価率(F) | 25〜35% | 30〜35% | 25〜30% | 25〜30% |
| 人件費率(L) | 20〜30% | 20〜28% | 25〜35% | 25〜30% |
| FL比率 | 48〜58% | 55〜63% | 50〜60% | 50〜58% |
| 客単価 | 700〜1,200円 | 800〜1,200円 | 500〜900円 | 800〜1,500円 |
| 営業利益率 | 8〜15% | 8〜15% | 5〜10% | 8〜15% |
カレー屋のアドバンテージ:
- 少人数オペレーション — 仕込みは1人、提供はライスを盛ってルーをかけるだけ
- ワンオペ可能 — カウンター10席ならオーナー1人で回せる
- 在庫リスクが低い — カレーは2〜3日保存可能。当日廃棄のリスクが少ない
- 原価のスケールメリット — 大量仕込みで1食あたりコストが下がる
カレー1皿の原価はいくら?
全体像:ビーフカレー(売価 900円)の場合
| 要素 | 原価目安 | 割合 |
|---|---|---|
| ルー(カレーソース) | 80〜150円 | 材料費の40〜50% |
| ライス(200g) | 40〜55円 | 材料費の20〜25% |
| 具材(肉・野菜) | 60〜120円 | 材料費の25〜40% |
| 付け合わせ | 5〜15円 | 材料費の3〜5% |
| 合計 | 185〜340円 | |
| 原価率 | 21〜38% |
具材に何を使うかで原価率が大きく変動します。
カレールー(ソース)の原価
スタイル別の原価比較(1人前あたり)
| スタイル | 主な材料 | 1人前原価 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 欧風カレー | バター・小麦粉・市販ルー・ブイヨン | 50〜80円 | ルーを使えば簡単、コスト安定 |
| スパイスカレー | 玉ねぎ・トマト・スパイス10〜15種 | 60〜100円 | スパイス自体は安い、玉ねぎ大量使用 |
| インドカレー | スパイス・ギー・トマト・ヨーグルト | 70〜110円 | ギー(澄ましバター)がコスト要因 |
| グリーンカレー | ココナッツミルク・グリーンカレーペースト | 80〜120円 | ココナッツミルクが原価を押し上げ |
| キーマカレー | 挽き肉・玉ねぎ・トマト・スパイス | 90〜140円 | 肉の量が多い分、原価高め |
スパイスカレーの材料費内訳(20人前バッチ)
| 材料 | 使用量 | 原価 | 1人前あたり |
|---|---|---|---|
| 玉ねぎ | 3kg | 300〜450円 | 15〜23円 |
| トマト缶(400g) | 3缶 | 240〜360円 | 12〜18円 |
| 油(サラダ油orギー) | 200ml | 40〜100円 | 2〜5円 |
| にんにく | 100g | 50〜80円 | 3〜4円 |
| 生姜 | 80g | 30〜50円 | 2〜3円 |
| ターメリック | 30g | 30〜50円 | 2〜3円 |
| クミン | 20g | 40〜60円 | 2〜3円 |
| コリアンダー | 20g | 40〜60円 | 2〜3円 |
| チリパウダー | 10g | 20〜30円 | 1〜2円 |
| ガラムマサラ | 15g | 40〜60円 | 2〜3円 |
| 塩 | 40g | 5円 | 1円未満 |
| その他スパイス | 適量 | 100〜200円 | 5〜10円 |
| 合計 | 935〜1,500円 | 47〜75円 |
ポイント: スパイスそのものの原価は非常に安く、1人前あたり15〜30円。原価の大部分は玉ねぎとトマトが占めています。玉ねぎは飴色になるまで炒めるため、生の状態から重量が1/3〜1/4になる「歩留まり」を考慮する必要があります。
ライスの原価
| ライスの量 | 使用米の原価 | 炊飯後の重量換算 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 普通盛り(200g) | 40〜55円 | 白米約85g分 | 標準的なカレーライスの量 |
| 大盛り(300g) | 60〜80円 | 白米約128g分 | +100〜150円で提供可能 |
| 少なめ(150g) | 30〜40円 | 白米約64g分 | ダイエット需要 |
| ナン(1枚) | 20〜35円 | 小麦粉100g分 | ライスより低原価 |
