ブログ

すき焼き店の原価ガイド:肉150gの壁と、割り下・卵で利益が消える仕組み

すき焼き1人前の原価を肉・割り下・野菜・卵に分解。部位別の原価比較、セット価格の設計、追加オプションで客単価を上げる方法を実例で解説します。

更新 2026年2月18日
すき焼き原価計算鍋料理肉原価価格設定飲食店経営
目次

すき焼きは「高単価だから儲かる」と思われがちです。1人前3,500円、4人で来れば14,000円。売上だけ見ると良い数字に見えます。

でも月末に原価を計算してみると、利益が思ったほど残っていない。

理由は単純で、牛肉が高い

すき焼きの原価は、牛肉が65〜75%を占めます。野菜も割り下も豆腐も卵も安い。原価のほとんどが「肉」です。だから肉のグラムが20g増えるだけで利益が削れるし、部位を一つ上げると原価率が一気に跳ね上がる。

さらに厄介なのは、すき焼きはテーブルで作る料理だということ。キッチンで盛り付ける牛丼やステーキと違って、お客さんの目の前に肉を出す。肉が少なく見えるとクレームにつながるし、野菜の量でごまかすのも難しい。

すき焼き店の原価管理は、肉のグラムと部位の選び方に始まり、セット設計で利益を確保する——この2点がすべてです。


先に結論

  • すき焼きの原価は**牛肉が65〜75%**を占める。肉のグラムと部位が利益を決める
  • 1人前の肉量は150gが標準ライン。120gに減らすと見た目でバレる、180gに増やすと赤字方向に
  • 割り下は1バッチ単位で原価を出し、レードルで定量化する
  • 卵・野菜の追加は有料が基本。無料にすると利益が静かに削られる
  • 〆のうどん・ご飯セットで客単価を上げるのが利益改善の王道

すき焼き1人前の原価を分解する

例:関東風すき焼きコース(税抜3,500円)

項目原価
牛ロース薄切り150g525円
割り下(醤油・みりん・砂糖・酒)150ml45円
白菜80g16円
長ねぎ40g20円
しいたけ2枚30円
えのき30g10円
春菊20g12円
焼き豆腐1/4丁25円
しらたき50g15円
1個22円
合計720円

原価率:720 ÷ 3,500 = 20.6%

※ 牛ロースは100gあたり350円で計算(業務用の一般的な価格帯)。卵は1個22円。数字は目安です。

20.6%と聞くと低く見えます。でも、これは「肉150g・卵1個・追加なし」の理想的なケースです。

実際の店では——

  • 常連さんに「肉多めで」と出してしまう(+30g = +105円)
  • 卵のおかわりを無料にしている(+22円 × 2〜3個)
  • 割り下を多めに作って余らせる

——こうした積み重ねで、原価率は25〜30%に上がります。飲食店としては問題ない数字ですが、「すき焼きだから余裕がある」と思っていると危険です。


肉の部位別原価比較

すき焼きの肉は部位によって原価が大きく変わります。どの部位を使うかは、そのまま原価率に直結します。

部位別の原価と原価率(150g・売価3,500円)

部位100gあたり150gの原価野菜等込み合計原価率
肩ロース(業務用)280円420円615円17.6%
リブロース350円525円720円20.6%
サーロイン450円675円870円24.9%
特選ロース(A4等級)600円900円1,095円31.3%
黒毛和牛A5900円1,350円1,545円44.1%

肩ロースとサーロインでは、1人前あたり255円の差。1日20人前なら5,100円、月間で153,000円、年間で183万円の差です。

部位選びの現実解

高級すき焼き店でA5和牛を使うなら、売価を6,000〜8,000円に設定しないと利益が出ません。

個人店の現実的な選択は:

  1. リブロース(100g 350円前後) — 味・見た目・価格のバランスが良い
  2. 肩ロースをベースにして、追加で上質な部位を用意する — 「特選コース +1,000円」で差別化
  3. 部位をミックスする — リブロース100g + 肩ロース50gで150g。原価は455円(100gあたり303円相当)

3番目の方法は意外と有効です。お客さんは最初に出てくる肉の印象で全体を判断する傾向があるので、最初の1〜2枚を良い部位にして、追加分を肩ロースにすると満足度を保ちながら原価を抑えられます。


割り下の原価管理

割り下は1人前あたり40〜60円と金額は小さいですが、ブレが大きいポイントです。

関東風・割り下の構成(1バッチ=約2L、8人前分)

材料原価
醤油500ml200円
みりん400ml160円
300ml120円
砂糖150g40円
だし汁800ml40円
合計約2L560円

1人前あたり150ml使うとすると:

