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パスタ専門店の原価ガイド:麺は安いのに、なぜ利益が残らないのか

パスタ1皿の原価を麺・ソース・具材・付け合わせに分解。乾麺の歩留まり計算、ソース別の原価率比較、3段階の価格設計で利益を安定させる方法を実例で解説します。

更新 2026年2月18日
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目次

「麺は安いから、パスタ専門店は利益が出やすい」。

これは半分だけ正しい。乾麺100gの原価は20〜30円。確かに安い。でも、1皿の原価のうち麺が占める割合は15〜20%程度です。残りの80%以上はソース、具材、チーズ、オイル——そこの管理ができていなければ、いくら麺が安くても利益は残りません。

特にクリーム系やチーズ系は材料費が膨らみやすい。生クリーム200mlで80円、パルミジャーノ15gで40円。「なんとなく多め」に入れていると、1皿の原価が50円以上変わることがあります。

パスタ専門店の原価管理は、ソースの仕込みとチーズの計量で決まります。


先に結論

  • パスタの原価は**ソースと具材が70〜80%**を占める。麺が安くても油断できない
  • 乾麺は歩留まり2.3倍(100g→230g)。茹で上がり量で管理すること
  • メニューはトマト・オイル系(低原価)/ クリーム系(中原価)/ 海鮮・肉系(高原価)の3段階で設計
  • ソースは必ずバッチ仕込みで原価管理する。オーダーごとの調理はブレの原因
  • チーズとオイルの「仕上げ」が原価を左右する。計量を仕組み化する

パスタ1皿の原価を分解する

例1:ペペロンチーノ(税抜950円)

項目原価
乾麺(スパゲッティ1.6mm)100g25円
オリーブオイル20ml32円
にんにく1片(5g)8円
鷹の爪1本3円
パセリ少々5円
塩・茹で湯2円
合計75円

原価率:75 ÷ 950 = 7.9%

ペペロンチーノは原価率が圧倒的に低い。ただし「オリーブオイルと塩だけ」の料理だからこそ、味の差が出やすく、オイルのグレードを上げると原価が跳ねます。高品質なEXVオリーブオイル(20mlで60円以上)を使う店では、原価率が13%まで上がります。


例2:ミートソース(税抜1,100円)

項目原価
乾麺100g25円
ミートソース(バッチ仕込み)120g85円
パルミジャーノ10g28円
オリーブオイル(仕上げ)5ml8円
パセリ少々5円
合計151円

原価率:151 ÷ 1,100 = 13.7%

※ ミートソースの内訳:合挽き肉300g(390円)、玉ねぎ150g(30円)、にんじん80g(16円)、セロリ50g(20円)、トマト缶400g(120円)、赤ワイン100ml(50円)、調味料(40円)。仕込み量約1.5kgで約12人前。1人前あたり約56円+仕上げのチーズ。


例3:カルボナーラ(税抜1,250円)

項目原価
乾麺100g25円
ベーコン(ブロック)40g72円
卵黄2個30円
生クリーム50ml40円
パルミジャーノ15g42円
ペコリーノ5g18円
黒胡椒少々3円
合計230円

原価率:230 ÷ 1,250 = 18.4%

カルボナーラはチーズとベーコンのグレードで原価が大きく変わります。パンチェッタ(40gで120円前後)を使うと1皿の原価が280円を超えます。


例4:海鮮パスタ(ペスカトーレ)(税抜1,400円)

項目原価
乾麺100g25円
エビ3尾(40g)90円
あさり60g50円
イカ30g35円
ムール貝2個30円
トマトソース(バッチ)100g48円
白ワイン30ml20円
にんにく1片8円
オリーブオイル15ml24円
パセリ少々5円
合計335円

原価率:335 ÷ 1,400 = 23.9%

海鮮系は魚介の仕入れ値が日によって変わるため、原価率のブレが一番大きい。エビが高騰した週は3尾→2尾にする判断も必要です。


乾麺の歩留まりと原価計算

パスタの麺原価を正確に出すには、**歩留まり(茹で上がり倍率)**を知る必要があります。

主要パスタの歩留まり

種類乾燥量茹で上がり量倍率100gあたり原価
スパゲッティ(1.6mm)100g230g2.3倍20〜30円
リングイネ100g220g2.2倍25〜35円
ペンネ100g200g2.0倍25〜35円
フジッリ100g210g2.1倍30〜40円
生パスタ(タリアテッレ等)100g140g1.4倍60〜100円

