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飲み放題、生ビール3杯目で赤字に突入している——杯数と氷で利益を守る原価設計

飲み放題90分で平均5.2杯。生ビール比率が50%を超えると原価率35%を突破する。杯数管理、ビール比率のコントロール、氷・レモン・ストローの積み上げまで含めた利益設計をまとめました。

公開 2026年2月4日
·
更新 2026年2月18日
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目次

「飲み放題、始めてから売上は増えたんだけど……利益がぜんぜん伸びない」

居酒屋のオーナーと話すと、10人中7人がこう言う。

理由はだいたい同じで、生ビールの杯数を把握していない

飲み放題90分で平均5.2杯。そのうち生ビールが3杯を超えた時点で、原価率は30%を突破する。ビール1杯の原価は120円。ハイボールの45円と比べると2.7倍だ。4人組の団体が全員ビール党だった日は、その卓だけで赤字になっていることもある。

「でもビールがなかったら飲み放題にならないでしょ」——その通りだ。ビールをなくすのではなく、ビール以外を魅力的にして比率を下げるのが飲み放題の利益設計だ。

先に結論

  • 飲み放題の原価は「ビール比率」で決まる。 ビール40%なら原価率29%、60%なら35%超え
  • 90分と120分は別料金が鉄則。 杯数が5.2杯→7.1杯に増えるのに同額は赤字
  • 氷・レモン・ストローも原価。 1杯5円でも月に2.5万円
  • 提供スピードを落とすのは悪手。 満足度が下がってリピートが消える
  • フード条件をつけると全体の原価率が下がる。 「お料理2品以上」で利益を安定させる

飲み放題の基本計算式

1人あたり原価 = Σ(各ドリンク原価 × 想定杯数)+ 付随原価(氷・レモン等)
原価率 = 1人あたり原価 ÷ 税抜価格

この計算を客層別・時間帯別でやらないと、利益が出ているのかどうかわからない。


1杯あたりの原価を出す

まず、自店のドリンク原価を1杯単位で把握する。

ドリンク原価備考
生ビール(中ジョッキ350ml)120円樽の仕入れ単位で計算。ロス率5〜8%含む
ハイボール45円ウイスキー30ml+炭酸水
レモンサワー55円焼酎30ml+炭酸水+レモン
梅酒ソーダ65円梅酒45ml+炭酸水
カシスオレンジ70円カシスリキュール30ml+OJ
ソフトドリンク20円コーラ・ウーロン茶等
付随原価(氷・レモン・ストロー等)5円/杯見落とされがち

生ビールの120円と、ハイボールの45円。 この差が飲み放題の利益構造をすべて決める。

ビールの「見えないロス」

ビールは樽から注ぐときに泡が出る。この泡を「もったいない」と思って抜くと、1杯あたり50〜80mlのビールが無駄になる。10L樽から取れる杯数は約25杯(350ml)が理想だが、泡の管理が悪いと22杯に減る。

泡ロスなし:10L ÷ 0.35L = 28.6杯
泡ロスあり(8%):10L × 0.92 ÷ 0.35L = 26.3杯
実質ロス:2杯分 = 約240円/樽

月に樽を30本使うなら、泡ロスだけで7,200円/月。 ビールサーバーの温度管理とガス圧調整だけで防げるコストだ。


90分飲み放題の原価(想定5.2杯)

杯数の想定(平均的な客層)

  • 生ビール 2杯
  • ハイボール 1.5杯
  • サワー・カクテル 1杯
  • ソフトドリンク 0.7杯

原価内訳

ドリンク杯数原価小計
生ビール2杯120円240円
ハイボール1.5杯45円68円
サワー・カクテル1杯60円60円
ソフトドリンク0.7杯20円14円
付随原価5.2杯5円26円
合計408円
飲み放題価格 1,500円(税抜1,364円)
原価率 = 408 ÷ 1,364 = 29.9%

30%ぎりぎり。これは**ビール比率38%**の場合だ。


120分飲み放題の原価(想定7.1杯)

杯数の想定

  • 生ビール 3杯
  • ハイボール 2杯
  • サワー・カクテル 1杯
  • ソフトドリンク 1.1杯

原価内訳

ドリンク杯数原価小計
生ビール3杯120円360円
ハイボール2杯45円90円
サワー・カクテル1杯60円60円
ソフトドリンク1.1杯20円22円
付随原価7.1杯5円36円
合計568円
飲み放題価格 2,000円(税抜1,818円)
原価率 = 568 ÷ 1,818 = 31.2%

90分との差は160円の原価増。価格差を500円つけることで利益を確保する。 90分と120分を同じ価格にしている店は、120分プランで確実に損している。


ビール比率で利益が壊れる

飲み放題の原価率はビール比率にほぼ比例する。

ビール比率別の原価率(90分・5.2杯の場合)

ビール比率ビール杯数1人あたり原価原価率(税抜1,364円)
20%1.0杯310円22.7%
40%2.1杯410円30.1%
50%2.6杯460円33.7%
60%3.1杯530円38.9%
80%4.2杯620円45.5%

ビール比率が40%→60%になるだけで、原価率が30%→39%に跳ね上がる。ビール党の忘年会シーズン(12月)は、平時より原価率が5〜8ポイント高くなる。 季節で飲み放題の価格を変えている店は少ないが、検討する価値はある。


ビール比率を下げる5つの方法

ビールをメニューから外すのは現実的ではない。ビール以外を選びたくなる仕組みを作る。

1. ハイボール・サワーの種類を増やす

ビール:1種類(生ビール)に対して、ハイボール:4種類(角・黒・ジンジャー・コーラ割り)、サワー:5種類。選択肢が多いほうに人は流れる。 メニュー表のスペースも「ビール1行 vs ハイボール&サワー10行」にする。

