名古屋の喫茶店ではコーヒー1杯でトーストとゆで卵がついてくる。
それが当たり前の文化になっているから、モーニングの原価を計算したことがない店主は多い。「コーヒー代でパンと卵はペイできてるでしょ」と思っている。
本当にそうだろうか。
コーヒー1杯の原価は35円。トースト2枚で30円、バター12gで12円、ゆで卵1個で20円。コーヒー以外の原価は62円。合計97円——いや、ミルクと砂糖の8円を足すと105円だ。
350円で出しているなら原価率30%。ギリギリ安全圏に見える。
でもコーヒーのおかわりを無料にした瞬間、原価は140円に跳ね上がる。原価率40%。朝の3時間で赤字を量産する装置になりかねない。
モーニングは「安く見せて集客する」のが目的だ。だからこそ、1円単位で原価を把握していないと利益が残らない。
先に結論
- モーニングの原価は105〜140円。 コーヒーのおかわり有無で35円変わる
- コーヒー豆は1杯12gが標準。 15gにするだけで月15,000円の差
- トーストの厚みは6枚切りか8枚切りで固定。 4枚切りは原価が1.5倍
- バターは1食12gで計量。 目分量で塗ると15〜20gになりがち
- 卵の追加は有料が鉄則。 無料対応は月15,000円の利益流出
- 回転率がモーニングの命。 40〜50分で席が空くことが利益の前提
モーニングセットの原価を分解する
例:モーニングAセット(税抜350円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 食パン(6枚切り×2枚) | 2枚 | 30円 |
| バター | 12g | 12円 |
| ゆで卵 | 1個 | 20円 |
| コーヒー(豆12g) | 1杯 | 35円 |
| ミルク・砂糖 | 1セット | 8円 |
| 合計 | 105円 |
原価率:105 ÷ 350 = 30.0%
例:モーニングBセット(税抜450円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 食パン(6枚切り×2枚) | 2枚 | 30円 |
| バター | 12g | 12円 |
| ゆで卵 | 1個 | 20円 |
| ミニサラダ | 1皿 | 30円 |
| コーヒー(豆12g) | 1杯 | 35円 |
| ミルク・砂糖 | 1セット | 8円 |
| 合計 | 135円 |
原価率:135 ÷ 450 = 30.0%
サラダの追加原価は30円。価格差は100円。追加分の粗利は70円で、原価率は30%。 セット全体の原価率を崩さずに客単価を上げられる。
コーヒー豆のグラム管理
モーニングの利益は、コーヒーの豆量で大きく変わる。
豆量別の原価比較
| 豆量(1杯) | 豆の原価 | 月間差(50人/日×26日) |
|---|---|---|
| 10g | 25円 | — |
| 12g | 30円 | +6,500円 |
| 15g | 38円 | +16,900円 |
| 18g | 45円 | +26,000円 |
※ コーヒー豆は100gあたり250円で計算。抽出用の湯、フィルター代(3〜5円)は別途。
12gと15gの差は1杯8円。小さく見えるけれど:
8円 × 50人/日 × 26日 = 10,400円/月
年間で12万円。豆量を3g変えただけでこの差だ。
豆量を固定する方法
- 計量スプーンを使う:すりきり1杯=12gになるスプーンを用意する
- ミルにマーキング:12gの線を引いておく
- 1日分をまとめて計量:50人分なら600gを朝に量り、12gずつの小袋に分ける(手間はかかるが最も正確)
トーストの厚みが原価を変える
食パンの厚みは「何枚切り」かで原価が変わる。
食パンの枚数別原価
| 枚切り | 1枚の厚さ | 1枚の原価 | 2枚分 |
|---|---|---|---|
| 4枚切り | 約30mm | 23円 | 46円 |
| 6枚切り | 約20mm | 15円 | 30円 |
| 8枚切り | 約15mm | 12円 | 24円 |
※ 1斤(6枚切り)の価格を90円で計算。
4枚切りと6枚切りの差は1食16円。月に20,800円。ボリューム感が必要なら4枚切り1枚(23円)のほうが、6枚切り2枚(30円)より安い。 見た目の満足感と原価のバランスで選ぶ。
バターの計量ルール
バターは目分量で塗ると15〜20gになりがちだ。12gとの差は3〜8gで、1gあたり1円。
5gのバター超過 × 50人 × 26日 = 6,500円/月
バターを計量する方法
- バターカッターで10gに均等カット
- 個包装バター(10g入り、1個12〜15円)を使う
- 朝の開店前に12gずつ小皿に分けておく
手間がかかるように思えるけれど、1回の仕込みで50人分を5分で準備できる。その5分が月6,500円を守る。
