ローストビーフ丼は「映える丼」の代名詞。赤身の肉がご飯の上にたっぷり並ぶ写真は、それだけで集客力があります。
でもこのメニュー、**原価管理が甘いと「映えるけど儲からない」**メニューの筆頭にもなりえます。
最大の理由は歩留まりです。生肉500gを買っても、焼き上がりは350gしか残らない。仕入れ値の1.4倍が実質原価——この計算をしていない店が、思ったより多い。
先に結論
- ローストビーフの実質原価は仕入れ値の1.4倍。 焼き縮みで30%減る
- スライスの厚みで見た目と原価が変わる。 薄くスライスすればg数を抑えて映える
- ソース+卵黄で1杯40〜50円。 原価に含めないと利益を見誤る
- サイズ展開で粗利率を改善できる。 特盛は追加原価以上に売価を乗せる
ローストビーフ丼1杯の原価を分解する
例:ローストビーフ丼・並(税抜売価1,200円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| ローストビーフ(焼き上がり) | 90g | 386円 |
| ご飯 | 200g | 38円 |
| グレービーソース | 30ml | 18円 |
| 卵黄 | 1個 | 25円 |
| わさび | 2g | 5円 |
| ねぎ・大葉 | 5g | 3円 |
| 合計 | 475円 |
原価率:475 ÷ 1,200 = 39.6%
ローストビーフ丼は原価率35〜45%が一般的。肉が主役の業態なので30%以下は難しい。粗利額で勝負するメニューです。
歩留まりの計算——ここを間違えると全部狂う
ローストビーフの原価計算で最も大切なのは、焼き縮み(歩留まり)を正確に把握することです。
もも肉ブロックの歩留まり
| 工程 | 重量 | 歩留まり |
|---|---|---|
| 仕入れ(ブロック) | 500g | 100% |
| トリミング後(筋・脂除去) | 480g | 96% |
| 焼成後(低温調理) | 360g | 72% |
| スライス後(端材除去) | 345g | 69% |
500gの肉から使えるスライスは345g。 仕入れ価格3,000円/kgの場合:
仕入れ原価 = 500g × 3円/g = 1,500円
実質単価 = 1,500 ÷ 345g = 4.35円/g
1杯90g = 4.35 × 90 = 約391円
仕入れ価格だけで計算すると270円(3円/g × 90g)。歩留まりを含めると391円。121円の差が毎杯発生します。
月間差額:121円 × 50杯/日 × 25日 = 月に151,250円の過大評価。
スライスの厚みと見た目
ローストビーフ丼はスライスの仕方で「見た目のボリューム」を調整できるのが特徴です。
| スライス厚 | 90gの枚数 | 見た目の印象 |
|---|---|---|
| 5mm(厚め) | 3〜4枚 | 肉感強い、枚数少ない |
| 3mm(標準) | 5〜6枚 | バランス良い |
| 2mm(薄め) | 7〜8枚 | 華やか、たっぷり感 |
同じ90gでも、薄くスライスすれば枚数が増えて「たっぷり感」が出る。 写真映えも良くなるので、集客にもプラス。
スライスの厚みはスライサーの設定で固定する。手切りだとスタッフによってバラつきが大きく、1杯で20〜30gの差が出ます。
ソースと卵黄の原価
ソースと卵黄は「おまけ」ではなく原価の一部です。
グレービーソース1バッチ(25杯分)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 肉汁(焼成時に出る) | 200ml | 0円(肉代に含む) |
| 赤ワイン | 100ml | 40円 |
| 醤油 | 50ml | 10円 |
| みりん | 50ml | 10円 |
| バター | 10g | 8円 |
| にんにく | 5g | 3円 |
| 合計 | 71円 |
ソース原価(1杯30ml)= 71 ÷ 25 = 約3円
安く見えますが、市販のローストビーフソースを使う場合は1杯15〜20円。自家製のほうがコストは下がるが、手間がかかります。
卵黄は1個25〜30円。ソース+卵黄で1杯30〜50円。月に37,500〜62,500円です。
サイズ別の価格設計
| サイズ | 肉量(焼き上がり) | 原価 | 推奨売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|---|
| ミニ | 60g | 365円 | 980円 | 37.2% | 615円 |
| 並 | 90g | 475円 | 1,200円 | 39.6% | 725円 |
| 大盛り | 120g | 585円 | 1,500円 | 39.0% | 915円 |
| 特盛 | 150g | 716円 | 1,900円 | 37.7% | 1,184円 |
特盛は原価+241円に対して売価+700円。 粗利が459円増えます。特盛を注文するお客さんはリピーターが多いので、積極的にメニューに載せる価値があります。
今週やること
- 肉ブロックの焼成前後の重量を3回測り、自店の歩留まり率を出す
- スライサーの厚みを3mmに固定する
- ソースのバッチ原価を計算し、1杯あたりの原価を把握する
- サイズ別の原価率を再計算する
- 端材の転用メニュー(まかない、サラダ、サンドイッチ)を決める
関連ガイド
出典
肉の歩留まりとスライス量を登録すれば、1杯あたりの実質原価がすぐ見えます。仕入れ値が変わったら全メニュー自動更新。KitchenCost を使ってみてください。