もつ鍋は「安い食材でボリュームが出る」と思われがちです。
実際、キャベツとニラは安い。でも主役のもつは、下茹でと脂取りで3割近く減る。仕入れ値で計算すると原価が安く見えるけれど、下処理後の実質原価はかなり上がっています。
もうひとつ見えにくいのがスープ。1鍋700ml使って、追いスープを1〜2回出す。スープだけで1テーブルあたり200〜300円のコストになることがあります。
もつ鍋専門店の利益は、もつの歩留まり管理とスープ量のコントロールで決まります。
先に結論
- もつ(小腸)は下処理で歩留まり65〜75%。仕入れ値ではなく下処理後の重量で原価を出す
- スープは1鍋700mlで約190円。追いスープ無料にすると1テーブルあたり80〜110円増
- 野菜(キャベツ・ニラ・もやし)は原価が低いが、盛りすぎると原価率が2〜3ポイント動く
- 〆メニュー(ちゃんぽん・雑炊)は原価率10〜14%の高利益商品。注文率を80%以上に上げる
- 追加もつ・追加野菜は有料化して客単価を上げる設計にする
もつ鍋1人前の原価を分解する
例:醤油もつ鍋 2人前(税抜2,800円 = 1人前1,400円)
| 項目 | 量(2人前) | 原価 |
|---|---|---|
| もつ(小腸) | 300g(生400g) | 540円 |
| キャベツ | 200g | 40円 |
| ニラ | 60g | 30円 |
| もやし | 100g | 15円 |
| 豆腐 | 1/2丁 | 25円 |
| ごぼう | 30g | 10円 |
| スープ(醤油ベース700ml) | — | 190円 |
| 唐辛子・にんにく・ごま | — | 15円 |
| 鷹の爪・柚子胡椒 | — | 15円 |
| 合計(2人前) | 880円 | |
| 1人前 | 440円 |
原価率:880 ÷ 2,800 = 31.4%
※ もつは生400gから下処理後300g(歩留まり75%)。小腸100gあたり仕入れ135円、歩留まり補正後100gあたり180円で計算。
31.4%は鍋業態としてはやや高め。ここに追いスープと追加具材が入ると35〜38%に上がります。
もつの歩留まりと部位別原価
もつ鍋で使われる部位は主に小腸と大腸。部位によって歩留まりと原価が大きく違います。
部位別の歩留まりと実質原価
| 部位 | 仕入れ単価(100g) | 歩留まり | 下処理後の実質単価(100g) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 小腸(マルチョウ) | 135円 | 70〜75% | 180〜193円 | 脂が多く甘みがある。定番 |
| 大腸(シマチョウ) | 100円 | 75〜80% | 125〜133円 | 歯ごたえが強い。混ぜると原価調整しやすい |
| ハツ(心臓) | 90円 | 85〜90% | 100〜106円 | 歩留まりが高い。食感のアクセント |
| センマイ | 80円 | 80〜85% | 94〜100円 | 独特の食感。好みが分かれる |
コストを抑えるミックス戦略
小腸だけだと原価が高くなる。大腸やハツを混ぜると原価を下げられます。
小腸100%の場合(2人前300g):
300g × 180円/100g = 540円
小腸70%+大腸30%の場合(2人前300g):
210g × 180円 + 90g × 130円 = 378円 + 117円 = 495円
差額:45円/鍋。1日20卓で月に22,500円の差
小腸と大腸の比率を7:3にするだけで、味の満足度を保ちながら月に2万円以上コストを下げられます。
歩留まりが下がる3つの原因
1. 下茹でが長すぎる
もつの下茹では臭み取りに必要ですが、茹ですぎると脂が抜けて縮む。下茹で時間は3〜5分が目安。10分以上茹でると歩留まりが5〜10%下がります。
対策:タイマーで下茹で時間を統一する。 下茹で後に氷水で締めると、脂の抜けすぎを防げる。
2. 脂取りが過剰
小腸の脂はもつ鍋の旨みの源。脂を取りすぎると食感がパサつき、量も減る。脂は指2本分の厚みを残すのが目安。
対策:脂取りの基準を写真で共有する。 新人と経験者で仕上がりが大きく変わるため。
3. 仕入れもつの品質がバラつく
冷凍もつは解凍時にドリップ(水分)が出て、解凍後に5〜10%重量が減ることがあります。
対策:仕入れ先ごとに解凍後の重量を記録する。 3ヶ月分のデータを取れば、仕入れ先の品質比較ができる。
スープのコスト管理
もつ鍋専門店で見落とされがちなのがスープのコスト。1杯ずつではなく1鍋分で管理するのがポイントです。
醤油ベーススープの原価(1鍋700ml・2人前)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 出汁(昆布+鰹) | 500ml分 | 90円 |
| 醤油タレ | 80ml | 40円 |
| ニンニク(スライス) | 2片 | 12円 |
| 唐辛子(鷹の爪) | 2本 | 3円 |
| みりん | 30ml | 15円 |
| ごま油 | 15ml | 30円 |
| 合計 | 190円 |
味噌ベーススープの原価(1鍋700ml・2人前)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 出汁(昆布+鰹) | 500ml分 | 90円 |
| 味噌(合わせ) | 60g | 30円 |
| ニンニク | 2片 | 12円 |
| 豆板醤 | 10g | 8円 |
| みりん | 30ml | 15円 |
| ごま油 | 15ml | 30円 |
