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居酒屋フード原価ガイド|前菜・揚げ物・焼き物・〆で利益を残す原価設計の実務

居酒屋のフードメニューをカテゴリ別に原価分解。枝豆7%、から揚げ30〜40%、刺身40〜60%——メニューごとの原価率を把握して、お通しから〆まで利益を積み上げる方法を解説。

更新 2026年2月18日
居酒屋フード原価原価計算メニュー価格FD比率居酒屋メニュー原価率
目次

先に結論

  • フード全体の原価率は30〜35%を目安に。メニューごとに「稼ぎ頭」と「集客装置」を分ける
  • お通しと前菜は低原価。グラム管理で安定した利益源に
  • 揚げ物は油代を入れ忘れると原価率が5%以上ズレる
  • 〆メニューは最も原価率が低く、客単価を伸ばす最後のチャンス

「売上はそこそこあるのに、月末に残る利益が少ない」——居酒屋を経営していて、そう感じたことはありませんか?

2025年、飲食店の倒産は1,002件。過去30年で最多で、初めて1,000件を超えました(帝国データバンク調べ)。なかでも居酒屋を含む「酒場・ビヤホール」は2023年以降3年連続で100件超。倒産の88.4%が資本金1千万円未満の小規模店です。

食材費は上がり続けています。米はCPI前年比**+70.9%(いわゆる「令和の米騒動」)、鶏むね肉は過去11年で最高値圏、業務用食用油は2025年9月に最大25%の値上げ。飲食店の96.0%**が食材の値上がりに直面しているのに、実際に価格転嫁できているのは32.3%にすぎません。

でも、逆に言えばフードメニューの原価を1品ずつ把握するだけで、利益構造が変わるということでもあります。

居酒屋フードの原価をカテゴリ別に分解して、「どこで稼いで、どこは許容するか」を一緒に見ていきましょう。


居酒屋フードの原価が崩れるパターン

原価が崩れる店には、共通点があります。

1. 小鉢・前菜の量が「手加減」になっている 枝豆やポテトサラダ、冷奴。簡単なメニューほど盛り付けが雑になりがちです。「ちょっと多め」が1日50皿で積み上がると、月末には数万円の差になります。

2. 揚げ物の油代を計算に入れていない から揚げやフライドポテトの「食材原価」は出しているけど、油は?から揚げ1回の揚げ調理で、食材重量の10〜15%の油を吸収します。業務用食用油は2025年9月に日清オイリオが11〜25%値上げし、2026年1月にはJ-オイルミルズがさらに7〜11%値上げしています。油を無視すると原価率が5%以上ズレます。

3. 刺身の仕入れロスが見えていない 魚は歩留まりが50〜60%。仕入れた魚の半分近くが骨・頭・内臓です。1kg 2,000円で仕入れても、使える身は500〜600g。実質的なグラム単価は仕入れ値の倍近くになります。

4. 〆メニューがなく、客単価が伸びない ドリンクとフードで終わって、最後の一押しがない。焼きおにぎり1個300円を注文してもらうだけで、客単価が変わります。原価は30〜50円です。


メニュー別の原価率——「稼ぎ頭」と「集客装置」を分ける

居酒屋のフードメニューには、利益を稼ぐものとお客さんを呼ぶためのものがあります。ドリンクと同じ考え方です。全メニューで利益を取ろうとすると割高感が出るし、全部安くすると儲からない。大事なのはバランスです。

お通し —— 小さいけど確実な利益源

お通し代は300〜500円が一般的。原価は50〜100円で収まるので、原価率は15〜25%。

項目原価(例)お通し代原価率
枝豆(冷凍80g)約35円400円9%
ポテトサラダ(80g)約60円400円15%
キャベツ塩昆布(60g)約40円350円11%
煮物小鉢(80g)約80円400円20%

1日50組として、月25日営業で計算すると:

お通し400円 × 50組 × 25日 = 月50万円
原価率15%なら利益は42.5万円

ただし、ここで大事なのは1人前の量を決めることです。「なんとなく盛る」だと80gが100gになり、原価率が25%上がります。

前菜・小鉢 —— 低原価で回転を作る

前菜は「最初に出て、すぐ食べ終わる」もの。回転が速く、原価率も低い。居酒屋の利益を下支えするカテゴリーです。

メニュー食材原価(例)販売価格原価率
枝豆(冷凍80g)35円380〜450円8〜9%
冷奴(半丁+薬味)40〜50円350〜400円11〜14%
たこわさ(50g)80〜100円450〜500円18〜22%
きゅうり浅漬け(80g)30〜40円350〜400円8〜11%
もやしナムル(80g)25〜35円300〜350円8〜10%