2. 「最初の1杯」でビールを出す

最初の乾杯だけ生ビールにし、2杯目以降はハイボール・サワーを薦める。「2杯目からはこちらもおすすめです」とスタッフが声をかけるだけで、ビール比率が10〜15ポイント下がるという店もある。

3. プレミアムプランでビールを差別化

「スタンダード飲み放題1,500円(ビールなし)」「プレミアム飲み放題2,000円(生ビール付き)」。ビールに追加料金を載せることで、ビール原価を直接回収する。

4. ノンアルコールを充実させる

ノンアルビール(原価40〜50円)、ノンアルカクテル(原価25〜35円)を増やす。飲めない人が「とりあえずビール」の代わりにノンアルを選ぶと、その分だけビール比率が下がる。

5. ピッチャー提供をやめる

ピッチャーで出すと1人あたりの消費量が30〜50%増える。ジョッキ1杯ずつの提供に統一するだけで、平均杯数が下がる。


時間帯・曜日でプランを分ける

飲み放題の原価率は、客層によって大きく変わる。

客層平均杯数ビール比率原価率の目安
金曜の会社飲み6.5杯55%34〜38%
土曜の友人グループ5.0杯35%26〜30%
女子会4.2杯15%20〜24%
忘年会(12月)7.5杯60%38〜42%

忘年会シーズンは通常の1.5倍近い原価になる。 12月だけ飲み放題を200〜300円上げている店もある。逆に女子会プランは原価率が低いので、価格を下げて集客に使える。


氷・レモン・ストローの積み上げ

「1杯5円」と聞くと無視したくなる金額だ。でも積み上げると——

付随原価 5円/杯 × 5.2杯/人 × 40人/日 × 26日 = 27,040円/月

月に2.7万円。 年間で32万円。これを原価に入れていない店は、その分だけ利益を見誤っている。

内訳:

  • 氷(製氷機の電気代含む):2〜3円/杯
  • レモン(1/8カット):1〜2円/杯
  • ストロー:0.5〜1円/杯
  • おしぼり(使い捨て):3〜5円/人

フード条件で利益を安定させる

飲み放題単体では利益が薄い。フードの注文条件をつけることで、全体の利益率を上げる。

フード条件の例

条件フード原価率の目安効果
料理2品以上注文必須28〜32%客単価UP+利益安定
コース料理+飲み放題セット25〜30%原価の予測精度が上がる
フードなし飲み放題原価率35%超えのリスク大

「お料理2品以上のご注文をお願いいたします」 ——この1行をメニューに書くだけで利益構造が変わる。フードの原価率は28〜32%で安定しやすいので、飲み放題の原価率のブレを吸収してくれる。


月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:26日
  • 1日の飲み放題利用:25人
  • 飲み放題価格:1,500円(税抜1,364円)
月間飲み放題売上 = 25人 × 1,364円 × 26日 = 886,600円

【ビール比率40%の場合(原価率30%)】
原価 = 265,980円
粗利 = 620,620円

【ビール比率60%の場合(原価率39%)】
原価 = 345,774円
粗利 = 540,826円

差額 = 79,794円/月 = 年間957,528円

ビール比率20ポイントの差が、年間96万円の利益差になる。


毎週見るべき4つの数字

飲み放題の利益管理は、週次でこの4つを追えば十分だ。

  1. 1人あたり平均杯数(5杯以下 → 安全圏)
  2. ビール比率(40%以下 → 安全圏)
  3. 平均滞在時間(90分プランなら実質80分以内 → 安全圏)
  4. 飲み放題利用率(全客数に占める割合。高すぎると利益が薄まる)

これをPOSデータかメモで記録する。数字が悪化したら、プランの価格かメニュー構成を見直す。


今週やること

  • 1杯あたりのドリンク原価を最新の仕入れ値で更新する
  • 直近1週間の平均杯数とビール比率を記録する
  • 90分と120分で価格差がついているか確認する(差がなければ400〜500円の差をつける)
  • 飲み放題メニューのビール欄を1行に抑え、ハイボール・サワーを目立たせる
  • フードの注文条件(2品以上)がメニューに明記されているか確認する
  • 氷・レモン・ストローの1杯あたり原価を計算して原価表に反映する

関連ガイド

出典


ドリンクの原価を登録すれば、飲み放題1人あたりの原価がすぐに出ます。ビール比率が変わったときの利益シミュレーションもワンタップ。KitchenCost を使ってみてください。

よくある質問

飲み放題の1人あたり原価はいくら?

90分制で平均5.2杯、ビール比率40%の場合、1人あたり約410円です。ただしビール比率が60%に上がると530円近くまで跳ねます。ビール1杯の原価が120円なのに対して、ハイボールは45円。この差が全体の原価率を決めます。

飲み放題の原価率は何%に抑えるべき?

フード付き宴会なら飲み放題単体で30%以内が目安です。90分1,500円の飲み放題なら450円が上限。ただし実際はビール好きの団体で35%を超える日もあるので、週単位で平均を見るほうが現実的です。

90分と120分で価格差はどのくらいつけるべき?

120分にすると平均杯数が5.2杯から7.1杯に増えます。原価差は約150円なので、価格差は400〜500円が妥当です。90分1,500円なら120分は1,980〜2,000円。同じ価格にすると120分のほうが確実に赤字になります。

飲み放題を黒字にする一番のコツは?

ビール比率を下げることです。ハイボールやサワーの種類を増やす、クラフトカクテルを入れる、最初の1杯だけ生ビールにする——これだけで原価率が3〜5ポイント下がります。提供スピードを遅くして杯数を抑える方法もありますが、満足度が落ちるのでおすすめしません。

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