タップを開けて、グラスに注ぐ。泡が多すぎて注ぎ直し——その1杯分のロスが、月末の利益を変えています。
クラフトビールバーは「回転率が利益を作る」業態。ただし、樽の歩留まり(1樽から実際に何杯取れるか)を見誤ると、思った以上に利益が残りません。
2025年の消費者物価指数では食料が前年比**+6.8%**。原価の上昇を前提に、価格設計を見直すタイミングです。
先に結論
- 樽容量と提供量から杯数を先に出す(ロス分を切り下げる)
- 目標原価率を決めて価格を逆算する
- メニューを価格帯で分けて利益を守る(レギュラー/プレミアム/テイスティング)
- 月次でロス率と回転日数を確認する
樽容量と杯数の基本
| 樽容量 | 提供量 | 杯数(概算) | ロス込み |
|---|---|---|---|
| 20L | 350ml | 約57杯 | 約55杯 |
| 15L | 350ml | 約42杯 | 約40杯 |
| 10L | 350ml | 約28杯 | 約26杯 |
泡・ライン洗浄・試飲で1〜2杯分はロスになるので、切り下げて計算するのが鉄則です。
価格設定の例:20L樽
前提:20L樽 = 18,000円、350ml提供、55杯計算
1杯あたり原価 = 18,000 ÷ 55 = 327円
ロス2%を加算:
327 × 1.02 = 334円
目標原価率25%なら:
334 ÷ 0.25 = 1,336円
1,300円前後が妥当な価格帯です。「高いかな」と思うかもしれませんが、これを下回ると利益が出にくい。クラフトビールの価値を正しく価格に反映してください。
ロスが起きるポイント
- 泡の出し直し——ガス圧や温度管理が甘いと頻発する
- ライン洗浄・試飲——衛生管理に必要だが原価に含めるべきコスト
- 樽交換時の残量——最後の1〜2杯分は泡だけになることも
- グラス破損——割れたグラスの補充コストも積み上がる
ロス率を月次で把握し、2〜5%のバッファを価格に織り込んでおくと安定します。
価格帯を分けて利益を守る
- レギュラー:主力の定番銘柄。回転率重視で利益の柱にする
- プレミアム:限定・高アルコール・熟成系。高単価で粗利額を確保
- テイスティング:小量提供で体験価値を作る。新規客の入り口に
同じ原価率でも、杯数の少ない高単価ビールのほうが粗利額は厚いことを覚えておいてください。
テイスティングフライトの価格
フライトは「お得感」が強いので、価格を下げすぎると利益が出ません。
例:5oz × 4杯 = 20oz(約590ml) 16ozパイントが1,300円なら、比例計算は:
1,300 ÷ 16oz × 20oz = 1,625円
1,600〜1,800円が妥当な目安です。パイントより割高に見えますが、「4種類飲み比べできる体験価値」で納得してもらえます。
持ち帰り販売は容器コストを足す
缶・ボトル・グラウラーの持ち帰り販売には容器コストが乗ります。
- 缶・蓋:30〜50円
- シール・ラベル:5〜10円
- 袋やキャリア:10〜20円
容器原価は必ず別枠で加算してください。「店内価格と同じ」にすると利益が削れます。
樽の回転管理
樽は回転が遅いほどロスが出ます(鮮度劣化 → 廃棄)。
- 月次で「回転日数」(仕入れから空になるまでの日数)を出す
- 動きが遅い銘柄はハーフパイント or テイスティングに移す
- 季節限定は早期完売を前提に少量仕入れする
回転率が利益を守る。この意識があると、仕入れの判断が早くなります。
フード・物販で粗利を補強する
ビール単体だけでなく、フード・物販の付帯率が利益を大きく左右します。
- プレッツェル・ナッツなど簡易ペアリング
- グラス・グッズの物販
- 限定缶やボトルの持ち帰り
付帯率を月次で見える化すると、「どの商品が利益を作っているか」が明確になります。
今週やること
- 主力5銘柄の樽容量と提供量から杯数を計算する(ロス込み)
- 目標原価率から価格を逆算する
- 価格帯をレギュラー / プレミアム / テイスティングの3段階に分ける
- 先月のロス率を棚卸しデータから算出する
- 回転日数が長い銘柄を特定し、対策を決める
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出典
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