ライスのコスト管理:
- 2025〜2026年の米価高騰で、10kgあたり5,000〜6,500円(前年比20〜30%増)
- ターメリックライスにすれば「カレー専門店感」を出しつつ、コストはターメリック代の+2〜3円のみ
- ナン提供ならライスより原価が安く、「インドカレー」としてのブランディングにもなる
具材別の原価
メイン具材の原価比較
| 具材 | 1人前使用量 | 原価 | 原価率への影響 |
|---|---|---|---|
| 鶏もも肉 | 80g | 25〜40円 | 低め。チキンカレーが最も利益率が高い |
| 鶏むね肉 | 80g | 15〜25円 | 最安。タンドリーチキン風にアレンジ可 |
| 豚バラ肉 | 60g | 30〜45円 | ポークカレーの定番 |
| 牛すじ肉 | 60g | 35〜50円 | 長時間煮込み必要だが、安価で濃厚 |
| 牛切り落とし | 60g | 50〜80円 | ビーフカレーの定番。原価高め |
| 国産牛(シチュー用) | 80g | 80〜130円 | 高級路線。価格設定1,200円以上必要 |
| エビ | 3〜4尾 | 60〜100円 | シーフードカレーの主役 |
| 挽き肉(合挽き) | 80g | 30〜45円 | キーマカレー用。コスト安定 |
| 野菜のみ | じゃがいも・にんじん・ナス等 | 20〜40円 | ベジタブルカレーは原価率最安 |
利益率ランキング:
- 🥇 野菜カレー — 具材原価20〜40円で原価率15〜25%
- 🥈 チキンカレー — 鶏肉の安定した低価格で原価率20〜30%
- 🥉 キーマカレー — 挽き肉で肉感を出しつつ原価を抑制
人気メニュー別の原価シミュレーション
1. チキンカレー(売価 850円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| ルー(スパイスベース) | 65円 |
| ライス(200g) | 50円 |
| 鶏もも肉(80g) | 35円 |
| 福神漬け・らっきょう | 5円 |
| 合計 | 155円 |
| 原価率 | 18.2% |
→ カレー屋のドル箱メニュー。800〜900円の価格帯で最も利益が出る。
2. ビーフカレー(売価 1,000円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| ルー(欧風ベース) | 75円 |
| ライス(200g) | 50円 |
| 牛切り落とし(60g) | 65円 |
| 福神漬け | 5円 |
| 合計 | 195円 |
| 原価率 | 19.5% |
→ 牛肉使用でも1,000円設定なら原価率20%以下を維持。「国産牛使用」なら1,200〜1,500円も可能。
3. スパイスカレー2種盛り(売価 1,200円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| チキンカレー(ハーフ) | 50円 |
| 豆カレー(ハーフ) | 35円 |
| ライス(200g) | 50円 |
| 副菜3種(アチャール等) | 30円 |
| パパド | 10円 |
| 合計 | 175円 |
| 原価率 | 14.6% |
→ 2種盛り+副菜は見た目の豪華さに対して原価が極めて低い。SNS映えで集客効果も。
4. カツカレー(売価 1,100円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| ルー(欧風ベース) | 75円 |
| ライス(200g) | 50円 |
| とんかつ(豚ロース100g) | 80〜100円 |
| パン粉・卵・油 | 15円 |
| キャベツ | 5円 |
| 合計 | 225〜245円 |
| 原価率 | 20.5〜22.3% |
→ カツカレーは客単価が高く、1,000円超でも受け入れられやすい。フライヤーが必要な点に注意。
5. バターチキンカレー(売価 950円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| トマトベースのルー | 55円 |
| バター | 20円 |
| 生クリーム | 25円 |
| 鶏もも肉(80g) | 35円 |
| ナン(1枚) | 25円 |
| 合計 | 160円 |
| 原価率 | 16.8% |
→ バターと生クリームのコストが加わるが、ナン提供で「インドカレー体験」の付加価値を演出。原価率は依然として低い。