乾麺は水を吸って2倍以上に膨らみます。1人前の茹で上がり量を230gに設定するなら、乾麺100gで1人前。歩留まりを知らないまま「茹で上がり200g」で管理していると、乾麺を115g使うことになり、原価が15%増えます。

茹で方のブレが原価に与える影響

茹で時間が長すぎると水分を吸いすぎて重くなり、食感もぼやけます。短すぎるとアルデンテを超えて芯が残る。茹で時間はタイマーで管理し、乾麺の重量を計量してから鍋に入れるのが基本です。

「だいたい一掴み」で管理している店は、1人前が80g〜120gまでブレます。差額は最大10円/皿。1日50食なら月15,000円のロスです。


ソースの原価管理:バッチ仕込みが基本

パスタの原価が安定しない最大の原因は、ソースの仕込みがバッチ管理されていないこと。

バッチ仕込みの考え方

「トマトソース5L仕込んで、何人前取れるか」を計算します。

トマトソース(ベース)のバッチ原価

材料原価
ホールトマト缶2kg(5缶)600円
玉ねぎ500g100円
にんにく30g(6片)48円
オリーブオイル80ml128円
バジル(乾燥)5g30円
塩・胡椒・砂糖20円
合計約3kg926円

煮込み後は水分が蒸発して約2.5kgに減ります。1人前100gとすると:

1バッチ = 約25人前
1人前あたり = 926 ÷ 25 = 37円

これをベースにして、マリナーラ(+海鮮)、アラビアータ(+鷹の爪)、ボロネーゼ(+挽き肉)に展開します。ベースソースを共通化すると、仕込みの手間が減り、ロスも減ります。

ソース仕込みで原価がブレる3つの原因

1. 計量しないで材料を入れる

玉ねぎを「2個くらい」で入れると、玉ねぎの大きさによって100〜200gの差が出ます。1人前あたりの影響は小さくても、1週間分の仕込みで合計すると数百円のブレになります。

対策:キッチンスケールで材料を計量する。 レシピカードに全材料のg数を明記する。

2. 煮込み時間の管理不足

トマトソースを長く煮込みすぎると、3kgが2kgまで減ることがあります。味は濃くなるけれど、25人前が17人前になる。1人前あたりのソース原価が37円から55円に増えます。

対策:煮込み時間をタイマーで管理し、目標重量を決める。 「仕上がり2.5kg」と明記しておく。

3. 仕上げのオイルとチーズが「気分」で増える

ソース自体は管理していても、仕上げにかけるオリーブオイルとパルミジャーノの量がスタッフによって違う。15mlのはずが30ml入れると、1皿あたり24円の原価増です。

対策:オイルはディスペンサーで定量化する。チーズは専用の計量カップか目安の回数(「おろしで3回」等)を決める。


3段階の価格設計でメニューを組む

パスタメニューは、原価率が大きく異なるカテゴリを意図的に混ぜることで、全体の平均原価率をコントロールします。

3ゾーンの価格設計

ゾーン代表メニュー原価率目安売価帯役割
ベースペペロンチーノ、ポモドーロ、アーリオ・オーリオ8〜15%900〜1,000円利益の柱。注文比率40%が理想
ミドルボロネーゼ、カルボナーラ、明太パスタ14〜22%1,100〜1,300円客単価の主力。注文比率40%
プレミアムペスカトーレ、ウニクリーム、黒トリュフ22〜35%1,400〜1,800円客単価を引き上げる。注文比率20%

この比率で回すと、メニュー全体の平均原価率は約20〜25%になります。

注文比率が崩れるとどうなるか

仮にプレミアムの注文比率が40%に上がると:

ベース 30% × 原価率12% = 3.6%
ミドル 30% × 原価率18% = 5.4%
プレミアム 40% × 原価率30% = 12.0%
合計 = 21.0%(想定から+3〜4ポイント)

逆にベースばかり出ると客単価が下がります。「おすすめ」でミドルゾーンを推すのが、原価率と客単価のバランスを取る王道です。


生パスタ vs 乾麺:原価と価格の判断

原価比較

項目乾麺(100g)生パスタ(120g)
麺原価25円80円
茹で上がり230g168g
茹で時間8〜10分2〜3分
食感アルデンテもちもち
売価上乗せ+200〜300円

生パスタは原価が3倍だけど、売価も高く設定できます。手打ち生パスタを看板にすれば、1皿1,500〜1,800円でも受け入れられる。ただし自家製の場合は粉・卵・人件費を加味した原価で計算する必要があります。

自家製生パスタの原価(10人前)

