「テイクアウト弁当を始めたけど、利益が出ているのかよくわからない」
この言葉、飲食店オーナーの集まりでは本当によく聞く。
コロナ以降、テイクアウトを始めた飲食店は多い。店内の席数に関係なく売上を増やせるし、新しい客層も取り込める。「やらない理由がない」くらいの勢いで広まった。
でも、ちゃんと原価計算をしてテイクアウトを始めた店は、意外と少ない。
店内メニューの価格をそのままテイクアウト用に使って、容器代は「まあ大した金額じゃないだろう」で済ませて。月末に利益を計算しようとするけど、テイクアウトと店内の数字が混ざっていて、結局よくわからない。
この記事では、テイクアウトに特有のコスト構造を整理して、1個あたりいくら利益が出ているのかを明確にする方法を解説する。
先に結論
- テイクアウトの原価計算は「食材費+容器・包材費」で考える。容器代を入れ忘れると、実質原価率は5〜8%高い
- 容器代は1注文あたり50〜100円。月500個売ると年間30〜60万円
- テイクアウトの消費税は8%(軽減税率)。店内飲食の10%より2%低い──これは利益になる
- デリバリーと違い、手数料35%はかからない。テイクアウトは「手数料ゼロ」のチャネル
- 容器代を含めた原価率は35%以内が目安。これを超えるなら価格設定を見直す
テイクアウトとデリバリーの違いを整理する
「テイクアウトもデリバリーも似たようなものでしょ?」
そう思う人もいるが、コスト構造はかなり違う。
| 項目 | テイクアウト | デリバリー(Uber Eats等) |
|---|---|---|
| 手数料 | 0円 | 売上の35% |
| 容器代 | 50〜100円/個 | 50〜100円/個 |
| 消費税率 | 8%(軽減税率) | 8%(軽減税率) |
| 配達スタッフ | 不要 | プラットフォームが手配 |
| 客層 | 近隣のお客さん | 半径3〜5kmの広いエリア |
| 集客力 | 自力(店頭・SNS) | プラットフォームの力を借りる |
最大の違いは「手数料の有無」だ。
デリバリーでは1,000円の注文に対して350円が手数料で消える。テイクアウトなら、その350円がまるまる残る。
「じゃあテイクアウトのほうが簡単に儲かるのでは?」と思うかもしれない。たしかに手数料がない分、利益は出しやすい。でも、テイクアウトには別の落とし穴がある。容器代を原価に含めず、なんとなくの値段設定をしてしまうことだ。
容器代は「小さなコスト」じゃない
テイクアウトを始めるとき、多くのオーナーは容器のことをあまり深く考えない。
「容器は1個30円くらいだし、大したことないでしょ」
──これが落とし穴だ。
1注文あたりの容器・包材コスト
| 品目 | 1個あたりの目安 |
|---|---|
| メイン容器(弁当箱・丼容器) | 30〜80円 |
| 蓋つき小容器(ドレッシング・たれ) | 5〜15円 |
| 箸・スプーン・フォーク | 5〜10円 |
| ナプキン・おしぼり | 3〜5円 |
| レジ袋・手提げ袋 | 10〜20円 |
| ラベル・シール | 2〜5円 |
| 合計 | 55〜135円 |
平均すると1注文あたり約70〜80円が容器・包材のコストだ。
年間で見ると
| 月間販売数 | 容器代/月 | 容器代/年 |
|---|---|---|
| 300個 | 2.1〜2.4万円 | 25〜29万円 |
| 500個 | 3.5〜4万円 | 42〜48万円 |
| 1,000個 | 7〜8万円 | 84〜96万円 |
月500個のテイクアウトを販売する店なら、容器代だけで年間40〜50万円。 これは小さな個人店にとっては、家賃の2〜3ヶ月分に相当する金額だ。
この数字を見て「うちもそのくらいかかってるかも」と思ったなら、まず容器の納品伝票を引っ張り出してみてほしい。
テイクアウトの原価計算──店内メニューとの違い
テイクアウトの原価計算で、多くの店がやってしまう間違いがある。
店内メニューの原価率をそのまま使ってしまうこと。
店内メニューの原価計算
原価率 = 食材費 ÷ 売上 × 100
例:800円の定食、食材費240円の場合
原価率 = 240 ÷ 800 × 100 = 30%
これは正しい。
テイクアウトの原価計算
原価率 = (食材費 + 容器・包材費) ÷ 売上 × 100
例:800円のテイクアウト弁当、食材費240円、容器代70円の場合
原価率 = (240 + 70) ÷ 800 × 100 = 38.75%
容器代を入れるだけで、原価率が30%→38.75%に跳ね上がる。
「うちは原価率30%でやってるから大丈夫」と思っていても、テイクアウトの分は実質38〜39%で回っている──こういう店は少なくない。
具体例で見る:800円のテイクアウト弁当
| 項目 | 金額 | 比率 |
|---|---|---|
| 売上(税抜) | 800円 | 100% |
