食材費と人件費は毎月チェックしている。
でも、水道光熱費はどうだろう。
「電気代が高い」という感覚はある。でもガス代と水道代がいくらか、パッと答えられるだろうか。
ここに落とし穴がある。
水道光熱費は「固定費」ではない
多くの飲食店オーナーが、水道光熱費を「毎月だいたい同じだろう」と思っている。でも実際は違う。
- 夏場はエアコンで電気代が跳ね上がる
- 冬場はガス代が1.5倍になる
- 繁忙期は食器洗いの水道代が増える
- 冷蔵庫の台数を増やしたら電気代が変わる
水道光熱費は、売上や稼働に連動する「変動費」だ。 そして、変動するということは、コントロールできるということ。
食材費と人件費を「FL比率」で管理する店は多い。でも水道光熱費を同じ精度で管理している店は、驚くほど少ない。
まず自分の店の数字を把握する
削減の前に、現状把握。3つの数字だけでいい。
| 項目 | 確認方法 | 目安 |
|---|---|---|
| 水道光熱費の合計(月) | 電気+ガス+水道の明細を合算 | 売上の5〜8%なら合格圏 |
| 売上に対する比率 | 水道光熱費÷売上×100 | 8%超えなら削減余地あり |
| 前年同月との比較 | 去年の明細と並べる | 10%以上増えていたら要注意 |
業態別の水道光熱費の目安
| 業態 | 売上に対する比率 | 月商200万円の場合 | 年間コスト |
|---|---|---|---|
| カフェ・バー | 3〜5% | 6〜10万円 | 72〜120万円 |
| 居酒屋 | 5〜7% | 10〜14万円 | 120〜168万円 |
| 定食屋・レストラン | 5〜8% | 10〜16万円 | 120〜192万円 |
| ラーメン店 | 7〜10% | 14〜20万円 | 168〜240万円 |
| 焼肉店 | 7〜10% | 14〜20万円 | 168〜240万円 |
年間コストで見ると、120万円〜240万円。 パート従業員1〜2人分の人件費に匹敵する。
この金額を「仕方ない」で済ませるか、「管理して減らす」かで、年間の利益が大きく変わる。
電気・ガス・水道の内訳を知る
水道光熱費の中身をざっくり分解すると、こうなる。
| 項目 | 水道光熱費に占める割合 | 主な消費源 |
|---|---|---|
| 電気代 | 50〜60% | 冷蔵庫、空調、照明 |
| ガス代 | 20〜30% | 調理(コンロ、オーブン)、給湯 |
| 水道代 | 10〜20% | 食器洗い、仕込み、手洗い |
電気代が半分以上を占める。 だから「電気代を減らそう」と考えるのは正しい。
でも、残りの40〜50%──ガス代と水道代──を放置していると、電気代を10%削減しても全体では5〜6%しか減らない。 3つセットで管理しないと、効果が半分になる。
ガス代──見落としが多い「第2の光熱費」
電気代は毎月明細を見る人が多い。でもガス代はなんとなく払っているという人が意外と多い。
プロパンガスと都市ガスの差
飲食店のガス代を左右する最大の要因が「ガスの種類」だ。
| 項目 | 都市ガス | プロパンガス |
|---|---|---|
| 料金水準 | 基準 | 都市ガスの約1.7〜1.8倍 |
| 供給方式 | 地下のガス管から | ガスボンベを配送 |
| 切り替えの自由度 | エリアで決まる | 業者を変更可能 |
| 火力 | 標準 | 都市ガスの約2.2倍 |
プロパンガスは都市ガスの1.7〜1.8倍の料金がかかる。月のガス代が5万円の店なら、都市ガスに切り替えるだけで月2万円近く下がる計算になる。
「うちはプロパンだから仕方ない」は間違い
都市ガスのエリアにいない場合でも、プロパンガスの業者を変えるだけで料金が下がる。
プロパンガスは業者ごとに価格設定が異なる。飲食店のように使用量が多い場合、従量単価が50円下がるだけで月1.5万円、年間18万円の削減につながる。
相見積もりを取ったことがないなら、今のガス料金が適正かどうか確認する価値はある。3社程度に見積もりを依頼するだけだ。
0円でできるガス代の削減
| 対策 | 効果 | なぜ効くのか |
|---|---|---|
| 鍋底からはみ出ない火力にする | ガス消費5〜10%削減 | はみ出した炎は鍋を温めずに空気を温めている。100%無駄 |
