しゃぶしゃぶは肉の業態ですが、利益を決めるのは肉のグラム管理です。
120gで設計した豚しゃぶの肉が、盛り付けで130gになっている。たった10gの差。でもこれが毎日40人分だと、1日で400g。豚バラ100gあたり175円なら、1日700円のズレ。月に18,200円。年間で22万円の利益が消えます。
しゃぶしゃぶは肉だけじゃない。だし、つけだれ、野菜、〆。全部合わせて1人前の原価を出さないと、利益は見えない。
先に結論
- 豚しゃぶ定食1人前の原価は約435円。肉210円が全体の48%を占める
- 肉のグラムが10gズレると月に18,000〜30,000円の利益差
- だし+つけだれで1人60〜90円。月間6〜9万円の固定コスト
- 食べ放題は「平均提供量」の管理がすべて。初回150g+追加50g単位が目安
- 野菜セットは利益の柱。原価率24〜27%で肉の高原価率を補う
豚しゃぶ定食1人前の原価を分解する
例:豚しゃぶ定食(税抜1,450円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 豚バラ肉 | 120g | 210円 |
| 野菜セット(白菜・ネギ・豆腐・えのき) | 1人前 | 120円 |
| だし(昆布だし) | 1人前 | 25円 |
| つけだれ(ごまだれ+ポン酢) | 1人前 | 35円 |
| 〆(うどん) | 1玉 | 45円 |
| 合計 | 435円 |
原価率:435 ÷ 1,450 = 30.0%
※ 豚バラは100gあたり175円(農水省 食品価格動向調査 2026年1月)で計算。
30%は飲食店の目安(30〜35%)のぎりぎり下限。肉を130gに増やすだけで原価が452円になり、原価率は31.2%に上がります。
肉のグラム管理が利益を決める
しゃぶしゃぶの原価で最も影響が大きいのは肉のグラムです。
10gのズレが月間利益に与える影響
| 提供量 | 豚バラ原価 | 1人前合計原価 | 原価率 | 月間差(40人/日) |
|---|---|---|---|---|
| 110g | 193円 | 418円 | 28.8% | — |
| 120g | 210円 | 435円 | 30.0% | +17,680円 |
| 130g | 228円 | 453円 | 31.2% | +35,360円 |
| 140g | 245円 | 470円 | 32.4% | +54,080円 |
120gの設計なのに実際は130〜140gになっていたら、年間で20〜40万円の利益が消えている計算です。
グラムがブレる原因
- 手盛りで目分量:スタッフごとに10〜20gの差が出る
- 見栄えを優先:皿に対して少なく見えるとつい多めに盛る
- 肉のスライスの厚さ:厚切りになると同じ枚数でもグラムが増える
- 解凍後のドリップ:解凍した肉は水分を含んで重量が変わる
対策:提供前にスケールで計量する。 忙しい時間帯は事前にポーション分けして冷蔵庫に入れておく。120gの肉を5〜6枚にスライスし、枚数でも管理できるようにする。
牛しゃぶコースの原価設計
牛しゃぶは客単価が高い分、原価も上がります。コース全体で利益を設計する必要があります。
例:牛しゃぶコース(税抜3,800円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 牛ロース | 150g | 480円 |
| 野菜盛り合わせ | 1人前 | 150円 |
| だし(昆布だし) | 1人前 | 30円 |
| つけだれ(ごまだれ+ポン酢) | 1人前 | 40円 |
| 前菜(胡麻豆腐など) | 1品 | 60円 |
| 〆(雑炊セット) | 1人前 | 50円 |
| デザート(わらび餅など) | 1品 | 80円 |
| 合計 | 890円 |
原価率:890 ÷ 3,800 = 23.4%
牛肉が原価の54%を占める。コースの前菜・デザートは原価率が低いので、コース全体で見ると原価率を抑えられます。
肉の部位別コスト比較
| 部位 | 100gあたり原価 | 150g原価 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 牛ロース | 320円 | 480円 | 定番。脂と赤身のバランスが良い |
| 牛バラ | 245円 | 368円 | コスト重視。脂が多い |
| 牛肩ロース | 290円 | 435円 | ロースより安く、バランスが良い |
| 和牛ロース | 600円 | 900円 | プレミアム。コース5,000円以上向き |
ロースから肩ロースに変えると150gあたり45円の差。1日20食で月間23,400円のコスト削減。ただし味の評価に影響するので、まずは少量テストしてから。
だし・つけだれの原価を見落とさない
「だしとたれなんて大したことない」と思われがちですが、全客数にかかる固定原価です。
だしの原価比較
| だしの種類 | 材料 | 1人前原価 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 昆布だし | 昆布10g | 25円 | 定番。コストが安い |
| 鰹昆布だし | 昆布10g+鰹節5g | 35円 | 風味が良い。やや高い |
| 豆乳だし | 無調整豆乳200ml | 40円 | 女性に人気。コストは高め |
| 火鍋だし | スパイス+唐辛子 | 45円 | 差別化向き。材料費がかかる |
つけだれの原価比較
| たれの種類 | 1人前原価 | 備考 |
|---|---|---|
| ポン酢 | 15円 | 市販品を小分け。最もコストが安い |
| ごまだれ | 35円 | 練りごまが高い。自家製でも30円前後 |
| ポン酢+ごまだれ(両方提供) | 50円 | 2種類提供は1人あたり15円増 |
| 柚子ポン酢(自家製) | 25円 | 季節限定で差別化 |
月間コストの計算
だし25円 + つけだれ50円(2種類) = 75円/人
1日40人 × 75円 = 3,000円/日
月間:3,000円 × 26日 = 78,000円
年間で約94万円。だしとたれだけでこの金額です。
コスト削減のポイント:
- ごまだれを「つけ放題」にしない。小皿で適量を提供し、おかわりは声かけ制にする
- だしは昆布だしをベースにし、鰹だしは上位コースのみにする
- ポン酢は1人あたり30mlに固定(小皿の7分目)
野菜セットで利益を守る
しゃぶしゃぶの利益構造は「肉で原価率が高くなる分を、野菜で下げる」仕組みです。
野菜セット1人前の原価内訳
| 野菜 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 白菜 | 80g | 16円 |
| 長ネギ | 1/3本 | 25円 |
| 豆腐(木綿) | 1/4丁 | 20円 |
| えのき | 1/4袋 | 25円 |
| しいたけ | 2枚 | 18円 |
| 春菊 | 少量 | 16円 |
| 合計 | 120円 |
セット価格500円での原価率:24.0%
野菜追加注文の利益
| 追加メニュー | 原価 | 売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| 野菜盛り追加 | 100円 | 400円 | 25% | 300円 |
| きのこ盛り | 60円 | 350円 | 17% | 290円 |
| 豆腐追加 | 20円 | 150円 | 13% | 130円 |
| 水菜サラダ | 45円 | 300円 | 15% | 255円 |
野菜追加は原価率13〜25%。肉追加(原価率35〜40%)よりはるかに利益率が高い。メニュー上で野菜追加を肉追加と同じくらい目立たせるのが重要です。
食べ放題の原価管理
しゃぶしゃぶ食べ放題は「原価率が読めない」と敬遠されがちですが、平均提供量を管理すればコントロールできます。
食べ放題の平均提供量
| 客層 | 平均提供量 | 肉の原価(豚バラ) |
|---|---|---|
| 男性(20〜40代) | 350〜400g | 613〜700円 |
| 女性(20〜40代) | 200〜250g | 350〜438円 |
| 全体平均 | 280〜320g | 490〜560円 |
食べ放題の原価設計(90分制・豚しゃぶ)
| 項目 | 原価 |
|---|---|
| 肉(平均300g) | 525円 |
| 野菜セット | 120円 |
| 野菜追加(平均1回) | 80円 |
| だし | 25円 |
| つけだれ | 50円 |
| 〆(うどん or 雑炊) | 50円 |
| ドリンクバー原価 | 30円 |
| 合計 | 880円 |
食べ放題価格2,980円での原価率:29.5%
提供量をコントロールする仕組み
食べ放題で原価が膨らむのは「最初にドカンと出す」パターンです。
典型的な失敗パターン:
初回提供 → 200g(一気に大量)
追加1回目 → 100g
追加2回目 → 100g
合計 → 400g(原価率35%超え)
管理されたパターン:
初回提供 → 150g(やや少なめ)
追加1回目 → 50g
追加2回目 → 50g
追加3回目 → 50g
合計 → 300g(原価率30%以内)
初回を150gに抑え、追加を50g単位にする。 追加の間に野菜やだしを勧めることで、肉の総消費量を抑えます。
食べ放題の時間制限の効果
| 時間制限 | 平均肉消費量 | 原価率の傾向 |
|---|---|---|
| 60分 | 250〜280g | 25〜28% |
| 90分 | 280〜320g | 28〜32% |
| 120分 | 350〜400g | 33〜38% |
| 無制限 | 400g+ | 35%+ |
90分制が原価率と顧客満足度のバランスが最も良い。120分にすると原価率が3〜5ポイント上がりますが、客単価はほぼ変わりません。
人件費を含めたプライムコスト
1食あたりの人件費計算
時給1,121円(2025年全国加重平均最低賃金)
1時間の接客・調理数:8食(しゃぶしゃぶは提供後のオペレーションが少ない)
1食あたり人件費 = 1,121 ÷ 8 = 約140円
プライムコスト
豚しゃぶ定食の場合:
材料原価435円 + 人件費140円 = 575円
売価1,450円に対するプライムコスト率 = 39.7%
牛しゃぶコースの場合:
材料原価890円 + 人件費140円 = 1,030円
売価3,800円に対するプライムコスト率 = 27.1%
プライムコスト率は55〜60%以下が目標。豚しゃぶ39.7%、牛しゃぶコース27.1%と、どちらも安全圏です。しゃぶしゃぶは提供後のオペレーションが少ない分、プライムコスト率を低く抑えやすい業態です。
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:26日
- 1日の客数:40人
- 豚しゃぶ60%・牛しゃぶコース30%・食べ放題10%
- 平均客単価:2,200円
月間売上 = 40人 × 2,200円 × 26日 = 2,288,000円
【原価管理が良い場合(原価率28%)】
原価 = 640,640円
粗利 = 1,647,360円
【原価管理が甘い場合(原価率34%)】
原価 = 777,920円
粗利 = 1,510,080円
差額 = 137,280円/月 = 年間1,647,360円
原価率6ポイントの差が年間165万円の利益差。その内訳は:
- 肉のグラムブレ(+10〜20g/人):月40,000〜80,000円
- つけだれの出しすぎ:月15,000〜25,000円
- 食べ放題の初回提供量が多い:月20,000〜30,000円
- 季節の野菜価格を未反映:月10,000〜20,000円
今週やること
- 肉の提供グラムを120g(豚しゃぶ)/150g(牛しゃぶ)に固定し、スケールで計量する
- 忙しい時間帯に備えて、肉のポーション分けを事前に済ませる
- だし1人前・つけだれ1人前の原価を計算し、原価表に反映する
- ごまだれの提供量を小皿で固定し、おかわりは声かけ制にする
- 食べ放題の初回提供量を150gに統一し、追加は50g単位にする
- 野菜追加メニューをメニュー表の目立つ位置に移動する
- 月次で肉の仕入れ単価と消費量を記録し、グラム単価の変動を追跡する
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