| 食材費 | 240円 | 30.0% |
| 容器・包材 | 70円 | 8.8% |
| 原価合計 | 310円 | 38.8% |
| 人件費(調理+詰め作業) | 200円 | 25.0% |
| 光熱費・家賃按分 | 100円 | 12.5% |
| 利益 | 190円 | 23.8% |
利益率23.8%。悪くはない。でも、容器代を忘れて「利益260円、利益率32.5%」と思い込んでいたら、実際の利益は190円。70円の差がある。 月500個売っていれば、月3.5万円、年間42万円の計算ミスだ。
軽減税率──テイクアウトの「隠れた味方」
テイクアウトで意外と見落とされているのが、消費税率の違いだ。
- テイクアウト(持ち帰り):消費税 8%(軽減税率)
- 店内飲食(イートイン):消費税 10%
同じ800円(税抜)の商品でも:
| 項目 | テイクアウト | 店内飲食 |
|---|---|---|
| 本体価格 | 800円 | 800円 |
| 消費税率 | 8% | 10% |
| 税込価格 | 864円 | 880円 |
| 差額 | – | +16円 |
16円の差。小さく見えるが、この差をうまく使える。
多くの飲食店がやっている方法
テイクアウトと店内で同じ税込価格(たとえば880円)に統一する店が多い。
この場合、テイクアウトのほうが税抜の「本体売上」が高くなる。
| 項目 | テイクアウト(税込880円) | 店内飲食(税込880円) |
|---|---|---|
| 税込価格 | 880円 | 880円 |
| 消費税率 | 8% | 10% |
| 税抜売上 | 815円 | 800円 |
| 差額 | +15円 | – |
テイクアウト1個あたり15円、お店の取り分が多い。月500個で月7,500円、年間9万円の差。
地味な金額だが、何もしなくても自動的に利益が増える構造だ。
テイクアウト用の価格設定──3つのアプローチ
テイクアウトの価格設定には、大きく3つの考え方がある。
① 店内メニューと同じ価格で出す
| メリット | デメリット |
|---|---|
| シンプルでわかりやすい | 容器代の分だけ利益が減る |
| お客さんに抵抗感がない | 原価率が5〜8%上がる |
多くの店がこの方法をとっているが、容器代を「持ち出し」にしていることになる。
② 容器代を上乗せした価格にする
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 原価率を店内と同等に保てる | 「テイクアウトは高い」と思われるリスク |
| コスト構造が正確 | 価格差の説明が必要 |
「弁当容器代として+50円いただきます」と明記する方法。最近はエコ意識の高まりもあって、お客さんの理解は得やすくなっている。
③ テイクアウト専用メニューを作る
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 価格を自由に設定できる | メニュー開発の手間 |
| 店内と比較されにくい | オペレーションが増える |
一番おすすめはこの方法。 テイクアウト専用のメニューなら、店内メニューとの価格比較を避けられる。
例えば:
- 店内で「唐揚げ定食 850円」を出している店が
- テイクアウトで「唐揚げ弁当 900円」を出す
- 中身は同じでも、名前が違えば「別の商品」として受け入れられる
- 50円の上乗せで容器代をほぼカバーできる
さらに、テイクアウト専用にすることで容器に合わせたメニュー構成にできる。
- 汁物を減らして、汁漏れリスクを減らす
- 副菜を原価率の低いものにして、全体の利益率を調整する
- セットメニューにして客単価を上げる
テイクアウト向きのメニューと不向きのメニュー
テイクアウトは「店内で出しているものをそのまま詰める」のが正解ではない。
テイクアウト向き
| 特徴 | 理由 | 例 |
|---|---|---|
| 冷めても味が落ちにくい | お客さんが食べるまでに時間がかかる | 唐揚げ弁当、照り焼き、おにぎり |
| 汁気が少ない | 容器から漏れない | 丼もの(つゆだく以外)、サンドイッチ |
| 原価率が低い | 容器代分の余裕がある | 焼きそば、チャーハン、パスタ |
| 盛り付けが崩れにくい | 見た目の期待を裏切らない | 弁当、ワンプレート |
テイクアウトに不向き
| 特徴 | 理由 | 例 |
|---|---|---|
| 出来たてが命 | 時間が経つと品質が激落ちする | ラーメン(麺が伸びる)、天ぷら(衣がべたつく) |
| 汁気が多い | 漏れるリスク、容器代も高い | 味噌汁、スープカレー |
| 見た目が繊細 | 配達・持ち運びで崩れる | 懐石料理、デコレーションケーキ |
| 原価率が高い | 容器代を上乗せすると割高に感じる | 刺身、高級食材の料理 |