サイドメニュー・トッピングの利益貢献
カレー屋の利益を最大化するのはトッピングとサイドメニューです。
トッピングの原価と利益
| トッピング | 売価 | 原価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| チーズ(30g) | 150円 | 20〜30円 | 13〜20% | 120〜130円 |
| 温泉卵 | 100円 | 15〜20円 | 15〜20% | 80〜85円 |
| ほうれん草 | 100円 | 10〜15円 | 10〜15% | 85〜90円 |
| コロッケ | 150円 | 25〜35円 | 17〜23% | 115〜125円 |
| 唐揚げ(3個) | 200円 | 40〜50円 | 20〜25% | 150〜160円 |
| チキンティッカ | 200円 | 35〜50円 | 18〜25% | 150〜165円 |
| 辛さ増し | 50円 | 3〜5円 | 6〜10% | 45〜47円 |
| 大盛りライス | 100円 | 20〜25円 | 20〜25% | 75〜80円 |
利益貢献トップ3:
- 辛さ増し — スパイスを足すだけで原価3〜5円。粗利率95%超
- チーズ — チーズカレーは人気メニュー。トッピング率30%以上も
- ほうれん草 — 冷凍ほうれん草を使えば原価10円で100円の売価
サイドメニューの原価
| メニュー | 売価 | 原価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| ラッシー | 350円 | 40〜60円 | 11〜17% | 290〜310円 |
| チャイ | 300円 | 20〜35円 | 7〜12% | 265〜280円 |
| サラダ | 250円 | 30〜50円 | 12〜20% | 200〜220円 |
| ナン(追加) | 200円 | 25〜35円 | 13〜18% | 165〜175円 |
| タンドリーチキン | 400円 | 60〜80円 | 15〜20% | 320〜340円 |
ドリンク戦略: ラッシーやチャイは原価が極めて低く、客単価+300〜400円の効果があります。カレーとの相性が良いため注文率も高い。
カレー屋のスタイル別経営比較
3つの経営モデル
| 項目 | 欧風カレー店 | スパイスカレー店 | インドカレー店 |
|---|---|---|---|
| 客単価 | 800〜1,200円 | 1,000〜1,500円 | 800〜1,300円 |
| 原価率 | 28〜35% | 22〜30% | 25〜32% |
| 人件費率 | 25〜30% | 20〜28% | 22〜28% |
| メニュー数 | 5〜10種 | 3〜5種(日替わり) | 10〜20種 |
| 調理難易度 | 中 | 高(スパイス知識) | 高(タンドール等) |
| 設備投資 | 低 | 低〜中 | 中〜高(ナン窯) |
| ターゲット | サラリーマン | 20〜30代女性 | ファミリー・グループ |
| SNS効果 | 低 | 高 | 中 |
スパイスカレー店の強み
2020年代にブームが到来したスパイスカレーは、以下の理由でカレー業態の中で最も利益率が高い傾向にあります:
- 原価率が低い — スパイスの材料費は1人前15〜30円
- 少量多品種 — 2〜3種盛りで客単価1,200〜1,500円が取れる
- SNS映え — 彩り豊かな盛り付けが無料の広告になる
- 日替わりで飽きさせない — 「今日のカレー」はリピート率向上に効果的
- 小スペースで開業可能 — カウンター8席からスタートできる
FLコストと収益構造
カレー屋のFLR比率
| コスト | 理想 | ワンオペ型 | チーム型 |
|---|---|---|---|
| F(食材費) | 30%以下 | 25〜30% | 28〜35% |
| L(人件費) | 30%以下 | 10〜15%(オーナーのみ) | 25〜30% |
| R(家賃) | 10%以下 | 8〜12% | 8〜12% |
| 合計(FLR) | 70%以下 | 45〜55% | 62〜72% |
ワンオペの威力: カレー屋はワンオペが成立しやすい業態です。仕込みを朝1〜2時間で終わらせ、ランチタイムは「盛る→出す→会計」のシンプルなオペレーション。人件費率が10〜15%になれば、営業利益率15〜20%も夢ではありません。
損益分岐点の計算例
【モデル:カウンター10席・月額家賃12万円のスパイスカレー店】
