原価計算をやっているのに、利益が想定と合わない。
そういう店は、計算を「やっていない」のではなく「間違えている」ことが多い。 しかも間違いに気づきにくい。計算式が一見それらしく見えるからだ。
ここでは、飲食店で実際に多い原価計算の間違いを5つ取り上げる。 どれも「知っていれば防げる」ものばかりだ。
先に結論
- 利益率の計算式が逆だと、想定より低い利益で営業し続ける
- 歩留まりを無視すると、食材原価を実際より安く見積もってしまう
- 盛り付けの数gのブレが、月間で数十万円の差になる
- 月末在庫を反映しないと、原価率の月次比較ができない
- 包材・決済手数料を抜くと、テイクアウトで確実に赤字になる
間違い1: 利益率の計算式が逆
これは最も多い間違いだ。
よくある計算:
仕入値 9,000円 × 1.25 = 売価 11,250円
→ 「利益率25%で設定した」
実際の利益率:
(11,250 - 9,000) ÷ 11,250 = 20%
25%のつもりが20%。5ポイントのズレだ。 メニュー全体でこの間違いをすると、月の粗利が想定より数十万円少なくなる。
正しい計算:
売価 = 仕入値 ÷ (1 - 目標利益率)
9,000 ÷ (1 - 0.25) = 12,000円
これで利益率はちょうど25%になる。
間違い2: 歩留まりを計算に入れていない
1kgの魚を仕入れたとする。 骨と内臓を除くと、使えるのは800g。歩留まり率は80%だ。
間違えるパターン:
仕入値 3,000円 ÷ 1,000g = 3円/g
正しい計算:
仕入値 3,000円 ÷ 800g = 3.75円/g
1gあたり0.75円の差。 1食に150g使うなら、1食あたり112.5円の過小計算になる。
野菜も同じだ。キャベツの芯、大根の皮、パセリの茎。 「まるまる使える」前提で計算すると、原価は常に実際より安く見える。
食材ごとに歩留まり率を設定するだけで、この誤差は消える。
間違い3: 盛り付けの重量がブレている
「スプーン1杯」で測っている店は要注意だ。
例えばカレーのルー。 レシピ通りなら180gだが、スプーンですくうと170g〜200gの幅が出る。
差額を見る。
| 項目 | 180g | 200g | 差 |
|---|---|---|---|
| ルー原価(1g=1.8円) | 324円 | 360円 | +36円 |
| 月間1,000食で | 324,000円 | 360,000円 | +36,000円 |
月3万6千円の差。年間で43万円以上になる。 しかも本人は「ちゃんとレシピ通り」のつもりでいる。
対策はシンプルで、主要食材はgで計量する。 全品やる必要はない。まず売上上位5品だけでいい。
間違い4: 月末在庫を原価に反映していない
月の食材費を「その月の仕入額」だけで見ている店がある。
これだと、月末に在庫が増えた月は原価率が高く見え、 在庫を使い切った月は原価率が低く見える。 実態と数字が連動しない。
実際原価の計算:
月間食材費 = 前月末在庫 + 当月仕入 − 当月末在庫
毎月末に主要食材だけでも棚卸しをすれば、この誤差は大幅に減る。
棚卸しが面倒なら、まず金額の大きい食材(肉、魚、油、乳製品)だけでも数える。 全品目を完璧にやる必要はない。上位10品目で全体の70〜80%はカバーできる。
間違い5: 包材と決済手数料を原価に入れていない
店内飲食だけなら見落としても影響は小さい。 しかし、テイクアウトやデリバリーを始めた途端にこの抜けが効いてくる。
テイクアウト1食あたりの見えにくいコスト例:
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 容器 | 35円 |
| 袋 | 8円 |
| 箸・おしぼり | 5円 |
| シール・ラベル | 3円 |
| 決済手数料(3.24%、売価800円の場合) | 26円 |
| 小計 | 77円 |
77円。原価率に換算すると約9.6%。
食材原価30%のつもりが、実質40%近くになっている。 ここに気づかず「テイクアウトは利益が出ない」と感じている店は多い。
この5つ、まとめて確認する方法
1つずつ修正するのは手間がかかる。 まず売上トップ5のメニューだけで、以下を一括チェックする。
- 利益率は「売価ベース」で計算しているか
- 食材の歩留まり率を反映しているか
- 主要食材の使用量をgで固定しているか
- 月末在庫を使って実際原価を出しているか
- 包材・決済手数料を含めて原価を計算しているか
5品だけなら30分あれば終わる。 その30分で、月間の利益が数万円変わる可能性がある。
関連ガイド
計算ミスを仕組みで防ぐなら
KitchenCostは、歩留まり率・包材費・手数料をレシピに紐付けて計算できます。 利益率の計算式も売価ベースで自動適用されるため、間違い1のようなズレが起きません。
詳しくは KitchenCost をご覧ください。