要点まとめ
- ドリンク全体の原価率は20〜25%が目安。ビールは高く、サワー・ハイボールで取り返す
- FD比率はフード6:ドリンク4を目指す。ドリンク比率が上がれば全体の原価率が下がる
- 飲み放題は3段階プラン(ライト・スタンダード・プレミアム)で客単価をコントロール
- オリジナルドリンクで価格競争から脱却。「自家製〇〇サワー」は原価ほぼ同じで売価を上げられる
「売上はあるのに、なぜか利益が残らない」——居酒屋を経営していて、そう感じたことはありませんか?
2024年、居酒屋を含む「酒場・ビヤホール」の倒産は212件。飲食店の全業態で最も多く、過去最多を更新しました(帝国データバンク調べ)。東京商工リサーチの集計でも、2024年度の「飲み屋」倒産は276件で過去最多。原因の約9割が「販売不振」——つまり、売上はあっても利益が残らなかったということです。
食材費・光熱費・人件費は上がり続けています。2025年4月にはビール大手4社が5〜8%の値上げを実施し、800品目以上が値上がりしました。「なんとなく」の価格設定で乗り切れる時代ではなくなっています。
でも、裏を返せばドリンクの原価管理を見直すだけで、利益構造が変わるということでもあります。
この記事では、居酒屋のドリンク原価率を種類別に整理して、「どこで利益を取って、どこは割り切るか」を一緒に考えていきます。
そもそも「ドリンク原価率」って何を見ればいい?
ドリンク原価率は、1杯あたりの仕入れ原価が販売価格に占める割合です。計算はシンプルです。
ドリンク原価率(%) = 1杯あたりの原価 ÷ 販売価格 × 100
たとえば、生ビール1杯の原価が150円、販売価格が500円なら:
150円 ÷ 500円 × 100 = 30%
この「30%」が高いか低いかは、ドリンクの種類によって変わります。ビールなら普通ですが、サワーで30%だったら何かおかしい。大事なのは、ドリンクごとの「相場」を知っておくことです。
| 原価率 | ざっくりした目安 |
|---|---|
| 15%以下 | かなり良い。サワー・カクテル中心ならこのあたり |
| 15〜20% | 良好。バランスの取れたメニュー構成 |
| 20〜25% | 平均的。多くの居酒屋がこの範囲 |
| 25〜30% | やや高め。ビール比率が高い可能性 |
| 30%以上 | 要注意。メニュー構成か価格設定を見直したい |
ドリンク別の原価率——「稼ぎ頭」と「集客装置」を分けて考える
居酒屋のドリンクには、利益を稼ぐものと、お客さんを呼ぶためのものがあります。これを混同すると、「全部利益を出さなきゃ」と思って疲弊するか、「全部安くしなきゃ」と思って儲からなくなります。
🍺 生ビール —— 集客装置
お客さんの「まず1杯目」。でも原価率はドリンクの中で最も高い部類です。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 樽ビール仕入れ | 約10,000〜15,000円/20L樽 |
| 1杯あたり容量 | 約350〜400ml |
| 1杯あたり原価 | 約150〜200円 |
| 一般的な販売価格 | 490〜590円 |
| 原価率 | 約25〜35% |
瓶ビール(中瓶500ml)だと仕入れ280円前後。600円で販売しても原価率47%と、かなり厳しくなります。
生ビールは「看板」であって「稼ぎ頭」ではありません。1杯目はビールで迎えて、2杯目以降にサワーやハイボールへ自然に流す——これが居酒屋ドリンクの王道パターンです。
ビールサーバーの定期洗浄も忘れずに。味が落ちると「残し」や「もういらない」が増えて、結局損します。
🍋 サワー・チューハイ —— 稼ぎ頭
居酒屋の利益を実質的に支えているのがサワーです。甲類焼酎を炭酸やお茶で割るので、1杯あたりの原価が驚くほど低い。
| サワーの種類 | 1杯あたり原価 | 販売価格目安 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| レモンサワー | 30〜50円 | 400〜490円 | 7〜12% |
| ウーロンハイ | 35〜50円 | 380〜450円 | 8〜13% |
| 緑茶ハイ | 35〜50円 | 380〜450円 | 8〜13% |
| グレープフルーツサワー | 40〜60円 | 400〜490円 | 9〜14% |
| 梅干しサワー | 50〜70円 | 430〜500円 | 10〜16% |
レモンサワー1杯の中身を分解してみると:
甲類焼酎 60ml:約20〜30円
炭酸水 200ml:約10〜15円
レモン果汁 10ml:約5〜10円
氷:約3〜5円
────────────────────
合計:約38〜60円
