ブログ

開業前に「月いくら売れば食えるか」を計算しましたか?──業態別・売上シミュレーションで見える利益のリアル

ラーメン店・カフェ・居酒屋・焼肉店──4業態の月次損益シミュレーションを公開。固定費・変動費・損益分岐点を具体的な数字で比較し、開業1年目の赤字期間と黒字転換の目安を解説。

飲食店売上シミュレーション利益損益分岐点業態別ラーメン店カフェ居酒屋焼肉店開業固定費変動費キャッシュフロー2026
目次

「売上はなんとかなる」──それが一番危ない

飲食店を開業するとき、内装や食材にはこだわるのに、売上と利益のシミュレーションをやらない人が意外と多い。

「うちのラーメンは美味しいから大丈夫」「立地がいいから客は来る」──こういう考えで開業した店の多くが、1年以内に閉店しています。

日本政策金融公庫の調査によると、開業後6ヶ月以上かかって軌道に乗った店舗が全体の約6割。つまり開業して半年は赤字が当たり前。その赤字に耐えられるだけの計画が、最初からあったかどうかが生死を分けます。

この記事では、ラーメン店・カフェ・居酒屋・焼肉店の4業態について、現実的な数字で売上と利益をシミュレーションします。

「自分の業態だと、月いくら売れば食えるのか」──その答えを、一緒に計算していきましょう。


売上シミュレーションの基本式

まず、飲食店の売上を決める公式はシンプルです。

月間売上 = 客単価 × 席数 × 回転数 × 稼働率 × 営業日数

たとえば客単価900円、12席、1日3回転、稼働率70%、月25日営業なら──

900 × 12 × 3 × 0.7 × 25 = 56.7万円

「思ったより少ない」と感じませんか? それが現実です。

ここで重要なのは、稼働率(満席率)をどう見積もるか。開業計画書で「稼働率100%」と書いてしまう人がいますが、平日のランチはともかく、ディナー帯で全席埋まる日は少ない。現実的な稼働率は──

時間帯平日週末・祝日
ランチ60〜80%80〜100%
ディナー40〜60%70〜90%
終日平均50〜65%75〜90%

計画段階では**平均60〜70%**で見積もるのが安全です。80%以上で計算するなら、それは「成功した場合」のシナリオだと認識してください。


業態別シミュレーション──4つの店を比較する

ここからが本題です。4つの業態について、それぞれ想定条件を決めて、月の売上と利益を試算します。

想定条件の一覧

ラーメン店カフェ居酒屋焼肉店
坪数10坪12坪20坪25坪
席数12席(カウンター中心)16席35席40席
客単価¥950¥850¥3,500¥4,500
回転数/日3.5回転2.5回転1.5回転1.8回転
稼働率65%60%55%60%
営業日数26日25日26日26日
オペレーションワンオペ+パート1名ワンオペ+パート1名店主+社員1+パート2店主+社員2+パート2

※数字はすべて個人経営・郊外〜都市近郊を想定。都心一等地はもっと高くなります。


① ラーメン店(10坪・12席)

ラーメン店は回転率が高いぶん、客単価が低い。1人ひとりの支払いが小さいので、数をさばくことで利益を出すモデルです。

月間売上シミュレーション

950 × 12 × 3.5 × 0.65 × 26 = 約674,000円/月の基本売上

ただしラーメン店は昼と夜で回転率が違います。現実的に見積もると──

平日(18日)週末(8日)月合計
ランチ32食 × ¥950 × 1845食 × ¥1,000 × 8¥907,200
ディナー18食 × ¥1,050 × 1828食 × ¥1,100 × 8¥586,400
合計¥1,493,600

トッピングやビールで客単価が若干上がるので、月商150万円前後が現実的なラインです。

月間損益シミュレーション

項目金額売上比
売上¥1,500,000100%
変動費
 食材原価¥480,00032%
 水道光熱費¥90,0006%
 消耗品・雑費¥30,0002%
固定費
 家賃¥150,00010%
 パート人件費¥160,00011%
 リース・設備償却¥60,0004%
 通信・保険等¥30,0002%
 借入返済¥80,0005%
 広告・販促¥20,0001%
経費合計¥1,100,00073%
店主の手取り¥400,00027%

