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牛丼専門店の原価ガイド:肉80gの壁と、サイズ別で利益が消える仕組み

牛丼1杯の原価を肉・玉ねぎ・つゆ・ご飯に分解。並盛・大盛の価格差設計、つゆの原価管理、セット構成で客単価を上げる方法を実例で解説します。

更新 2026年2月18日
牛丼丼もの原価計算価格設定仕込み飲食店経営
目次

牛丼は安い。だからこそ難しい。

並盛400円台の店で、原材料を1杯ずつ計算してみると、利益が「数十円」しか残っていないことがあります。売上が月200万円あっても、手元に残るのは20〜30万円。人件費を引いたら赤字ギリギリ——そんな店は珍しくありません。

理由は単純で、牛肉の価格が高い

牛丼の原価は、牛肉が55〜60%を占めます。玉ねぎもつゆもご飯も安い。原価のほとんどが「肉」です。だから肉の量が5g増えるだけで利益が削れるし、10g減らすと「肉が少ない」とクレームが来る。

牛丼専門店の原価管理は、肉のグラム管理に始まり、肉のグラム管理に終わります。


先に結論

  • 牛丼の原価は**牛肉が55〜60%**を占める。肉のグラム管理が利益管理そのもの
  • 並盛の肉量は80gが標準的。70gに減らすと客離れ、90gに増えると原価率が跳ね上がる
  • つゆは寸胴単位で原価を出し、レードルで定量化する
  • サイズ別価格は追加原価+利益で設計する。大盛の差額が安すぎると全体が赤字方向に
  • セットメニュー(味噌汁・サラダ・卵)で客単価を上げるのが利益改善の王道

牛丼1杯の原価を分解する

例:牛丼並盛(税抜450円)

項目原価
牛バラ肉スライス80g104円
玉ねぎ40g12円
つゆ(醤油・みりん・砂糖・だし)60ml18円
ご飯250g38円
紅しょうが5g3円
合計175円

原価率:175 ÷ 450 = 38.9%

※ 牛バラ肉は100gあたり130円で計算(業務用冷凍の一般的な価格帯)。米は5kgあたり2,500円(炊飯後1合300gとして計算)。数字は目安です。

この38.9%という数字、飲食店の目安(30〜35%)からすると少し高めです。牛丼は業態として原価率が高い。だから回転率と客単価の両方で利益を作る必要があります。


サイズ別の原価と価格設計

牛丼チェーンでは「小・並・大・特盛」のサイズ展開が一般的です。ここの価格差の付け方で利益が変わります。

サイズごとの原価内訳

サイズご飯つゆ・玉ねぎ合計原価売価原価率
小盛60g = 78円180g = 27円25円130円380円34.2%
並盛80g = 104円250g = 38円33円175円450円38.9%
大盛110g = 143円350g = 53円38円234円580円40.3%
特盛150g = 195円350g = 53円42円290円680円42.6%

大盛にするほど原価率が上がっていることに注目してください。

並盛→大盛で肉が30g・ご飯が100g増えて原価は59円増。でも売価の差は130円。一見、差額130円に対して原価59円だから利益が出ているように見えます。

問題は、大盛を選ぶ人が増えると全体の平均原価率が上がること。大盛比率が50%を超えると、店全体の原価率が40%に近づきます。

価格差の設計ルール

大盛の差額設計には2つの考え方があります。

パターンA:原価率を揃える

サイズ原価原価率35%の売価差額
小盛130円371円 → 380円
並盛175円500円 → 500円+120円
大盛234円669円 → 670円+170円
特盛290円829円 → 830円+160円

パターンB:差額を固定する(現実的)

サイズ売価差額原価率
小盛380円34.2%
並盛450円+70円38.9%
大盛580円+130円40.3%
特盛680円+100円42.6%

パターンAは理想的ですが、売価が高くなりすぎると客足が減ります。実際にはパターンBで差額をやや大きめに設定しつつ、大盛比率が上がりすぎないようにバランスを取るのが現実的です。

