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「なんとなく」の売上目標で店を回していませんか──飲食店が利益から逆算して月商を決める5つのステップ

売上目標を感覚で決めていると、忙しいのに手元にお金が残らない。家賃比率・FL比率・損益分岐点から月商を逆算する手順を、居酒屋20坪の実例つきで解説。日商・客数まで分解すれば毎日の行動が変わる。

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目次

忙しい月だったはずなのに、月末に通帳を見ると残高が増えていない。

飲食店を経営している人なら、一度はこの経験があるのではないか。「先月は結構お客さん入ったのに」と思いながら、支払いを終えると手元にほとんど残らない。

売上はあるのに、利益が残らない。 この状態が続くと、だんだん何のために働いているのかわからなくなる。

原因の一つは、売上目標の立て方にある。「去年と同じくらい」「家賃が払えるくらい」「なんとなく月200万」──こういう曖昧な目標で走っていると、忙しさと手取りのギャップに苦しむことになる。

売上目標を「利益から逆算」する理由

多くの飲食店が売上目標を「売上」から考えてしまう。「月商300万を目指そう」と決めて、達成できたら良い月、できなかったら悪い月。

でも本当に大事なのは、月末に自分の手元にいくら残るかだ。

飲食店の営業利益率は、うまくいっている店でも10%前後。月商300万円なら利益は30万円。ここから借入返済や設備投資を引くと、オーナーの手取りはもっと少なくなる。

月商営業利益率月間利益手取り(税引後)
200万円10%20万円15〜17万円
300万円10%30万円23〜26万円
400万円10%40万円30〜35万円
500万円10%50万円38〜43万円

営業利益率が10%から8%に落ちるだけで、月商300万の店は利益が6万円減る。売上を追うより、利益構造を把握する方がはるかに大事なんですよね。

だから売上目標は「いくら売りたいか」ではなく「いくら残したいか」から逆算して立てる。これが基本の考え方。

ステップ1:目標利益を決める

最初に決めるのは「毎月いくら手元に残したいか」。

ここで考えるのは、自分の生活費+将来への備えだ。

  • 自分の生活費(家賃、食費、保険、子どもの学費など)
  • 借入金の返済
  • 設備の修繕積立(年間売上の1〜2%が目安)
  • 税金の支払い準備

たとえば、生活費が月25万円、借入返済が月10万円、積立が月5万円なら、最低でも月40万円は手元に残さないといけない。

ここで「最低限」と「余裕があるライン」の2段階を設定しておくのがおすすめ。 最低ラインを下回ったら即座にコスト見直し、余裕ラインを上回ったら投資に回す──という判断基準になる。

ステップ2:固定費を正確に把握する

次に、毎月必ずかかる固定費を洗い出す。「だいたいこれくらい」ではなく、1円単位で出す。

固定費の項目金額の目安(20坪の居酒屋)
家賃25〜40万円
正社員人件費(固定分)25〜40万円
水道光熱費(基本料金部分)5〜8万円
リース料(厨房機器など)3〜8万円
保険料1〜2万円
通信費、雑費2〜3万円
借入返済5〜15万円
合計66〜116万円

多くの個人飲食店の固定費は、月80〜120万円の範囲に入る。これは売上がゼロでも出ていくお金。

ありがちなミスは、人件費をすべて変動費と考えてしまうこと。アルバイトのシフトは調整できるけど、正社員やオーナー自身の人件費は固定費として扱う方が実態に合っている。

ステップ3:変動費率を計算する

変動費とは、売上に比例して増減するコストのこと。飲食店の主な変動費は以下の3つ。

  • 食材費(原価):売上の28〜38%(業態による)
  • アルバイト人件費:売上の10〜18%
  • 水道光熱費(従量部分):売上の3〜5%
  • クレジットカード手数料:売上の3〜4%
  • 消耗品:売上の1〜2%

合計すると、変動費率はおおむね**55〜65%**になる店が多い。

ここで出てくるのがFL比率という考え方。

FL比率 =(食材費 + 人件費)÷ 売上 × 100

健全な目安は55%以下。これを超えていると、いくら売上を上げても利益が残りにくい。

FL比率状態
50%以下優秀。利益体質
50〜55%健全。標準的な水準
55〜60%注意。利益が薄い
60%以上危険。構造的に赤字リスクが高い

FL比率が60%を超えている場合、まずはメニューの原価を見直すか、シフトの組み方を見直すか。売上目標を上げる前に、この比率を下げる方が効果的だ。

ステップ4:損益分岐点を計算する

ここまでの数字が揃ったら、いよいよ損益分岐点を計算する。

損益分岐点売上 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

この金額を超えた分がすべて利益になる──という分かれ目の数字。

計算例:居酒屋20坪の場合

項目金額
固定費合計100万円
変動費率60%
損益分岐点売上100万 ÷ 0.4 = 250万円

月商250万円を下回ると赤字。これがこの店の「最低ライン」になる。

ここに目標利益を乗せると、必要月商が出てくる。

必要月商 =(固定費 + 目標利益)÷(1 − 変動費率)

月40万円の利益が欲しいなら:

(100万 + 40万)÷ 0.4 = 350万円

月商350万円。これが「なんとなく」ではなく、根拠のある売上目標になる。

この計算で出た数字が「無理だ」と感じたなら、それは売上の問題ではなく固定費か変動費率の問題。 家賃が高すぎないか、FL比率を下げる余地がないか──そこに目を向ける必要がある。

