ステーキハウスは、飲食店のなかでも原価の「振れ幅」が大きい業態です。
同じリブロースを仕入れても、トリミングの仕方で使える量が変わる。スタッフによって焼き加減が違えば、焼き直しでもう1枚使うこともある。ソースを多めにかける人がいれば、それだけ原価が積み上がる。
売上が月300万円あっても、歩留まりと付け合わせを管理していない店では、利益が月20万円も残らないケースがあります。
理由は単純で、肉の仕入れ値と「使える量」のギャップを把握していないからです。
ステーキの原価管理は、「仕入れ単価」ではなく「歩留まり込みの実質単価」から始まります。
先に結論
- ステーキの原価は**肉が70〜75%**を占める。仕入れ単価ではなく歩留まり込みの実質単価で管理する
- リブロースの歩留まりは65〜75%。筋引き・脂取りの度合いで100gあたり80〜120円の差が出る
- サイズ別価格は追加グラムの実質原価×2倍以上を差額にする
- 付け合わせ・サイドメニューは原価率15〜25%。ステーキ単体の高原価率をカバーする主力
- ソースは仕込み単位で原価を出し、ディスペンサーか計量で定量化する
ステーキ1皿の原価を分解する
例:リブロースステーキ200g(税抜2,800円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| リブロース | 200g(実質) | 800円 |
| ガーリックバターソース | 30g | 55円 |
| フライドポテト | 80g | 32円 |
| ミックスサラダ | 60g | 45円 |
| コーン | 30g | 18円 |
| 焼き油(牛脂+オリーブオイル) | 15ml | 25円 |
| 合計 | 975円 |
原価率:975 ÷ 2,800 = 34.8%
※ リブロースは仕入れ100gあたり280円、歩留まり70%として実質100gあたり400円で計算。付け合わせは業務用仕入れ価格の目安。
34.8%は飲食店の標準的な原価率(30〜35%)の上限に近い数字です。ステーキハウスは業態として原価率が高め。だから付け合わせとセット設計で全体の原価率を調整する必要があります。
歩留まり — 原価計算の出発点
ステーキハウスで最も見落とされるのが歩留まりです。
歩留まりとは
仕入れた肉のうち、実際に提供できる部分の割合です。
歩留まり率 = トリミング後の重量 ÷ 仕入れ時の重量
例:リブロース1kg仕入れ → トリミング後700g
歩留まり率 = 700 ÷ 1,000 = 70%
部位別の歩留まりと実質単価
| 部位 | 仕入れ単価(100g) | 歩留まり | 実質単価(100g) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| リブロース | 280円 | 70% | 400円 | サシ多め、人気No.1 |
| サーロイン | 320円 | 75% | 427円 | 脂身の縁取りだけ |
| ヒレ | 400円 | 60% | 667円 | 筋が多い、高級感 |
| ランプ | 200円 | 80% | 250円 | 赤身、トリミング少ない |
| イチボ | 230円 | 75% | 307円 | 赤身と霜降りのバランス |
※ 仕入れ単価は国産牛の業務用卸の一般的な価格帯。輸入牛はこの50〜70%程度。
ヒレに注目してください。 仕入れ単価はリブロースの1.4倍ですが、歩留まりが60%と低いため、実質単価では1.7倍に広がります。ヒレを安く出すと利益が一気に消えます。
歩留まりが変動する3つの原因
1. スタッフによってトリミングの深さが違う
「脂をしっかり取る」スタッフと「軽く取る」スタッフで、歩留まりが5〜10%変わります。リブロース1kgなら50〜100gの差。原価に換算すると140〜280円の差です。
対策:トリミングの見本写真を用意する。 「この状態まで」という基準を目で見える形にする。
2. 端材を使い切れていない
トリミングで出た端材(脂・筋・切れ端)を捨てていませんか。切れ端はまかないやカレー・ハヤシライスに使えます。脂は牛脂として焼き油に。端材の有効活用で、実質歩留まりは5〜8%改善できます。
対策:端材の使い道リストを作成する。
3. 仕入れロットによるバラつき
同じ部位でも、個体差や季節で脂の入り方が違います。夏場は脂が薄く歩留まりが高い傾向。冬場はサシが多く、トリミング量が増えることがあります。
対策:仕入れのたびに歩留まりを記録する。 月ごとの平均を出して、原価計算に反映する。
サイズ別の原価と価格設計
ステーキハウスでは150g・200g・300gの3サイズ展開が一般的です。
リブロースのサイズ別原価
| サイズ | 肉の実質原価 | ソース | 付け合わせ | 油 | 合計原価 | 売価 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 150g | 600円 | 50円 | 95円 | 25円 | 770円 | 2,200円 | 35.0% |
| 200g | 800円 | 55円 | 95円 | 25円 | 975円 | 2,800円 | 34.8% |
| 300g | 1,200円 | 60円 | 95円 | 30円 | 1,385円 | 3,800円 | 36.4% |
300gは原価率が36.4%に上がっています。 肉の追加100gで実質原価が400円増えるのに、売価の差は600円。差額600円に対して原価400円だから利益は200円しか乗っていません。
価格差の設計ルール
パターンA:原価率を揃える
| サイズ | 原価 | 原価率33%の売価 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 150g | 770円 | 2,333円 → 2,300円 | — |
| 200g | 975円 | 2,955円 → 3,000円 | +700円 |
| 300g | 1,385円 | 4,197円 → 4,200円 | +1,200円 |
パターンB:差額を段階的に設定する(現実的)
| サイズ | 売価 | 差額 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| 150g | 2,200円 | — | 35.0% |
| 200g | 2,800円 | +600円 | 34.8% |
| 300g | 3,800円 | +1,000円 | 36.4% |