差額の目安:追加原価の2倍以上を確保する。59円の原価増なら、差額は120円以上。


つゆの原価管理

牛丼のつゆは見落とされがちですが、ブレが大きいポイントです。

つゆの構成(寸胴1本分の例)

材料原価
醤油2L600円
みりん1L500円
砂糖300g80円
昆布だし0.5L200円
3L
生姜50g50円
合計約6.5L1,430円

つゆは煮込むと水分が蒸発して約5Lに減ります。1杯あたり60ml使うとすると:

1本で約83杯分
1杯あたりのつゆ原価 = 1,430 ÷ 83 = 約17円

17円は小さく見えますが、問題はブレです。

つゆのブレが起きる3つの原因

1. スタッフによって盛り付けるつゆの量が違う

「多め」「少なめ」の感覚は人によって違います。60mlのはずが80ml入れるスタッフがいると、1杯あたり6円の原価増。1日100杯なら600円、月18,000円の差が出ます。

対策:レードルのサイズを固定する。 60mlのレードルで「すりきり1杯」と決める。

2. 煮込み時間が長すぎて味が変わる

つゆを煮込みすぎると水分が蒸発して量が減ります。味は濃くなるけれど、5Lが4Lに減ったら20%のロスです。

対策:煮込み時間をタイマーで管理する。 補充用のつゆを別に用意しておく。

3. 仕込みのたびに味が変わる

調味料の計量を「目分量」でやっていると、日によって味が変わります。味だけでなく原価もブレます。

対策:レシピカードを作成する。 醤油○ml、みりん○ml、と明記して、新人でも再現できるようにする。


肉80gの壁

牛丼の肉量は「80g」が一つのラインです。

肉量と原価の関係

肉量原価並盛450円での原価率体感
60g78円(総原価149円)33.1%少なく感じる
70g91円(総原価162円)36.0%やや少ない
80g104円(総原価175円)38.9%標準
90g117円(総原価188円)41.8%やや多い
100g130円(総原価201円)44.7%満足度高いが利益薄

80gから90gに増やすと、1杯あたり13円の原価増。1日100杯で月39,000円、年間47万円です。

逆に、80gを70gに減らすと年間47万円の原価削減——ただし「肉が少ない」という口コミが出るリスクがあります。

大手チェーンは肉量を60〜80gの間で設定し、つゆと玉ねぎでボリューム感を出しています。 個人店が同じことをするとクレームにつながるので、80gを下限にして、つゆの味と温度で満足度を上げるのが現実的です。

肉のグラムを安定させる方法

  1. ポーションスケール(計量器)を使う — 感覚盛りは必ずブレる
  2. 仕込み時に小分けする — 1食分ずつ計量して保存容器に分けておく
  3. 盛り付けトレーニング — 新人には最初の3日間、全杯計量させる

セット構成で利益を守る

牛丼単品の原価率は38%前後と高め。これを下げるにはセットメニューが有効です。

セットメニューの原価と利益

セット内容追加原価セット価格(追加分)粗利原価率
味噌汁セット12円+100円88円12%
サラダセット25円+120円95円21%
卵セット15円+60円45円25%
味噌汁+サラダセット37円+180円143円21%
味噌汁+卵+サラダ52円+230円178円23%

味噌汁は原価12円で100円もらえる。原価率12%です。牛丼本体の39%に比べれば圧倒的に利益率が高い。

セット率を上げる工夫

  • メニュー表でセットを目立たせる:単品価格の横にセット価格を並べると、差額が小さく見えて選ばれやすい
  • 「おすすめ」のPOP:「味噌汁セット+100円」の一言だけでセット率が10%上がることもある
  • 券売機の場合:セットボタンを単品の隣に配置する

仮にセット率が30%で、平均セット追加額が130円だとすると:

1日100杯 × 30% × 130円 = 3,900円/日
月間 = 3,900 × 25日 = 97,500円
追加原価 = 100杯 × 30% × 25円(平均) = 750円/日 → 18,750円/月
追加粗利 = 97,500 − 18,750 = 78,750円/月

セットだけで月に約8万円の粗利増。年間で約94万円。


牛肉仕入れの原価を下げる方法

仕入れ先の比較

仕入れ先100gあたりメリットデメリット
業務用冷凍(バラ薄切り)110〜140円安定供給・価格安定解凍の手間
精肉卸130〜170円品質が良い価格変動あり
スーパー(業務スーパー等)120〜160円少量購入可安定供給の保証なし
海外産冷凍(米国・豪州)90〜120円最安品質にバラつき

大手チェーンはアメリカ産やオーストラリア産の冷凍ショートプレートを大量仕入れして、100gあたり80〜100円で調達しています。個人店がこの価格で仕入れるのは難しいですが、業務用冷凍を箱買いすれば100gあたり110〜130円程度まで下げられます。

仕入れコスト削減のポイント

  1. 週1回まとめ買い:毎日の仕入れは配送コストがかかる
  2. 冷凍在庫を持つ:価格が安い時に多めに買い、冷凍ストックする
  3. 部位を変える:バラ薄切りが高騰した時は肩ロース薄切りに切り替える(味は変わるが原価は下がる)
  4. 業務用ECサイトの活用:業務スーパーより安い場合がある

月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:25日
  • 1日の平均杯数:100杯
  • 平均客単価:520円(セット含む)
月間売上 = 100杯 × 520円 × 25日 = 1,300,000円

原価率38%の場合:
原価 = 494,000円
粗利 = 806,000円

原価率43%の場合(肉ブレ・大盛多い・セット率低い):
原価 = 559,000円
粗利 = 741,000円

差額 = 65,000円/月 = 年間780,000円

原価率5ポイントの差が、年間78万円の利益差になります。


今週やること

  • 肉のグラムを決めて、ポーションスケールで計量する仕組みを作る
  • つゆのレシピカードを作成し、レードルで定量化する
  • 小・並・大・特盛の価格差を、追加原価の2倍以上になっているか確認する
  • セットメニューの構成と価格を見直し、メニュー表で目立たせる
  • 牛肉の仕入れ先を2〜3社比較して、100gあたり単価を把握する
  • 1杯あたりの原価をすべて書き出して、合計を出す

関連ガイド


肉・つゆ・ご飯を登録すれば、1杯の原価が自動で出ます。サイズ別の原価率もひと目で比較。KitchenCost は無料で使えます。

よくある質問

牛丼1杯の原価はどれくらい?

並盛(肉80g・ご飯250g)で160〜200円が目安です。内訳は牛肉90〜120円、玉ねぎ10〜15円、つゆ15〜20円、ご飯35〜40円。牛肉が全体の55〜60%を占めるため、肉のグラム管理がそのまま利益管理になります。

並盛・大盛・特盛の価格差はどう設計する?

追加の原材料原価に利益を乗せて設計します。並→大盛は肉+30g・ご飯+100gで原価が約55円増加。価格差を100〜130円に設定すると、大盛でも原価率が並盛と同水準に保てます。大盛の差額を50円程度にすると、大盛比率が上がって全体の原価率が悪化します。

つゆの原価はどう計算する?

つゆは寸胴単位で仕込み原価を出し、1杯あたりに割ります。例えば寸胴1本(醤油・みりん・砂糖・だし・水)の原価が3,000円で200杯分なら、1杯あたり15円。スタッフによってつゆの量がブレやすいので、レードル1杯で固定するのが基本です。

牛丼のセットメニューは利益に貢献する?

はい。味噌汁(原価10〜15円・売価100円)、サラダ(原価20〜30円・売価120円)、卵(原価15円・売価60円)は原価率が低く、客単価を100〜200円上げながら全体の原価率を改善します。セット率を30%以上に上げることが利益改善の近道です。

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