1バッチで約13人前分(2,000ml ÷ 150ml)
1人前あたりの割り下原価 = 560 ÷ 13 = 約43円

43円は小さく見えますが、問題はブレ廃棄です。

割り下でコストが膨らむ3つの原因

1. スタッフによって入れる量が違う

テーブルに持っていく割り下の量が人によって違います。150mlのはずが200ml入れるスタッフがいると、1人前あたり14円の原価増。1日20人前で280円、月8,400円。

対策:割り下の徳利やピッチャーを定量にする。 1人前用の容器を決めて、そこに入る量だけ持っていく。

2. 関西風は砂糖の量がブレやすい

関西風すき焼きは割り下を使わず、鍋に砂糖と醤油を直接入れます。これだと「目分量」になりやすく、日によって味も原価も変わります。

対策:砂糖は1人前○gと決めて小分けにしておく。 醤油も計量カップで定量化する。

3. 余った割り下を捨てている

1バッチ作って6人前しか出なかった日は、残り7人前分の割り下が余ります。翌日に使えますが、「味が落ちる」と捨てる店もあります。

対策:ピーク予測に基づいて半バッチで仕込む選択肢を持つ。 平日は半バッチ(4人前分)、週末はフルバッチ。


肉150gの壁

すき焼きの肉量は「150g」が一つのラインです。

肉量と原価の関係(リブロース・売価3,500円)

肉量肉原価合計原価原価率体感
100g350円545円15.6%明らかに少ない
120g420円615円17.6%やや物足りない
150g525円720円20.6%標準
180g630円825円23.6%満足度高い
200g700円895円25.6%贅沢感あるが利益薄い

150gから180gに増やすと、1人前あたり105円の原価増。1日20人前で月63,000円、年間75.6万円です。

逆に、150gを120gに減らすと年間63万円の原価削減——ただしすき焼きはテーブルに肉を並べて出すので、見た目で量の少なさがバレやすい。牛丼のようにつゆと玉ねぎでボリューム感を出す、というごまかしが効きません。

150gを下限にして、部位の選び方で原価を調整するのが現実的です。

肉のグラムを安定させる方法

  1. ポーションスケールで計量する — 感覚盛りは必ずブレる。特に薄切り肉は枚数が多いのでグラム差が出やすい
  2. 仕込み時に1人前ずつ小分けする — ラップで150gずつ分けて冷蔵保存
  3. 「上乗せ」のルールを決める — 常連さんに多めに出すなら「+30gは+300円」と価格に反映させる

卵と追加オプションの価格設計

すき焼きは卵をつけて食べる料理なので、卵の扱いが利益に影響します。

卵の原価インパクト

卵の提供方法1人あたり卵消費原価年間コスト(20人/日)
1個付き・おかわり無料平均2.5個55円+24万円(差額分)
1個付き・追加1個100円平均1.3個29円基準
別料金(1個100円)平均1.0個22円−5万円

「おかわり無料」は想像以上にコストがかかります。 1テーブル4人でおかわり合計6個出ると、追加分の卵原価だけで132円。1日5テーブルなら月19,800円。

現実的な解は**「1個付き・追加は有料」**です。追加卵は1個100円にすると、原価22円に対して粗利78円。利益率の高い追加メニューになります。

その他の追加オプション

追加メニュー原価売価粗利原価率
卵(1個)22円100円78円22%
肉追加(80g)280円800円520円35%
うどん(〆)18円250円232円7%
ご飯30円200円170円15%
野菜盛り追加60円300円240円20%
餅(2個)30円200円170円15%

うどんの原価率7%に注目してください。 〆のうどんは原価18円で250円もらえます。すき焼き本体の20%に比べれば圧倒的に利益率が高い。


セット構成で利益を守る

すき焼き本体の原価率は20〜25%と飲食店としては低めですが、肉の仕入れ価格が上がると一気に30%を超えます。セットメニューで利益の安定性を高めるのが重要です。

コース構成のパターン

コース内容原価売価原価率
基本肉150g + 野菜 + 卵1個720円3,500円20.6%
肉180g(リブロース) + 野菜 + 卵2個 + 〆うどん887円4,500円19.7%
特選肉200g(サーロイン) + 野菜 + 卵2個 + 前菜 + 〆うどん1,135円5,800円19.6%

上位コースほど原価率が下がっていることに注目してください。

上コースは基本より肉が30g多く卵が1個多い(原価+167円)のに、売価は1,000円高い。粗利は833円増えます。特選コースも同じ構造で、肉を良い部位にして前菜をつけるだけで、売価を2,300円上げつつ原価増は415円に抑えています。

セット率を上げる工夫

  • メニューの最初に「上コース」を載せる:最初に目に入ったものが基準になる(アンカリング効果)
  • 基本コースの横に「+1,000円で上コースに」と書く:差額の小ささが選ばれやすくする
  • 予約時にコース選択を促す:電話やWeb予約で「どのコースにされますか?」と聞くだけでセット率が上がる

仮にセット率が40%で、上コース以上の平均が4,500円だとすると:

