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「材料費しか見てなかった」——小さなパン屋の原価計算が狂う本当の理由

パン屋の原価率30〜35%は材料費だけの話。光熱費、歩留まり、廃棄ロスまで含めると実質原価は2割高くなることも。個人経営のパン屋が今日から使える原価管理の具体策をまとめました。

更新 2026年2月18日
パン屋原価計算歩留まり廃棄ロス価格改定個人経営
目次

正直に言うと、原価計算は面倒です。

朝4時に起きて生地を仕込み、昼過ぎまで焼き続けて、閉店後に仕込みと掃除。そのうえ「原価を計算してください」と言われても、そんな時間がない。

だから材料費だけ見て「原価率30%くらいだから大丈夫」と思ってしまう。

でも半年後、通帳を見て愕然とする。「利益が全然残ってない」。

先に結論

  • 材料費だけでは「本当の原価」は見えない。 光熱費・人件費・ロスを含めると実質原価は2割以上ズレることも
  • 歩留まり(使える量の割合)を無視すると原価計算が狂う。 生フルーツは購入量の15〜30%がゴミになる
  • 廃棄ロスは月7.5万〜15万円。 年間で90万〜180万円が「作ったのに捨てた」パン代
  • 1個20〜30円の値上げで常連は離れない。 値上げより品質低下のほうが怖い

パンの”本当の原価”は材料費だけじゃない

あんぱん1個の材料費が40円、売値が180円。原価率は22%。数字だけ見れば優秀に見える。

ところが、そのあんぱんを作るまでにこんなコストがかかっている。

  • 前日の夜に生地を仕込む(あなたの1時間)
  • 朝5時から成形・焼成(あなたの3時間)
  • ガスオーブンを4時間稼働(光熱費)
  • 売れ残りは翌日には出せない(廃棄ロス)

材料費40円のあんぱんに、これらを載せると実質原価は100円を超えることもある。

粗利80円のつもりが、実は80円以下だった。 個人経営のパン屋で最も多い”勘定ミス”がこれだ。

「歩留まり」を無視すると原価は2割ズレる

歩留まりとは、買った食材のうち実際に商品になる割合のこと。

1kgの強力粉を買っても、計量時のこぼれ、生地の切れ端、焼き損じ——実際に使えるのは全体の85〜90%くらいだと言われている。

1kgあたり500円の粉は、使える分だけで計算すると実質560〜590円になるわけだ。

粉だけの話ではない。

材料歩留まりの目安
強力粉90〜95%
バター95〜98%
85〜90%(殻の重量分)
フルーツ(生)70〜85%
餡子(手作り)80〜85%

生フルーツを使うデニッシュやタルトは、歩留まりを含めると材料費が帳簿上より15〜20%高くなるケースも珍しくない。

レシピ通りの原価率と、実際の原価率は違う。 この差に気づかないまま走り続けると、「売れているのに利益が出ない」状態がずっと続く。

廃棄ロスという”静かな出血”

パン屋にとっていちばん厄介なのが、売れ残りだ。

作りたてが売りだから、当日売り切れなかった商品は翌日には出せない。閉店後にスタッフが持ち帰るか、廃棄か。

個人経営のパン屋の廃棄率は平均で売上の5〜10%。月商150万円の店なら、毎月7.5万〜15万円分のパンが「作ったけど捨てた」として消えている。

年間にすると90万〜180万円。小さなパン屋にとっては、アルバイト1人分の人件費に匹敵する金額だ。

しかも多くの店は「今日はちょっと余ったな」くらいの感覚で、金額に換算していない。だから対策も打てないまま、毎月同じだけ捨て続ける。

値段を上げられない? でも上げなければ閉まる

「うちは住宅街の小さなパン屋だから、高い値段はつけられない」

その気持ちはよくわかる。でも現実の数字を見てほしい。

小麦粉の国内価格は過去5年で約20%上昇。バター、卵、砂糖も軒並み値上がりしている。飲食店の価格転嫁率(値上がり分をどれだけ売値に反映できたかの割合)は32.3%。コストが100円上がっても、値段に反映できているのは32円だけ。残り68円はオーナーが被っている。

「お客さんに申し訳ない」と思って据え置いた価格が、結果的に店を閉じる原因になる。

実は、適正な値上げをした店の多くは客離れが想定より小さかったというデータもある。1個20〜30円の値上げであれば、常連客の大半は離れない。離れるのは価格だけで選んでいた層で、その人たちは遅かれ早かれコンビニに流れる。

今週やること

  • 看板商品1品の「本当の原価」を出す。 材料費だけでなく、歩留まり率をかけた実質材料費を計算する。仕込み時間も記録すると、自分の時給がいくらか見えてくる
  • 廃棄を1週間だけ記録する。 閉店後に捨てたパンの個数と原価をメモするだけでいい。「金曜の食パン」「月曜のカレーパン」など、曜日ごとのパターンが見えたら仕込み量の調整に直結する
  • 原価管理を仕組み化する。 Excelだと食材価格が変わるたびに手入力が必要で、忙しい日が続くとすぐ止まる。KitchenCostなら、小麦粉の価格を更新した瞬間に全メニューの原価率が自動で変わるので、「どのパンが今いちばん利益を生んでいるか」がリアルタイムでわかる

材料費だけ見て「うちは大丈夫」と思っていた頃の自分に伝えたいことがある。

原価は”計算”するものではなく、“管理”するものだ。

まずは1品だけでいい。看板商品の「本当の原価」を出してみてほしい。


パン屋の歩留まりと廃棄ロスまで含めた原価管理なら。KitchenCost を使ってみてください。

よくある質問

パン屋の原価計算で材料費だけを見るのは危険ですか?

はい、危険です。たとえばあんぱん1個の材料費は40円でも、光熱費・人件費・廃棄ロスを足すと実質100円を超えることがあります。材料費だけでは利益を過大に見積もってしまいます。

歩留まりを無視するとどのくらいズレますか?

強力粉は歩留まり90〜95%、生フルーツは70〜85%。フルーツを使うデニッシュやタルトは、帳簿上より材料費が15〜20%高くなるケースもあります。

売れ残りロスはどのように管理すべきですか?

まず1週間だけ、閉店後に捨てたパンの個数と原価をメモしてみてください。曜日×商品のパターンが見えたら、仕込み量の調整に直結します。月商150万円の店で廃棄率5%なら、月7.5万円がムダに消えている計算です。

値上げが不安なときの進め方はありますか?

全商品を一度に上げるのではなく、原価率が高い商品から1個20〜30円ずつ段階的に上げるのが有効です。常連さんの大半は、その範囲なら離れません。

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