要点まとめ
- かけうどんの原価率は12〜20%と飲食業界で最も低い部類
- 自家製麺なら1玉20〜25円で最大の差別化&コスト削減
- 天ぷら・サイドメニューの訴求で客単価600円以上を確保
- 月商400〜500万円以上がうどん屋の黒字安定ライン
「うどんは原価が安いから儲かる」——これ、半分正しくて半分間違いです。
かけうどん1杯の材料費は約60〜100円。500円で売れば原価率は12〜20%。飲食業界の中でも圧倒的に低い数字です。でも、TKCの経営データによるとうどん・そば店の約7割は赤字経営。2024年には「そば・うどん店」の倒産が27件と過去最多を更新しました(帝国データバンク調べ)。
なぜ原価が安いのに儲からないのか? 答えはシンプルで、客単価が低いからです。
かけうどん500円だけでは、家賃も人件費もカバーできない。天ぷらやサイドメニューで客単価を600〜800円まで引き上げないと、回転率がよくても利益が残りません。
一方で朗報もあります。2026年1月からは業務用中力粉(うどんの主原料)が25kgあたり45円値下げされました。政府の輸入小麦売り渡し価格が4%下がったことが背景です。原材料費が軒並み上がる飲食業界の中で、うどん屋は数少ない追い風を受けている業態とも言えます。
この記事では、うどん1杯の原価を分解して、「どこでコストがかかって、どこで利益を取るか」を整理していきます。
うどん屋のコスト構造——他業態と比べると
うどん屋は「原価率が低いが、客単価も低い」という独特の構造を持っています。他業態と並べると特徴がはっきりします。
| 指標 | うどん屋 | ラーメン店 | 焼肉店 | カフェ |
|---|---|---|---|---|
| 原価率(F) | 25〜30% | 30〜35% | 30〜40% | 25〜30% |
| 人件費率(L) | 25〜35% | 20〜28% | 18〜25% | 25〜30% |
| FL比率 | 50〜60% | 55〜63% | 50〜60% | 50〜58% |
| 客単価 | 500〜900円 | 800〜1,200円 | 3,000〜6,000円 | 800〜1,500円 |
| 営業利益率 | 5〜10% | 8〜15% | 5〜12% | 8〜15% |
うどん屋のジレンマは、原価率が低くても客単価が低いため、回転率がそのまま売上に直結するということ。月商400万円以上を確保できなければ、固定費を賄えず赤字になるリスクが高い業態です。
うどん1杯の原価はいくら?
かけうどん(売価 500円)の場合
| 要素 | 原価目安 | 割合 |
|---|---|---|
| 麺(1玉 200〜250g) | 30〜50円 | 材料費の40〜50% |
| 出汁(つゆ) | 25〜40円 | 材料費の30〜40% |
| 薬味(ネギ・生姜等) | 3〜10円 | 材料費の5〜10% |
| 合計 | 58〜100円 | |
| 原価率 | 12〜20% |
かけうどん単体の原価率は非常に低いですが、実際の経営ではこの数字に安心してはいけません。大事なのはトッピングとサイドメニューの注文率です。
麺の原価——自家製か仕入れかで倍近く変わる
| 方式 | 1玉あたり原価 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 自家製麺(手打ち) | 15〜35円 | 原価最安、差別化、鮮度◎ | 技術が必要、労働時間が長い |
| 自家製麺(機械) | 20〜40円 | 品質安定、効率的 | 製麺機の投資(50〜200万円) |
| 製麺所仕入れ | 40〜60円 | 手間なし、品質安定 | 差別化しにくい、仕入先に依存 |
| 業務用冷凍麺 | 50〜80円 | 在庫管理が楽、ロスなし | 原価高め、「手打ち」を名乗れない |
自家製麺の材料費(1玉あたり)
| 材料 | 使用量 | 原価 |
|---|---|---|
| 中力粉(讃岐用) | 120g | 18〜24円 |
| 食塩 | 5g | 1円未満 |
| 水 | 55g | 1円未満 |
| 合計 | 約20〜25円 |
