「ケーキの材料費が1,500円だったけど…3,000円で売ったら高いかな?」
お菓子販売を始めると、最も難しいのが価格設定です。安すぎると利益が出ないし、高すぎると注文が来ない。
手作りお菓子の販売価格を合理的に決める方法を整理します。
要点まとめ
- 材料費だけで価格を決めると必ず赤字
- 自分の時間もコスト—最低賃金以上で計算
- 包装費も原価の一部
- 効率化(同時製作)で1台あたりの時間コストを下げる
価格設定が難しい理由
よくある3つの間違い
間違い1:材料費だけで計算
「薄力粉100円 + バター300円 + 卵150円 = 550円だから、800円で売ろう」
間違い2:自分の時間をタダと考える
「どうせ家で作るんだから、人件費はゼロでしょ」
間違い3:他店の価格をそのまま真似
「あの人が3,000円で売ってるから、私も3,000円」
これらの共通点は、隠れたコストを見落としていることです。
お菓子原価の本当の構成
材料費だけで考えると赤字になります。実際の原価は3つに分かれます。
1. 直接原価(目に見えるもの)
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 材料費 | 薄力粉、バター、卵、生クリームなど |
| 副材料費 | チョコレート、果物、飾り |
| 消耗品 | クッキングシート、絞り袋 |
2. 間接原価(目に見えにくいもの)
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 道具の減価償却 | オーブン、ミキサー、型の使用コスト |
| 光熱費 | オーブンの電気・ガス代 |
| 失敗コスト | 試作、失敗品の材料費 |
| 時間コスト | 自分の労働の価値 |
3. 運営コスト
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 包装材 | 箱、袋、リボン、シール |
| 配送費 | 自分で届ける場合の交通費 |
| 宣伝費 | SNS広告、試食提供など |
実例:5号(15cm)デコレーションケーキの原価計算
Step 1:材料費の計算
| 材料 | 使用量 | 単価 | 原価 |
|---|---|---|---|
| 薄力粉 | 100g | 0.4円/g | 40円 |
| グラニュー糖 | 120g | 0.3円/g | 36円 |
| 卵 | 4個 | 30円/個 | 120円 |
| 牛乳 | 50ml | 0.2円/ml | 10円 |
| 生クリーム | 400ml | 1.5円/ml | 600円 |
| いちご | 200g | 4円/g | 800円 |
| バニラエッセンス | 5ml | 10円/ml | 50円 |
| 材料費合計 | 1,656円 |
💡 いちご、卵、生クリームは時期と市況によって大きく変動します。2025年は卵が前年比20%高、いちごが10〜30%高になりました。
Step 2:包装費の計算
| 項目 | 単価 |
|---|---|
| ケーキ箱(5号) | 250円 |
| トレー | 50円 |
| リボン・シール | 50円 |
| 保冷剤 | 30円 |
| 保冷バッグ | 100円 |
| 包装費合計 | 480円 |
Step 3:時間コストの計算
| 工程 | 所要時間 |
|---|---|
| スポンジを焼く | 1時間 |
| クリーム準備 | 30分 |
| ナッペ(塗り) | 1時間 |
| デコレーション | 30分 |
| 箱詰め | 15分 |
| 合計 | 約3時間15分 |
時給をいくらで計算するか?
2025年10月時点の全国平均最低賃金は1,121円です。東京は1,226円。技術を要する作業なら、時給1,500〜2,000円で計算するのも妥当です。
最低賃金基準:3.25時間 × 1,121円 = 3,643円
熟練者基準:3.25時間 × 1,800円 = 5,850円
Step 4:総原価の計算
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 材料費 | 1,656円 |
| 包装費 | 480円 |
| 時間コスト(最低賃金) | 3,643円 |
| 総原価 | 約5,779円 |
「材料費1,656円」だけを見て2,500円で売ったら、確実に赤字です!
