「コーヒー豆1kgで50杯、1杯あたり60円…300円で売れば240円の利益!」
カフェを開こうと思ったとき、誰でもこういう計算をします。数字の上ではすごく儲かる。でも実際にお店を始めると、「あれ、思ったより残らない」となるのがカフェの現実です。
なぜかというと、コーヒー豆の原価しか見ていないからです。
2025年の飲食店倒産は1,002件で過去最多、初の1,000件超えです(帝国データバンク調べ)。倒産の88.4%が資本金1千万円未満の小規模店。コーヒー豆のアラビカ種は国際相場が前年比80%以上上昇し、飲食店の96.0%が仕入れ価格の上昇に直面しています。一方で、コンビニコーヒー(100〜200円台)や大手チェーンとの競合があるため、簡単には値上げできない——そんな板挟みの状態です。
だからこそ、1杯の「本当の原価」を正確に把握することが、カフェの生き残りに直結します。
要点まとめ
- アメリカーノの本当の原価は約110円(55円ではない)
- カフェの適正原価率は25〜35%
- 容器・カード手数料・ロスまで計算に含める
- 代替ミルクには50円以上の追加料金が必要
よくある「間違った原価計算」
やりがちな計算
コーヒー豆1kg = 3,000円
1杯に18g使用
→ 約55杯 = 1杯あたり約55円
300円で販売
→ 245円の利益!
この計算が間違っている理由を、ひとつずつ見ていきます。
- ミルク、シロップ、カップ、フタ、ストローが入っていない
- クレジットカード手数料(3〜4%)が入っていない
- こぼした分、古くなった豆、作り直しの分が入っていない
- 設備の減価償却費が入っていない
「豆代」だけで計算するのは、食材費だけで料理の原価を出すようなものです。実際に1杯を提供するために必要な「全部のコスト」を足していくと、原価はかなり変わります。
本当の原価を計算してみる——アメリカーノの場合
直接材料費
| 項目 | 使用量 | 単価 | 原価 |
|---|---|---|---|
| コーヒー豆 | 18g | 3円/g | 54円 |
| 浄水 | 200ml | 0.05円/ml | 10円 |
| テイクアウトカップ | 1個 | 15円 | 15円 |
| フタ | 1個 | 8円 | 8円 |
| ストロー | 1本 | 3円 | 3円 |
| スリーブ | 1個 | 5円 | 5円 |
| 小計 | 95円 |
見えにくいコストを足す
| 項目 | コスト |
|---|---|
| 直接材料費 | 95円 |
| カード手数料(3.5%) | 11円 |
| 豆のロス(5%) | 3円 |
| 実際の原価 | 約110円 |
300円のアメリカーノの原価率は約37%。
「豆代55円」だけで計算した場合と、倍近い差があります。この差に気づいていないと、「売上は順調なのに、なぜか残らない」という状態になります。
人気メニューの原価を比べてみる
カフェラテ(販売価格450円の場合)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| エスプレッソ | 54円 |
| ミルク 200ml | 40円 |
| カップ/フタ/スリーブ | 28円 |
| カード手数料 | 16円 |
| 合計 | 138円 |
原価率: 31% — 適正範囲です。
バニララテ(販売価格550円の場合)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| エスプレッソ | 54円 |
| ミルク 180ml | 36円 |
| バニラシロップ 20ml | 30円 |
| カップ/フタ/スリーブ | 28円 |
| カード手数料 | 19円 |
| 合計 | 167円 |
原価率: 30% — カフェラテとほぼ同じ。シロップが追加されるぶん販売価格を上げているので、原価率はちゃんと維持できています。
ストロベリースムージー(販売価格600円の場合)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 冷凍いちご 100g | 120円 |
| ミルク 100ml | 20円 |
| ヨーグルト 50g | 40円 |
| 砂糖/氷 | 10円 |
| カップ/フタ | 23円 |
| カード手数料 | 21円 |
| 合計 | 234円 |
原価率: 39% — やや高め。フルーツ系メニューは食材費が高くなりがちです。
ケーキ1ピース(販売価格600円の場合)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| ケーキ原価(8ピース分割) | 250円 |