枝豆は居酒屋の利益メニューの代表格です。冷凍枝豆1kgで約400〜500円。80g使用で原価は35円前後。これが400円で売れるわけです。

揚げ物 —— 注文頻度が高い「準・稼ぎ頭」

から揚げ、フライドポテト、串カツ。居酒屋で最も注文される定番フードです。原価率はやや高めですが、出数が多いので利益「額」では大きく貢献します。

メニュー食材原価油・衣合計原価販売価格原価率
から揚げ5個(150g)140〜170円25〜35円165〜205円490〜580円30〜38%
フライドポテト(120g)40〜60円15〜20円55〜80円350〜400円15〜21%
エビフライ2本150〜200円20〜30円170〜230円550〜650円28〜38%
串カツ盛り5本120〜160円30〜40円150〜200円580〜680円24〜31%

ここで注意したいのが「油・衣」の列です。

鶏のから揚げで言うと、鶏もも肉150g(国産ブロイラーもも肉100gあたり約155円、2025年10月時点で過去最高値圏)の食材原価は140〜170円程度。ここに衣(片栗粉・小麦粉)10〜15円と、油の吸収分15〜20円が加わります。

から揚げ1皿の原価 = 鶏肉150g(約160円)+ 衣(約12円)+ 油吸収(約18円)+ 調味料(約10円)
                   = 約200円

販売価格550円の場合、原価率 = 200 ÷ 550 = 約36%

フライドポテトは原価率が低い優秀なメニューです。冷凍ポテト1kgで300〜500円。120g使用で原価は40〜60円。400円で販売すれば原価率15%前後。から揚げと組み合わせて「揚げ物盛り合わせ」にすると、全体の原価率を下げられます。

焼き物・鉄板 —— 肉のグラム管理が命

焼き鳥、ホルモン炒め、鶏ねぎま。肉を使うメニューは原価率が高めですが、居酒屋に「肉がない」のは厳しい。ここはグラム管理で守る領域です。

メニュー食材原価販売価格原価率
焼き鳥5本(もも・ねぎま等)120〜170円500〜600円22〜30%
鶏皮ポン酢(100g)50〜70円430〜500円11〜16%
ホルモン炒め(120g)100〜150円550〜650円17〜25%
豚バラ鉄板(120g)110〜150円550〜650円18〜25%

焼き鳥は串打ちの手間がかかりますが、原価率は比較的低いカテゴリーです。もも肉1本あたりの肉量は25〜30g。仕込みでグラム数を固定すれば、原価のブレを防げます。

注意点:追加トッピングは必ず有料にすること。「チーズ追加無料」は原価を直撃します。チーズ30gで40〜50円。月500回追加されたら2万〜2.5万円のコストです。

刺身・海鮮 —— 原価は高いが「看板」

刺身は居酒屋の「顔」。原価率は40〜60%と高いですが、刺身がないと居酒屋に来ない層がいます。ここは利益を取る場所ではなく、お客さんを連れてくる場所です。

メニュー食材原価販売価格原価率
刺身3点盛り350〜500円980〜1,200円36〜45%
刺身5点盛り550〜800円1,480〜1,800円37〜48%
たこ刺し(80g)200〜250円550〜650円35〜42%
サーモン刺し(80g)160〜220円500〜600円30〜40%

刺身の原価が高い最大の理由は歩留まりです。

例:マグロ柵 1kg仕入れ = 3,000円
  使える身 = 約600g(歩留まり60%)
  実質単価 = 3,000円 ÷ 600g = 5円/g

刺身1人前80g = 5円 × 80g = 400円

歩留まりを考えると、仕入れ値が倍近くに跳ね上がります。さらに、売れ残りは翌日には出せない。ロスを含めた実質原価率は、帳簿上の原価率より5〜10%高くなることが珍しくありません。

刺身の原価を下げるコツは3つです。

  1. 仕入れは少量多頻度 — 大量仕入れで余らせるより、毎日必要な分だけ仕入れる
  2. 端材を別メニューに — 刺身の切れ端は「なめろう」「あら汁」「海鮮サラダ」に回す
  3. 盛り付け量を固定 — 1切れの厚みとグラム数を統一する(1切れ10〜12gなど)

〆メニュー —— 原価率最低、客単価の最後の上乗せ

〆メニューは居酒屋で最も原価率が低いカテゴリーです。米・麺が主体なので原価は安く、滞在の最後に追加注文が入ります。

メニュー原価販売価格原価率
焼きおにぎり(2個)30〜50円350〜400円8〜14%
だし茶漬け40〜60円400〜450円10〜14%
焼きそば50〜80円450〜500円11〜17%
卵かけご飯40〜60円350〜400円11〜16%

米の仕入れ価格は2024年6月の約2,561円/60kgから2025年6月には約5,072円/60kgへと、ほぼ2倍に上昇しています。それでも、焼きおにぎり1個に使う米は約60〜80g(炊飯前30〜40g)。コスト換算すると1個15〜25円程度で、飲食メニューの中では依然として圧倒的に低原価です。

〆メニューは1〜2種類あれば十分。あれこれ増やすより、「うちの〆はこれ」と決めて、食材のロスを減らす方が利益に直結します。


全体を見渡して「どこで稼ぐか」を決める

原価率を低い順に並べると、フードの利益戦略が見えてきます。

カテゴリ原価率の目安利益貢献役割
前菜・小鉢8〜22%★★★★★稼ぎ頭
〆メニュー8〜17%★★★★★客単価の上乗せ
お通し15〜25%★★★★☆安定利益
揚げ物15〜38%★★★★☆出数で稼ぐ
焼き物・鉄板17〜30%★★★☆☆バランス
刺身・海鮮35〜60%★★☆☆☆集客装置