材料原価
セモリナ粉600g180円
強力粉400g100円
6個120円
10g2円
オリーブオイル20ml32円
合計約1.2kg434円

1人前 = 434 ÷ 10 = 約43円

市販の生パスタ(80円/人前)より安いですが、製麺の作業時間がかかります。1時間で10人前作れるなら、時給1,200円の場合、人件費込みの原価は163円/人前です。


付け合わせとサイドで客単価を上げる

パスタ単品の客単価は1,000〜1,200円程度。ドリンクとサイドで客単価を上げるのがパスタ専門店の利益構造です。

サイドメニューの原価と利益

メニュー原価売価粗利原価率
本日のスープ30円250円220円12%
シーザーサラダ65円450円385円14%
フォカッチャ(2切)20円200円180円10%
ティラミス80円500円420円16%
ドリンク(コーヒー)25円350円325円7%

セット(パスタ+サラダ+ドリンク)を1,500円で出す場合:

パスタ原価(ミドル平均)= 190円
サラダ原価 = 65円
ドリンク原価 = 25円
セット原価合計 = 280円
セット原価率 = 280 ÷ 1,500 = 18.7%

パスタ単品よりセットのほうが客単価が300円上がって、原価率は下がる。ランチセットの導入はほぼ必須です。


月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:25日
  • 1日の来客数:40組(ランチ25、ディナー15)
  • 平均客単価:1,350円(セット込み)
月間売上 = 40組 × 1,350円 × 25日 = 1,350,000円

原価率25%の場合:
原価 = 337,500円
粗利 = 1,012,500円

原価率30%の場合(チーズ/オイル管理甘い、海鮮系比率高い):
原価 = 405,000円
粗利 = 945,000円

差額 = 67,500円/月 = 年間810,000円

5ポイントの原価率差が年間81万円の利益差になります。


原価が崩れる4つの原因

1. チーズの「追いがけ」

パルミジャーノを仕上げにかける量が管理されていない。10gのつもりが20gだと、1皿28円の原価増。1日40食で月28,000円。

2. オリーブオイルの種類と量

料理用(リットル700円前後)と仕上げ用(リットル2,000円以上)を分けていない店は、すべてに高いオイルを使って原価が膨らみます。

3. 海鮮の仕入れ変動

エビ、あさり、イカの仕入れ値は季節で2〜3倍変わることがあります。仕入れ値が変わったのにメニュー価格を据え置くと、原価率が跳ねます。

4. 茹で直し

オーダーが立て込んだとき、茹ですぎた麺を捨てて茹で直すケースがあります。1回の茹で直しで麺の原価が倍(25円→50円)。ピーク時に5回起きれば月3,000円以上のロスです。


今週やること

  • 乾麺の使用量を計量器で管理する(「一掴み」をやめる)
  • ソースはバッチ仕込みし、仕込み量と取れる人数を記録する
  • パルミジャーノとオリーブオイルの1皿あたりの使用量を決める
  • メニューをベース/ミドル/プレミアムの3段階に分類し、注文比率を把握する
  • ランチセット(パスタ+サラダ+ドリンク)を設計する
  • 海鮮系メニューの仕入れ値を月次で確認し、価格を見直す仕組みを作る

関連ガイド


麺・ソース・具材を登録すれば、1皿の原価が自動で出ます。メニューごとの原価率もひと目で比較。KitchenCost は無料で使えます。

よくある質問

パスタ1皿の原価はどれくらい?

トマトソース系(ペペロンチーノ含む)は110〜160円、クリーム系は180〜260円、肉系(ボロネーゼ等)は200〜280円が目安です。乾麺100gの原価は20〜30円と安いため、原価の70〜80%はソースと具材で決まります。

パスタ専門店の原価率は何%が目安?

メニュー全体で28〜33%が目安です。トマト・オイル系は20〜25%、クリーム系は28〜35%、海鮮系は30〜38%と幅があります。低原価のトマト・オイル系と高原価の海鮮系をバランスよく配置し、平均で30%前後に収めるのが基本です。

乾麺と生パスタで原価はどれだけ変わる?

乾麺は100gあたり20〜30円、生パスタは100gあたり60〜100円で、約3倍の差があります。ただし生パスタは売価を200〜300円上乗せできるため、原価率は大きく変わりません。手打ちの場合は人件費も加味して判断する必要があります。

ソースはどう原価管理すべき?

バッチ(仕込み単位)で原価を計算し、1人前あたりに割ります。例えばトマトソース5L分の仕込み原価が2,800円で50人前取れるなら、1人前56円。毎回オーダーごとに作ると材料のロスが出やすく、原価も安定しません。

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