ブログ

焼肉店の原価計算|部位別の原価率と利益を出すメニュー戦略

焼肉店の原価計算を部位別に徹底解説。カルビ・ハラミ・タンの仕入れ価格、FLコストの管理、食べ放題の原価設計、2026年の牛肉相場動向まで。

更新 2026年2月7日
焼肉店 原価計算焼肉 原価率焼肉店 経営牛肉 仕入れFLコスト焼肉 メニュー
目次

要点まとめ

  • 原価率は部位によって2倍以上の差がある。タン塩50%超 vs ホルモン25%——この差でメニュー全体をコントロールする
  • 焼肉店の最大の武器は「お客さんが焼く」こと。人件費率18〜25%は飲食業界で最も低い水準
  • ドリンクは第二の利益源。ハイボールの原価率は9〜13%。肉の高原価をドリンクで相殺する
  • 交雑牛は和牛の35〜40%安い。「国産牛」として提供できるコスト最適解

「売上はあるのに、なぜか残らない」

焼肉店のオーナーから、この相談はよく聞きます。

客単価4,000〜5,000円。テーブルは毎晩埋まっている。でも月末に通帳を見ると、思ったほど残っていない。原因はたいてい肉の仕入れコスト——売上の30〜40%が肉に消えています。

2025年、焼肉店の倒産は59件で過去最多を更新しました。東京商工リサーチの調査によると、輸入牛肉の人気部位(ロース・カルビ・ハラミ)は2020年比で70%以上値上がりしているのに、メニュー価格は10%程度しか上げられていない。この「値上げできないジレンマ」が、多くの焼肉店を追い詰めています。

でも、焼肉店には他の飲食業態にない強みがあります。お客さんが自分で焼く。だから調理人件費がほとんどかかりません。そして、部位の組み合わせとドリンク戦略で原価率をコントロールできる。その仕組みを、ここで具体的に説明します。


焼肉店の原価構造——他の業態と何が違う?

焼肉店は「原価率は高いが、人件費が低い」という独特のコスト構造を持っています。

指標焼肉店居酒屋ラーメン店カフェ
原価率(F)30〜40%28〜35%28〜35%25〜30%
人件費率(L)18〜25%28〜35%25〜30%25〜30%
FL比率50〜60%55〜65%55〜63%50〜58%
客単価3,000〜6,000円2,500〜4,000円800〜1,200円800〜1,500円
営業利益率5〜12%5〜10%8〜15%8〜15%

焼肉店の利益率が5〜12%と幅があるのは、メニュー構成次第で大きく変わるからです。

焼肉店の強み:

  • セルフ調理→調理スタッフが最小限で済む
  • 客単価が高い→粗利の「額」が大きい
  • ドリンク利益率が高い→ハイボールやサワーで全体の原価率を下げられる

焼肉店のリスク:

  • 肉の仕入れ価格に経営が左右される
  • 円安で輸入牛のコストが読めない
  • 滞在時間が長い(60〜90分)→回転率が低い

2026年の牛肉仕入れ価格

枝肉・部分肉の卸売価格(2025年末〜2026年初)

分類等級枝肉卸売価格(kg)前年比
和牛去勢A52,686円99.0%
和牛去勢A42,500円101.5%
交雑去勢B31,657円100.8%
乳牛去勢B21,194円98.1%
輸入牛肉(CIF)約1,164円

出典:東京食肉市場(2024年12月速報値)、農林水産省、農畜産業振興機構(ALIC)

2026年の相場、どうなる?

種類動向なぜ
和牛弱含み〜横ばいと畜頭数の増加、消費者の節約志向
交雑牛堅調輸入牛の代替需要で人気。手頃な「国産牛」として需要拡大
輸入牛(チルド)やや下落国内需要低迷、現地価格の高止まりで輸入量が減っている
輸入牛(フローズン)横ばい豪州産トリミング増加見込み

注意: 最大のリスクは為替です。1ドル=155円を超える水準が続くと、輸入牛のCIF価格は1,200円/kg以上に。国産交雑牛の仕入れルートも確保しておくのが安全策です。


部位別の原価計算

ここが焼肉店の原価管理の核心です。「うちの店でどの部位が儲かっていて、どの部位が足を引っ張っているか」を把握できていますか?