| 白ごま | 5g | 10円 |
| 合計 | 195円 |
追いスープのコスト
追いスープはサービスとして無料にしている店が多いですが、コストは確実に発生します。
追いスープ1回(200ml)の原価:約55円
平均追いスープ回数:1.5回
追いスープのコスト/テーブル = 55円 × 1.5 = 82円
月に600テーブルなら = 49,200円/月
スープコストを抑える方法
- **追いスープは1回目無料・2回目以降有料(200円)**にする
- 鍋の初期スープ量を650mlに抑える(具材の水分で700mlになる)
- 出汁は大量仕込みでコストを下げる(1鍋ずつ取ると割高)
- スープの味変(柚子胡椒・にんにく追加)を有料にして客単価を上げる
野菜の原価と盛りコントロール
キャベツとニラは原価が安い。でも盛り量がバラつくと、意外にコストが積み上がります。
野菜の1鍋あたり原価(2人前)
| 野菜 | 量 | 原価 | 季節変動 |
|---|---|---|---|
| キャベツ | 200g | 40円 | 夏場は60〜80円 |
| ニラ | 60g | 30円 | 安定 |
| もやし | 100g | 15円 | 安定 |
| ごぼう(ささがき) | 30g | 10円 | 安定 |
| 合計 | 95円 |
野菜原価が上がるパターン
キャベツの規定量200gのところを、多めに盛った場合:
スタッフA → 200g(40円)
スタッフB → 280g(56円)
スタッフC → 320g(64円)
差額:24円/鍋。1日20卓で月に12,000円
対策:キャベツはざく切りの状態で200gの見本容器を作り、それに合わせて盛る。 ニラは本数で統一する(1鍋あたり4〜5本)。
〆メニューで利益を作る
もつ鍋専門店にとって、〆は利益を大きく上げるチャンスです。
〆メニューの原価と利益
| 〆メニュー | 原価 | 売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| ちゃんぽん麺 | 35円 | 350円 | 10% | 315円 |
| 雑炊セット(卵・ご飯) | 55円 | 400円 | 14% | 345円 |
| うどん | 30円 | 300円 | 10% | 270円 |
| ラーメン麺 | 40円 | 350円 | 11% | 310円 |
〆の注文率80%、2人組テーブルで平均1品注文とすると:
〆の追加売上/テーブル = 350円(平均)
月に600テーブル × 80% = 480テーブル
月間追加売上 = 480 × 350円 = 168,000円
月間追加粗利 = 480 × 300円(平均粗利)= 144,000円
年間で約173万円の粗利。〆を出さないのは、この利益を捨てているのと同じです。
〆の注文率を上げる方法
- メニューの最後ではなく、注文時に一緒に〆を聞く:「〆はちゃんぽんと雑炊どちらにしますか?」
- テーブルに〆メニューのカードを置く:鍋を食べながら目に入るようにする
- 〆のセット割引を作る:「もつ鍋+〆セット」で50円引き(原価率への影響は最小限)
追加注文の価格設計
追加もつ・追加野菜は、客単価を上げる重要なメニューです。
| 追加メニュー | 原価 | 売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|
| 追加もつ(100g) | 180円 | 580円 | 31% | 400円 |
| 追加キャベツ | 20円 | 200円 | 10% | 180円 |
| 追加ニラ | 15円 | 150円 | 10% | 135円 |
| 追加豆腐(1/2丁) | 25円 | 200円 | 13% | 175円 |
| 追加ちゃんぽん麺 | 35円 | 350円 | 10% | 315円 |
追加野菜は原価率10%の高利益メニュー。「野菜のおかわり無料」にしている店がありますが、有料にしても200円なら注文は減りにくい。月に1万〜2万円の利益改善になります。
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:25日
- 1日のテーブル数:20卓(平均2人)
- もつ鍋2人前+〆1品+追加1品が標準
- 平均テーブル単価:4,200円
月間売上 = 20卓 × 4,200円 × 25日 = 2,100,000円
原価率32%の場合(もつミックス・スープ管理・〆あり):
原価 = 672,000円
粗利 = 1,428,000円
原価率38%の場合(小腸100%・追いスープ無料・野菜おかわり無料):
原価 = 798,000円
粗利 = 1,302,000円
差額 = 126,000円/月 = 年間1,512,000円
原価率6ポイントの差が年間151万円の利益差。もつのミックス比率、追いスープの有料化、〆の注文率向上——この3つだけで年間100万円以上の改善が見込めます。
今週やること
- もつの下処理前後の重量を量り、歩留まりを確認する
- 小腸と大腸のミックス比率を検討する(7:3が目安)
- スープの1鍋あたりの量を700mlに固定する
- 追いスープのルールを決める(1回無料・2回目から有料など)
- キャベツ200g・ニラ4〜5本の盛り見本を作る
- 〆メニューの注文率を確認し、80%以上を目指す
- 追加もつ・追加野菜の価格を設定する
関連ガイド
もつ・スープ・野菜を登録すれば、1鍋の原価が自動で出ます。もつの歩留まりを反映した実質原価がひと目でわかります。KitchenCost は無料で使えます。