適正価格の計算方法
方法1:原価ベース(目標利益率)
販売価格 = 原価 ÷ (1 - 目標利益率)
お菓子販売の適正利益率:30〜40%
📊 お菓子業界の一般的な原価率は20〜30%とされています。これを逆算すると、販売価格は原価の3〜5倍が目安になります。
時間コスト除外(材料+包装のみ):
2,136円 ÷ 0.7 = 約3,051円
時間コスト込み:
5,779円 ÷ 0.7 = 約8,256円
🤔 現実的に8,000円以上のホールケーキは販売が難しい場合も。だから多くの手作り販売者が薄利多売の罠にはまるのです。
方法2:市場価格ベース
2025年の5号デコレーションケーキ市場価格:
| 販売先 | 価格帯 |
|---|---|
| シャトレーゼ等 | 2,500〜3,000円 |
| 街のケーキ屋 | 3,500〜4,500円 |
| キルフェボン等プレミアム | 4,500〜5,500円 |
| オーダーケーキ専門店 | 5,000〜6,000円 |
📊 2025年冬シーズンの5号クリスマスケーキ平均価格は4,740円(税抜)で、前年比3.9%上昇しました。
**「自分のケーキはどのポジションか?」**をまず決める必要があります。
現実的な価格戦略
戦略1:時間効率化で原価を下げる
BEFORE:ケーキ1台に3時間15分
AFTER:同じ時間で3台同時製作
時間コスト:3,643円 → 1,214円/台
注文をまとめて同じ日に複数作る! これがお菓子販売で利益を出す最も現実的な方法です。
戦略2:デザイン別の価格設定
| デザイン | 追加作業時間 | 適正価格 |
|---|---|---|
| シンプルなナッペ | 基本 | 3,500〜4,000円 |
| フルーツデコ | +30分 | 4,500〜5,500円 |
| メッセージプレート追加 | +20分 | +500〜800円 |
| 複雑なフラワーデコ | +1.5時間 | 7,000円〜 |
基本価格 + オプション料金方式なら、お客様も納得しやすく、作業量に見合った対価を得られます。
戦略3:セット・パッケージ構成
ケーキ単品:4,500円
ケーキ + 焼き菓子5個セット:5,500円
客単価を上げながら追加収益を!
商品別価格ガイド
ホールケーキ
| サイズ | 材料費 | 包装費 | 推奨販売価格 |
|---|---|---|---|
| 4号(12cm) | 1,000〜1,500円 | 300円 | 2,500〜3,500円 |
| 5号(15cm) | 1,500〜2,000円 | 450円 | 3,500〜5,000円 |
| 6号(18cm) | 2,500〜3,500円 | 600円 | 5,500〜7,500円 |
焼き菓子
| 商品 | 材料費 | 推奨販売価格 |
|---|---|---|
| マカロン(1個) | 80〜120円 | 300〜450円 |
| フィナンシェ(1個) | 60〜100円 | 250〜350円 |
| マドレーヌ(1個) | 50〜80円 | 200〜300円 |
| クッキー(1枚) | 30〜60円 | 150〜250円 |
その他スイーツ
| 商品 | 材料費 | 推奨販売価格 |
|---|---|---|
| ミニタルト | 200〜350円 | 600〜900円 |
| プリン(1個) | 150〜250円 | 400〜600円 |
| ティラミス(カップ) | 250〜400円 | 700〜1,000円 |
価格を上げるべきタイミング
チェックリスト
- ✅ 材料費が上がった(特に卵、バター、果物)
- ✅ 注文が多すぎて対応しきれない
- ✅ リピーターが増えてブランド力がついた
- ✅ 技術が上がって品質が向上した
- ✅ ほとんど利益が出ていない
1つでも当てはまれば、値上げを検討しましょう。
値上げの方法
- 新商品の発売と同時に既存商品も調整
- 常連さんには事前に告知(1〜2週間前)
- 理由を正直に説明(原材料費の高騰など)
- 一度に大きく上げず、少しずつ(10%以内)
今すぐやること
- 主力商品の材料費・包装費・時間コストを計算する
- 目標利益率を設定し、販売価格を逆算する
- 同時製作で時間コストを下げられないか検討する
- デザイン別の価格表を作成する
関連ガイド
まとめ:価格設定の公式
適正価格 = (材料費 + 包装費 + 時間コスト) ÷ (1 - 目標利益率)
覚えておきたいポイント
- 材料費だけで価格を決めると必ず赤字
- 自分の時間もコスト—最低賃金(1,121円)以上で計算
- 包装費も原価の一部
- 市場価格と比較してポジショニングを決める
- 効率化(同時製作)で1台あたりの時間コストを下げる
原価管理をもっと簡単に
エクセルで管理すると:
- 新メニューごとにシートを作成
- 材料価格が変わるたびに手動で修正
- 時間コストの計算が複雑
レシピ原価計算アプリを使えば:
- 材料を一度登録すれば、どのメニューも原価を自動計算
- 目標利益率を入力すれば適正価格を自動算出
- 材料価格が変わっても全レシピを自動更新
ケーキ、マカロン、クッキー…すべてのお菓子メニューの原価と適正価格を一目で管理したいなら、KitchenCost アプリをチェックしてみてください。