主要部位の仕入れ価格と原価率

部位仕入れ(100g)1人前1人前原価売価例原価率
カルビ(国産)500〜800円80g400〜640円980〜1,280円41〜50%
カルビ(輸入)200〜350円80g160〜280円680〜880円24〜32%
ハラミ(輸入)350〜500円80g280〜400円780〜1,080円36〜37%
ハラミ(和牛)900〜1,100円80g720〜880円1,580〜1,980円44〜46%
タン塩(輸入)600〜900円80g480〜720円980〜1,480円49%
タン塩(国産)1,000〜1,300円80g800〜1,040円1,480〜1,980円53〜54%
ロース(国産)700〜1,200円80g560〜960円1,280〜1,780円44〜54%
ホルモン(ミックス)150〜300円100g150〜300円580〜780円26〜38%
レバー200〜350円80g160〜280円580〜780円28〜36%
鶏もも100〜180円100g100〜180円480〜680円21〜26%
豚バラ(サムギョプサル)150〜250円100g150〜250円580〜780円26〜32%

この表をどう使うか

利益が出にくい部位(集客用):

  1. 上タン塩——国産は原価率50%超。看板メニューとして赤字覚悟
  2. 和牛ロース——A5は仕入れだけで1,000円/100g超
  3. 和牛カルビ——ブランド和牛は原価率40%以上が常態

利益を支える部位:

  1. ホルモン系——原価率25〜35%
  2. 鶏肉——仕入れが牛の1/5〜1/3
  3. 豚バラ——仕入れ価格が安定していて計算しやすい
  4. ドリンク——ハイボール・サワーは原価率10〜20%

タン塩で「ここの焼肉は美味い」と思わせて、ホルモンとドリンクで利益を回収する。これが焼肉店の基本設計です。


メニュー原価設計の実例

客単価4,700円のシミュレーション

カテゴリー注文例原価売価
タン塩1人前550円1,080円
カルビ(輸入)1人前200円780円
ハラミ(輸入)1人前350円880円
ホルモンMIX1人前200円680円
ライス1杯50円250円
生ビール1杯150円550円
ハイボール1杯50円480円
合計1,550円4,700円
原価率33.0%

タンとハラミが原価を押し上げますが、ドリンクとホルモンで相殺。全体で33%に収まっています。

集客メニューと利益メニューの使い分け

役割具体例原価率考え方
集客和牛カルビ、上タン塩40〜55%来店動機。赤字でもOK
主力輸入カルビ、ハラミ30〜40%注文頻度が高い。利益の柱
利益ホルモン、鶏肉、サイド15〜30%全体の原価率を下げる
ドリンクビール、サワー、ハイボール10〜30%最大の利益源

全部位を同じ原価率で考えると、タンは高すぎてメニューから外すか、鶏肉は安すぎて利益を取り損ねます。「部位ごとに役割が違う」と認識することが出発点です。


食べ放題モデルの原価設計

価格帯と原価の目安

コース価格帯(税込)目標原価率1人あたり想定原価
スタンダード2,980〜3,480円28〜33%830〜1,150円
プレミアム(国産牛含む)3,980〜4,980円30〜35%1,190〜1,740円
和牛コース5,980〜7,980円33〜38%1,970〜3,030円

「元を取ろうとするお客さん」は意外と少ない

食べ放題で利益が出るのは、お客さんが実際に食べる量は想像より少ないからです。

  • 成人男性の平均摂取量:400〜600g
  • 成人女性の平均摂取量:250〜400g
  • 輸入肉の平均仕入れ単価:200〜350円/100g
  • 1人あたり肉の実質原価:500〜1,500円程度

