うなぎは単価が高い。だから「売上は立つ」。
でも月末に利益を集計してみると、思ったほど残っていない。仕入れに120万円かけて、粗利が30万円。人件費と家賃を引いたら10万円——そんな月がある。
理由はシンプルで、うなぎの仕入れ価格が原価の70%以上を占めているから。
タレもご飯も山椒も安い。原価のほとんどが「うなぎそのもの」だ。だから仕入れが1尾50円上がるだけで、月に2〜3万円の利益が消える。逆に、歩留まりが5%改善すれば同じだけ利益が増える。
うなぎ屋の原価管理は、仕入れと歩留まりの管理にほぼ等しい。
先に結論
- うなぎの原価は仕入れ価格が70%以上を占める。仕入れ単価の管理がそのまま利益管理
- 生→焼きの歩留まりは80%前後。200gの生うなぎが焼き上がりで160gになる
- タレは安く見えるが、使用量のブレが積もると月に数千〜1万円の差になる
- うな丼(半身)とうな重(1尾)の価格差設計で、利益構造が大きく変わる
- 肝吸い・白焼き・う巻きなどサイドメニューの粗利が経営を支える
うな丼1杯の原価を分解する
例:うな丼(半身・税抜2,200円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| うなぎ(半身) | 焼き上がり120g(生150g) | 600円 |
| タレ(かけ) | 30ml | 15円 |
| ご飯 | 250g | 38円 |
| 山椒 | 1袋 | 5円 |
| 漬物・薬味 | 1セット | 15円 |
| 合計 | 673円 |
原価率:673 ÷ 2,200 = 30.6%
※ うなぎは養殖1尾(200g)あたり1,200円で計算。1尾から半身は約150g(生)→焼き上がり120g。半身の原価は1,200 ÷ 2 = 600円。実際の仕入れは時期・産地・ロットで大きく変動します。
この30.6%という数字は飲食店の目安(30〜35%)に収まっていますが、うなぎの仕入れ価格が50円上がるだけで原価率が1ポイント以上動くことに注意してください。
うな重の原価と価格設計
例:うな重(1尾・税抜3,800円)
| 項目 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| うなぎ(1尾) | 焼き上がり200g(生250g) | 1,200円 |
| タレ(かけ+つけ焼き分) | 50ml | 25円 |
| ご飯 | 280g | 42円 |
| 山椒 | 1袋 | 5円 |
| 漬物・薬味 | 1セット | 15円 |
| 重箱使い捨て容器 | 1つ | 45円 |
| 合計 | 1,332円 |
原価率:1,332 ÷ 3,800 = 35.1%
うな重はうなぎの量が倍になるので原価は上がりますが、売価も大きく上げられる。
うな丼 vs うな重の利益比較
| メニュー | 原価 | 売価 | 粗利 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| うな丼(半身) | 673円 | 2,200円 | 1,527円 | 30.6% |
| うな重(1尾) | 1,332円 | 3,800円 | 2,468円 | 35.1% |
うな重は原価率が高いけれど、1食あたりの粗利は941円多い。
つまり、うな重が売れるほど「率は悪化するが、額では得をする」構造です。ただし、うな重ばかりが出ると仕入れの現金負担が大きくなるので、うな丼との比率を意識する必要があります。
目安:うな重比率が60%を超えたら、仕入れの資金繰りを確認する。
歩留まりの現実
うなぎは「生→焼き」の工程でかなりの重量が減ります。
歩留まり率の目安
| 工程 | 歩留まり | 200gの生うなぎの場合 |
|---|---|---|
| 生(仕入れ) | 100% | 200g |
| 開き・串打ち後 | 95% | 190g |
| 白焼き後 | 85% | 170g |
| 蒲焼き後(タレ焼き) | 80% | 160g |
| ロス(焦げ・端落ち等) | ▲3〜5% | ▲6〜10g |
| 可食部 | 77〜80% | 150〜160g |
歩留まりが5%変わると利益はどう動くか
| 歩留まり | 可食部 | 半身の実質原価 | うな丼の原価率(売価2,200円) |
|---|---|---|---|
| 85% | 170g | 565円 | 29.1% |
| 80% | 160g | 600円 | 30.6% |
| 75% | 150g | 640円 | 32.4% |
80%と75%の差は、1食あたり40円。1日30食で月に36,000円、年間43万円の差です。
歩留まりを安定させる方法
- 焼き台の温度管理 — 温度が高すぎると焦げが増えてロスになる。遠火で時間をかけるのが基本
- 串打ちの技術 — 串の入れ方で焼きムラが出る。均一に火が通ると端のロスが減る
- 焼き上がり重量を記録する — 仕入れ重量と焼き上がり重量を毎日メモする。1週間続ければ自店の歩留まり率が見える
- 蒸し工程(関東風)の水分管理 — 蒸しすぎると身が崩れてロスになる。蒸し時間を秒単位で統一する
タレの原価管理
「タレは継ぎ足しで何十年」と言っても、原価管理は別の話です。
タレのベース仕込み(寸胴1本分の例)
| 材料 | 量 | 原価 |
|---|---|---|
| 濃口醤油 | 1L | 350円 |
| 本みりん | 1L | 500円 |