| 蓋をして調理する | 加熱時間20〜30%短縮 | 蒸気が逃げなくなる。沸騰までの時間が大幅に短くなる |
| 使わないコンロの種火を消す | 種火1つで月数百円 | 3口あれば月1,000円以上の種火代が出ていることもある |
| お湯を使い分ける | 給湯器の負担を軽減 | 予洗いに熱湯は不要。水で十分。仕上げだけお湯を使う |
| 鍋底の水滴を拭いてから火にかける | 加熱効率UP | 水を蒸発させるのにエネルギーを使っている |
小さなことに見える。でも、毎日12時間以上キッチンを使う飲食店では、こうした「1回数円」の積み重ねが月2,000〜5,000円になる。年間で2.4万〜6万円。
設備投資で効果が大きいもの
| 対策 | 削減効果 | 投資額の目安 | 回収期間 |
|---|---|---|---|
| 高効率ガスコンロへの交換 | ガス消費15〜25%削減 | 10〜30万円 | 1〜3年 |
| スチームコンベクションオーブン導入 | 調理時間短縮+ガス削減 | 50〜100万円 | 2〜4年 |
| 給湯器の更新 | 給湯コスト10〜20%削減 | 15〜30万円 | 2〜3年 |
古い厨房機器は、燃焼効率が悪い。10年以上使っているなら、最新のものに替えるだけでガス代が15〜25%下がるケースがある。
水道代──「蛇口をひねるだけ」が一番高い
ガス代以上に見落とされがちなのが水道代だ。
飲食店の水道代は、大きく分けて3つの場面で使われている。
| 場面 | 全体に占める割合 | 特徴 |
|---|---|---|
| 食器洗い | 40〜50% | 最大の消費。手洗いかどうかで大きく変わる |
| 調理・仕込み | 25〜35% | 野菜の洗浄、麺を茹でる、出汁を取るなど |
| 手洗い・清掃 | 15〜25% | トイレ、手洗い、床清掃 |
食器洗いが水道代の半分を占めている
手洗いで食器を洗っている店は、1回の洗い物で30〜50リットルの水を使う。 ランチとディナーで1日2回なら60〜100リットル。月に1,800〜3,000リットルが食器洗いだけで消える。
0円でできる水道代の削減
| 対策 | 効果 | ポイント |
|---|---|---|
| 油汚れを紙で拭いてから洗う | すすぎ水30〜50%削減 | 油が少なければ洗剤も水も少なくて済む |
| 汚れの少ない順に洗う | 水の入れ替え回数を減らす | グラス→皿→鍋の順。水を何度も替えなくて済む |
| 節水コマを蛇口に取り付ける | 水量最大50%削減 | 自治体によっては無料配布あり。水道局に問い合わせ |
| 蛇口を出しっぱなしにしない | 1分で約12リットルの節約 | すすぎ中に次の食器を取りに行くとき、蛇口を閉める |
| 仕込みの水を再利用する | 用途次第で効果大 | 野菜の洗い水を床掃除に使う、など |
節水コマは飲食店の水道代削減で最もコスパが高い。 1個数百円で蛇口に取り付けるだけ。水の勢いはほとんど変わらないが、水量は最大50%減る。多くの自治体の水道局が無料で配布しているので、まずは「自分の市区町村名+節水コマ」で検索してみてほしい。
業務用食洗機の効果
手洗いとの比較で見ると、効果の差は歴然だ。
| 項目 | 手洗い | 業務用食洗機 |
|---|---|---|
| 1回あたりの水量 | 30〜50リットル | 4〜8リットル |
| 水量比 | 基準 | 手洗いの1/7〜1/9 |
| 水道代削減 | ─ | 約50%削減 |
| 作業時間 | 30〜60分 | 5〜10分 |
水道代の削減だけでなく、作業時間の短縮=人件費の削減にもなる。1日30分の洗い物時間が浮けば、月15時間。時給1,100円なら月16,500円分の人件費が浮く計算だ。
食洗機の導入費用は30〜80万円だが、水道代+人件費の削減で1〜2年で回収できるケースが多い。
「たった2%」が利益の40%を消す
ここが最も伝えたいポイントだ。
飲食店の営業利益率は**平均5〜8%**と言われている。月商200万円なら、月の利益は10〜16万円。
一般的な飲食店の経費構造を見てみると──
| 経費項目 | 売上に対する割合 |
|---|---|
| 食材費(F) | 30% |