ステップ5:日商・客数に分解する

月商350万円。この数字だけ見ても、日々の行動にはつながらない。だから日割りにする。

月商 → 日商

月商350万円 ÷ 営業日26日 = 日商 約13.5万円

日商 → 客数

日商 = 客単価 × 客数

居酒屋で客単価3,500円なら:

13.5万円 ÷ 3,500円 = 約39人/日

客数 → 席数 × 回転率 × 稼働率

客数 = 席数 × 回転率 × 客席稼働率

20坪の居酒屋で席数30席、回転率1.5回、稼働率70%なら:

30席 × 1.5回 × 70% = 31.5人

あれ。39人必要なのに、31.5人しか来ない計算になる。

7.5人足りない。 これをどうするか──ここからが具体的な打ち手の話になる。

改善の方向具体策効果の目安
客単価を上げるセットメニュー導入、おすすめ声かけ+300〜500円/人
回転率を上げるランチ営業追加、回転率の高い時間帯強化+0.2〜0.5回
稼働率を上げる予約促進、平日限定メニュー+5〜10%
営業日を増やす定休日の見直し+1〜2日/月

たとえば客単価を3,500円→4,000円にできれば:

13.5万円 ÷ 4,000円 = 約34人/日

30席 × 1.5回 × 70% = 31.5人に、稼働率を75%に上げれば 30 × 1.5 × 75% = 33.8人。ほぼ届く。

こうやって分解すると、「月商350万円」という大きな数字が、「客単価500円アップ+稼働率5%アップ」という具体的なアクションに変わる。

まとめると──居酒屋20坪のケース全体像

ステップ内容この店の数字
①目標利益手元に残したい金額月40万円
②固定費毎月必ずかかる費用月100万円
③変動費率売上に比例するコスト比率60%
④損益分岐点赤字と黒字の分かれ目月商250万円
⑤必要月商利益を出すための売上月商350万円
日商営業日で割った日の売上13.5万円/日
必要客数客単価で割った人数39人/日(客単価3,500円)
改善後客単価UP+稼働率UP34人/日(客単価4,000円)

よくある失敗パターン

①「去年と同じ」で目標を決める

去年がたまたま良かっただけかもしれない。去年と同じ目標を設定しても、食材費の高騰や周辺の競合変化で利益構造は変わっている。毎年、固定費と変動費率を計算し直すべき。

②売上だけを見て利益を見ない

「今月は250万いった!」と喜んでも、FL比率が65%なら手元にはほとんど残らない。売上と一緒に、利益率もチェックする習慣をつけたい。

③日商を追わない

月商目標だけ設定して、月末に「あ、足りなかった」と気づく。日商を毎日チェックしていれば、月の半ばで軌道修正できる。POSレジのデータを毎日見るだけで変わる。

今週やること──チェックリスト

売上目標の見直しは、大がかりな作業じゃない。以下を1つずつ潰していくだけでいい。

  1. 自分の生活費+返済+積立を合計して、目標利益を決める
  2. 先月の固定費をすべて書き出す(家賃、正社員人件費、リース料、保険、通信費、返済)
  3. 先月のFL比率を計算する(食材費+人件費)÷ 売上。55%を超えていたら要注意
  4. 損益分岐点を計算する(固定費 ÷(1−変動費率))
  5. 必要月商を出して、日商・客数に分解する

全部のメニューの原価を一覧にしておくと、FL比率の改善策が見えやすくなる。KitchenCostに食材と分量を入れておけば、メニューごとの原価率が自動で出るので、どのメニューが利益に貢献しているか、どこに改善余地があるかがすぐにわかる。

目標は「感覚」から「数字」に変えるだけで、毎月の景色が変わるはず。

よくある質問

飲食店の売上目標はどうやって決めればいいですか?

「いくら売りたいか」ではなく「いくら手元に残したいか」から逆算します。目標利益に固定費を足し、変動費率で割ると必要月商が出ます。たとえば月30万円の利益が欲しく、固定費が120万円、変動費率が60%なら、必要月商は(30万+120万)÷(1−0.6)=375万円です。

飲食店の家賃は売上の何%が目安ですか?

一般的に売上の10%以下が健全とされています。つまり家賃が30万円なら月商300万円以上が目安。家賃比率が15%を超えると利益を圧迫しやすく、立地が良くても経営が苦しくなるケースが増えます。物件を決める前に、この逆算をやっておくと失敗を防げます。

FL比率とは何ですか?

Food(食材費)とLabor(人件費)を合わせた比率のことで、売上に対して55%以下が目安です。たとえば月商300万円なら食材費と人件費の合計が165万円以内に収まっているかを確認します。F30%+L25%=55%が一つの基準ですが、業態によって変わるので自分の店の実態を把握することが先です。

損益分岐点売上高はどう計算しますか?

固定費÷(1−変動費率)で求められます。固定費が月120万円、変動費率が60%なら、120万÷0.4=300万円。この金額を下回ると赤字です。まずは自分の店の固定費と変動費率を正確に洗い出すことが第一歩になります。

売上目標を日割りにするメリットは何ですか?

月商だけだと月末まで進捗がわかりません。日割りにすると「今日はあと2万円足りない」と具体的に見えるため、当日のおすすめ変更や声かけで調整ができます。月商300万円÷営業日25日=日商12万円。この数字を毎日見ることで、経営の感覚が大きく変わります。

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