ラーメン店の強みは家賃と人件費が低いこと。10坪なら家賃15万円程度に収まり、調理もワンオペに近い形で回せます。損益分岐点は約152万円。月商が150万円を切ると赤字に転落するので、余裕はあまりありません。


② カフェ(12坪・16席)

カフェは滞在時間が長いため回転率が低い。居心地の良さが売りなので回転を上げにくく、客単価も低めです。利益を出すのが実は一番難しい業態。

月間売上シミュレーション

平日(17日)週末(8日)月合計
モーニング〜ランチ20人 × ¥800 × 1730人 × ¥900 × 8¥488,000
アフタヌーン12人 × ¥750 × 1722人 × ¥850 × 8¥302,600
テイクアウト8杯 × ¥450 × 1712杯 × ¥450 × 8¥104,400
合計¥895,000

焼き菓子やグッズの物販を加えて、月商90〜100万円が現実的です。

月間損益シミュレーション

項目金額売上比
売上¥950,000100%
変動費
 食材・ドリンク原価¥247,00026%
 水道光熱費¥57,0006%
 消耗品(カップ等)¥28,0003%
固定費
 家賃¥130,00014%
 パート人件費¥120,00013%
 リース・設備償却¥45,0005%
 通信・保険等¥25,0003%
 借入返済¥70,0007%
 広告・SNS運用¥15,0002%
経費合計¥737,00078%
店主の手取り¥213,00022%

カフェの手取り21万円──正直、会社員時代より少ない人も多いでしょう。損益分岐点は約140万円ですが、月商95万円でギリギリ黒字なのは、ワンオペに近い人件費の安さに支えられているから。社員を1人雇った瞬間に赤字です。

カフェで生き残るには、物販・テイクアウト・イベント貸しなど、席数に依存しない売上の柱が必要です。


③ 居酒屋(20坪・35席)

居酒屋は客単価が高く、ドリンクの粗利が大きいのが強み。ただし人件費が一気に上がります。

月間売上シミュレーション

平日(18日)週末(8日)月合計
ディナー(メイン)25人 × ¥3,300 × 1840人 × ¥3,800 × 8¥2,702,000
ランチ(実施する場合)20人 × ¥900 × 12¥216,000
合計¥2,918,000

ランチ営業をする場合で月商290万円前後。ランチなしなら270万円程度です。

月間損益シミュレーション

項目金額売上比
売上¥2,900,000100%
変動費
 食材原価¥870,00030%
 ドリンク原価¥203,0007%
 水道光熱費¥174,0006%
 消耗品・雑費¥58,0002%
固定費
 家賃¥250,0009%
 社員人件費¥250,0009%
 パート人件費¥240,0008%
 リース・設備償却¥80,0003%
 通信・保険等¥35,0001%
 借入返済¥120,0004%
 広告・販促¥40,0001%
経費合計¥2,320,00080%
店主の手取り¥580,00020%

手取り58万円は4業態のなかで最高額ですが、損益分岐点は約250万円と高い。ここを割ると一気に赤字です。とくに人件費(社員+パート)で月49万円かかっているのが重い。

居酒屋の利益は「ドリンクの粗利」にかかっています。食材原価30%に対し、ドリンク原価は7%。ビールやハイボールの注文が減ると、利益構造が一気に崩れます。


④ 焼肉店(25坪・40席)

焼肉店は客単価が最も高い反面、原材料費と設備費も最大。肉の仕入れ価格に利益が左右されやすい業態です。

月間売上シミュレーション

平日(18日)週末(8日)月合計
ディナー28人 × ¥4,200 × 1845人 × ¥5,000 × 8¥3,917,600
ランチ(実施する場合)22人 × ¥1,200 × 14¥369,600
合計¥4,287,200