パターンAは理想ですが、300gが4,200円になると注文が減ります。実際にはパターンBで、300gの差額を1,000〜1,200円に設定して利益を確保するのが現実的です。
差額の目安:追加肉の実質原価の2〜2.5倍。100g(実質400円)の追加なら、差額は800〜1,000円。
ソースの原価管理
ステーキのソースは種類が多いほど管理が複雑になります。
主要ソースの原価(1食分)
| ソース | 使用量 | 原価 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ガーリックバター | 30g | 55円 | 人気No.1、バター価格に注意 |
| 和風おろし | 40ml | 30円 | 大根おろし+ポン酢、安い |
| デミグラス | 40ml | 45円 | 仕込みに時間がかかる |
| わさび醤油 | 20ml | 20円 | 最もシンプル |
| 赤ワインソース | 35ml | 65円 | ワインの銘柄で大きく変動 |
ガーリックバターは人気がありますが、バターの価格高騰(2025年に前年比+15%)の影響で原価が上がっています。ソース全種を同一価格で提供するなら、人気比率を踏まえて平均原価で管理しましょう。
ソースのブレを防ぐ方法
- ディスペンサーで定量化する:スプーン盛りは量がブレる。30mlのディスペンサーで「1プッシュ」と決める
- 仕込み量を標準化する:レシピカードを作成して、新人でも同じ量・同じ味で作れるようにする
- 高原価ソースは追加料金にする:赤ワインソースやトリュフバターなど原価65円以上のソースは+200〜300円で提供する
付け合わせで利益を守る
ステーキ単体の原価率は35〜40%。これを全体で30〜33%に下げるカギが付け合わせとサイドメニューです。
付け合わせの原価(皿に含むもの)
| 付け合わせ | 原価 | 原価に占める割合 |
|---|---|---|
| フライドポテト 80g | 32円 | 3.3% |
| コーン 30g | 18円 | 1.8% |
| ミックスサラダ 60g | 45円 | 4.6% |
| にんじんグラッセ 30g | 12円 | 1.2% |
| 付け合わせ合計 | 107円 | 11.0% |
これらは原価率が低い上に、見た目の満足度を大きく左右します。付け合わせを増やしても原価はほとんど増えないのに、「お得感」は上がります。
サイドメニューの追加注文で利益を積む
| サイドメニュー | 追加原価 | 売価 | 粗利 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| オニオンスープ | 35円 | 300円 | 265円 | 12% |
| シーザーサラダ | 65円 | 450円 | 385円 | 14% |
| ガーリックライス | 55円 | 350円 | 295円 | 16% |
| ベイクドポテト | 40円 | 280円 | 240円 | 14% |
| コーンポタージュ | 30円 | 280円 | 250円 | 11% |
| デザート(アイス2種) | 45円 | 380円 | 335円 | 12% |
スープやサラダの原価率は11〜16%。ステーキ本体の35%に比べて圧倒的に利益率が高い。
セット構成の効果
仮にステーキ200g(2,800円)にサラダ+スープセット(+580円)を付けると:
ステーキ単体:原価975円 ÷ 売価2,800円 = 34.8%
セット追加分:原価100円 ÷ 売価580円 = 17.2%
セット全体:原価1,075円 ÷ 売価3,380円 = 31.8%
原価率が34.8%から31.8%に3ポイント改善。セット率が上がるほど全体の利益が改善します。
セット率を40%に上げるだけで:
1日30食 × 40% × 580円 = 6,960円/日
月間(25日) = 174,000円
追加原価 = 30食 × 40% × 100円 × 25日 = 30,000円
追加粗利 = 174,000 − 30,000 = 144,000円/月
セットだけで月14.4万円の粗利増。年間で約173万円。
肉の仕入れコストを下げる方法
仕入れ先と単価の目安
| 仕入れ先 | 100gあたり(リブロース) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 食肉卸(国産) | 250〜350円 | 品質安定、信頼性 | 価格が高い |
| 食肉卸(輸入) | 150〜220円 | コスト安い | 品質にバラつき |
| 業務用EC | 180〜280円 | 比較しやすい | 送料がかかる |
| 直接仕入れ(牧場) | 200〜300円 | ストーリー性 | ロットが大きい |
コスト削減の実践
- 国産と輸入を組み合わせる:看板メニューは国産、ランチは輸入とわける
- 部位の使い分け:ディナーはリブロース、ランチはランプやイチボで原価を下げる
- 仕入れ単位を大きくする:kg単位で買うと100gあたり10〜30円安くなる
- 端材の活用:カレー、ハヤシ、まかない、ハンバーグの材料にする
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:25日
- 1日の平均食数:30食
- 平均客単価:3,200円(セット含む)
月間売上 = 30食 × 3,200円 × 25日 = 2,400,000円
原価率33%の場合:
原価 = 792,000円
粗利 = 1,608,000円
原価率38%の場合(歩留まりブレ・セット率低い・ソース多め):
原価 = 912,000円
粗利 = 1,488,000円
差額 = 120,000円/月 = 年間1,440,000円
原価率5ポイントの差が、年間144万円の利益差になります。ステーキハウスは客単価が高い分、原価率のブレが利益に与える影響も大きい。
今週やること
- 仕入れている肉の歩留まりを実測する(トリミング前後の重量を量る)
- 歩留まり込みの実質単価を計算し直す
- サイズ別の価格差が追加原価の2倍以上あるか確認する
- ソースの使用量をディスペンサーまたは計量で固定する
- サイドメニューの構成と価格を見直し、セット率の目標を設定する
- 端材の使い道リストを作成して、廃棄を減らす
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