「テイクアウト始めたいけど、許可とか届出とか、何が必要かわからない」
コロナ以降、テイクアウトを始める飲食店は増えました。でも法改正がいくつもあって、何が必要で何が不要なのか、正直わかりにくい。保健所に聞けばいいのはわかっているけど、忙しくてなかなか電話できない——そんな店が多いんじゃないでしょうか。
結論から言うと、今の店内メニューをそのまま持ち帰りにするだけなら、追加の許可は基本的に不要です。 ただし「これはダメ」というケースもあるので、ここで整理しておきます。
先に結論
- 店内メニューと同じ料理のテイクアウト → 追加許可なし でOK
- ケーキ・焼き菓子・アイスクリームの製造販売 → 菓子製造業などの別途許可が必要
- 消費期限の目安は製造後2時間以内。 保健所の指導ベース
- アレルギー表示は法的義務なし。 でも自主的にやるべき
- 迷ったら保健所に電話。 相談は無料、10分で終わる
追加許可がいらないケース
飲食店営業許可をすでに持っている店が、以下のことをやる分には追加の許可は不要です。
| やりたいこと | 追加許可 | 理由 |
|---|---|---|
| 店内メニューのお弁当化 | 不要 | 飲食店営業の範囲内 |
| カレーやパスタの持ち帰り | 不要 | 店内提供と同じ料理 |
| 出前・デリバリー | 不要 | 飲食店営業の範囲内 |
| ドリンクのテイクアウト | 不要 | 飲食店営業の範囲内 |
つまり、「普段お客さんに出している料理を、容器に入れて持ち帰ってもらう」だけなら、手続きなしで始められます。
追加許可が必要なケース
ここからが注意が必要なところです。
| やりたいこと | 必要な許可 | ポイント |
|---|---|---|
| ケーキ・焼き菓子を作って売る | 菓子製造業 | 店内メニューにない菓子を新たに製造する場合 |
| アイスクリーム・ジェラートを作って売る | アイスクリーム類製造業 | 菓子製造業では対応できない |
| 弁当を大量に作って別の場所で販売 | そうざい製造業 など | 製造場所と販売場所が異なる場合 |
| 真空パックや瓶詰めで長期保存食品を販売 | 密封包装食品製造業 など | 包装して常温で流通させる場合 |
2021年の法改正で変わったこと
2021年6月の食品衛生法改正で、許可の区分が大きく変わりました。知っておくべきポイントは2つ。
① 菓子製造業の範囲が広がった 以前は「あん類」(あんこを使った和菓子など)を作るには別の許可が必要でしたが、現在は菓子製造業の許可があれば作れるようになりました。調理パン(カレーパン、サンドイッチなど)も菓子製造業の範囲に入りました。
② 許可業種が34→32種に整理された 業種が統合・整理されたため、以前の情報をそのまま信じると間違うことがあります。ネット上には法改正前の情報が多く残っているので注意してください。
テイクアウトで気をつけるべき4つのこと
許可の問題がクリアできたら、次は実際の運用です。ここでトラブルが起きやすい。
1. 消費期限の設定
テイクアウト食品の消費期限について、法律で「何時間以内」という統一ルールはありません。ただし保健所の指導では、製造後2時間以内がひとつの目安とされています。
理由は、調理過程で万が一菌に汚染されても、2時間以内なら食中毒を起こすレベルまで菌が増殖しないから。
実務での対応:
- 容器にラベルを貼る(「お早めにお召し上がりください」)
- 夏場は「調理後1時間以内」に短縮する
- 要冷蔵の場合は保冷剤をつける
2. アレルギー表示
飲食店がその場で調理してテイクアウト販売する場合、法律上のアレルギー表示義務はありません。
でも、やったほうがいい。理由はシンプルで、事故が起きたときに「表示していなかった」ことが問題になるからです。
2025年4月から「くるみ」が表示義務の特定原材料に追加されました。 テイクアウトには直接適用されませんが、お客さんの意識は高まっています。
最低限表示したいアレルゲン(特定原材料8品目):
- 卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば、くるみ
手書きのラベルでも、メニュー表への記載でも構いません。
3. 食中毒を防ぐ温度管理
テイクアウトで最も怖いのは食中毒。店内で食べる場合と違い、持ち帰ってから食べるまでの時間をコントロールできないのが大きなリスクです。
温度管理の基本ルール:
| 温度帯 | 状態 | 対応 |
|---|---|---|
| 10℃以下 | 安全ゾーン | 冷蔵保存、保冷剤の使用 |
| 10℃〜60℃ | 危険ゾーン(菌が最も増えやすい) | この温度帯にいる時間をできるだけ短くする |
| 60℃以上 | 安全ゾーン | 温かいまま提供、保温容器の使用 |
具体的な対策:
- 調理後はすぐに冷ます、またはすぐに渡す
- 夏場は保冷剤を必ずつける
- 生野菜・刺身など傷みやすい食材は避ける(または別容器にする)
- 容器はしっかり蓋が閉まるものを使う
4. 容器と包装のコスト
見落としがちですが、テイクアウトは容器代がかかります。 弁当容器、箸、袋、保冷剤——積み上げると1食あたり50〜100円程度になることも。
テイクアウトメニューの価格を決めるときは、この容器代を原価に含めてください。店内と同じ価格で提供すると、その分だけ利益が減ります。
テイクアウトを始める5ステップ
| ステップ | やること | 目安の時間 |
|---|---|---|
| ① | テイクアウトで出すメニューを決める | 1日 |
| ② | 追加許可が必要か確認する(上の表を参照) | 30分 |
| ③ | 迷ったら保健所に電話して確認する | 10分 |
| ④ | 容器・ラベル・保冷剤を発注する | 1〜2日 |
| ⑤ | 価格を設定する(容器代を含めた原価計算) | 1時間 |
テイクアウトと原価管理のつながり
テイクアウトを始めると、原価の計算が少し複雑になります。
- 容器代が上乗せされる → 店内提供より原価率が上がる
- デリバリーを使う場合 → プラットフォーム手数料(売上の30〜35%)がかかる
- 廃棄ロスのリスク → 作り置きすると廃棄が出やすい
テイクアウトで利益を出すには、メニューごとに「容器代込みの原価」を把握して、価格設定することが必要です。「店内と同じ値段にしておこう」は、知らないうちに利益を削っています。
今週やること
- テイクアウトで出したいメニューを3つ書き出す
- 上の表で追加許可が必要かどうか確認する
- 保健所に電話して「テイクアウトを始めたいが追加許可は必要か」を確認する
- 容器のサンプルを取り寄せて、1食あたりのコストを計算する
- 容器代込みのテイクアウト価格を決める
テイクアウトは売上の新しい柱になりうるけれど、「なんとなく」で始めると許可の問題や食中毒のリスクを抱えることになります。まず保健所に相談する。容器代を含めて原価を計算する。この2つだけ押さえておけば、安心して始められます。
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