| 包装/皿/フォーク | 20円 |
| カード手数料 | 21円 |
| 合計 | 291円 |
原価率: 49% — かなり高いです。
ケーキやスイーツは単体だと利益が薄い。だから「ドリンク+ケーキセットで100円引き」のようにセットメニューで出すのが鉄則です。セットにすることで客単価が上がり、ドリンクの利益でケーキの高原価率をカバーできます。
カフェ原価管理で見落としやすい3つのこと
1. シロップは「1プッシュいくら」で管理する
バニラシロップ1本の値段を知っているだけでは足りません。1杯のラテに何ml入れるかで原価が変わるからです。
バニラシロップ 750ml = 1,500円
1プッシュ = 10ml
→ 1プッシュあたり20円
ラテに2プッシュ入れたら、シロップだけで40円。スタッフによって3プッシュ入れる人がいると、年間で相当な差になります。ポンプ1プッシュの量を統一するだけで、原価が安定します。
2. 代替ミルクの追加料金が足りていない
| ミルクの種類 | 1L価格 | 200ml原価 | 通常牛乳との差額 |
|---|---|---|---|
| 普通牛乳 | 200円 | 40円 | — |
| 低脂肪牛乳 | 240円 | 48円 | +8円 |
| ソイミルク | 280円 | 56円 | +16円 |
| アーモンドミルク | 450円 | 90円 | +50円 |
| オーツミルク | 500円 | 100円 | +60円 |
オーツミルクへの変更で原価が60円上がるのに、追加料金が30円では赤字です。最低50円、できれば80〜100円の追加料金が必要です。
しかも2025年8月からは生乳価格が約3%引き上げられるため、通常の牛乳も含めて乳製品全体のコストが上がります。
3. 店内利用とテイクアウトで原価が違う
陶器のマグカップで提供すれば、1杯あたり約28円の使い捨て容器コストが丸ごと浮きます。
「店内利用は10円引き」にしても18円の利益が残る計算。お客さんにも喜ばれるし、原価も下がる。win-winです。
カフェのコスト構造を理解する
カフェの適正原価率は**25〜35%**ですが、原価率だけで経営の良し悪しは決まりません。全体のコスト構造を理解しておくことが大事です。
一般的なカフェのコスト構造例(月商300万円)
食材原価 30% = 90万円
人件費 35% = 105万円
家賃 12% = 36万円
その他経費 13% = 39万円
────────────────────
純利益 10% = 30万円
月商300万円のカフェで純利益30万円——これがカフェの現実です。原価率を1%下げるだけで月3万円、年間36万円の差が出ます。だから1杯1杯の原価を正確に把握する意味があるんです。
メニュー価格の決め方
計算はシンプルです。
目標原価率から逆算する
販売価格 = 原価 ÷ 目標原価率
原価150円、目標原価率30%の場合:
販売価格 = 150 ÷ 0.30 = 500円
ただし、500円が地域の相場と合っているかは別の話です。総務省「小売物価統計調査」で地域の喫茶店コーヒー価格を確認しておくと、自分の価格設定が妥当かどうか判断しやすくなります。
2025〜2026年、カフェの原価は上がり続ける
いま、カフェのコストを押し上げている要因をまとめておきます。
- コーヒー豆 — アラビカ種の国際相場が前年比80%以上上昇。2024年度の国内仕入れ価格は平均15〜30%上昇
- 牛乳 — 2025年8月から生乳価格が約3%引上げ。2020年以降、飲用向け生乳価格は計24円/kg値上げ
- 乳製品 — 2025年8月に265品目が価格改定
- コンビニコーヒーとの競合 — 100〜200円台のコーヒーがあるため、大幅な値上げが難しい
この環境で利益を守るには、「値上げ」だけではなく、原価を正確に把握して無駄を削ることが先決です。
今すぐやること
- 主力ドリンク3品の原価を再計算する(容器・カード手数料込み)
- シロップ1プッシュあたりの原価を出す
- 代替ミルクの追加料金が原価をカバーしているか確認する
- 店内利用とテイクアウトの原価差を把握する
- コーヒー豆の仕入れ価格が半年前と変わっていないかチェックする
参考資料
- 帝国データバンク「喫茶店」の倒産動向(2024年度) — 2024年度の喫茶店倒産が過去最悪ペース、コーヒー豆高騰と値上げ困難が主因
- 総務省統計局 小売物価統計調査 — 喫茶店コーヒー価格の地域別動向
- 総務省統計局 消費者物価指数 — 外食全体の物価上昇トレンド
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