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「どんぶり勘定」で店を閉めた元オーナーたちの話。最初に計算すべきだった数字とは

飲食店廃業の最大原因は、どんぶり勘定。繁盛していたのに閉店した店には共通点があった。元オーナーの失敗談と、最低限押さえるべき数字を整理する。

どんぶり勘定飲食店経営原価計算廃業失敗
目次

「忙しかったのに、なぜ潰れたのか」

大阪で居酒屋を経営していた男性の話だ。

開業から2年間、席はほぼ毎晩埋まっていた。常連もついた。売上は月に300万円を超えることもあった。

3年目の春、税理士からこう言われた。

「先月、赤字ですよ」

信じられなかった。毎日これだけ客が来ているのに、赤字?

原因はシンプルだった。食材費が売上の45%を占めていた。 人件費を足すと70%を超えていた。家賃と光熱費を払うと、手元には何も残らない構造になっていた。

「売上は見ていた。でも、仕入れにいくらかかっているかは、ちゃんと計算していなかった」

これが どんぶり勘定 だ。


どんぶり勘定の実態

飲食コンサルタントや税理士のブログを読むと、同じ話が何度も出てくる。

個人経営の飲食店では、こんな状態が珍しくないという。

  • プライベートの支出と事業の支出が ごちゃまぜ になっている
  • 月末に通帳の残高を見て、「今月は大丈夫だったかな」と判断している
  • メニューの原価率を 一度も計算したことがない
  • 棚卸しを やっていない(Yahoo!知恵袋には「4年間棚卸しをせずに確定申告してきた」という投稿がある)

ある税理士は、こう書いている。

「事業を経営しているのに毎月どのくらい利益が出ているのか、黒字か赤字かすらよくわからない。そういう個人事業主は少なくない」


繁盛店が潰れるメカニズム

「客が来ない」で潰れる店は分かりやすい。問題は 「客が来ているのに潰れる」 パターンだ。

仕組みはこうだ。

ケース:月商300万円の居酒屋

売上:300万円

原価(食材費):135万円(45%)← 本来は30-35%が目安
人件費:105万円(35%)
FL合計:240万円(80%)← 60%以下が健全ライン

残り:60万円

ここから:
家賃:30万円
光熱費:15万円
雑費・消耗品:10万円
借入返済:15万円

利益:▲10万円(赤字)

売上300万円で赤字。原因は 原価率が45% という一点に集約される。

もしこれが35%だったら、食材費は105万円。月30万円のコスト削減になる。年間360万円の差だ。


「料理が美味しければ大丈夫」の落とし穴

飲食業界にはこんな言葉がある。

「何十軒もの美味しい飲食店が潰れていくのを見てきた」

料理の腕と経営の腕は、まったく別のスキルだ。

コンサルタントが指摘する「潰れやすい経営者」の特徴がある。

  1. 「いくら売れるか」は考えるが、「いくら残るか」を考えない
  2. メニュー開発に情熱を注ぐが、そのメニューの利益率は知らない
  3. 忙しさを経営の好調と勘違いする
  4. コストが上がっても値上げを避け、自分で吸収し続ける
  5. 「やめ時」を決めていないので、赤字が膨らんでから気づく

帝国データバンクの調査では、2024年に廃業・休業した企業のうち、赤字の状態で閉めた割合が半数を超えた。つまり、「もう少し早く気づいていれば」という店が過半数だったということだ。


最初に計算すべき「3つの数字」

どんぶり勘定から抜け出すのに、複雑な会計知識は必要ない。まず、この3つだけ把握する。

1. 原価率(食材費率)

計算式:月の食材仕入れ額 ÷ 月の売上 × 100

数値判定
25-30%良好(カフェ、ラーメンなど)
30-35%標準(一般的な飲食店)
35-40%やや高い(寿司、焼肉など高原価業態は許容範囲)
40%超要改善

業態によって適正値は違う。寿司店は40-45%でも成り立つ設計にしているし、カフェは25-30%が一般的だ。大切なのは、自分の業態の適正値を知って、実際の数字と比べること

2. FL比率

計算式:(食材費 + 人件費)÷ 売上 × 100

60%以下 が健全ライン。これを超えると、家賃・光熱費・その他の経費を払った後に利益が残らなくなる。

3. メニュー別の粗利額

原価率だけでなく、1品売れたときに何円残るか も大事だ。

例えば:

  • 原価率20%の500円メニュー → 粗利400円
  • 原価率40%の2,000円メニュー → 粗利1,200円

原価率だけ見ると前者が優秀に見える。でも、1品あたりの利益は後者のほうが大きい。原価率と粗利額の両方 を見ないと、正しい判断ができない。


確定申告で痛い目を見る前に

どんぶり勘定は、日々の経営だけでなく 税務上のリスク も抱えている。

  • 棚卸しをしていないと、仕入れたけど売れていない在庫まで経費に計上してしまう
  • 個人の支出と事業の支出が混在していると、税務調査で否認される可能性がある
  • 原価計算ができていないと、青色申告の特別控除(最大65万円)に必要な書類が作れない

国税庁の調査によると、個人事業主の確定申告にかかる平均時間は 約752分(12時間40分)。日々の記録をつけていない人ほど、この時間は長くなる。


今日からできること

高価なシステムを入れる必要はない。

ステップ1:先月の仕入れ総額を出す

レシート、納品書、通帳の引き落とし。食材に関する支出をすべて足す。

ステップ2:売上で割る

出てきた数字が原価率だ。40%を超えていたら、黄色信号。

ステップ3:一番売れているメニューの原価を計算する

使っている材料を書き出して、1人前の材料費を出す。売値と比べて、利益がいくら出ているか確認する。

ステップ4:毎日5分、記録する

売上と主な仕入れ額だけでいい。ノートでもスマホのメモでもExcelでもいい。

これだけで、どんぶり勘定ではなくなる。


まとめ

どんぶり勘定は、楽だ。面倒な計算をしなくていい。

でも、その「楽」の代償は大きい。気づいたときには赤字が積み上がり、取り返しがつかなくなる。

2024年に倒産した894件の飲食店。その多くが、数字を見ていなかった。

あなたの店の原価率は、何%ですか?

答えられないなら、今日がそれを変える日だ。


この記事で引用したデータの出典:帝国データバンク「飲食店の倒産動向調査」、花王プロフェッショナル「飲食店経営失敗事例」、中小企業庁「中小企業白書」、飲食店ドットコム「飲食店経営者アンケート」

よくある質問

どんぶり勘定とは何ですか?

収支を細かく計算せず、大まかな感覚で経営すること。飲食店では、メニューごとの原価率を把握せず、月末に通帳を見て黒字か赤字か判断する状態を指します。

どんぶり勘定の何が問題ですか?

売上が好調でも原価率が高ければ赤字になります。問題に気づいたときには手遅れ、というケースが非常に多いのです。

どんぶり勘定から抜け出す最初の一歩は?

まず、先月の食材仕入れ総額を売上で割ってください。それが原価率です。30%台なら標準、40%超なら即改善が必要です。

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