讃岐うどん専用粉「さぬきの夢」だと1kgあたり280〜350円。安価な中力粉なら1kgあたり150〜200円で、1玉あたり18〜24円に収まります。2026年1月の値下げ(25kgあたり45円)は小さい数字に見えますが、月に1,000玉打つ店なら年間で数千円〜1万円の改善になります。
出汁(つゆ)の原価——地域で全然違う
うどんの出汁は地域によって材料も味も大きく異なります。
| 地域 | 出汁の特徴 | 主な材料 | 1杯あたり原価 |
|---|---|---|---|
| 讃岐(香川) | いりこ出汁、淡口醤油 | いりこ・昆布・醤油 | 25〜35円 |
| 関西 | 昆布+かつお、淡口醤油 | 昆布・鰹節・醤油 | 30〜40円 |
| 関東 | 鰹出汁、濃口醤油 | 鰹節・醤油・みりん | 25〜35円 |
| 福岡(博多) | あごだし(トビウオ) | 焼きあご・昆布・醤油 | 35〜50円 |
| 名古屋 | 赤味噌ベース(味噌煮込み) | 八丁味噌・鰹節・昆布 | 40〜55円 |
讃岐風出汁の材料費(1杯あたり)
| 材料 | 使用量 | 原価 |
|---|---|---|
| いりこ(煮干し) | 10g | 15〜25円 |
| 昆布 | 3g | 5〜8円 |
| 醤油 | 30ml | 5〜7円 |
| みりん | 10ml | 3〜5円 |
| 砂糖 | 3g | 1円 |
| 塩 | 2g | 1円未満 |
| 合計 | 約29〜46円 |
出汁は仕込みの仕方でコストが変わります。20L以上のまとめ仕込みにすれば、1杯あたりのコストを10〜20%削減できます。出汁がら(いりこや昆布)は佃煮やふりかけにして、賄いや持ち帰り販売に使えば無駄もなくなります。
トッピングが「利益の本丸」
うどん屋の利益は、かけうどんではなくトッピングとサイドメニューで決まります。
| トッピング | 売価 | 原価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| 天ぷら(えび) | 200円 | 60〜80円 | 30〜40% | 120〜140円 |
| 天ぷら(野菜かき揚げ) | 150円 | 25〜40円 | 17〜27% | 110〜125円 |
| 天ぷら(ちくわ) | 100円 | 15〜20円 | 15〜20% | 80〜85円 |
| 温泉卵 | 100円 | 15〜20円 | 15〜20% | 80〜85円 |
| きつね(油揚げ) | 100円 | 10〜15円 | 10〜15% | 85〜90円 |
| わかめ | 50円 | 3〜5円 | 6〜10% | 45〜47円 |
| とろろ昆布 | 50円 | 5〜8円 | 10〜16% | 42〜45円 |
| おにぎり | 120円 | 20〜30円 | 17〜25% | 90〜100円 |
| いなり寿司(2個) | 150円 | 25〜35円 | 17〜23% | 115〜125円 |
| カレールー追加 | 100円 | 20〜30円 | 20〜30% | 70〜80円 |
きつね(油揚げ)、わかめ、ちくわ天はいずれも原価20円以下で100円前後の売価が取れる「隠れた利益源」です。
人気メニュー別の原価シミュレーション
かけうどん(売価 500円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 麺(自家製1玉) | 25円 |
| 出汁(讃岐風) | 30円 |
| ネギ | 3円 |
| 生姜 | 2円 |
| 合計 | 60円 |
| 原価率 | 12.0% |
原価率は驚くほど低い。ただし500円の客単価だけでは家賃も人件費もまかなえません。
天ぷらうどん(売価 800円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 麺(自家製1玉) | 25円 |
| 出汁 | 30円 |
| えび天1本 | 70円 |
| 野菜天2品 | 30円 |
| ネギ・生姜 | 5円 |
| 合計 | 160円 |
| 原価率 | 20.0% |
えび天を入れても原価率はたった20%。天ぷらうどんはうどん屋の主力メニューにすべきです。
肉うどん(売価 850円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 麺(自家製1玉) | 25円 |
