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天丼専門店の原価ガイド:海老1本の原価と、油・タレが利益を削る仕組み

天丼1杯の原価を海老・野菜天・衣・揚げ油・タレ・ご飯に分解。並天丼と上天丼の原価比較、海老のサイズ別コスト差、油の吸い込みが月いくらになるかを実例で解説します。

更新 2026年2月18日
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目次

天丼は「海老と油」の商売です。

てんやが2025年2月に天丼を590円から620円に値上げしました。たった30円ですが、この30円を上げるために何カ月も検討したはずです。

個人の天丼専門店で同じことをやるのは、もっと大変です。常連さんの顔が浮かぶから値上げしにくい。でも海老の仕入れは上がっている。

利益が減っている天丼屋に共通するのは、海老の原価は把握しているのに、油の吸い込みとタレのコストを計算していないこと。

天ぷらは油を吸います。海老天1本で約6g、野菜天を含めた1食分で約20g。この「見えないコスト」が月に2万〜3万円になっている店は珍しくありません。

天丼専門店の原価管理は、海老だけでなく油の吸い込みとタレの標準化がカギです。


先に結論

  • 天丼の原価は**海老が30〜40%**を占める。次に大きいのがご飯と揚げ油
  • 海老はバナメイ(1尾50〜65円)とブラックタイガー(75〜95円)で3割の差がある
  • 並天丼と上天丼は海老の本数で分ける。原価差は65〜95円だが、売価差は200〜300円取れる
  • 天ぷらの油吸収は食材重量の15〜25%。1食あたりの油コストは12〜18円
  • タレは1杯30〜40mlで約12円。かけ量を固定しないと月に数千円の差が出る

天丼1杯の原価を分解する

例:並天丼(税抜700円)

項目原価
バナメイ海老天1本(30g)65円
さつまいも天1枚(40g)15円
なす天1/2本(35g)12円
ししとう天2本(10g)8円
いんげん天2本(8g)7円
衣(小麦粉+卵+水)1食分25円
揚げ油(吸い込み+劣化分)15円
ご飯1杯(220g)45円
タレ35ml12円
合計204円

原価率:204 ÷ 700 = 29.1%

※ バナメイ海老は21/25サイズ(1kgあたり21〜25尾)、1.8kg入り約5,000円で計算。ご飯は5kgあたり2,500円で計算。数字は目安です。

29.1%は飲食店の原価率目安(30〜35%)の下限。天丼専門店としては合格ラインですが、海老のサイズが大きくなったり、油の管理が甘くなると35%を超えます。


並天丼と上天丼の原価比較

海老の本数で価格帯を作る

項目並天丼上天丼
海老1本2本
野菜天4種3種
かき揚げなし1枚
総原価204円302円
売価700円980円
原価率29.1%30.8%
粗利496円678円

上天丼は原価が98円増えますが、売価を280円上げられるので1杯あたりの粗利は182円多い

ポイントは、上天丼に野菜天を1種減らしてかき揚げを入れること。かき揚げは端材(野菜の切れ端、小エビ)で作れるので原価が安い。見た目のボリュームが出るのに原価は33円程度です。

さらに利益を伸ばすなら

追加メニュー追加原価追加売価粗利原価率
味噌汁セット+28円+100円72円28%
ミニうどんセット+35円+150円115円23%
温泉卵+15円+80円65円19%
漬物盛り+18円+100円82円18%
天ぷら追加(ちくわ天)+12円+120円108円10%

ちくわ天は原価12円で120円もらえる。原価率10%の高利益メニューです。追加天ぷらでは最も利益率が高い。


海老のサイズ選びと仕入れ

天丼の原価で最も大きいのが海老です。サイズの選び方で原価が大きく変わります。

海老のサイズ表記と1尾あたりの原価

サイズ表記1kgあたりの尾数1尾の重量バナメイ1尾ブラックタイガー1尾
31/4031〜40尾約28g約42円約55円
21/2521〜25尾約42g約65円約85円
16/2016〜20尾約55g約85円約110円

海老の表記は「1ポンド(約454g)あたりの尾数」が基準です。数字が小さいほど大きな海老。

天丼専門店の選択肢

  • 並天丼:バナメイ21/25(1尾42g、約65円)が標準。見た目と原価のバランスが良い
  • 上天丼:ブラックタイガー21/25(1尾42g、約85円)にすると食感で差別化できる
  • コスト重視:バナメイ31/40(1尾28g、約42円)で海老2本にする方法もある。ただし見栄えが落ちる

バナメイとブラックタイガーは同じサイズでも食感が違います。バナメイは柔らかくジューシー、ブラックタイガーはプリッとした弾力。この違いを並と上の差別化に使えます。


油のコスト管理

天丼専門店では揚げ油のコストが利益を大きく左右します。とんかつ屋と同じく、油は「見えにくいコスト」です。

油のコスト内訳

天ぷらの油コストは2つに分かれます。

1. 吸い込み分(食材が吸う油)

天ぷら重量油吸収率吸収量
海老天30g20%6g
さつまいも天40g12%5g
なす天35g25%9g
ししとう天10g15%2g
1食合計約22g

サラダ油が1Lあたり約350円とすると、22gの吸い込みは約8円

なすは油をよく吸います。なす天を増やすと美味しいけれど油コストが上がる。なすの代わりにれんこんやかぼちゃ(吸収率10〜12%)にすると、1食あたり2〜3円下がります。

2. 劣化分(フライヤーの油交換)

1日50食の天丼専門店の場合:

フライヤー油量:20L(約7,000円)
差し油:2日に1回、2L追加(700円)
全量交換:5〜6日に1回

6日間の油コスト = 7,000 + 700 × 2 = 8,400円
6日間の食数 = 50食 × 6日 = 300食
劣化分の1食あたり = 8,400 ÷ 300 = 約28円