甲類焼酎は4L入り(大五郎、宝焼酎など)で約2,000円。1杯60ml使用で原価約30円です。
ここで覚えておきたいのは、「当店特製〇〇サワー」と名前を付けるだけで、原価はほぼ変わらないのに販売価格を上げられるということ。レモンにはちみつを足して「自家製はちみつレモンサワー」にすれば、原価+15円で販売価格を100〜130円上げられます。
🥃 ハイボール —— もうひとつの稼ぎ頭
ここ数年、居酒屋のトレンドといえばハイボール。原価率はサワーに次いで低く、「何杯でもいける」イメージで杯数を稼ぎやすいカテゴリーです。
| ハイボールの種類 | 1杯あたり原価 | 販売価格目安 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| 角ハイボール | 50〜70円 | 400〜490円 | 11〜17% |
| ジムビームハイボール | 60〜80円 | 430〜520円 | 12〜18% |
| 知多ハイボール | 80〜120円 | 500〜600円 | 14〜22% |
| メーカーズマークハイボール | 100〜140円 | 550〜650円 | 16〜24% |
角瓶(サントリー角)は業務用4Lで約6,000円。1杯30ml使用で原価約45円。プレミアムウイスキーに変えると原価は上がりますが、販売価格も上げやすいので利益「額」はそこまで変わりません。
🍶 日本酒 —— 原価率が最も高い「こだわり枠」
日本酒は銘柄による価格差が大きく、原価管理が一番難しいカテゴリーです。
| ランク | 仕入れ価格(一升瓶) | 一合あたり原価 | 販売価格目安(一合) | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| 普通酒 | 800〜1,200円 | 80〜120円 | 400〜500円 | 20〜25% |
| 本醸造 | 1,200〜2,000円 | 120〜200円 | 500〜600円 | 24〜33% |
| 純米酒 | 1,500〜2,500円 | 150〜250円 | 550〜700円 | 27〜36% |
| 純米吟醸 | 2,000〜3,500円 | 200〜350円 | 650〜900円 | 28〜42% |
| 純米大吟醸 | 3,000〜6,000円 | 300〜600円 | 800〜1,500円 | 30〜50% |
獺祭(純米大吟醸)だと一合あたり原価が400〜500円。800〜1,000円で販売しても原価率40〜50%です。
日本酒の原価を下げるコツは3つあります。
1. 地元の蔵元から直接仕入れる 中間マージンを10〜15%カットできます。地酒をアピールポイントにもできて一石二鳥。
2. グラス売り(90ml)を増やす 一合(180ml)ずつ出すより回転が速く、1杯あたりの原価も下げやすい。
3. 飲み比べセット 3種×90ml=900〜1,200円。原価の低い銘柄と高い銘柄を組み合わせれば、平均原価率をコントロールできます。SNS映えするので集客効果もあります。
🫗 焼酎 —— 甲類と本格焼酎で役割が違う
| 焼酎の種類 | 仕入れ価格目安 | 1杯あたり原価 | 販売価格目安 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| 甲類(割り材用) | 2,000円/4L | 20〜30円 | サワーで400〜490円 | 5〜8% |
| 本格芋焼酎 | 1,500〜3,000円/一升 | 80〜170円 | 400〜600円 | 16〜33% |
| 本格麦焼酎 | 1,200〜2,500円/一升 | 70〜140円 | 400〜550円 | 16〜28% |
| 黒糖焼酎 | 1,500〜2,500円/一升 | 80〜140円 | 450〜600円 | 16〜28% |
| プレミアム焼酎 | 5,000〜15,000円/一升 | 280〜830円 | 800〜1,500円 | 30〜60% |
甲類焼酎はサワーの「裏方」。サワーの原価が安いのは、この甲類焼酎のおかげです。
本格焼酎はロック・水割り・お湯割りで出すので、割り材コストがほぼゼロ。原価は高めですが、割り材分のコストがかからないのがポイントです。
森伊蔵・魔王といったプレミアム焼酎は原価率だけ見ると厳しいですが、「うちは置いてる」というだけで集客装置になります。
🍸 カクテル —— 見た目の割に原価が低い
| カクテル | 1杯あたり原価 | 販売価格目安 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| ジントニック | 50〜80円 | 480〜580円 | 10〜16% |
