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天ぷら専門店、野菜天は儲かるのに月末お金が残らない——原因は「油」と「海老」

大葉の天ぷらは原価5円で売値150円。それなのに利益が残らないのは、揚げ油の交換コストと海老のサイズ管理が甘いから。天ぷら専門店の利益を守る原価管理のポイントをまとめました。

更新 2026年2月18日
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目次

大葉の天ぷら、原価5円。売値150円。原価率3%。

数字だけ見れば笑いが止まらない。野菜天だけなら原価率10%台も夢じゃない。「天ぷらって儲かるんだな」と思う。

でも月末に通帳を見ると、なぜか残っていない。

原因は2つ。油と海老だ。

揚げ油は毎日じわじわ消費され、海老は1本80円以上する。盛り合わせに海老を2本入れた瞬間、原価の半分以上が海老になる。さらに油の劣化で交換コストがかさみ、揚げ置きの売れ残りは廃棄。

野菜天の低原価率に安心していると、油と海老に利益を全部持っていかれる。

先に結論

  • 天ぷらの原価は海老が50〜60%、油が10〜15%。 この2つの管理が利益を決める
  • 揚げ油は「1食あたり○円」に換算する。 交換頻度を決めないとコストが見えない
  • 衣の吸油率は10〜25%。 揚げ方ひとつで油の消費量が大きく変わる
  • 盛り合わせは海老の本数でグレードを分ける。 野菜天で原価率を下げる
  • 揚げ置き廃棄は原価に組み込む。 閉店2時間前に揚げ止めるだけで廃棄が半減する

天ぷら盛り合わせの原価を分解する

例1:盛り合わせ 上(税抜1,200円)

項目原価
海老2本170円
かぼちゃ2切れ18円
なす1本15円
ししとう2本8円
大葉2枚5円
衣(小麦粉・卵)1セット25円
油コスト1食分13円
つゆ・大根おろし・塩1食分20円
合計274円

原価率:274 ÷ 1,200 = 22.8%

例2:天丼(税抜950円)

項目原価
海老1本85円
かき揚げ1枚55円
ししとう1本4円
衣 + 油コスト1セット30円
ご飯250g38円
たれ30ml20円
合計232円

原価率:232 ÷ 950 = 24.4%

※ 海老は21/25サイズ(1本約85円)で計算。油は18L缶3,200円、300食で交換として計算。

22〜24%と聞くと余裕がありそうに見える。でも現実には——

  • 海老のサイズがバラつく(大きい個体が混ざると+20〜30円/本)
  • 油の交換を早めにすると油コストが倍になる
  • 揚げ置きで売れ残ると全額廃棄

こうした積み重ねで、実際の原価率は30%を超えることも珍しくない。

揚げ油のコストを数値化する

「油代なんて大した金額じゃない」——そう思っている店ほど、計算すると驚く。

油コストの計算方法

1食あたりの油コスト = (油の単価 × 使用量) ÷ 交換までの提供食数

油の種類別コスト比較

油の種類18L缶の価格使用量300食交換の場合1食あたり
サラダ油2,400円12L10円
白絞油(しらしめ油)3,200円12L13円
ごま油ブレンド4,500円12L18円
綿実油5,000円12L20円
太白ごま油8,000円12L32円

白絞油と太白ごま油では、1食あたり19円の差。1日50食なら月23,750円、年間で28.5万円の差になる。

高級天ぷら店は太白ごま油を使うけれど、個人の天ぷら専門店なら白絞油かごま油ブレンドが現実的だ。味と原価のバランスを取るなら、白絞油をベースにごま油を20%ブレンドする方法もある(1食あたり約15円)。

油の交換頻度で原価が変わる

交換頻度提供食数1食あたり油コスト(白絞油)月間油コスト(50食/日)
毎日交換50食38円47,500円
2日に1回100食19円23,750円
3日に1回150食13円16,250円
週1回(目安)300食6円7,500円

