定食屋の「鯖の塩焼き定食850円」。メニューの中ではごく普通の価格に見える。
でも原価を分解してみると、鯖120円、ご飯80円、味噌汁25円、小鉢2品で80円、漬物15円。合計320円で原価率は38%。
「あれ、思ったより高い」と感じたなら、それは魚の仕入れ値か副菜の品数に原因がある。
焼き魚定食はシンプルに見えて、利益を出すにはセット全体の設計が必要だ。
先に結論
- 魚の原価は「歩留まり込み」で計算する。 焼成で15〜20%縮むし、骨・皮のロスもある
- 利益を削るのは「副菜の品数」。 小鉢1品追加で原価が30〜60円上がる
- ご飯は安くない。 2025年の米価高騰でCPI前年比+70.9%。1杯40〜50円になっている
- 魚のサイズを統一する。 10gの差で原価が20〜30円変わる
鯖の塩焼き定食の原価を分解する
鯖の塩焼き定食(税抜850円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 鯖(半身・焼成後80g) | 120円 |
| ご飯(150g) | 50円 |
| 味噌汁 | 25円 |
| 小鉢①(ひじき煮) | 30円 |
| 小鉢②(冷奴) | 35円 |
| 漬物 | 15円 |
| 合計 | 275円 |
原価率:275 ÷ 850 = 32.4%。この構成なら悪くない。
鮭の塩焼き定食(税抜950円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 鮭(切り身・焼成後80g) | 160円 |
| ご飯(150g) | 50円 |
| 味噌汁 | 25円 |
| 小鉢①(ほうれん草おひたし) | 35円 |
| 小鉢②(ポテトサラダ) | 50円 |
| 漬物 | 15円 |
| 合計 | 335円 |
原価率:335 ÷ 950 = 35.3%。鮭は鯖より魚代が40円高い上に、副菜にポテトサラダを入れると原価が跳ねる。
同じ「焼き魚定食」でも、魚と副菜の組み合わせで原価率が3〜5ポイント変わる。 この差を把握しているかどうかで利益が変わる。
魚の歩留まり——「仕入れ値」と「使える量」は違う
焼き魚の原価を正しく出すには、仕入れ重量ではなく可食部(提供重量)ベースで計算する。
主な魚の歩留まり
| 魚 | 仕入れ形態 | 可食部率 | 焼成収縮 | 実質可食部率 |
|---|---|---|---|---|
| 鯖 | 半身 | 85% | -15% | 72% |
| 鮭 | 切り身 | 90% | -15% | 76% |
| 秋刀魚 | 1尾 | 55% | -20% | 44% |
| ホッケ | 開き | 65% | -15% | 55% |
| 鯵(アジ) | 開き | 60% | -18% | 49% |
秋刀魚は1尾100円で安く見えるが、実質可食部は44%。100円で食べられる部分は44g分しかない。
秋刀魚の実質g単価 = 100円 ÷ (150g × 0.44) = 1.52円/g
鯖の実質g単価 = 150円 ÷ (120g × 0.72) = 1.74円/g
g単価で比較すると、鯖と秋刀魚の差は思ったほど大きくない。歩留まりを無視して「安い魚を使えばいい」と判断すると、期待ほど原価が下がらないことがある。
副菜の品数管理——「多ければ多いほどいい」は利益を食う
定食の満足度は副菜の品数で上がるが、原価も品数に比例して上がる。
副菜の原価目安
| 副菜 | 原価目安 |
|---|---|
| 漬物 | 10〜20円 |
| 冷奴 | 25〜35円 |
| ひじき煮 | 20〜30円 |
| ほうれん草おひたし | 25〜40円 |
| きんぴらごぼう | 25〜35円 |
| ポテトサラダ | 40〜60円 |
| 卵焼き | 30〜40円 |
| 切り干し大根 | 20〜30円 |
小鉢を1品→2品→3品と増やすと:
| 構成 | 副菜原価 | 定食原価(鯖) | 原価率 |
|---|---|---|---|
| 小鉢1品 + 漬物 | 45円 | 260円 | 30.6% |
| 小鉢2品 + 漬物 | 95円 | 310円 | 36.5% |
| 小鉢3品 + 漬物 | 140円 | 355円 | 41.8% |
小鉢を1品追加するごとに原価率が約5ポイント上がる。 3品出すと原価率40%超え。
「お客さんの満足度のために品数を増やしたい」なら、ひじき・漬物・切り干し大根など原価20〜30円の副菜を中心にするのが鉄則だ。
ご飯の原価——もう「安い」とは言えない
2025年、米価はCPI前年比**+70.9%**の急騰を記録した。
以前は1杯30円程度だったご飯が、今は40〜50円に上がっている。
米10kg = 5,000〜6,000円(2025年時点)
炊き上がり倍率 = 2.2倍
ご飯1杯(150g) = 約40〜50円
おかわり自由の店は要注意。 おかわりを2杯する人が全体の20%いるなら:
追加コスト = 50円 × 2杯 × 20% × 来客数
50人/日なら → 50円 × 2 × 10人 = 1,000円/日 = 25,000円/月
月2.5万円。おかわり無料を続けるなら、定食価格に織り込む必要がある。
魚のサイズ統一——これが一番効く
焼き魚定食で最も効果的な原価管理は、魚のサイズ(重量)を統一することだ。
- 仕入れ時に「1切れ80g±5g」で規格指定する
- 自店でカットする場合は秤で計量する
- 端材はまかないか賄い丼に回す
80gと100gの切り身で原価が20〜30円違う。 1日50食出る店なら:
25円 × 50食 × 25日 = 31,250円/月
年間37万円の差。秤1台で防げる金額だ。
今週やること
- 主力の魚(鯖・鮭)の切り身重量を秤で計量して統一する
- 焼成後の重量を測って歩留まり率を出す
- 副菜の品数と構成を固定して、定食1食あたりの原価を計算する
- ご飯1杯の原価を現在の米価で再計算する
- おかわり無料を続けるなら、月間コストを試算して定食価格に反映する
焼き魚定食はシンプルだからこそ、1つ1つの原価が利益に直結する。まずは魚のサイズを揃えて、副菜の品数を決めるところから始めてみてほしい。
焼き魚定食のセット原価を一括管理するなら。魚や米の仕入れ値を更新するだけで、定食の原価率がリアルタイムで変わります。KitchenCost を使ってみてください。