牛タンは、飲食店で扱う食材のなかでもトップクラスに高い。
仕入れ値は1kgで4,000〜5,500円。しかもそのまま提供できるわけではなく、スジを取り、スライスし、焼けば30%近く縮む。
生肉100gを仕入れても、お客さんの皿に載るのは70g。実質原価は、仕入れ価格の1.4倍で考えなければいけません。
「高級メニューだから利益が出る」と思って始めたのに、フタを開けたら利益率が20%台——牛タン専門店のあるあるです。
先に結論
- 牛タンは焼き縮み30%。 仕入れ4,500円/kgでも、焼き上がりベースでは6,400円/kg
- 薄切り90g=4枚が標準。 厚切りなら120g=3枚で別価格
- テールスープは1杯70〜90円。 「無料のスープ」ではない
- 麦飯おかわり無料なら、おかわり率分を売価に含める
牛タン定食1食の原価を分解する
例:薄切り牛タン定食(税抜売価1,500円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 牛タン(生肉) | 90g | 405円 |
| 麦飯 | 200g | 55円 |
| テールスープ | 200ml | 80円 |
| 漬物(南蛮味噌・浅漬け) | 30g | 20円 |
| サラダ | 30g | 15円 |
| 焼き用油 | 5ml | 2円 |
| 合計 | 577円 |
原価率:577 ÷ 1,500 = 38.5%
飲食店の平均原価率30%と比べると高い。牛タン定食は客単価が高い分、原価率が35〜40%になりやすい業態です。粗利額で見ることが大事——1食あたりの粗利は923円。これ自体は悪くありません。
焼き縮みの現実
牛タンの原価を正しく計算するために、焼き縮み(歩留まり)は避けて通れません。
| 状態 | 重量 | 歩留まり |
|---|---|---|
| 仕入れ(ブロック) | 1,000g | 100% |
| トリミング後(筋・膜除去) | 900g | 90% |
| スライス後 | 880g | 88% |
| 焼き上がり | 630g | 63%(対仕入れ) |
1kgの仕入れから焼き上がりで使えるのは約630g。 4,500円/kgで仕入れた牛タンは、実質7,140円/kgです。
実質単価 = 4,500円 ÷ 0.63 = 7,143円/kg
1食分(生肉90g → 焼き上がり63g)= 7,143 × 0.063 = 450円
仕入れ価格だけで計算すると405円。歩留まりを含めると450円。この45円の差が月にどう効くか——1日50食 × 25日 = 月に56,250円の差。
厚切りと薄切りの価格設計
牛タン専門店は「厚切り」と「薄切り」の2段階が基本です。
| メニュー | タン量(生肉) | 原価 | 推奨売価 | 原価率 | 粗利 |
|---|---|---|---|---|---|
| 薄切り定食(4枚) | 90g | 577円 | 1,500円 | 38.5% | 923円 |
| 厚切り定食(3枚) | 120g | 697円 | 1,900円 | 36.7% | 1,203円 |
| ミックス定食 | 100g | 627円 | 1,700円 | 36.9% | 1,073円 |
厚切りのほうが原価率が低い。 カット数が少ないぶんトリミングロスも減るためです。厚切りの注文比率を上げると、粗利額も粗利率も改善します。
テールスープの原価
「テールスープは無料のサービス」——そう思っていませんか?
テールスープ1バッチ(5L分)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| テール | 1kg | 1,800円 |
| 長ねぎ | 100g | 30円 |
| 塩 | 15g | 2円 |
| 水 | 6L | 約2円 |
| ガス代(3時間煮込み) | - | 150円 |
| 合計 | 1,984円 |
5Lから取れるスープは約4L(蒸発ロス)。1杯200mlなら20杯分。
テールスープ原価(1杯)= 1,984 ÷ 20 = 約99円
1杯100円近くするスープを無料で出している。 1日50杯なら月に125,000円。これは原価の一部です。
麦飯おかわりの管理
牛タン専門店の麦飯は、白米より仕入れ価格が高い(大麦を30%混ぜる場合、白米の約1.3倍)。
| 項目 | 白米200g | 麦飯200g |
|---|---|---|
| 原価 | 38円 | 55円 |
| おかわり1回分 | 38円 | 55円 |
おかわり無料の場合、おかわり率を把握していないと原価計算が狂います。
| おかわり率 | 1食の実質ご飯原価 | 55円(1杯)との差 |
|---|---|---|
| 0% | 55円 | — |
| 30% | 72円 | +17円 |
| 50% | 83円 | +28円 |
| 70% | 94円 | +39円 |
おかわり率50%なら、ご飯原価が1食83円。 これを定食価格に織り込んでいないと、毎食28円ずつ利益が削られます。
対策: 1週間だけ「おかわり何杯目まで出したか」をカウントする。平均おかわり率がわかれば、定食価格に正しく反映できます。
今週やること
- 牛タンをスライスし、生肉の状態で1食分ずつ計量する(薄切り90g、厚切り120g)
- 焼き前後の重量を3回測って、自店の焼き縮み率を出す
- テールスープのバッチ原価を計算し、1杯あたりの原価を把握する
- 麦飯のおかわり回数を1週間記録する
- 厚切り定食の注文比率を上げるPOPを作る
関連ガイド
出典
タンの重量と歩留まりを登録すれば、厚切り・薄切りの利益差がすぐ見えます。仕入れ値が変わったら全メニュー自動更新。KitchenCost を使ってみてください。