ブログ

うなぎ屋、仕入れに120万円かけて手元に10万円——利益が残らない構造の正体

うなぎ1尾の原価は仕入れが70%以上。仕入れ値が50円上がるだけで月2〜3万円の利益が消える。歩留まり管理、うな丼とうな重の価格差設計、サイドメニューで粗利を守る方法をまとめました。

公開 2026年2月4日
·
更新 2026年2月18日
うなぎ 原価うな重 価格設定原価計算飲食店経営蒲焼き仕入れ歩留まり
目次

うなぎは単価が高い。だから「売上は立つ」。

でも月末に利益を集計してみると、思ったほど残っていない。仕入れに120万円かけて、粗利が30万円。人件費と家賃を引いたら10万円——そんな月がある。

理由はシンプルで、うなぎの仕入れ価格が原価の70%以上を占めているから。

タレもご飯も山椒も安い。原価のほとんどが「うなぎそのもの」だ。だから仕入れが1尾50円上がるだけで、月に2〜3万円の利益が消える。逆に、歩留まりが5%改善すれば同じだけ利益が増える。

うなぎ屋の原価管理は、仕入れと歩留まりの管理にほぼ等しい。

先に結論

  • うなぎの原価は仕入れ価格が70%以上を占める。仕入れ単価の管理がそのまま利益管理
  • 生→焼きの歩留まりは80%前後。200gの生うなぎが焼き上がりで160gになる
  • タレは安く見えるが、使用量のブレが積もると月に数千〜1万円の差になる
  • うな丼(半身)とうな重(1尾)の価格差設計で、利益構造が大きく変わる
  • 肝吸い・白焼き・う巻きなどサイドメニューの粗利が経営を支える

うな丼1杯の原価を分解する

例:うな丼(半身・税抜2,200円)

項目原価
うなぎ(半身)焼き上がり120g(生150g)600円
タレ(かけ)30ml15円
ご飯250g38円
山椒1袋5円
漬物・薬味1セット15円
合計673円

原価率:673 ÷ 2,200 = 30.6%

※ うなぎは養殖1尾(200g)あたり1,200円で計算。1尾から半身は約150g(生)→焼き上がり120g。半身の原価は1,200 ÷ 2 = 600円。実際の仕入れは時期・産地・ロットで大きく変動します。

この30.6%という数字は飲食店の目安(30〜35%)に収まっていますが、うなぎの仕入れ価格が50円上がるだけで原価率が1ポイント以上動くことに注意してください。


うな重の原価と価格設計

例:うな重(1尾・税抜3,800円)

項目原価
うなぎ(1尾)焼き上がり200g(生250g)1,200円
タレ(かけ+つけ焼き分)50ml25円
ご飯280g42円
山椒1袋5円
漬物・薬味1セット15円
重箱使い捨て容器1つ45円
合計1,332円

原価率:1,332 ÷ 3,800 = 35.1%

うな重はうなぎの量が倍になるので原価は上がりますが、売価も大きく上げられる

うな丼 vs うな重の利益比較

メニュー原価売価粗利原価率
うな丼(半身)673円2,200円1,527円30.6%
うな重(1尾)1,332円3,800円2,468円35.1%

うな重は原価率が高いけれど、1食あたりの粗利は941円多い

つまり、うな重が売れるほど「率は悪化するが、額では得をする」構造です。ただし、うな重ばかりが出ると仕入れの現金負担が大きくなるので、うな丼との比率を意識する必要があります。

目安:うな重比率が60%を超えたら、仕入れの資金繰りを確認する


歩留まりの現実

うなぎは「生→焼き」の工程でかなりの重量が減ります。

歩留まり率の目安

工程歩留まり200gの生うなぎの場合
生(仕入れ)100%200g
開き・串打ち後95%190g
白焼き後85%170g
蒲焼き後(タレ焼き)80%160g
ロス(焦げ・端落ち等)▲3〜5%▲6〜10g
可食部77〜80%150〜160g

歩留まりが5%変わると利益はどう動くか

歩留まり可食部半身の実質原価うな丼の原価率(売価2,200円)
85%170g565円29.1%
80%160g600円30.6%
75%150g640円32.4%

80%と75%の差は、1食あたり40円。1日30食で月に36,000円、年間43万円の差です。

歩留まりを安定させる方法

  1. 焼き台の温度管理 — 温度が高すぎると焦げが増えてロスになる。遠火で時間をかけるのが基本
  2. 串打ちの技術 — 串の入れ方で焼きムラが出る。均一に火が通ると端のロスが減る
  3. 焼き上がり重量を記録する — 仕入れ重量と焼き上がり重量を毎日メモする。1週間続ければ自店の歩留まり率が見える
  4. 蒸し工程(関東風)の水分管理 — 蒸しすぎると身が崩れてロスになる。蒸し時間を秒単位で統一する

タレの原価管理

「タレは継ぎ足しで何十年」と言っても、原価管理は別の話です。

タレのベース仕込み(寸胴1本分の例)

材料原価
濃口醤油1L350円
本みりん1L500円
砂糖(ざらめ)500g150円
うなぎの頭・骨(だし)適量0円(端材活用)
0.5L
合計約2.5L1,000円

煮詰めると約2Lに。1食あたり30ml使用で:

1本で約67食分
1食あたりのタレ原価 = 1,000 ÷ 67 = 約15円

15円は小さく見えますが、問題は2つあります。

1. 漬けダレとかけダレの使い分け

蒲焼きの「漬け焼き」に使うタレと、丼にかける「仕上げダレ」を同じ容器から取っていると、消費量の管理が難しくなります。

対策:漬けダレ用とかけダレ用を分ける。漬けダレは寸胴から計量して取り分け、かけダレは小容器に移して使う。

2. スタッフによるかけ量のブレ

「たっぷり」と「少なめ」で、30mlが50mlになることがあります。1食20mlの差は約10円。1日30食で月9,000円。

対策:小型レードル(30ml)で「すりきり1杯」と決める。


仕入れ価格の変動と対策

うなぎの仕入れ価格は季節と市場状況で大きく動きます

仕入れ価格の年間推移(養殖・目安)

時期1尾あたり(200g)備考
1〜3月900〜1,100円需要低めで比較的安い
4〜6月1,000〜1,200円徐々に上昇
7月(土用丑の日前後)1,300〜1,800円最高値。仕入れ競争が激しい
8〜9月1,100〜1,400円土用丑の日後は落ち着く
10〜12月1,000〜1,300円安定期

仕入れコスト管理のポイント

  1. 土用丑の日は2週間前に仕入れ確保 — 直前は価格が急騰する。冷凍で持つなら前倒し仕入れが有効
  2. 養殖うなぎは産地で価格差がある — 鹿児島・愛知・静岡・宮崎が主産地。複数の卸と取引して価格を比較する
  3. 中国産・台湾産との使い分け — 国産の半額以下で仕入れられるが、品質と顧客の期待値に合うか検討が必要
  4. 冷凍うなぎの活用 — 安い時期にまとめ買いして冷凍ストック。ただし焼き直し時のロスを加味する

仕入れ先と価格帯

仕入れ先1尾あたり(200g)メリットデメリット
地元の川魚卸1,200〜1,600円鮮度が高い価格交渉が必要
大手水産卸1,000〜1,400円安定供給ロット単位
産地直送(ネット)900〜1,300円最安クラス品質確認しにくい
冷凍加工品(蒲焼き済み)600〜900円焼き工程不要味の差別化が難しい

サイドメニューで利益を守る

うなぎ本体の原価率は30〜35%。これだけでは人件費と家賃を賄うのが厳しいので、サイドメニューの粗利が重要になります。

サイドメニューの原価と利益

メニュー原価売価粗利原価率
肝吸い35円300円265円11.7%
う巻き(卵焼き)80円600円520円13.3%
白焼き(ハーフ)550円1,800円1,250円30.6%
うざく(酢の物)120円500円380円24.0%
ビール100円550円450円18.2%
冷酒(1合)150円600円450円25.0%

肝吸いは原価35円で300円もらえる。原価率11.7%。うなぎ本体の30%と比べれば圧倒的に利益率が高い。

サイドメニュー比率の目安

  • 肝吸いセット率30% — 肝吸い300円 × 30杯/日 × 30% = 2,700円/日の追加売上。粗利は2,385円/日 = 月71,550円
  • 飲み物セット率40% — 平均500円 × 30杯/日 × 40% = 6,000円/日。粗利は約4,800円/日 = 月144,000円

サイドメニューだけで月に20万円以上の粗利を生む計算です。


月次の利益シミュレーション

前提

  • 営業日数:25日
  • 1日の平均食数:30食
  • 平均客単価:3,200円(サイド含む)
月間売上 = 30食 × 3,200円 × 25日 = 2,400,000円

原価率32%の場合(管理が行き届いている):
原価 = 768,000円
粗利 = 1,632,000円

原価率38%の場合(歩留まりブレ・仕入れ高騰・タレのブレ):
原価 = 912,000円
粗利 = 1,488,000円

差額 = 144,000円/月 = 年間1,728,000円

原価率6ポイントの差が、年間173万円の利益差になる。

今週やること

  • 仕入れ中のうなぎの生重量と焼き上がり重量を3日間記録して、自店の歩留まり率を把握する
  • タレの使用量を1食あたり何mlか計測する(漬けダレ・かけダレ別に)
  • うな丼とうな重の原価をそれぞれ算出して、粗利額を比較する
  • サイドメニュー(肝吸い・う巻き・うざく)の原価を計算する
  • 次の仕入れタイミングで、2〜3社の卸の価格を比較する
  • 土用丑の日の2週間前に仕入れ量と価格を確定する

関連ガイド


うなぎの仕入れ価格と歩留まりを入力すれば、蒲焼きの原価が自動で更新。タレやご飯も含めた1食の原価がひと目でわかります。KitchenCost は無料で使えます。

よくある質問

うなぎ1尾の原価はどれくらい?

養殖で1尾(200〜250g)あたり1,000〜1,400円が目安です。天然は3,000円以上。焼き上がりの歩留まりが80〜85%なので、可食部で考えると仕入れの1.2倍くらいのコストになります。

うなぎの歩留まりはどのくらい見るべき?

生→焼きで約15〜20%の重量が減ります。200gの生うなぎが焼き上がりで160〜170g。さらに串打ちの端や焦げで5%くらいロスが出るので、実質80%前後で見ておくのが安全です。

うな丼とうな重の価格差はどう設計する?

うな丼(半身120g)とうな重(1尾200g)で、うなぎの原価差が500〜600円、容器代の差が20〜30円。合計550円前後です。売価差を800〜1,200円にすると、うな重のほうが粗利額が大きくなります。

タレの原価はどう計算する?

継ぎ足し運用でも、ベースの仕込み原価は出しておくべきです。醤油・みりん・砂糖を2:2:1で寸胴1本(約3L)仕込んで原価は約1,500円。1食30mlで約15円。使用量がブレやすいので、かけダレと漬けダレは容器を分けると管理しやすくなります。

今すぐ原価を計算してみましょう

材料単価を入力するだけで、レシピ原価・利益率・販売価格を自動計算します。