| 砂糖(ざらめ) | 500g | 150円 |
| うなぎの頭・骨(だし) | 適量 | 0円(端材活用) |
| 水 | 0.5L | — |
| 合計 | 約2.5L | 1,000円 |
煮詰めると約2Lに。1食あたり30ml使用で:
1本で約67食分
1食あたりのタレ原価 = 1,000 ÷ 67 = 約15円
15円は小さく見えますが、問題は2つあります。
1. 漬けダレとかけダレの使い分け
蒲焼きの「漬け焼き」に使うタレと、丼にかける「仕上げダレ」を同じ容器から取っていると、消費量の管理が難しくなります。
対策:漬けダレ用とかけダレ用を分ける。漬けダレは寸胴から計量して取り分け、かけダレは小容器に移して使う。
2. スタッフによるかけ量のブレ
「たっぷり」と「少なめ」で、30mlが50mlになることがあります。1食20mlの差は約10円。1日30食で月9,000円。
対策:小型レードル(30ml)で「すりきり1杯」と決める。
仕入れ価格の変動と対策
うなぎの仕入れ価格は季節と市場状況で大きく動きます。
仕入れ価格の年間推移(養殖・目安)
| 時期 | 1尾あたり(200g) | 備考 |
|---|---|---|
| 1〜3月 | 900〜1,100円 | 需要低めで比較的安い |
| 4〜6月 | 1,000〜1,200円 | 徐々に上昇 |
| 7月(土用丑の日前後) | 1,300〜1,800円 | 最高値。仕入れ競争が激しい |
| 8〜9月 | 1,100〜1,400円 | 土用丑の日後は落ち着く |
| 10〜12月 | 1,000〜1,300円 | 安定期 |
仕入れコスト管理のポイント
- 土用丑の日は2週間前に仕入れ確保 — 直前は価格が急騰する。冷凍で持つなら前倒し仕入れが有効
- 養殖うなぎは産地で価格差がある — 鹿児島・愛知・静岡・宮崎が主産地。複数の卸と取引して価格を比較する
- 中国産・台湾産との使い分け — 国産の半額以下で仕入れられるが、品質と顧客の期待値に合うか検討が必要
- 冷凍うなぎの活用 — 安い時期にまとめ買いして冷凍ストック。ただし焼き直し時のロスを加味する
仕入れ先と価格帯
| 仕入れ先 | 1尾あたり(200g) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 地元の川魚卸 | 1,200〜1,600円 | 鮮度が高い | 価格交渉が必要 |
| 大手水産卸 | 1,000〜1,400円 | 安定供給 | ロット単位 |
| 産地直送(ネット) | 900〜1,300円 | 最安クラス | 品質確認しにくい |
| 冷凍加工品(蒲焼き済み) | 600〜900円 | 焼き工程不要 | 味の差別化が難しい |
サイドメニューで利益を守る
うなぎ本体の原価率は30〜35%。これだけでは人件費と家賃を賄うのが厳しいので、サイドメニューの粗利が重要になります。
サイドメニューの原価と利益
| メニュー | 原価 | 売価 | 粗利 | 原価率 |
|---|---|---|---|---|
| 肝吸い | 35円 | 300円 | 265円 | 11.7% |
| う巻き(卵焼き) | 80円 | 600円 | 520円 | 13.3% |
| 白焼き(ハーフ) | 550円 | 1,800円 | 1,250円 | 30.6% |
| うざく(酢の物) | 120円 | 500円 | 380円 | 24.0% |
| ビール | 100円 | 550円 | 450円 | 18.2% |
| 冷酒(1合) | 150円 | 600円 | 450円 | 25.0% |
肝吸いは原価35円で300円もらえる。原価率11.7%。うなぎ本体の30%と比べれば圧倒的に利益率が高い。
サイドメニュー比率の目安
- 肝吸いセット率30% — 肝吸い300円 × 30杯/日 × 30% = 2,700円/日の追加売上。粗利は2,385円/日 = 月71,550円
- 飲み物セット率40% — 平均500円 × 30杯/日 × 40% = 6,000円/日。粗利は約4,800円/日 = 月144,000円
サイドメニューだけで月に20万円以上の粗利を生む計算です。
月次の利益シミュレーション
前提
- 営業日数:25日
- 1日の平均食数:30食
- 平均客単価:3,200円(サイド含む)
月間売上 = 30食 × 3,200円 × 25日 = 2,400,000円
原価率32%の場合(管理が行き届いている):
原価 = 768,000円
粗利 = 1,632,000円
原価率38%の場合(歩留まりブレ・仕入れ高騰・タレのブレ):
原価 = 912,000円
粗利 = 1,488,000円
差額 = 144,000円/月 = 年間1,728,000円
原価率6ポイントの差が、年間173万円の利益差になる。
今週やること
- 仕入れ中のうなぎの生重量と焼き上がり重量を3日間記録して、自店の歩留まり率を把握する
- タレの使用量を1食あたり何mlか計測する(漬けダレ・かけダレ別に)
- うな丼とうな重の原価をそれぞれ算出して、粗利額を比較する
- サイドメニュー(肝吸い・う巻き・うざく)の原価を計算する
- 次の仕入れタイミングで、2〜3社の卸の価格を比較する
- 土用丑の日の2週間前に仕入れ量と価格を確定する
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