3,480円の食べ放題で肉の原価が900円、サイド(キムチ・ナムル・ライス)に200円、合計1,100円。原価率は32%。十分利益が出ます。

食べ放題で利益を出す5つのテクニック

  1. サイドメニューを充実させる — ナムル・キムチ・サラダで満腹感を出す(原価率10〜20%)
  2. ライス・スープをセットに — 炭水化物で満足度UP→肉の消費量DOWN
  3. タレの味を濃いめに — ご飯が進む=肉の消費が自然に抑えられる
  4. デザートをコースに含める — アイス・シャーベットは原価率15〜25%
  5. ドリンク飲み放題をセット販売 — +1,500〜1,980円で原価率10〜20%の追加利益

人件費とFLコスト管理

なぜ焼肉店の人件費は低いのか

お客さんが焼いてくれるからです。これは冗談ではなく、焼肉店の最大の経営メリットです。

業態厨房スタッフ数(30席)人件費率
焼肉店1〜2名(肉カット+盛付け)18〜25%
居酒屋3〜4名28〜35%
ラーメン店2〜3名25〜30%
フレンチ3〜5名30〜38%

さらに人件費を下げる方法

施策効果コスト
タブレットオーダーホールスタッフ1〜2名削減月額2〜5万円
セルフドリンクバードリンク提供の人件費ゼロ設備投資30〜80万円
自動精算機レジ業務の省人化100〜300万円
肉カットの外注化カット職人の人件費削減仕入れ単価+5〜10%

FL比率の目標

指標優良平均要改善
原価率(F)28〜32%33〜37%38%以上
人件費率(L)18〜22%23〜27%28%以上
FL比率48〜53%54〜60%61%以上
営業利益率10〜15%5〜9%5%未満

FL比率55%以下が黒字経営の目安。60%を超えると、家賃・光熱費を引いた後にほとんど残りません。


仕入れコストを下げる6つの方法

1. 食肉卸と直接取引する

仲介業者を1社減らすだけで、仕入れ価格が10〜15%ダウンするケースがあります。

仕入れルートカルビ100gの目安メリットデメリット
仲卸業者経由350〜450円品揃え豊富、小ロット中間マージン
食肉卸と直接250〜350円10〜15%安いロット大きめ
産地直送200〜300円最安。鮮度◎安定供給リスク
業務用ECサイト280〜380円価格比較しやすい品質確認が難しい

2. 交雑牛を活用する

和牛(A4・A5)は枝肉で2,500〜2,700円/kg。交雑牛(B3)は1,657円/kg——約35〜40%安いのに、適度な霜降りで味は十分です。

「国産牛カルビ」として提供でき、和牛との価格差をメニュー価格に反映すれば利益率が大幅に改善します。消費者の節約志向が強まる中、交雑牛の需要はむしろ伸びています。

3. 端材を使い切る

端材活用メニュー原価回収率
カルビの端材ビビンバの肉、焼肉丼ランチ60〜80%
タンの根元タンシチュー、煮込み50〜70%
すじ肉牛すじ煮込み、スープ出汁40〜60%
ホルモンの端材もつ鍋、ホルモン焼きそば50〜70%

ランチメニューは端材活用の最適解です。焼肉丼やカルビクッパなど、夜の仕込みで出た端材をランチに回せば、仕入れの無駄が利益に変わります。

4. 冷凍肉を使い分ける

チルド肉冷凍肉
価格高い(+20〜30%)安い
品質ドリップ少ない解凍管理が必要
保存期間3〜5日1〜3ヶ月
適する部位タン、上カルビ、ロースホルモン、輸入カルビ、豚バラ

看板メニューはチルド、量産メニューは冷凍——この使い分けでコストと品質を両立させます。

5. 歩留まりを管理する

理論原価率と実際原価率の差が月商の3%以上あるなら、歩留まり管理に問題があります。

月商800万円の焼肉店で理論原価率37%・実際原価率40%の場合、月24万円のロスです。年間で288万円。これはスタッフ1人分の年収に相当します。

ロスの原因対策
肉のカットのブレグラム数を決めてスケール計量
ドリップによる目減り冷蔵庫内での低温解凍を徹底
オーダーミスタブレットオーダーの導入
在庫の回転不良先入先出の徹底、発注量の適正化