固定費(月額):
- 家賃:12万円
- 水道光熱費:5万円
- その他経費:3万円
- 合計:20万円
変動費率:食材原価率 28%
損益分岐売上 = 固定費 ÷(1 - 変動費率)
= 200,000 ÷ 0.72
= 278,000円/月(約28万円)
→ 客単価1,100円 × 1日10人 × 26日営業 = 286,000円
つまり、1日平均10食(ランチだけ)で損益分岐をクリア。
※ワンオペの場合の計算(オーナー給与は利益から)
原価を下げる7つの実践テクニック
1. 大量仕込みでスケールメリットを最大化
カレーは20〜50食分をまとめて作れる。1バッチ50食なら、1食あたりの光熱費・手間が1/50に分散されます。
2. 冷凍ストックで廃棄ゼロを目指す
余ったカレーは小分け冷凍。翌日・翌々日に解凍して提供できるため、廃棄ロスをほぼゼロにできます。
3. ベースカレーを共通化する
チキン・ポーク・キーマに共通の「ベースソース」を仕込み、そこから派生させる。材料のムダが減り、仕込み時間も短縮。
4. スパイスはホールで大量購入
スパイスはホール(原型)のまま500g〜1kg単位で購入すれば、小袋の1/3〜1/5の単価に。保存も利くため在庫管理が容易です。
5. 付け合わせで「お得感」を演出
アチャール(漬物)、パパド(薄焼きせんべい)、ラッサム(スープ)——いずれも原価10円以下で「本格感」を演出できます。
6. ライスを選択制にする
「普通盛り(無料)+大盛り+100円+少なめ-50円」——ライスの量をコントロールするだけで、食材ロスと利益率を同時に改善。
7. ドリンクセットで客単価アップ
「カレー+ラッシーセット +250円」のように、カレーとの相性が良いドリンクをセットにして客単価を+200〜350円引き上げる。
開業コストの目安
| 項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 100〜300万円 | 小規模店なら保証金込み |
| 内装工事費 | 100〜300万円 | カウンターのみなら100万円台 |
| 厨房機器 | 50〜200万円 | タンドール窯ありなら上限近く |
| 食器・備品 | 20〜50万円 | |
| 運転資金(3ヶ月分) | 100〜200万円 | |
| 合計 | 370〜1,050万円 |
スパイスカレー店なら400万円台で開業可能。 タンドール窯が不要で、カウンター8〜10席のコンパクトな店舗設計ができるためです。
カレー屋の原価管理にアプリを活用する
カレーは「ベースルー→派生メニュー」という構造が特徴的で、原価管理にはレシピの入れ子構造への対応が不可欠です。
原価計算アプリ**KitchenCost**を使えば:
- 「ベースカレーソース」を**反制品(半製品)**として登録し、各メニューに共通部品として組み込める
- チキンカレー・ビーフカレー・キーマカレーそれぞれの原価を自動計算
- スパイスやトマト缶の仕入れ価格が変わったら、全メニューの原価が一括更新
- ロス率(歩留まり)を考慮した正確な原価——玉ねぎの飴色炒め後の重量変化も反映
- トッピング・セットメニューの原価もワンタップで確認
特にカレー屋のように「ベースソース→派生」のレシピ構造を持つ業態では、反制品機能による一元管理が経営効率を大幅に改善します。
まとめ
カレー屋の原価管理は、「まとめ仕込み」と「メニュー戦略」の2つが利益の源泉です。
- チキンカレーの原価率は18%前後 — カレー屋の最高利益メニュー
- スパイス自体の原価は1人前15〜30円 — 原価の大部分は玉ねぎ・トマト・肉
- 2種盛り+副菜で客単価1,200円以上 — 見た目の豪華さと利益率を両立
- トッピングの利益率が極めて高い — チーズ・辛さ増し・温泉卵が「隠れた利益源泉」
- ワンオペ可能な業態 — 人件費率10〜15%で営業利益率15%以上も実現可能
- ベースソースの共通化でコスト削減と品質安定を同時達成
「安い材料で美味しいものを作り、見た目の価値で高く売る」——それがカレー屋経営の成功方程式です。
今すぐやること
- ベースカレーソースの1人前あたり原価を計算する
- チキン・ビーフ・キーマの原価率を比較する
- トッピング(チーズ・辛さ増し・温泉卵)の原価と売価を設定する
- ラッシーやチャイのセット販売で客単価+300円を目指す
関連ガイド:
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