テイクアウトで評判が悪くなると、店全体の評判に影響する。 「あの店のテイクアウト弁当、蓋を開けたらグチャグチャだった」という口コミは、店内の評判にも直結する。
だから、テイクアウトに出すメニューは**「30分後に開けても美味しいもの」**に絞るのが鉄則だ。
容器代を下げるための5つの工夫
容器代は年間で見ると大きなコストだが、削減の余地は十分にある。
1. 容器を統一する
おかずの種類ごとに違う容器を使うと、在庫管理も大変だしコストも上がる。メイン容器を1〜2種類に絞るだけで、まとめ買いの単価が下がる。
2. まとめ買いで単価を下げる
業務用の通販サイト(パックスタイル、シモジマ、アスクルなど)でまとめ買いすると、1個あたり10〜20%安くなることが多い。
| 購入方法 | 弁当容器の単価 |
|---|---|
| 少量購入(100個単位) | 50〜80円 |
| まとめ買い(500個単位) | 35〜60円 |
| 大量購入(1,000個以上) | 25〜45円 |
3. 過剰包装を見直す
ナプキンを2枚入れていたのを1枚にする。おしぼりの有無を見直す。箸袋をやめる。1個あたり5〜10円の削減でも、年間では数万円の差になる。
4. エコ容器で「付加価値」にする
最近はクラフト紙や竹の容器など、環境に配慮した素材が注目されている。見た目が良くSNS映えもするので、少し高くても「おしゃれなお弁当屋さん」というブランドイメージにつながる。
5. リターナブル容器を検討する
常連客が多い店なら、繰り返し使える容器を導入する方法もある。「次回、容器を持ってきたら50円引き」のようにすれば、容器代を節約しつつリピート来店も促せる。
テイクアウト損益シミュレーション──自分の店で計算してみる
以下の項目を埋めれば、テイクアウト1個あたりの利益がわかる。
ステップ1:1個あたりのコストを出す
① テイクアウト販売価格(税込):______円
② 税抜売上(①÷1.08):______円
③ 食材費:______円
④ 容器・包材費:______円
⑤ 人件費按分(調理+詰め作業):______円
⑥ コスト合計(③+④+⑤):______円
⑦ 利益(②−⑥):______円
⑧ 利益率(⑦÷②):______%
ステップ2:月間の損益を出す
⑨ 1日の平均販売数:______個
⑩ 月間販売数(⑨×営業日数):______個
⑪ 月間売上(②×⑩):______円
⑫ 月間容器代合計(④×⑩):______円
⑬ 月間利益(⑦×⑩):______円
判断基準
- 原価率(食材+容器)35%以内 → 健全。続ける価値あり
- 原価率35〜40% → 容器代か食材費の見直しで改善できる
- 原価率40%超 → 価格設定の根本的な見直しが必要
「テイクアウトは手数料ゼロ」のチャネルを活かす
ここまで読んで、ひとつ思い出してほしいことがある。
テイクアウトは、手数料がかからない。
Uber Eatsなら35%、出前館でも35%が持っていかれるデリバリーに比べて、テイクアウトは手数料ゼロ。容器代の70円はかかるが、1,000円の注文なら7%だ。デリバリーの35%とは比べものにならない。
| チャネル | 1,000円の注文に対するコスト |
|---|---|
| 店内飲食 | 手数料0円、容器0円 |
| テイクアウト | 手数料0円、容器代70円 |
| デリバリー | 手数料350円、容器代70円 |
テイクアウトは、店内飲食に次いで利益率が高いチャネルだ。
ただし、利益率が高いのは「ちゃんと原価計算をしている場合」の話。容器代を無視して店内と同じ感覚で運営していると、せっかくの「手数料ゼロ」の優位性を自分で食いつぶしてしまう。
この記事のポイント
- テイクアウトの原価計算は「食材費+容器・包材費」。容器代を忘れると原価率が5〜8%ずれる
- 容器代は1注文あたり50〜100円。年間では30〜60万円の「見えにくいコスト」
- テイクアウトの消費税は8%(軽減税率)。店内の10%より2%低い分、利益が増える構造
- テイクアウト専用メニューを作れば、容器代を含めた価格設定がしやすい
- デリバリーと比べて手数料ゼロ。容器代さえ計算に入れれば、高い利益率を維持できる
テイクアウトは「店内の延長」ではなく、別のチャネルとして原価を設計するものだ。
容器代、税率、メニュー構成──店内飲食とは前提が違う。だからこそ、テイクアウトだけの原価計算をやる意味がある。
まずは今売れているテイクアウト商品の上位3つで、この記事のシミュレーションをやってみてほしい。「容器代を入れたら思ったより利益が少なかった」と気づくかもしれない。
KitchenCostなら、食材原価に容器代を加えたテイクアウト専用の原価計算ができます。メニューごとの利益率を一目で確認。App StoreまたはGoogle Playからどうぞ。