寒い日に立ち寄るおでん屋。大根に卵、ちくわに巾着。温かいだしと一緒に食べると、それだけで幸せだ。
おでん1品の価格は80〜200円。お客さんにとっては「安くて気軽な食事」だが、店側にとっては1品あたりの粗利が50〜100円しかない。
だからこそ積み上げが全て。だしのコスト、具材の仕込み数、売れ残りの廃棄——小さなズレの積み重ねが、月末の利益を大きく変える。
先に結論
- おでんの原価は「だし + 具材」の積み上げ。 1品の原価は10〜80円と安いが、粗利も小さい
- だしは鍋単位で管理。 1杯あたり16〜24円。コストは安いが「味のブレ」が客離れに直結する
- 売れ残り廃棄が最大のリスク。 仕込み数を曜日別に管理して、追加仕込みで対応する
- セット販売で客単価を上げる。 5品セットで粗利を安定させる
だしの原価——鍋単位で計算する
おでんの味を決めるだし。原価は意外と安い。
だし1鍋(10L・約50杯分)
| 材料 | 金額 |
|---|---|
| 昆布(30g) | 90円 |
| かつお節(50g) | 150円 |
| 醤油 | 120円 |
| みりん | 80円 |
| 塩 | 10円 |
| 水(10L) | — |
| 合計 | 450円 |
だし1杯(200ml)あたり = 450円 ÷ 50杯 = 9円
もっと贅沢なだし(昆布多め、鰹節を追い鰹)でも1杯20〜25円程度。だしの原価は全体の中では小さい。
ただし——だしは具材を煮込むにつれて味が移り、補充が必要。 追い鰹やだし汁の足し方にルールを作らないと、1日の終わりには「味が薄いおでん」になってしまう。
具材別の原価を把握する
おでんの具材は、原価の幅が大きい。
主要具材の原価と売価設計
| 具材 | 原価 | 推奨売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| 大根(1切れ) | 15円 | 100円 | 15% | 85円 |
| こんにゃく(1切れ) | 12円 | 80円 | 15% | 68円 |
| 卵(1個) | 23円 | 100円 | 23% | 77円 |
| ちくわ(1本) | 25円 | 100円 | 25% | 75円 |
| 厚揚げ(1切れ) | 30円 | 120円 | 25% | 90円 |
| はんぺん(1枚) | 35円 | 120円 | 29% | 85円 |
| 巾着(もち入り) | 50円 | 150円 | 33% | 100円 |
| 牛すじ串(1本) | 65円 | 180円 | 36% | 115円 |
| ロールキャベツ | 55円 | 150円 | 37% | 95円 |
| だし巻き玉子 | 45円 | 150円 | 30% | 105円 |
大根とこんにゃくは原価率15%。 おでんの利益の柱。逆に牛すじとロールキャベツは原価率35%超えで、粗利額は高いが売れすぎると全体の原価率が上がる。
セット販売で利益を安定させる
おでんは1品ずつの注文だと客単価が安くなりがち。セット販売で客単価を上げるのが基本戦略。
5品セット(税抜500円)の設計例
| 構成 | 原価 |
|---|---|
| 大根 | 15円 |
| こんにゃく | 12円 |
| 卵 | 23円 |
| ちくわ | 25円 |
| 厚揚げ | 30円 |
| だし(1杯分) | 9円 |
| 合計 | 114円 |
原価率:114 ÷ 500 = 22.8%。低原価具材を3品入れることで、セット全体の原価率を抑えている。
ここに日本酒やビールを加えると客単価が一気に上がる。 ドリンクの原価率は15〜20%。おでんセット+ドリンクで1人800〜1,000円、原価率20%台をキープできる。
セット構成のルール
- 低原価具材を3品以上入れる。 大根、こんにゃく、卵は必ず
- 高原価具材は単品追加で。 「セットに+150円で牛すじ追加」
- 季節限定の具材は単品で値付け。 トマトおでん、ロールキャベツなど
売れ残り管理——おでん最大のリスク
おでんは長時間煮込む業態だからこそ、売れ残り(廃棄)のリスクが大きい。
具材別の持ち越し可否
| 具材 | 翌日持ち越し | 理由 |
|---|---|---|
| 大根 | ○ | 味が染みてむしろ美味しくなる |
| こんにゃく | ○ | 劣化しにくい |
| 卵 | △ | 翌日は味が入りすぎるが食べられる |
| ちくわ | △ | 膨張して食感が変わる |
| はんぺん | × | 翌日はぶよぶよになる |
| ちくわぶ | × | 膨張して崩れる |
| 巾着 | × | 餅が溶けて形が崩れる |
持ち越せない具材ほど仕込み数を慎重にする。 はんぺんやちくわぶは「追加仕込み」で対応するのが原則。
仕込み数の曜日別管理
| 曜日 | 来客予測 | 仕込み量 |
|---|---|---|
| 月〜水 | 少ない | 標準の70% |
| 木 | 普通 | 標準の90% |
| 金 | 多い | 標準の120% |
| 土 | 最も多い | 標準の130% |
| 日 | 少ない〜普通 | 標準の80% |
天候でも大きく変わる。 雨の日は来客が30%減ることもある。天気予報を見て仕込み量を調整するのが実務。
おでんの季節性——冬で年間利益を稼ぐ
おでんの売上は10月〜3月に70〜80%が集中する。
冬(6ヶ月):月売上100万円 × 6ヶ月 = 600万円
夏(6ヶ月):月売上30万円 × 6ヶ月 = 180万円
年間合計:780万円
冬の6ヶ月で年間利益の大部分を稼ぐ計算。だからこそ冬の原価管理を徹底することが重要。
夏場の対策:
- 冷やしおでんメニュー
- 一品料理・居酒屋メニューの拡充
- ランチ営業の追加
今週やること
- だしの材料費を「1鍋あたり」で計算し、1杯あたりの原価を出す
- 主要具材10品の原価を出して、売価と原価率を確認する
- 5品セットの構成と価格を決める(低原価具材3品以上)
- 曜日別の仕込み数を設定する(月〜水は少なめ、金土は多め)
- 持ち越せない具材(はんぺん、ちくわぶ、巾着)は追加仕込みルールを決める
おでんは1品の粗利が小さいからこそ、仕込みと廃棄のコントロールが利益を決める。まずは主力10品の原価を出して、セットの構成を見直すところから始めてみてほしい。
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