毎日交換する店と週1回の店では、月間4万円の差。 これは見逃せない。

ただし交換を遅らせすぎると油が劣化して、天ぷらが黒っぽくなる。味も落ちる。目安は酸価(AV値)が2.5以下。酸価テスターがあれば客観的に判断できる。

油の劣化を遅らせる3つの方法

1. 揚げカスをこまめに取る

揚げカスが油に残ると劣化が早まる。天かすは揚げたらすぐに網で取り除く。

2. 温度を上げすぎない

180℃以上で長時間加熱すると油の酸化が進む。天ぷらの揚げ温度は170〜180℃が適正。待機中は150℃に落とす。

3. 差し油で油量を保つ

フライヤーの油が減ったら新しい油を足す(差し油)。油面が下がると揚げムラが出るだけでなく、少ない油が高温になって劣化が早まる。

海老のサイズと原価管理

海老は天ぷらの主役であり、原価の最大要因だ。サイズの管理が甘いと利益が大きくブレる。

海老のサイズ規格と原価

冷凍海老はサイズ規格(1ポンドあたりの尾数)で価格が変わる。

サイズ規格1尾の目安重量1尾の原価見た目
16/2025〜30g110〜130円立派。高級天ぷら店向け
21/2520〜25g80〜100円標準。専門店の定番
26/3018〜20g65〜80円やや小さい。天丼向き
31/4013〜16g45〜60円小さい。かき揚げ・弁当向け

21/25サイズと31/40サイズでは、1尾あたり35〜40円の差。盛り合わせに2本入れると80円。1日50食なら月10万円の差になる。

海老で利益を守るルール

  1. サイズ規格を固定する — 毎回同じ規格で発注する。「大きいのが入ったから多めに入れよう」はNG
  2. 発注単位を決める — 1.8kgパック(21/25なら約80尾)で何日分か計算しておく
  3. 解凍ロスを計算に入れる — 冷凍海老は解凍すると5〜10%の重量減。1尾85円の海老が解凍後に80円相当の量になる
  4. 背わたと殻のロスも計算する — 殻付き海老は下処理後に約30%の重量減。頭付きなら50%減

衣の吸油率と原価への影響

天ぷらの衣は油を吸う。この「吸油率」が地味に原価に効いてくる。

食材別の吸油率の目安

食材吸油率揚げ前100gの場合の吸油量
海老(薄衣)8〜12%8〜12g
野菜(なす・かぼちゃ)15〜20%15〜20g
かき揚げ20〜30%20〜30g
大葉・ししとう5〜8%5〜8g

かき揚げは吸油率が特に高い。 100gのかき揚げを揚げると20〜30gの油を吸う。白絞油が1gあたり約0.18円として、かき揚げ1個で3.6〜5.4円の油コスト。小さいようだけど、1日30個揚げれば月3,000〜4,000円だ。

衣で油の消費を抑えるコツ

  • 衣は薄くつける — 衣が厚いほど油を吸う。プロは「薄衣」で揚げる
  • 衣を混ぜすぎない — グルテンが出ると衣が重くなり、吸油率が上がる
  • 冷水で衣を作る — 温度が低いほどグルテンの形成を抑えられる
  • 揚げ上がりをバットに立てる — 寝かせると油が衣に戻る。立てて油を切る

盛り合わせの本数設計

天ぷらの利益は「盛り合わせの構成」で決まる。海老の本数と野菜の種類数がそのまま原価率に直結する。

グレード別の構成例

グレード内容原価売価原価率
海老1本 + 野菜4種 + 衣・油175円850円20.6%
海老2本 + 野菜4種 + 衣・油274円1,200円22.8%
特上海老3本 + 穴子 + 野菜4種 + 衣・油430円1,800円23.9%
おまかせ季節のネタ8〜10品 + 衣・油500円2,500円20.0%

並の原価率がいちばん低いのがわかる。野菜中心で海老が1本しか入っていないからだ。

利益を最大化するなら「並」をたくさん出したい。でもお客さんは「上」以上を選ぶことが多い。だから上位グレードでも原価率を25%以内に抑える設計が重要になる。

おまかせコースがいちばん利益率が高い理由

おまかせコースは2,500円で原価率20%。季節の野菜を多めに入れて、海老は2本に抑えるからだ。

8〜10品の内訳例:

ネタ原価
海老 × 2170円
かぼちゃ9円
なす15円
れんこん12円
ししとう × 28円
大葉3円
まいたけ20円
さつまいも8円
衣 + 油40円
つゆ・塩20円
合計305円

季節の野菜天は1品5〜20円。7〜8品入れても100円以下。品数が多いほど見栄えが良く、お客さんの満足度も上がる。

「品数の多さ=お得感」という心理をうまく使うのが、天ぷら盛り合わせの利益設計のコツだ。

揚げ置き廃棄の管理

天ぷら専門店の見えないコストが「揚げ置き廃棄」だ。

廃棄が発生するパターン

状況廃棄率月間廃棄コスト(50食/日)
注文後に揚げる(専門店)1〜3%3,500〜10,500円
ピーク前に揚げ置き5〜10%17,500〜35,000円
弁当・テイクアウト併用10〜20%35,000〜70,000円