| 出汁 | 30円 |
| 牛肉薄切り(50g) | 80〜100円 |
| ネギ | 5円 |
| 生姜 | 2円 |
| 合計 | 142〜162円 |
| 原価率 | 16.7〜19.1% |
牛肉は国産と輸入で原価が2倍近く変わります。仕入先ごとの単価を定期的に確認しておかないと、知らないうちに原価率が上がっていることがあります。
カレーうどん(売価 850円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 麺(自家製1玉) | 25円 |
| 出汁(カレーベース) | 45円 |
| 豚肉(30g) | 20円 |
| 玉ねぎ | 8円 |
| カレー粉・スパイス | 15円 |
| ネギ | 5円 |
| 合計 | 118円 |
| 原価率 | 13.9% |
カレーうどんは出汁にカレー粉を加えるだけで差別化できる高利益メニュー。大量仕込みでさらにコストが下がります。
味噌煮込みうどん(売価 1,000円)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 麺(生麺・硬め) | 25円 |
| 出汁+八丁味噌 | 55円 |
| 鶏肉(40g) | 25円 |
| 油揚げ | 8円 |
| ネギ | 5円 |
| 卵 | 20円 |
| かまぼこ | 10円 |
| 合計 | 148円 |
| 原価率 | 14.8% |
味噌煮込みは1,000円以上の価格設定が可能で、客単価を引き上げる戦略メニュー。土鍋で提供すると「特別感」が出て、注文率も上がります。
セルフ式 vs 対面式——どちらが利益を出しやすい?
うどん屋は営業スタイルによって原価構造がまるで違います。
| 項目 | セルフ式 | 対面式(テーブル提供) |
|---|---|---|
| 客単価 | 400〜700円 | 700〜1,200円 |
| 回転率 | 3〜5回転/席 | 1.5〜2.5回転/席 |
| 人件費率 | 18〜25% | 28〜35% |
| 原価率 | 28〜32% | 25〜30% |
| FL比率 | 48〜55% | 55〜62% |
| 必要席数 | 30〜50席 | 20〜40席 |
| 1日売上目安 | 15〜25万円 | 10〜20万円 |
セルフ式は「低客単価×高回転」
月商計算例(セルフ式・40席):
ランチ:40席 × 3回転 × 600円 = 72,000円/日
ディナー:40席 × 1.5回転 × 650円 = 39,000円/日
日商:111,000円
月商(26日営業):約288万円
→ 月商300万円を下回ると赤字ラインに近づく
対面式は「客単価重視」
月商計算例(対面式・30席):
ランチ:30席 × 2回転 × 900円 = 54,000円/日
ディナー:30席 × 1.5回転 × 1,100円 = 49,500円/日
日商:103,500円
月商(26日営業):約269万円
→ セットメニューの訴求で客単価1,000円超を目指す
FLコストと収益構造
FLRコスト = Food(食材費)+ Labor(人件費)+ Rent(家賃)
| コスト | 理想 | セルフ式 | 対面式 |
|---|---|---|---|
| F(食材費) | 30%以下 | 28〜32% | 25〜30% |
| L(人件費) | 30%以下 | 18〜25% | 28〜35% |
| R(家賃) | 10%以下 | 8〜12% | 8〜12% |
| 合計(FLR) | 70%以下 | 55〜65% | 62〜72% |
日本政策金融公庫のデータでは、うどん・そば店の黒字企業は**売上総利益率66.6%、営業利益率6%**が目安。月商400〜500万円以上を確保できる立地選びが、うどん屋経営の生死を分けます。
光熱費——うどん屋は水道代に注意
| 項目 | 月額目安 | うどん屋の特徴 |
|---|---|---|
| ガス代 | 5〜12万円 | 出汁の大量仕込み、天ぷらの揚げ油 |
| 電気代 | 3〜7万円 | 製麺機使用時は増加 |
| 水道代 | 3〜8万円 | 麺を茹でる大量の湯 |