| 人件費(L) | 25〜30% |
| 家賃(R) | 10% |
| 水道光熱費 | 5〜8% |
| その他(消耗品・広告など) | 15〜20% |
| 営業利益 | 5〜8% |
水道光熱費の比率と営業利益の比率が、ほぼ同じ大きさだということに気づいただろうか。
つまり、水道光熱費が2%上がると──5%だった水道光熱費が7%になると──利益が5%から3%に下がる。利益の40%が消える。
逆に、水道光熱費を2%下げられれば、利益が40%増える。
食材費を2%削減するのは大変だ。メニューの質に影響する。人件費を2%削るのも難しい。サービスの質に直結する。
でも水道光熱費を2%削減するのは、ここまで紹介した方法を組み合わせれば、不可能ではない。お客さんにも従業員にも影響を与えずに、利益だけが増える。
3つをまとめて管理する
電気代、ガス代、水道代をバラバラに見ていても効果は薄い。3つの合計を「水道光熱費」として毎月記録するのが大事だ。
管理テンプレート
| 月 | 電気代 | ガス代 | 水道代 | 合計 | 売上 | 比率 | メモ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | ?円 | ?円 | ?円 | ?円 | ?円 | ?% | |
| 2月 | |||||||
| 3月 |
3ヶ月続けるだけで傾向が見える。 「夏は電気代が跳ね上がる」「冬はガス代が問題」「繁忙期は水道代が増える」──こういうパターンがわかれば、先手を打てる。
業態別の削減優先順位
| 業態 | 最も効果が大きい削減対象 | 理由 |
|---|---|---|
| カフェ・バー | 電気代(照明+空調) | 調理が少ないので、ガス・水道は比較的低い |
| 居酒屋 | ガス代+電気代 | 長時間営業で空調とガスの両方がかかる |
| ラーメン店 | ガス代(スープ炊き) | スープを8〜12時間炊くためガス消費が極端に大きい |
| 定食屋 | 水道代+ガス代 | 食器の種類が多く洗い物が多い。ご飯炊きでガスも使う |
| 焼肉店 | 電気代(換気設備) | 大型換気扇が常時稼働。ダクト清掃で効率改善 |
自分の業態で「一番効く対策」から手をつける。全部を一度にやる必要はない。
今週やることチェックリスト
- 過去3ヶ月の電気・ガス・水道の請求書を集める
- 3つの合計が売上の何%か計算する
- 業態別の目安と比較して、高いかどうか確認する
- プロパンガスの場合、ガス会社に「他社と比べたい」と伝えて相見積もりを検討
- 蛇口に節水コマが付いているか確認する(付いていなければ水道局に問い合わせ)
- キッチンのコンロの火力を確認。鍋底からはみ出していないか
- 来月から毎月、水道光熱費の合計と売上比率を記録し始める
食材費は「原価率」として管理している。人件費は「FL比率」で意識している。
でも水道光熱費は、請求書が届いたら払っているだけ──そういう店が大半だ。
食材費と同じくらい、水道光熱費も「管理する経費」として扱う。 それだけで、年間数万〜十数万円が手元に残るようになる。
まずは先月の電気・ガス・水道の明細を並べてみてほしい。合計が売上の何%か。その数字が、今の経営の「隠れた穴」を教えてくれる。
KitchenCostを使えば、レシピごとの食材原価を正確に把握できます。食材費がわかれば、水道光熱費と合わせて「本当の利益」が見えてきます。「忙しいのにお金が残らない」の原因が見つかるかもしれません。App StoreまたはGoogle Playからどうぞ。
出典・参考:
- マネーフォワード クラウド「飲食店の水道光熱費はどれくらい?平均額・経費割合・削減方法を解説」
- テンポスフードメディア「飲食店の光熱費(電気・水道・ガス)の平均と利益を残すためにできる経費削減」
- EPG「飲食店経営のガス代節約術とコスト削減のポイント」
- Wiz cloud「飲食店向け・水道代が高い原因と5つの効果的な節水対策」
- エネチェンジ「飲食店の光熱費、とことん削るコツ大解剖!」
- プロパンガス料金消費者協会「プロパンガス料金の適正価格 2026」
- Airレジ マガジン「飲食店のFLコスト・FL比率とは?計算方法や目標値、改善策まで解説」