「原価に50%上乗せして売ったのに、なぜ利益が50%じゃないの?」
この質問に答えられないなら、価格設定で損し続けているかもしれません。
飲食店オーナーが最も混同しやすい粗利率とマークアップの違いを明確に整理します。
要点まとめ
- 粗利率とマークアップは分母が違う(販売価格 vs 原価)
- 同じ「50%」でも結果の金額が違う
- 飲食業では**粗利率(販売価格基準)**を使用
- 「原価に50%上乗せ」= マークアップ50% = 粗利率33%
まず、定義を確認
粗利率(Margin Rate)
販売価格に対する利益の割合
粗利率 = (利益 ÷ 販売価格) × 100
マークアップ(Markup Rate)
原価に対する利益の割合
マークアップ = (利益 ÷ 原価) × 100
重要な違い:分母が違います!
- 粗利率:分母は販売価格
- マークアップ:分母は原価
例で理解する
原価500円のメニューを1,000円で販売する場合:
粗利率の計算
利益 = 1,000 - 500 = 500円
粗利率 = (500 ÷ 1,000) × 100 = 50%
マークアップの計算
利益 = 1,000 - 500 = 500円
マークアップ = (500 ÷ 500) × 100 = 100%
同じ商品なのに、粗利率50%、マークアップ100%!
なぜこれが重要なのか?
よくある間違い
店長:「原価に50%乗せて売ろう」
原価 500円
50%マークアップ → 販売価格 750円
実際の粗利率 = (250 ÷ 750) × 100 = 33%
50%儲かると思ったのに、実際は33%しか残らない。
同じ数字、違う結果
| 目標 | 原価500円の場合の販売価格 | 実際の利益 |
|---|---|---|
| マークアップ50% | 750円 | 250円(粗利率33%) |
| 粗利率50% | 1,000円 | 500円(マークアップ100%) |
粗利率50%を目指したのにマークアップ50%で計算すると、250円の損!
粗利率とマークアップの換算表
暗記不要、この表を参照すればOK:
| 粗利率 | マークアップ | 販売価格(原価500円の場合) |
|---|---|---|
| 20% | 25% | 625円 |
| 25% | 33% | 667円 |
| 30% | 43% | 714円 |
| 33% | 50% | 750円 |
| 40% | 67% | 833円 |
| 50% | 100% | 1,000円 |
| 60% | 150% | 1,250円 |
| 70% | 233% | 1,667円 |
計算式まとめ
目標粗利率から販売価格を計算
販売価格 = 原価 ÷ (1 - 粗利率)
例:原価500円、目標粗利率40%
販売価格 = 500 ÷ (1 - 0.4) = 500 ÷ 0.6 = 833円
目標マークアップから販売価格を計算
販売価格 = 原価 × (1 + マークアップ)
例:原価500円、目標マークアップ50%
販売価格 = 500 × (1 + 0.5) = 500 × 1.5 = 750円
実例:ケーキ屋のホールケーキ
状況
- ケーキ原価:1,500円
- 目標:「50%残したい」
間違えるパターン(マークアップで計算)
販売価格 = 1,500 × 1.5 = 2,250円
実際の粗利率 = 750 ÷ 2,250 = 33%
正しい計算(粗利率で計算)
販売価格 = 1,500 ÷ 0.5 = 3,000円
実際の粗利率 = 1,500 ÷ 3,000 = 50%
750円の差! 月に100個売れば75,000円の差になります。
飲食業界ではどちらを使うべき?
業界標準は「粗利率」
飲食業で原価率や利益率を語る時、ほとんどの場合**販売価格基準(粗利率)**です。
「原価率30%」と言えば:
- 原価 ÷ 販売価格 = 30%
- 販売価格が1,000円なら原価は300円
なぜ粗利率を使うのか?
- 売上基準で経費管理しやすい
- 業界ベンチマークが粗利率基準
- 税金・会計処理も売上基準
暗算のコツ
原価率がわかれば粗利率もわかる
原価率 + 粗利率 = 100%
原価率35%なら → 粗利率65%
暗算早見表
| 原価率 | 粗利率 | 意味 |
|---|---|---|
| 25% | 75% | 4倍の価格で販売 |
| 30% | 70% | 3.3倍の価格で販売 |
| 33% | 67% | 3倍の価格で販売 |
| 40% | 60% | 2.5倍の価格で販売 |
| 50% | 50% | 2倍の価格で販売 |
実践:メニュー価格表の作り方
Step 1:原価を正確に計算
全ての材料費 + ロス率 + 包装材まで
Step 2:目標粗利率を設定
- カフェ:70〜75%
- 一般飲食店:60〜70%
- デリバリー専門:60〜65%
Step 3:販売価格を計算
販売価格 = 原価 ÷ (1 - 粗利率)
Step 4:市場価格と比較
計算した価格が相場より高すぎる場合:
- 原価削減の方法を検討
- 粗利率目標を調整
- メニュー構成を変更
注意:粗利率 ≠ 純利益率
粗利率70%だからといって、70%が手元に残るわけではありません。
販売価格 1,000円(粗利率70%)
- 原価 300円
= 粗利 700円
ここから更に:
- 人件費
- 家賃
- 光熱費
- 税金
- その他経費
= 純利益(通常、粗利の20〜30%程度)
粗利率70% → 純利益率は約15〜20% が現実です。
まとめ
| 区分 | 粗利率 | マークアップ |
|---|---|---|
| 基準 | 販売価格 | 原価 |
| 計算式 | 利益÷販売価格 | 利益÷原価 |
| 業界標準 | ✅ ほとんど使用 | △ 一部使用 |
| 価格計算 | 原価÷(1-粗利率) | 原価×(1+マークアップ) |
覚えておくべきポイント
- 粗利率とマークアップは違う
- 同じ「50%」でも結果の金額が違う
- 飲食業では**粗利率(販売価格基準)**を使用
- 「原価に50%上乗せ」= マークアップ50% = 粗利率33%
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今すぐやること
- 主力メニュー3品の粗利率を計算する
- 「原価に○%上乗せ」で計算していないか確認する
- 目標粗利率を設定し、販売価格を逆算する
- 換算表を手元に置いて価格設定に使う
関連ガイド
- 食材原価率ガイド — 粗利率設定の基準となる原価率の考え方
- プライムコスト完全ガイド — 粗利率だけでなくFLコスト全体で考える
- メニューエンジニアリング — 粗利率データを使ってメニュー最適化
- 値上げタイミングガイド — 利益率を守るための価格改定戦略
- カフェメニュー原価ガイド — カフェの粗利率ベンチマーク