| 合計 | 11〜27万円 |
麺を茹でる際に大量の湯を使うため、水道代が他の飲食店より高くなりがちです。節水型の麺ゆで器を導入すれば月1〜3万円の削減が見込めます。
原価を下げる7つの実践
1. 自家製麺で差別化&コスト削減
1玉20〜30円の材料費で仕入れ麺の半額以下。「手打ち」「自家製」は最大の看板にもなります。
2. 天ぷらの廃棄管理を徹底する
セルフ式で天ぷらを陳列する場合、揚げてから2〜3時間が限界。時間帯ごとの揚げ量を記録して、閉店前は「半額」にすれば廃棄ロスを大幅に減らせます。
3. 出汁のまとめ仕込みで効率化
20L以上の仕込みで1杯あたりのコストが10〜20%下がります。出汁がらは佃煮やふりかけに。
4. サイドメニューで客単価を上げる
おにぎり、いなり寿司、天ぷら盛り合わせ。原価率の低いサイドで客単価を+150〜300円上げることが利益改善の鍵です。
5. セットメニューを戦略的に設計する
「天ぷらうどん+おにぎり+小鉢」950円のようなセットは、単品注文より客単価が上がり、食材の使い回しも効率化できます。
6. 季節メニューで価格帯を上げる
冷やしうどん(夏)、鍋焼きうどん(冬)、すだちうどん(秋)。季節限定メニューは+100〜200円の価格設定が可能で、「限定」は来店動機にもなります。
7. トッピングのセルフコーナーを活用する
天かす、ネギ、生姜、ごまといった低コスト薬味をセルフにすれば、人件費を削減しつつ「好きなだけ取れる」というお得感を出せます。
うどん屋で陥りやすい3つの失敗
「安さ」だけで勝負する
かけうどん300円で集客しても、客単価が低すぎて家賃と人件費をまかなえません。最低でも客単価600円以上を確保できるメニュー構成が必要です。
天ぷらの廃棄ロスを放置する
セルフ式の天ぷら陳列は、廃棄率が10〜20%に達することもあります。揚げ回数の管理と閉店前の値引き販売で対策を。
立地を軽視する
うどん屋は「ついでに食べる」需要が大きい業態。オフィス街のランチ需要、駅前の回転率、ロードサイドの駐車場——立地が売上の8割を決めると言っても過言ではありません。
開業コストの目安
| 項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 150〜500万円 | 保証金・礼金・仲介料 |
| 内装工事費 | 200〜500万円 | 居抜きなら100万円〜 |
| 厨房機器 | 100〜300万円 | 製麺機含む場合は上限近く |
| 食器・備品 | 30〜100万円 | |
| 運転資金(3ヶ月分) | 200〜400万円 | |
| 合計 | 680〜1,800万円 |
セルフ式はカウンター・トレイレール・天ぷら陳列台などの追加設備で+100〜200万円が加わります。
原価管理にアプリを使う
メニュー数が多く、天ぷらなどのトッピングも合わせると数十種類の食材を管理するうどん屋では、Excelでの原価管理はいつか限界が来ます。
KitchenCostを使えば:
- 麺・出汁・トッピングそれぞれの原価をレシピごとに登録
- 半製品機能で「出汁」をひとつのレシピとして登録し、各メニューに共通部品として組み込める
- 小麦粉やいりこの仕入れ価格が変わったら、関連するすべてのメニューの原価が自動更新
- ロス率(歩留まり)を考慮した正確な原価計算
- セットメニューの原価もワンタップで確認
特に半製品機能は、出汁や天ぷら衣のように複数メニューで共通して使う材料の原価を一元管理できるため、うどん屋の原価計算に向いています。
今すぐやること
- 麺の原価を確認する(自家製 vs 仕入れ)
- 出汁の1杯あたり原価を計算する
- 天ぷらの廃棄率を1週間記録する
- セットメニューの原価率を確認し、客単価600円以上を目指す構成にする
- 中力粉の仕入れ価格が最新かチェックする(2026年1月に値下げあり)
参考資料
- 帝国データバンク「飲食店」の倒産動向調査(2024年) — 2024年のそば・うどん店倒産27件で過去最多
- 日経新聞 ニップンと昭和産業 業務用小麦粉値下げ — 2026年1月から中力系25kgあたり45円値下げ
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