揚げ置きの天ぷらは時間が経つとサクサク感がなくなる。揚げてから30分が限界。1時間経つと明らかに品質が落ち、2時間で廃棄対象だ。

廃棄を減らす3つのルール

1. 閉店2時間前に揚げ止める

ラストオーダー以降は新たに揚げない。これだけで廃棄率が半分になるケースもある。

2. ピーク時間帯に合わせて少量ずつ揚げる

11:30〜13:00のランチピークに合わせて、11:15から揚げ始める。一度に20食分揚げるのではなく、5食分ずつ3回に分ける。

3. 廃棄量を毎日記録する

「何をいくつ捨てたか」を記録するだけで、発注量の精度が上がる。1週間記録すれば、曜日ごとの需要パターンが見えてくる。

廃棄コストを原価に組み込む

廃棄率が5%なら、原価を5%上乗せして計算する。

実効原価 = 食材原価 ÷ (1 − 廃棄率)
例:食材原価274円、廃棄率5%の場合
実効原価 = 274 ÷ 0.95 = 288円

この14円の差は小さく見えるけれど、1日50食で月17,500円。年間21万円だ。

季節ネタと価格見直し

天ぷらは季節ネタが命の業態。旬の食材は「安くて美味しい」時期と「高くて品薄」な時期で原価が大きく変わる。

季節別の注目食材

季節旬のネタ(安くなる)高くなるネタ対策
たらの芽、ふきのとう、菜の花海老(需要期)山菜天ぷらフェアで野菜比率を上げる
なす、ししとう、みょうが、おくら特になし夏野菜の盛り合わせをメインに
さつまいも、まいたけ、れんこん松茸(高級ネタ)きのこ天ぷらフェアで客単価UP
れんこん、ごぼう、春菊海老(忘年会需要)根菜中心の盛り合わせでコスト抑制

季節ごとにメニュー構成を変えるのが、天ぷら専門店の利益安定策だ。旬の安い野菜を盛り合わせに組み込めば、原価を抑えながら「季節感」も演出できる。

月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:25日
  • 1日の平均食数:50食
  • 平均客単価:1,300円(盛り合わせ+天丼のミックス)
月間売上 = 50食 × 1,300円 × 25日 = 1,625,000円

原価率23%の場合(管理が良い店):
原価 = 373,750円
粗利 = 1,251,250円

原価率32%の場合(油交換多い・海老ブレ・廃棄あり):
原価 = 520,000円
粗利 = 1,105,000円

差額 = 146,250円/月 = 年間1,755,000円

原価率9ポイントの差が、年間175万円の利益差になる。

今週やること

  • 揚げ油の種類と18L缶の価格を確認し、1食あたりの油コストを出す
  • 油の交換頻度を決める(酸価テスターの導入を検討)
  • 海老のサイズ規格を固定し、1尾あたりの原価を把握する
  • 盛り合わせの並・上・特上の構成を書き出す
  • 各ネタの原価を一覧にして、1食の合計原価を出す
  • 廃棄量を1週間だけ記録して、曜日別の傾向をつかむ

関連ガイド


ネタ・衣・油を登録すれば、盛り合わせ1食の原価が自動で出ます。季節でネタを入れ替えても原価率がすぐわかる。KitchenCost を使ってみてください。

よくある質問

天ぷら1人前の原価はどれくらい?

盛り合わせ(海老2本・野菜4〜5種)で280〜350円くらいです。内訳を見ると海老だけで160〜200円。全体の50〜60%が海老なので、海老のサイズと本数をどうするかが、そのまま利益管理になります。

揚げ油のコストはどう計算する?

1回の交換コスト(油代+廃油処理費)を、交換までに揚げた食数で割ります。たとえば18L缶3,200円で12L使って300食提供なら、1食あたり約13円。油の劣化は揚げ物の種類と量で変わるので、酸価テスターで判断するのが確実です。

天ぷらは原価率が低いって本当?

野菜天だけなら原価率10〜15%で確かに低いです。ただし海老天は30〜40%と高め。盛り合わせ全体だと25〜30%が一般的です。原価の低い野菜天を多めに入れて、海老の本数でグレードを分ける——この構成がポイントになります。

天ぷらの廃棄ロスはどう管理する?

揚げ置きは2時間でサクサク感がなくなり、廃棄率10〜20%になることも。ピーク時間帯に合わせて少量ずつ揚げる、閉店2時間前に揚げ止める。この2つだけで廃棄が半分になった店もあります。

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