6. ドリンクの利益率を最大化する

ドリンク1杯原価売価原価率粗利
生ビール(中)140〜180円500〜580円28〜31%360〜400円
ハイボール40〜70円450〜530円9〜13%410〜460円
レモンサワー30〜50円400〜480円7〜10%370〜430円
ウーロン茶10〜20円250〜350円4〜6%240〜330円
マッコリ80〜120円480〜580円17〜21%400〜460円

飲み放題1,580円の場合、1人あたり3〜5杯が平均。原価は300〜600円(原価率19〜38%)。ハイボールやサワー中心なら確実に利益が出ます。


よくある失敗

失敗何が起きるか対策
全部位に同じ原価率を設定タンが高すぎて出せない、鶏肉の利益を取り損ねる部位別に原価率を設定し、ミックスで管理
歩留まりを計算に入れない月数十万円のロスが見えないカット後のグラム計量を徹底
ドリンクの利益を軽視肉だけで利益を出そうとして価格が高くなりすぎるドリンクを全体の利益戦略に組み込む
仕入れ先が1社だけ価格交渉力がなく、値上げされても受け入れるしかない2〜3社確保して競争させる
食べ放題の原価設計が感覚的「たくさん食べる客」を想定しすぎて価格が高くなる実際の平均摂取量データで設計する
円安リスクを放置輸入肉に依存していると為替で利益が吹き飛ぶ国産交雑牛の仕入れルートも確保

焼肉店の原価ベンチマーク(2026年)

指標優良平均要改善
全体の原価率28〜32%33〜37%38%以上
肉の原価率35〜40%41〜45%46%以上
ドリンク原価率10〜20%21〜28%29%以上
FL比率48〜53%54〜60%61%以上
営業利益率10〜15%5〜9%5%未満
廃棄ロス率2〜3%4〜5%6%以上
客単価4,500円以上3,500〜4,500円3,500円未満
回転率(ディナー)2.0回転以上1.5〜2.0回転1.5回転未満

原価管理をもっと楽にしたい方へ

焼肉店は扱う部位が20〜50種類以上。さらに仕入れ先・等級・為替で価格が頻繁に変わります。

原価計算アプリ**KitchenCost**を使えば:

  • カルビ・ハラミ・タンなど部位ごとの仕入れ価格を一括管理
  • 「盛り合わせ」「ホルモンMIX」など複数部位を組み合わせたメニューの原価を自動計算
  • 仕入れ値が変わったら、関連するすべてのメニューの原価率が即時更新
  • タレや特製ダレを反製品として登録し、タレのコストも含めた正確な原価を把握
  • 歩留まり(ロス率)を部位ごとに設定して、廃棄を含めた実質原価を計算

手書きの仕入れ帳やExcelから、スマホで常に最新の原価を確認できる体制に切り替えられます。


今すぐやること

  • 主要部位10種類の1人前あたり原価を計算する
  • 理論原価率と実際原価率の差(ロス)を確認する
  • ドリンクメニューの原価率を計算し、全体の原価率への影響を把握する
  • 仕入れ先を2〜3社確保して価格交渉力を持つ

関連ガイド:


参考資料

よくある質問

焼肉店の適正な原価率は?

全体で30〜35%が目安ですが、部位によって25〜55%まで差があります。タン塩は50%超でも集客用と割り切り、ホルモンやドリンク(原価率10〜25%)で全体を調整するのが現実的です。

原価が高いのにタン塩をメニューから外せない?

タン塩は原価率50%超の赤字メニューですが、来店動機になるため外すと客足に影響します。1人前の量を70〜80gに抑えて、ホルモンやドリンクで回収する設計が一般的です。

焼肉店の原価は毎日計算し直す必要がある?

毎日は不要です。カット量とタレの配合を固定しておけば、週1回の仕入れ価格確認で十分管理できます。大きく相場が動いたタイミングだけ即時見直しを。

食べ放題で利益は出せる?

出せます。成人男性の平均摂取量は400〜600g。3,480円コースで輸入肉中心なら1人あたり原価1,000円前後に収まり、ドリンク飲み放題を付ければさらに利益が出ます。

今すぐ原価を計算してみましょう

材料単価を入力するだけで、レシピ原価・利益率・販売価格を自動計算します。