要点まとめ
- 自分の人件費も経費として計算しないと、本当の利益が見えない
- 労働時間は営業時間だけでなく仕込み、片付け、仕入れ、事務もすべて含める
- 2025年度の全国平均最低賃金は1,121円。これを下回ったら経営の見直しが必要
- プライムコスト(材料費+人件費)は60%以下が健全な状態
一人経営の飲食店で自分の時給を計算する方法
「従業員の給料はきちんと払っているのに、自分の給料は”残ったお金”で済ませていませんか?」
一人で飲食店を経営していると、自分の人件費を計算に入れないことが多いです。その結果、本当に儲かっているのか分からず、気づいたら燃え尽きてしまうこともあります。
この記事では、自分の人件費を正しく計算する方法を解説します。
なぜ自分の人件費を計算すべきか?
本当の利益が見えるようになる
よくある計算:
売上100万円 - 材料費35万円 - 家賃15万円 - その他10万円
= 利益40万円(結構儲かってる!)
正しい計算:
売上100万円 - 材料費35万円 - 家賃15万円 - その他10万円 - 自分の人件費30万円
= 利益10万円(あれ、思ったより少ない...)
40万円残ると思っていたのに、自分の労働価値を引くと10万円しか残りません。
経営判断の基準ができる
「アルバイトを雇うべきか、自分でやり続けるべきか?」この判断には、自分の時給を知る必要があります。
自分の時給が800円で、最低賃金(東京2025年度:1,226円)でバイトを雇うと?
→ 自分でやった方がいい
自分の時給が1,500円で、最低賃金でバイトを雇うと?
→ バイトを雇って、自分はより価値の高い仕事に集中すべき
燃え尽き症候群の予防
1日14時間働いて月30万円稼ぐより、1日8時間で月25万円稼ぐ方が持続可能かもしれません。時給で比較すれば、どちらが合理的か明確になります。
自分の時給を計算する方法
ステップ1:月の純収益を把握する
先月の純収益を計算します。このとき、自分の人件費はまだ引きません。
純収益 = 売上 - 材料費 - 家賃 - 光熱費 - その他経費
例:
売上:150万円
- 材料費:50万円(原価率33%)
- 家賃:18万円
- 光熱費:3万円
- その他(消耗品、通信費など):4万円
──────────────────
純収益:75万円
ステップ2:月の労働時間を計算する
お店のために働いた時間をすべて計算します。
| 項目 | 時間 |
|---|---|
| 営業時間 | 1日10時間 × 26日 = 260時間 |
| 仕込み・片付け | 1日2時間 × 26日 = 52時間 |
| 仕入れ | 週2回 × 2時間 × 4週 = 16時間 |
| 事務・管理 | 週2時間 × 4週 = 8時間 |
| 合計 | 336時間 |
多くの方が「営業時間」だけを計算しがちですが、仕込み、片付け、仕入れ、事務作業もすべて労働時間です。
ステップ3:時給を計算する
自分の時給 = 純収益 ÷ 労働時間
= 75万円 ÷ 336時間
= 2,232円
この例では、時給は約2,230円です。
時給の目安は?
比較基準
| 基準 | 時給 | 意味 |
|---|---|---|
| 全国平均最低賃金(2025年度) | 1,121円 | これを下回ると要注意 |
| 東京都最低賃金(2025年度) | 1,226円 | 都市部の基準 |
| 飲食店正社員平均 | 1,200〜1,500円 | 一般的な飲食店スタッフ |
| 経験者調理師 | 1,500〜2,000円 | 経験のある厨房スタッフ |
| 店長クラス | 1,800〜2,500円 | 管理職レベル |
参考: 2025年度の最低賃金改定は過去最大の引き上げ幅(平均66円増)となりました。全都道府県で初めて1,000円を突破しています。出典:厚生労働省
業態別の現実的な目標
| 業態 | 目標時給 |
|---|---|
| 一人カフェ | 1,500〜2,000円 |
| 一人居酒屋 | 1,200〜1,800円 |
| 自宅パン屋 | 1,800〜2,500円 |
| キッチンカー | 2,000〜3,000円 |
| 弁当配達 | 1,200〜1,500円 |
時給が低い場合の改善方法
1. 労働時間を減らす
非効率な時間を見つけて削減します。
Before: 1日12時間勤務
- 営業:8時間
- 仕込み・片付け:3時間
- その他:1時間
After: 1日10時間勤務
- 営業:8時間
- 仕込み・片付け:1.5時間(半製品活用)
- その他:0.5時間(業務効率化)
時間短縮の方法:
- 半製品(ソース、出汁、生地)を作り置き
- 食材配送サービスを活用
- 会計・在庫管理アプリを使用
2. 売上を上げる
同じ時間でより多く売る方法:
| 方法 | 効果 |
|---|---|
| 客単価を上げる | セットメニュー、サイドメニュー提案 |
| 回転率を上げる | メニュー絞り込み、調理時間短縮 |
| テイクアウト強化 | 追加売上チャネル確保 |
3. 原価を下げる
原価率35%→30%に下げると?
