「タイ料理は原価が安い」と思って開業する人がいる。
たしかにガパオライスの原価だけ見れば200円台。原価率は25%前後で、悪くない数字だ。
でも看板メニューのグリーンカレーにエビを3尾盛った瞬間、原価が跳ね上がる。ココナッツミルクだけで70円、エビ3尾で180円。1杯の原価が400円を超えて、原価率は40%以上になることもある。
タイ料理店の利益は、ココナッツミルクとエビの量をどこまでコントロールできるかで決まる。
先に結論
- 原価の山は「ココナッツミルク」「エビ」「香草」の3つ。 この3つを管理するだけで原価率が安定する
- パッタイ・ガパオは低原価。 カレー系の高原価をカバーする役割を持たせる
- 香草のロス率は30〜40%。 可食部重量で原価を計算しないとズレる
- 輸入調味料は為替で価格が変わる。 3ヶ月ごとに仕入れ値を確認する
グリーンカレー1杯の原価を分解する
グリーンカレー(鶏肉・税抜900円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| グリーンカレーペースト(30g) | 35円 |
| ココナッツミルク(150ml) | 70円 |
| 鶏もも肉(80g) | 65円 |
| なす・たけのこ・パプリカ | 40円 |
| バジル | 15円 |
| ジャスミンライス(150g) | 30円 |
| 合計 | 255円 |
原価率:255 ÷ 900 = 28.3%。鶏肉なら悪くない。
グリーンカレー(エビ・税抜1,100円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| グリーンカレーペースト(30g) | 35円 |
| ココナッツミルク(150ml) | 70円 |
| エビ(3尾・60g) | 180円 |
| なす・たけのこ・パプリカ | 40円 |
| バジル | 15円 |
| ジャスミンライス(150g) | 30円 |
| 合計 | 370円 |
原価率:370 ÷ 1,100 = 33.6%。鶏肉版より200円値上げしても、原価率は5ポイント高い。
エビをもう1尾追加して4尾にすると、原価率は38%を超える。 「サービスで多めに入れてあげよう」が利益を食う典型パターンだ。
パッタイとガパオで利益を確保する
タイ料理の強みは、低原価メニューと高原価メニューのバランスが取りやすいこと。
主要メニューの原価比較
| メニュー | 原価 | 売価(税抜) | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| ガパオライス | 195円 | 850円 | 23% | 655円 |
| パッタイ(鶏) | 210円 | 900円 | 23% | 690円 |
| パッタイ(エビ) | 330円 | 1,100円 | 30% | 770円 |
| トムヤムクン | 350円 | 1,000円 | 35% | 650円 |
| グリーンカレー(鶏) | 255円 | 900円 | 28% | 645円 |
| グリーンカレー(エビ) | 370円 | 1,100円 | 34% | 730円 |
| 生春巻き(2本) | 120円 | 500円 | 24% | 380円 |
| マンゴーもち米 | 150円 | 600円 | 25% | 450円 |
ガパオとパッタイ(鶏)は原価率23%。 この2品をランチの主力にして、カレー系やエビメニューは夜の客単価を上げる役割にする——これがタイ料理店の基本の利益設計。
香草——ロス率30〜40%の「見えないコスト」
タイ料理に欠かせないバジル、パクチー、レモングラス。仕入れ値は1束150〜250円と安く見えるが、**実際に使える量は60〜70%**しかない。
香草の実質原価
| 香草 | 仕入れ | 可食部率 | 1杯あたり使用量 | 実質原価 |
|---|---|---|---|---|
| バジル | 150円/束 | 65% | 5g | 15円 |
| パクチー | 200円/束 | 60% | 8g | 25円 |
| レモングラス | 180円/束 | 70% | 10g | 12円 |
1杯に3種全部使うと52円。月1,000杯売れる店なら、香草だけで月5万円以上。
「ちょっと多めに盛ってあげよう」を毎回やると、月1万円以上変わる。 盛り付けの分量を写真で統一するだけで防げる。
ココナッツミルクの管理
ココナッツミルクはタイカレーの命だが、原価に直結する。
- 缶入り(400ml):250〜300円
- 1杯あたり使用量:100〜150ml
- 1杯あたり原価:60〜110円
缶を開けたら冷蔵で2〜3日しか持たない。半端に余らせると廃棄コストになる。
対策:
- 1日に使う量を予測して開缶する
- カレーの出数を曜日別で把握する(土日はカレー系が多い、平日はガパオ中心など)
- 余ったら翌朝のスープに回す
輸入調味料は「為替リスク」がある
ナンプラー、オイスターソース、カレーペースト、ココナッツミルク。タイ料理の調味料の多くは輸入品だ。
円安が進むと、予告なく仕入れ価格が上がる。2024〜2025年の円安局面では、タイからの輸入食品が**前年比+15〜20%**上がった店もある。
3ヶ月ごとに調味料の仕入れ値を確認する。 上がっていたら、メニュー原価を再計算する。
飲食業全体で96.0%の店が仕入れ高騰に直面している。タイ料理店は輸入食材への依存度が高い分、為替の影響をまともに受ける。
今週やること
- グリーンカレーの原価を分解する(ペースト・ココナッツミルク・肉・野菜・香草)
- エビの1尾あたり原価を確認して、メニューに何尾入れるか固定する
- 香草の盛り付け量を写真で統一する
- ココナッツミルクの曜日別使用量を1週間記録する
- 輸入調味料の仕入れ価格を直近の納品書で確認する
タイ料理は香りで勝負する業態。でも利益は「エビの尾数」と「ココナッツミルクのml数」で決まる。まずはグリーンカレー1杯の原価から出してみてほしい。
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