ドリンクの利益構造と同じです。ビール(25〜35%)で迎えてサワー(7〜15%)で稼ぐように、刺身で引きつけて前菜・〆で利益を残す。個別メニューの原価率ではなく、テーブル全体の原価率で考えるのがコツです。


セット提案で全体の原価率を下げる

個別注文だと刺身ばかり頼まれて原価が上がる、という悩みはセット提案で解決できます。

例:2,980円コース

メニュー原価単品価格
お通し60円400円
枝豆35円400円
から揚げ5個200円550円
刺身3点盛り400円1,000円
焼きおにぎり2個40円380円
合計735円2,730円
コース原価率 = 735円 ÷ 2,980円 = 約25%

単品で頼まれると刺身だけで原価率40%超ですが、コースにすることで低原価メニューが混ざり、全体で25%に着地します。お客さんにとっても、単品合計2,730円分が2,980円で食べられるので「お得感」があります。

ドリンクセットで客単価を上げる

  • フード2品 + 1ドリンクセット(100〜200円引き)
  • 〆を追加で100円引き

ドリンクは原価率がフードより低い(20〜25%)ので、セットに組み込むほど全体の利益率が上がります。


基本の原価計算式

フード原価 = 食材原価 + 調味料 + 油(揚げ物の場合)+ 包材(テイクアウトの場合)
原価率(%) = フード原価 ÷ 税抜販売価格 × 100

よくある間違いは「食材原価」だけで計算してしまうこと。調味料は1品あたり5〜15円、油は揚げ物で15〜25円かかります。これを入れないと、実際の原価率が帳簿より3〜5%高くなります。

歩留まりが悪い食材(魚、野菜の外葉など)は、使える部分の重量で割り直すのを忘れずに。


仕入れ環境——2025〜2026年に知っておくべきこと

居酒屋フードに関わる主な値動きです。

食材・資材動向影響
前年比約2倍に高騰(2025年6月時点)〆メニュー・お茶漬けに影響。それでも1人前30円台
鶏肉(国産ブロイラー)100g約155円、過去11年で最高値圏から揚げ・焼き鳥の原価上昇
業務用食用油2025/9に最大25%、2026/1にさらに7〜11%値上げ揚げ物全般に直撃
ビール2025/4に大手4社5〜8%値上げFD比率(ドリンク側)に影響
酒税改正2026/10にビール系飲料の税率統一ビールは税率下がり仕入れ若干減

四半期ごとに仕入れ価格を見直して、メニュー価格の調整が必要かどうか確認しましょう。「気づいたら原価率が5%上がっていた」は、よくある話です。


今すぐやること

今日やること:

  • 主要フードメニュー10品の1品あたりの原価を計算する(油・調味料を含めて)
  • お通し・小鉢の盛り付け量をgで決めて、紙に貼り出す
  • 刺身の歩留まりを確認する(仕入れ量と使える量を量る)

今週中にやること:

  • 揚げ物の油吸収量を実測する(揚げ前と揚げ後の重量差)
  • 〆メニューがなければ1〜2品追加する
  • セットメニュー・コースの原価率を計算する
  • 追加トッピング(チーズ、卵など)の原価を出して、無料提供をやめる

参考資料


関連ガイド:


フードメニューの原価、1品ずつ計算するのが大変ならKitchenCostで一度まとめてみてください。食材の仕入れ値を登録すれば、メニューごとの原価率が自動で出ます。

よくある質問

居酒屋フードの原価率は何%を目指すべきですか?

フード全体では30〜35%が目安です。ただし、メニューごとに差をつけるのが基本です。枝豆やフライドポテトは原価率7〜15%、から揚げは30〜40%、刺身は40〜60%。低原価メニューで稼いで、高原価の刺身で集客する——このバランスで全体を30%台に着地させます。

お通しは利益に貢献しますか?

はい。お通し代300〜500円に対して原価50〜100円が一般的で、原価率は15〜25%程度。1日50組なら月に45万〜75万円の売上になります。ただし量がブレると赤字になるので、1人前のグラム数を決めて計量するのが必須です。

揚げ物の原価が想定より高くなるのはなぜですか?

見落としがちなのが油のコストです。業務用食用油は2025年9月に11〜25%値上げされ、2026年1月にもさらに7〜11%値上がりしています。から揚げ1回の油吸収は重量の10〜15%。油を原価に入れていないと、実際の原価率が5%以上ズレることがあります。

〆メニューはなぜ置いた方がいいのですか?

米・麺は原価が低く、焼きおにぎり1個の原価は30〜50円程度。300〜400円で販売すれば原価率10〜17%です。滞在の最後に注文が入るので、客単価を300〜500円上乗せできます。2品あれば十分です。

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