おかわりコーヒーの利益設計
おかわり無料は喫茶店の魅力だ。でも利益への影響は大きい。
おかわり率別のコスト
| おかわり率 | 追加原価/人 | 月間追加コスト | 実質原価率(350円) |
|---|---|---|---|
| 0%(おかわりなし) | 0円 | 0円 | 30.0% |
| 20% | 7円 | 9,100円 | 32.0% |
| 40% | 14円 | 18,200円 | 34.0% |
| 60% | 21円 | 27,300円 | 36.0% |
おかわり率40%で月18,200円。年間で22万円だ。
おかわりを利益化する3つの方法
- 2杯目の豆量を減らす:12g→10gで1杯あたり5円の節約。味の違いに気づく人は少ない
- おかわり料金を取る:「おかわり+100円」にすると、原価30円で粗利70円。おかわり率は下がるが利益は増える
- セット価格に織り込む:350円→400円にして、おかわり無料を維持。原価率は140÷400=35%
どの方法を選ぶかは店のコンセプト次第だが、「なんとなく無料」が一番危険。
セットの段階設計
モーニングは2〜3段階のセット構成が利益を安定させる。
セット構成の例
| セット | 内容 | 原価 | 売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | トースト+卵+コーヒー | 105円 | 350円 | 30.0% | 245円 |
| B | A+ミニサラダ | 135円 | 450円 | 30.0% | 315円 |
| C | A+サラダ+ヨーグルト | 165円 | 550円 | 30.0% | 385円 |
ドリンクのアップグレード
| ドリンク変更 | 追加原価 | 追加価格 | 追加粗利 |
|---|---|---|---|
| カフェラテに変更 | +25円 | +100円 | 75円 |
| 紅茶に変更 | +5円 | +0円 | −5円 |
| ジュースに変更 | +15円 | +50円 | 35円 |
カフェラテへの変更は原価25円増で100円もらえる。 メニューで「+100円でカフェラテに変更できます」と書くだけで注文が入る。
回転率がモーニングの利益を決める
モーニングは原価率が低くても、客単価が安い。だから回転率が利益のカギになる。
回転率別の売上シミュレーション(席数20席)
| 回転率 | 3時間の客数 | 売上(平均400円) | 粗利(原価率30%) |
|---|---|---|---|
| 1.5回転 | 30人 | 12,000円 | 8,400円 |
| 2.0回転 | 40人 | 16,000円 | 11,200円 |
| 2.5回転 | 50人 | 20,000円 | 14,000円 |
回転率を0.5上げるだけで、朝の粗利が2,800円増える。月にすると72,800円。
回転率を上げる方法
- 提供スピード:モーニングは注文から3分以内に出す。トーストの焼き時間を逆算して仕込む
- 客席レイアウト:カウンター席を増やす。1人客が多い朝は2人席より回転が良い
- モーニング終了時間を明示:「モーニングは10:00まで」とPOPに書くと、ゆっくりし過ぎる人が減る
- 新聞・Wi-Fiを朝だけ制限:滞在時間が長くなる要因を朝は控える
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:26日
- モーニング客数:45人/日
- 平均客単価:420円
月間モーニング売上 = 45人 × 420円 × 26日 = 491,400円
【原価率30%(豆量・バター管理あり、おかわり有料)】
原価 = 147,420円
粗利 = 343,980円
【原価率38%(豆量ブレ・おかわり無料・バター多め)】
原価 = 186,732円
粗利 = 304,668円
差額 = 39,312円/月 = 年間471,744円
原価率8ポイントの差が、年間47万円のモーニング利益差になる。
今週やること
- コーヒー豆の1杯あたりグラム数を決めて、計量スプーンを用意する
- トーストの枚切りと枚数を固定する(6枚切り×2枚 or 4枚切り×1枚)
- バターを1食12gで計量する仕組みを作る(カッター or 個包装)
- 卵の追加料金を設定してメニューに明記する(+60〜80円)
- おかわりコーヒーのルールを決める(有料/2杯目薄め/セット価格に含む)
- モーニングの終了時間をPOPで明示する
関連ガイド
出典
トースト・卵・コーヒーの原価を登録すれば、モーニング1セットの原価が自動で出ます。豆の仕入れ値が変わっても、全セットの原価率がリアルタイムで更新。KitchenCost を使ってみてください。