立ち食いそばの原価は安い。かけそば1杯の材料費は50円前後です。
「原価率15%なら楽勝じゃないか」と思うかもしれません。でも実際に営業してみると、想像ほど利益が残らない店が多い。
理由はシンプルです。かけそばだけ食べて帰るお客さんが多いと、客単価が400円前後にしかならない。そこから家賃・人件費・光熱費を引くと、1杯あたりの利益は数十円。立ち食いそばの生命線は「天ぷらをいかに買ってもらうか」にあります。
先に結論
- かけそばの原価は40〜55円(原価率13〜15%)だが、客単価が低いので利益額も小さい
- 天ぷらトッピングが利益の中心。かき揚げ1個で利益が100〜150円増える
- 麺量・つゆ量の標準化が最重要。ブレは回転率の高さで倍増する
- 1日150杯の店なら、10gの麺量ブレで月45,000円の誤差
かけそば1杯の原価を分解してみる
例:かけそば(売価400円・税抜)
| 項目 | 内容 | 原価 |
|---|---|---|
| 麺(乾麺) | 八二そば 90g | 25円 |
| つゆ | 濃縮だし + 醤油 300ml | 18円 |
| ネギ | 小口切り 5g | 3円 |
| 割り箸 | 1膳 | 2円 |
| 合計 | 48円 |
原価率:48 ÷ 400 = 12.0%
数字だけ見ると利益率は高く見えます。でも1杯の利益額は:
粗利 = 400円 − 48円 = 352円
ここから家賃(都内なら月30〜50万円)、人件費、光熱費を引きます。1日150杯売っても月商180万円。固定費を引いた手残りは意外と少ない。
天ぷらを足すと利益構造が変わる
例:かき揚げそば(売価600円・税抜)
| 項目 | 内容 | 原価 |
|---|---|---|
| 麺(乾麺) | 八二そば 90g | 25円 |
| つゆ | 濃縮だし + 醤油 300ml | 18円 |
| ネギ | 小口切り 5g | 3円 |
| かき揚げ | 玉ねぎ・人参・衣 | 40円 |
| 割り箸 | 1膳 | 2円 |
| 合計 | 88円 |
原価率:88 ÷ 600 = 14.7%
粗利:600 − 88 = 512円
かけそばの粗利352円に対して、かき揚げそばは512円。かき揚げ1個(原価40円)を足すだけで、粗利が160円増えます。
これが立ち食いそばのビジネスモデルです。そば本体は「来店のきっかけ」で、天ぷらが利益の本体。
つゆの原価計算
つゆは自家製か業務用濃縮かで原価が変わります。
パターン1:業務用濃縮つゆ
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 業務用濃縮つゆ | 50ml | 15円 |
| 水 | 250ml | 1円 |
| 合計 | 16円 |
手軽で味が安定します。忙しい店はこちらが多い。
パターン2:自家製だし
1バッチ(10L)の場合:
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 鰹節 | 100g | 350円 |
| 昆布 | 30g | 90円 |
| 醤油 | 500ml | 150円 |
| みりん | 200ml | 80円 |
| 水 | 9L | 5円 |
| 合計 | 675円 |
10Lから提供できるのは歩留まりを考えて約9L。1杯300mlなら30杯分。
1杯あたり = 675円 ÷ 30杯 = 約23円
業務用濃縮より7円高いですが、「だしにこだわっている」と打ち出せるなら、売価を50円上げても納得してもらえます。
原価が崩れる4つの原因
1. 麺量が人によって違う
90gの基準が、あるスタッフは80g、別のスタッフは110g。その差30gで原価が7〜8円変わります。
1日150杯なら月に35,000円の誤差。
対策:計量カップか秤で1人前を決める。 忙しいピーク時こそブレやすいので、あらかじめ1人前ずつ小分けにしておくのが確実です。
2. つゆを多く入れすぎる
「丼いっぱいに入れたほうがお客さんが喜ぶ」と考えてつゆを多めに注ぐスタッフがいます。300mlの基準が350mlになると、1杯あたり3〜4円。少なく見えますが月に15,000〜18,000円。
対策:レードル(おたま)のサイズで決める。 「大きいレードル1杯」と決めれば迷わない。
3. 天ぷらのサイズがバラつく
かき揚げを「なんとなく」の大きさで揚げると、大きいものは原価60円、小さいものは30円。同じ150円で売っているのに、利益が倍違います。
対策:型(セルクルリング)を使うか、衣の量をグラムで決める。 玉ねぎのカット量も統一すると安定します。
4. 無料トッピングが増えていく
ネギ増量、天かす大盛り、生卵サービス——お客さんに頼まれると断りにくいですが、積み重なると原価が上がります。
天かすは1回10gで3〜5円。無料で出し続けると月に10,000円以上。
対策:「天かす無料・ネギ増量無料」のルールを決めておくか、トッピングとして有料化する。 富士そばのように、ネギは基本量を決めて追加は有料にしている店もあります。
天ぷら別の原価と利益
立ち食いそばでよく出る天ぷらの原価を比較します。
| 天ぷら | 原価 | 売価 | 粗利 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| かき揚げ | 40円 | 150円 | 110円 | 27% |
| ちくわ天 | 25円 | 130円 | 105円 | 19% |
| 舞茸天 | 35円 | 150円 | 115円 | 23% |
| えび天 | 70円 | 220円 | 150円 | 32% |
| ゲソ天 | 45円 | 160円 | 115円 | 28% |
| コロッケ | 30円 | 120円 | 90円 | 25% |
ちくわ天が一番利益率が高いのがわかります。原価が安く、お客さんにも人気がある。
えび天は原価率が高めですが、粗利の絶対額は150円と最も大きい。「ちょっと贅沢」枠として1〜2種類置いておくと客単価が上がります。
利益を出している立ち食いそば店がやっていること
カウンター前に天ぷらを並べる
揚げたての天ぷらがカウンター前に並んでいると、つい1つ追加したくなります。「かけそばでいいや」と思って入ったお客さんが、天ぷらを1つ足してくれるだけで粗利が100円以上増えます。
これが立ち食いそば店の最も効果的な販促です。POP広告より、実物の力。
朝・昼・夕の3ピークを狙う
立ち食いそばは回転率が命です。お客さんの平均滞在時間は約6分。席数15席で1時間に10回転すれば、ピーク1時間で150杯。
朝の通勤時間帯(7〜9時)にモーニングセット、昼(12〜13時)に天ぷらセット、夕方(18〜19時)にちょい飲みセット——と時間帯別にメニューを設計すると、稼働率が上がります。
セットメニューで客単価を上げる
| セット | 内容 | 原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| 朝セット | かけそば + おにぎり | 68円 | 500円 | 14% |
| 天ぷらセット | そば + かき揚げ + 小鉢 | 118円 | 700円 | 17% |
| ミニ丼セット | そば + ミニカレー | 108円 | 750円 | 14% |
セットにすると客単価が200〜350円上がります。そばの原価率が低いので、セットにしてもトータルの原価率は20%以下に収まります。
今週やること
- 麺量を秤で計測し、1人前のg基準を固定する(乾麺90g or 生麺130g)
- つゆ量をレードルのサイズで統一する(大レードル1杯=300ml)
- 主力天ぷら3品の原価を計算し、売価との粗利を確認する
- 天ぷらの注文率を1週間記録する(目標:全体の50%以上)
- 無料トッピングのルール(天かす・ネギ)を決めて統一する
関連ガイド
麺・つゆ・天ぷらをレシピ登録すれば、1杯あたりの原価が自動で出ます。KitchenCost は無料で使えます。