| カシスオレンジ | 40〜70円 | 450〜550円 | 8〜14% |
| モスコミュール | 50〜80円 | 480〜580円 | 10〜16% |
| カルーアミルク | 50〜80円 | 480〜580円 | 10〜16% |
| 梅酒ソーダ | 60〜90円 | 450〜550円 | 12〜18% |
全体を見渡して「どこで稼ぐか」を決める
原価率を低い順に並べると、利益戦略の全体像が見えてきます。
| ドリンク種別 | 原価率の目安 | 1杯あたり原価 | 利益への貢献 |
|---|---|---|---|
| ソフトドリンク | 5〜10% | 10〜20円 | ★★★★★ |
| 焼酎(甲類割り) | 5〜8% | 20〜30円 | ★★★★★ |
| サワー・チューハイ | 7〜15% | 30〜60円 | ★★★★★ |
| カクテル | 8〜18% | 40〜80円 | ★★★★☆ |
| ハイボール | 10〜22% | 50〜140円 | ★★★★☆ |
| 本格焼酎 | 16〜33% | 80〜170円 | ★★★☆☆ |
| 生ビール | 25〜35% | 150〜200円 | ★★☆☆☆ |
| 日本酒 | 20〜50% | 80〜600円 | ★★☆☆☆ |
| ワイン(グラス) | 25〜40% | 150〜300円 | ★★☆☆☆ |
ただし、大事なのは「原価率」だけではありません。**「利益額 × 出数」**で考えてください。
生ビールは原価率が高くても、1時間に100杯出る店なら十分な利益額を生みます。逆に、原価率が低いカクテルでも1日5杯しか出なければ大した額にはなりません。
FD比率——フードとドリンクのバランスが利益を決める
FD比率は、全売上に占めるフードとドリンクの比率のことです。
| FD比率 | 想定全体原価率 | コメント |
|---|---|---|
| フード7:ドリンク3 | 28〜32% | ドリンクが弱い。利益改善の余地あり |
| フード6:ドリンク4 | 25〜29% | 理想的。繁盛店に多い比率 |
| フード5:ドリンク5 | 23〜27% | バー寄り。ドリンクが強い店 |
なぜドリンク比率を上げると全体の原価率が下がるかというと、フードの原価率(30〜40%)に比べてドリンクの原価率(20〜25%)が低いからです。つまり、ドリンクが1杯多く出るたびに、全体の利益率が少しずつ上がるという構造です。
ドリンク比率を上げる5つの方法
- 乾杯ドリンクの即時提供 — 着席30秒以内にオーダーを取る体制をつくる
- 空グラスの即時回収 — グラスが空いたら「お次何にしますか?」と声をかける
- 飲み放題プランの導入 — 1杯あたりの単価は下がるが、杯数と客単価は上がる
- ドリンクペアリングの提案 — 「この刺身には○○の日本酒が合いますよ」の一言
- 季節限定ドリンク — 「限定」は注文率を上げる効果があります。秋は「ひやおろし」、夏は「冷やし甘酒サワー」など
飲み放題の原価設計——赤字にしないための考え方
飲み放題は集客の柱ですが、設計を間違えると利益を食いつぶします。
基本の計算
客1人あたり原価 = 平均杯数 × 1杯あたりの平均原価
原価率 = 客1人あたり原価 ÷ 飲み放題の価格 × 100
2時間飲み放題1,500円の例
一般的に、2時間コースで客1人あたりの平均は5〜7杯です。
| ドリンク | 杯数 | 1杯原価 | 小計 |
|---|---|---|---|
| 生ビール | 2杯 | 150円 | 300円 |
| サワー | 3杯 | 40円 | 120円 |
| ソフトドリンク | 1杯 | 15円 | 15円 |
| 合計 | 6杯 | 435円 | |
| 原価率 | 29% |
29%は飲み放題として適正範囲です。多くの飲み放題は原価率20〜30%に収まります。
利益を守るポイント
実は、飲み放題ではお客さんの行動パターンが味方してくれます。最初の1〜2杯はビールでも、3杯目以降はサワーやハイボールに移る人が多い。つまり、後半になるほど原価が下がるんです。
そのほかに気をつけたいのは:
- オリジナルサワーを充実させる — 原価30〜50円で「当店限定」の付加価値をつけられる
- 高原価品は飲み放題から外す — プレミアム日本酒やワインは別料金に
- 時間制限を厳守する — 延長はプラス500円など、ルールを明確にしておく
3段階プランで客単価をコントロール
| プラン | 価格(税抜) | 内容 | 想定原価率 |
|---|---|---|---|
| ライト | 1,000円 | サワー・ハイボール・ソフトドリンク | 15〜20% |
| スタンダード | 1,500円 | +生ビール・カクテル・梅酒 | 22〜28% |