ただし吸い込み分(8円 × 300食 = 2,400円)は上の計算に含まれるので:
実質の劣化分 =(8,400 − 2,400)÷ 300 = 約20円

…ではなく、吸い込み分は食材と一緒にお客さんのお腹に入るので、
フライヤーから減った分を差し油で補充しています。
つまり差し油代がほぼ吸い込み分のコストです。

整理すると:
吸い込み分 = 差し油代 ÷ 食数 = 1,400 ÷ 300 = 約5円
劣化分 = 全量交換代 ÷ 食数 = 7,000 ÷ 300 = 約23円
→ ただし交換時に残った油も使えるので、実質は半分程度

1食あたりの油コスト合計 = 12〜18円(店の規模と交換頻度による)

油コストが上がる3つの原因

1. 衣が厚すぎる

天ぷらの衣は「薄く、サクッと」が理想ですが、忙しいとつい厚くなります。衣が厚いと油の吸収量が1.5倍。1食あたり3〜4円増えて、月に5,000〜6,000円の差になります。

対策:衣の配合を「小麦粉1:冷水1.2〜1.5」で統一する。 混ぜすぎないこと。ダマが少し残るくらいが正解。

2. 揚げ温度が不安定

天ぷらの適温は170〜180℃。温度が低いと揚げ時間が長くなり、油の吸収量が30〜40%増えます。逆に高すぎると焦げて見た目が悪くなる。

対策:温度計で実測する。 フライヤーの温度表示はズレていることがある。特に具材を入れた直後の温度低下に注意。連続投入は5〜6個までにして、油温の回復を待つ。

3. 揚げかすの放置

天ぷらは衣が散りやすいので、揚げかすが多い。放置すると油が急速に劣化して、交換頻度が早まります。

対策:1回揚げるごとにかす揚げで取る。 面倒ですが、油の寿命が1〜2日延びます。6日交換が7〜8日になると、月に1回分の油代(7,000円)が浮きます。


タレの標準化

天丼のタレは「甘辛い」のが基本ですが、店によって濃さもかけ量もバラバラなことが多い。

タレの原価計算

材料1L分単価原価
醤油300ml600円/L180円
みりん300ml500円/L150円
砂糖100g200円/kg20円
だし汁300ml30円
合計(1L)380円

1杯あたりのかけ量を35mlとすると:380円 ÷ 1000ml × 35ml = 約13円

ただし煮詰めて量が減るので、実際は1Lの材料から800ml程度のタレができます。そうすると1杯あたり約17円

タレの量を固定する方法

タレのかけ量は人によって驚くほど違います。多い人は50ml、少ない人は20ml。この差だけで1杯あたり10円変わります。

対策:お玉のサイズを統一する。 30mlのレードルを使って「1杯半」と決める。これで1食45ml、約21円に固定できます。


月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:26日
  • 1日の平均食数:50食
  • 平均客単価:830円(セット込み)
月間売上 = 50食 × 830円 × 26日 = 1,079,000円

原価率29%の場合(油管理◎・タレ固定):
原価 = 312,910円
粗利 = 766,090円

原価率35%の場合(油管理甘い・海老サイズ不統一・タレ多め):
原価 = 377,650円
粗利 = 701,350円

差額 = 64,740円/月 = 年間776,880円

原価率6ポイントの差で、年間約78万円の利益差。内訳を見ると、油の管理だけで年間20〜25万円、タレの標準化で5〜8万円、海老サイズの統一で15〜20万円を占めます。


今週やること

  • 海老のサイズ(尾数表記)と1尾の原価を確認する
  • 並天丼と上天丼の具材を固定し、原価表を作る
  • 揚げ油の交換サイクルを決め、1食あたりのコストを計算する
  • 衣の配合比率(小麦粉と水の割合)を統一する
  • タレのかけ量をレードルで固定する(35〜45ml/杯)
  • かき揚げやちくわ天など、低原価の追加メニューをメニュー表で目立たせる

関連ガイド


海老・野菜・タレを登録すれば、天丼1杯の原価が自動で出ます。並と上の粗利比較もワンタップ。KitchenCost は無料で使えます。

よくある質問

天丼1杯の原価はどれくらい?

並天丼(海老1本+野菜天3種)の場合、海老65円、野菜天42円、衣25円、揚げ油15円、タレ12円、ご飯45円で合計約204円が目安です。売価700円なら原価率29.1%。ただし海老のサイズや油の管理次第で30〜35%まで上がることがあります。

海老はバナメイとブラックタイガー、どちらがいい?

バナメイは1尾あたり約50〜65円(21/25サイズ)、ブラックタイガーは約75〜95円。バナメイの方が2〜3割安く、養殖量が多いので価格が安定しています。ブラックタイガーはプリッとした食感が強いので、上天丼や単品天ぷらに使い分けるのが合理的です。

天ぷらの油吸いはどう原価に入れる?

天ぷらは食材重量の15〜25%の油を吸います。海老天1本(30g)なら約6gの油を吸収。1食分の天ぷら全体(海老+野菜3種)で約20gの油吸収です。サラダ油1Lが約350円とすると、吸い込み分だけで1食あたり7円。これにフライヤー内の油劣化分を加えると、1食あたり12〜18円になります。

天丼のタレは原価に入れるべき?

必ず入れてください。醤油・みりん・砂糖・だしで作るタレは1杯あたり約12円。少額に見えますが、1日50杯で600円、月に15,000円です。さらにタレの煮詰め具合でかけ量が変わるので、1杯あたりの量(30〜40ml)を決めておくと原価が安定します。

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