1日20人前のうち、上コース以上 = 8人前
追加売上 = 8 × (4,500 − 3,500) = 8,000円/日
月間 = 8,000 × 25日 = 200,000円
追加原価 = 8 × (887 − 720) = 1,336円/日 → 33,400円/月
追加粗利 = 200,000 − 33,400 = 166,600円/月

セットアップグレードだけで月に約17万円の粗利増。年間で約200万円。


季節による原価変動

すき焼きは冬がピークシーズン。需要が増えると牛肉の仕入れ価格も動きます。

牛肉価格の季節変動パターン

時期需要価格傾向対策
12〜2月+10〜20%上昇仕入れ先を複数確保、冷凍ストック
3〜5月標準価格通常運転
6〜8月−5〜10%下落まとめ買い・冷凍ストック推奨
9〜11月中〜高徐々に上昇年末に向けて在庫確保

冬場に肉の価格が20%上がると、1人前あたり105円の原価増(リブロース150gの場合)。1日20人前で月63,000円の利益減少です。

対策として、夏場の安い時期に冷凍ストックを作っておくのが有効です。薄切り肉は冷凍しても品質の劣化が比較的少ない部位です。


牛肉の仕入れコストを下げる方法

仕入れ先の比較

仕入れ先100gあたり(ロース)メリットデメリット
食肉卸(業務用)300〜400円安定品質・大量購入割引最低注文量あり
業務用スーパー280〜380円少量から購入可品質にバラつき
精肉店(地元)350〜500円部位指定・品質高い価格は高め
産地直送250〜350円最安クラス配送時間・ロットが大きい

仕入れコスト削減のポイント

  1. 仕入れ先を2〜3社持つ — 1社に依存すると値上げに対応できない
  2. 部位指定でロスを減らす — 「ロース薄切り・厚さ2mm・150gカット済み」で注文すると、店でのカット作業と端材ロスがなくなる
  3. 冷凍ストックを活用する — 夏場に安く仕入れて冬場に使う
  4. 端材を別メニューに活用する — 切り落としは牛丼やしぐれ煮のランチに回す

月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:25日
  • 1日の平均人数:20人前
  • 平均客単価:4,000円(コース+追加オプション含む)
月間売上 = 20人前 × 4,000円 × 25日 = 2,000,000円

原価率22%の場合(管理が良い店):
原価 = 440,000円
粗利 = 1,560,000円

原価率30%の場合(肉ブレ・卵無料・割り下廃棄あり):
原価 = 600,000円
粗利 = 1,400,000円

差額 = 160,000円/月 = 年間1,920,000円

原価率8ポイントの差が、年間192万円の利益差になります。


今週やること

  • 肉のグラムを部位別に決めて、ポーションスケールで計量する仕組みを作る
  • 割り下の1バッチ分レシピを書き出し、1人前あたりの原価を計算する
  • 卵の追加を有料にする(1個付き・追加100円が現実的)
  • 上コース・特選コースの構成と価格を設計する
  • 〆のうどん・ご飯を追加メニューに入れて、客単価を上げる導線を作る
  • 牛肉の仕入れ先を2〜3社比較して、100gあたり単価を把握する
  • すべての材料を書き出して、1人前の合計原価を出す

関連ガイド


肉・割り下・野菜を登録すれば、1人前の原価が自動で出ます。部位を変えた場合のシミュレーションも一瞬。KitchenCost は無料で使えます。

よくある質問

すき焼き1人前の原価はどれくらい?

関東風すき焼き(肉150g・野菜セット)で650〜850円が目安です。内訳は牛肉450〜600円、割り下40〜50円、野菜・きのこ80〜100円、豆腐・しらたき40〜50円、卵20〜25円。牛肉が全体の65〜75%を占めるため、肉の部位とグラム管理がそのまま利益管理になります。

すき焼きの肉は何グラムが適正?

1人前150gが標準的なラインです。120gだと『肉が少ない』という印象を与えやすく、180gにすると原価率が5〜7ポイント上がります。150gを基準に、ランチは120g・ディナーは150〜180gと使い分ける店もあります。

割り下の原価はどう計算する?

割り下は1バッチ(約2L)の材料費を出し、1人前あたりの使用量で割ります。例えば1バッチの原価が800円で1人前150ml使うなら、1人前あたり約60円。ただし関東風は割り下を鍋に入れますが、関西風は砂糖と醤油を直接入れるので原価構造が異なります。

すき焼きのセットメニューは利益に貢献する?

はい。〆のうどん(原価15〜20円・売価200〜300円)、追加卵(原価20円・売価100円)、ご飯セット(原価30円・売価200円)は原価率が低く、客単価を300〜500円上げながら全体の原価率を改善します。セット率を40%以上にすることが利益改善の近道です。

今すぐ原価を計算してみましょう

材料単価を入力するだけで、レシピ原価・利益率・販売価格を自動計算します。