| プレミアム | 2,000円 | +日本酒・焼酎・ワイン | 25〜32% |
ライトプランがあると「飲み放題は高い」と思っていた層も取り込めます。逆に、プレミアムがあることで「せっかくだからプレミアムにしよう」という心理も働きます。
利益を改善する7つの実務
1. 2杯目の誘導を仕組みにする
ビール(原価25〜35%)からサワー・ハイボール(原価10〜20%)への切り替えで、2杯目以降の利益率が大きく変わります。
- メニューの目立つ位置にサワー・ハイボールを配置する
- 「おすすめ」「当店人気No.1」のPOPをつける
- スタッフが「2杯目はハイボールいかがですか?」と声がけする
2. オリジナルドリンクで価格競争から抜け出す
「レモンサワー400円」だとチェーン店と比較されます。でも「自家製はちみつレモンサワー530円」なら、比較対象がなくなります。
| ドリンク | 原価 | 販売価格 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| 普通のレモンサワー | 40円 | 400円 | 10% |
| 自家製はちみつレモンサワー | 55円 | 530円 | 10.4% |
原価の差は15円。売価の差は130円。この差が、月間で見るとかなりの金額になります。
3. 日本酒は「飲み比べセット」で出す
3種×90ml(合計270ml ≒ 1.5合)を900〜1,200円で提供。
- 一合ずつ頼まれるより回転が速い
- 原価の低い銘柄を混ぜて平均原価率をコントロールできる
- 見た目が良いのでSNSにも載りやすい
4. 季節メニューで注文率を上げる
「限定」という言葉には、注文率を20〜30%上げる効果があるとされています。
| 季節 | ドリンク例 | 原価目安 |
|---|---|---|
| 春 | 桜リキュールのサワー | 45〜60円 |
| 夏 | 冷やしすだちハイボール | 50〜70円 |
| 秋 | ひやおろし日本酒(グラス) | 100〜200円 |
| 冬 | 自家製ゆず酒のお湯割り | 50〜70円 |
5. ソフトドリンクも手を抜かない
ソフトドリンクの原価率は5〜10%で、利益率は最も高いカテゴリー。ドライバーや飲めない方のためだけでなく、全体の原価率を下げる大事な存在です。
6. 注ぎ方と分量を統一する
「ちょっと多め」が積み重なると、月単位で数万円のロスになります。
- 焼酎・ウイスキーはジガーカップで計量
- 生ビールの泡比率は液体7:泡3で統一
- サワーの焼酎は60mlを基準として全スタッフに共有
7. 仕入れ価格を毎月チェックする
2025〜2026年は、仕入れ値が上がり続ける環境です。
- 2025年4月 — ビール大手4社が5〜8%値上げ、800品目以上が対象
- 円安 — 輸入ウイスキー・ワインの仕入れ価格に直撃
- 物流費 — 輸送コストの上昇が仕入れ全体に影響
- 2026年10月 — 酒税改正でビール・発泡酒・新ジャンルの税率が統一
月1回は仕入れ価格をチェックして、四半期ごとにメニュー価格を見直しましょう。「気づいたら原価率が5%上がっていた」は、よくある話です。
原価管理、手作業でやっていませんか?
ドリンクメニューが20種類以上あると、手作業での原価管理は現実的ではありません。仕入れ値が変わるたびにExcelを開いて、全メニューの原価率を計算し直す——正直、面倒ですよね。
KitchenCostを使えば、焼酎やウイスキーなどの仕入れ価格を一度登録するだけで、1杯ごとの原価と原価率が自動計算されます。仕入れ値が変わったら、関連するすべてのドリンクの原価が即時更新。フードメニューと合わせた全体の原価管理もできます。
今すぐやること
- 主要ドリンク10種類の1杯あたり原価を計算する
- FD比率(フード対ドリンクの売上比率)を確認する
- 2杯目誘導のためのサワー・ハイボールのPOPを作成する
- 飲み放題プランの原価率を再計算する
- 仕入れ価格の最終確認日を確認する(1ヶ月以上前なら、今日チェック)
参考資料
- 帝国データバンク「飲食店」の倒産動向調査(2025年) — 2025年の飲食店倒産1,002件で過去最多、初の1,000件超え
- 東京商工リサーチ 2024年度「飲み屋」さんの倒産 — 2024年度276件で過去最多、販売不振が約9割
- 帝国データバンク「飲食店」の倒産動向(2025年上半期) — 2025年上半期458件、酒場・ビヤホール105件
- カクヤス 2025年4月値上げ情報 — ビール・チューハイなど800品目以上値上げ
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