売上150万円の場合:
- 原価率35%:材料費52.5万円
- 原価率30%:材料費45万円
- 差額:7.5万円/月 → 時給+223円
原価を下げる方法:
- レシピの標準化(材料の無駄を防ぐ)
- ロス率の計算(廃棄食材の把握)
- 仕入れ先の比較検討
実例:一人カフェ
状況
- 月商:120万円
- 月〜土営業(月26日)
- 営業時間:9時〜19時(10時間)
経費計算
| 項目 | 金額 | 比率 |
|---|---|---|
| 材料費 | 30万円 | 25% |
| 家賃 | 15万円 | 12.5% |
| 光熱費 | 2.5万円 | 2% |
| その他 | 2.5万円 | 2% |
| 合計 | 50万円 | 42% |
純収益
120万円 - 50万円 = 70万円
労働時間
営業:10時間 × 26日 = 260時間
仕込み・片付け:1.5時間 × 26日 = 39時間
その他:週3時間 × 4週 = 12時間
──────────────────
合計:311時間
自分の時給
70万円 ÷ 311時間 = 2,251円
このカフェオーナーの時給は約2,250円です。
プライムコストに自分の人件費を含める
**プライムコスト(材料費+人件費)**に自分の人件費も含めると、正確な収益構造が見えます。
プライムコストの計算
材料費:30万円(25%)
自分の人件費:30万円(25%)← 目標として設定
──────────────────────
プライムコスト:60万円(50%)
プライムコストが60%以下なら安定的な経営と言えます。
日経レストランの調査によると、個人飲食店で黒字の経営者の平均年収は631万円、世帯年収は895万円です。一方、赤字店の経営者年収は300万円台以下のケースも多くあります。出典:飲食店ドットコム
適正な自分の人件費の設定
売上の25〜35%を自分の人件費として設定
売上120万円のカフェなら:
- 適正な自分の人件費:30〜42万円
- 残りは予備費または再投資
アルバイト採用 vs 自分でやる
判断基準
自分の時給 > アルバイト時給の1.5倍のとき、採用を検討しましょう。
アルバイト時給:1,100円
基準:1,100円 × 1.5 = 1,650円
自分の時給が1,650円以上 → アルバイト採用を検討
自分の時給が1,650円未満 → 自分でやる
なぜ1.5倍?
アルバイトを雇うと追加コストが発生します:
- 教育時間
- 管理時間
- ミスによるロス
- 社会保険(該当する場合)
単純な時給比較では判断できません。
飲食業界の現実
2024年度上期の飲食業界の平均月給は、東京都で約29.3万円、大阪府で約28.1万円です。これは正社員の数字で、個人経営者は状況によって大きく異なります。
飲食店経営者の平均年収は約627万円とされていますが、赤字店舗の経営者は300万円台やそれ以下のケースも多く、年収200万円台でアルバイトや副業をしながら経営しているケースもあります。
自分の時給を計算して最低賃金を下回っているなら、ビジネスモデルの根本的な見直しが必要です。
まとめ
時給計算の公式
自分の時給 = (売上 - 材料費 - 家賃 - 光熱費 - その他) ÷ 総労働時間
重要ポイント
- 自分の人件費も経費 — これを引いて初めて本当の利益が見える
- 労働時間は営業時間だけではない — 仕込み、片付け、仕入れ、事務もすべて含める
- 2025年度の全国平均最低賃金は1,121円 — これを下回ったら再検討が必要
- 時給を上げるには — 労働時間削減 / 売上増加 / 原価削減
- プライムコストに自分の人件費を含める — 60%以下が健全な状態
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関連ガイド
- プライムコスト完全ガイド — 食材費+人件費の全体像
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今すぐやること
- 先月の純収益を計算する(売上 - 材料費 - 家賃 - 光熱費 - その他)
- 先月の総労働時間を計算する(営業+仕込み+片付け+仕入れ+事務)
- 自分の時給を計算する(純収益 ÷ 総労働時間)
- 最低賃金(1,121円)と比較して改善点を見つける