「油そばってスープがないから、ラーメンより儲かるんでしょ?」
開業前の相談でよく聞く質問だ。たしかに、ラーメンのスープ仕込みにかかるコスト(1杯50〜100円)がまるまる浮く。原価率は20%台に収まることも珍しくない。
でも実際に油そば専門店を始めてみると、「思ったほど利益が残らない」という声が出てくる。
原因はたいてい3つ。チャーシュー増しの安売り、卵の無料トッピング、追い飯のサービス。 スープがない分のコスト優位を、トッピングで全部吐き出している。
先に結論
- 油そばの原価率は20〜28%。 スープ不要の分だけラーメンより低い
- 利益を削るのはトッピング。 チャーシュー増し・卵・追い飯の管理が最重要
- タレと油は計量で固定する。 10mlの差で1杯5〜10円変わる
- 追い飯は「無料」の損益を把握してから判断する。 米価高騰で1杯35〜50円かかる
油そば1杯の原価を分解する
並盛り油そば(税抜750円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 中華麺(1玉・150g) | 35円 |
| タレ(25ml) | 15円 |
| 香味油(15ml) | 12円 |
| チャーシュー(2枚・50g) | 80円 |
| メンマ(15g) | 10円 |
| ねぎ | 5円 |
| 海苔(1枚) | 8円 |
| 酢・ラー油(卓上) | 3円 |
| 合計 | 168円 |
原価率:168 ÷ 750 = 22.4%。ラーメンの平均原価率(30〜35%)と比べると圧倒的に低い。
同じ油そばのラーメン版(税抜800円)
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 中華麺 | 35円 |
| スープ(1杯分) | 80円 |
| チャーシュー(2枚) | 80円 |
| メンマ | 10円 |
| ねぎ | 5円 |
| 海苔 | 8円 |
| 合計 | 218円 |
原価率:218 ÷ 800 = 27.3%
油そばはラーメンより原価が50円安い。 この差がそのまま利益になるはず——なのだが。
トッピングで利益が消えるメカニズム
油そば専門店では「増し」や「追加」が当たり前の文化。でもこれが原価を押し上げる。
トッピング別の原価と推奨価格
| トッピング | 原価 | 推奨増し価格 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| チャーシュー1枚増し | 40円 | 120円 | 3.0倍 |
| 味玉追加 | 30円 | 100円 | 3.3倍 |
| ねぎ増し | 8円 | 50円 | 6.3倍 |
| メンマ増し | 15円 | 80円 | 5.3倍 |
| 海苔増し(3枚) | 24円 | 80円 | 3.3倍 |
| 麺大盛り(+100g) | 25円 | 100円 | 4.0倍 |
| チーズ追加 | 35円 | 100円 | 2.9倍 |
原価倍率2.5倍以下で提供すると、増し注文が多い客ほど原価率が上がる。 「チャーシュー増し50円」は原価40円に対して倍率1.25倍——これでは増しが入るたびに赤字に近づく。
増しトッピングの積み上げ効果
「全部増し」を注文する客を想定する:
| 項目 | 原価 | 客の追加支払い |
|---|---|---|
| チャーシュー増し | 40円 | 120円 |
| 味玉追加 | 30円 | 100円 |
| ねぎ増し | 8円 | 50円 |
| 大盛り | 25円 | 100円 |
| 合計 | 103円 | 370円 |
この場合の粗利は267円。増し分だけで267円の追加利益。 適正価格なら増し注文は歓迎すべきだ。
問題は「安売り」で増しを提供している店。原価倍率1.5倍以下だと増し分の粗利が薄くなり、客単価は上がるのに利益率は下がるという矛盾が生まれる。
タレと香味油——「目分量」を排除する
油そばの味はタレと油で決まる。計量しないと味がブレるだけでなく、原価もブレる。
タレの原価計算
| 材料 | 1Lあたり |
|---|---|
| 醤油ベース | 300円 |
| みりん・酢 | 150円 |
| 砂糖 | 30円 |
| 鶏ガラエキス | 120円 |
| 合計 | 600円/L |
1杯25ml = 600円 × 0.025 = 15円
1杯35ml = 600円 × 0.035 = 21円
差額 = 6円 × 100杯/日 × 25日 = 15,000円/月
タレ10mlの差で月1.5万円。計量カップまたはポンプ(1プッシュ=25ml)で固定するのが確実。
追い飯の損益分岐点
油そばの残りのタレにご飯を入れる「追い飯」。お客さんの満足度は高いが、米価高騰で1杯35〜50円かかる時代になった。
追い飯の月間コスト試算
| 条件 | コスト |
|---|---|
| 追い飯1杯の原価 | 45円 |
| 1日の来客数 | 80人 |
| 追い飯注文率 | 35% |
| 1日の追い飯コスト | 45円 × 28人 = 1,260円 |
| 月間(25日) | 31,500円 |
月3万円。年間だと約38万円。
追い飯を無料で続けるなら、この金額を売価に織り込む。 750円の油そばに月3万円分の追い飯コストを乗せるなら、1杯あたり約16円の上乗せが必要。つまり750円→770円が損益分岐ライン。
「無料追い飯」を看板にするか、「追い飯+50円」で利益を確保するか。数字を見てから判断する。
今週やること
- 油そば1杯の原価を分解する(麺・タレ・油・チャーシュー・トッピング)
- タレと油をml単位で計量する仕組みを作る(ポンプまたは計量カップ)
- 増しトッピングの価格を見直す(原価の2.5〜3倍になっているか確認)
- 追い飯の月間コストを計算して、無料継続 or 有料化を判断する
- チャーシューの枚数とg数を固定する
油そばはスープがない分、原価率が低い。でもその優位をトッピングで捨てたらもったいない。まずは「増しトッピングの原価倍率」を確認してみてほしい。
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