ランチ込みで月商420〜430万円。焼肉はランチの焼肉定食が集客装置になり、ディナーへのリピートにつながる効果があります。

月間損益シミュレーション

項目金額売上比
売上¥4,250,000100%
変動費
 食材原価(肉・野菜)¥1,530,00036%
 ドリンク原価¥255,0006%
 水道光熱費¥255,0006%
 消耗品・排煙管理¥85,0002%
固定費
 家賃¥350,0008%
 社員人件費¥500,00012%
 パート人件費¥280,0007%
 リース・設備償却¥130,0003%
 通信・保険等¥40,0001%
 借入返済¥150,0004%
 広告・販促¥50,0001%
経費合計¥3,625,00085%
店主の手取り¥625,00015%

月商425万円で手取り62.5万円。数字だけ見ると悪くないですが、損益分岐点は約306万円で、4業態のなかで最も高い。しかも肉の原価率36%は仕入れ値の変動をモロに受けます。

2025年は**牛肉の卸売価格が前年比+8〜12%**上昇しており、原価率が1%上がるだけで月4.25万円の利益が消えます。


4業態を並べて比較する

ここまでの数字を1つの表にまとめます。

ラーメン店カフェ居酒屋焼肉店
月商¥150万¥95万¥290万¥425万
経費合計¥110万¥73.7万¥232万¥362.5万
店主手取り¥40万¥21.3万¥58万¥62.5万
利益率27%22%20%15%
損益分岐点¥152万¥140万¥250万¥306万
損益分岐点比率101%147%86%72%
初期投資目安500〜800万400〜700万800〜1,500万1,200〜2,000万
黒字までの余裕

※損益分岐点比率=損益分岐点÷月商。100%に近いほど余裕がなく、低いほど安全。

見えてくること──

  • カフェは利益率22%だが、絶対額が21万円。生活費を考えると「趣味の延長」になりかねない
  • ラーメン店は損益分岐点比率101%。月商が1〜2%でも下がると赤字に突入する綱渡り
  • 居酒屋と焼肉店は余裕があるように見えるが、人件費の固定費が重い。社員が1人辞めたら回らない
  • 焼肉店は初期投資が最大。排煙設備・ダクト工事だけで200〜400万円かかる

開業1年目の月次キャッシュフロー──「底」はいつ来るか

開業直後は「オープン景気」で客が来ます。でもそれは長くて2〜3週間。そこからが本当の勝負です。

居酒屋20坪のケースで、開業1年目のキャッシュフローをシミュレーションします。

月商経費手取り累計損益備考
1月目¥320万¥250万+¥70万+¥70万オープン景気
2月目¥200万¥235万−¥35万+¥35万客足急落
3月目¥180万¥230万−¥50万−¥15万(最も苦しい時期)
4月目¥210万¥230万−¥20万−¥35万少し回復
5月目¥230万¥232万−¥2万−¥37万ほぼトントン
6月目¥250万¥232万+¥18万−¥19万損益分岐点突破
7月目¥260万¥235万+¥25万+¥6万累計黒字転換
8月目¥240万¥232万+¥8万+¥14万夏場は居酒屋強い
9月目¥220万¥230万−¥10万+¥4万9月は閑散期
10月目¥270万¥235万+¥35万+¥39万忘年会シーズン前
11月目¥300万¥240万+¥60万+¥99万忘年会本格化
12月目¥350万¥250万+¥100万+¥199万12月は最大の稼ぎ時

ポイント──

  • 3月目が最も苦しい。オープン景気が完全に切れ、リピーターがまだ育っていない
  • この「底」を乗り越えるために、最低6ヶ月分の運転資金(約140〜150万円)が必要
  • 12月の忘年会シーズンで一気に取り返すパターンが多いが、1月の開業だとこの波に乗れるのは翌年
  • つまり開業月によって1年目のキャッシュフローはまったく変わる

売上シミュレーションでよくある3つの間違い

間違い①:稼働率100%で計算する

「うちは15席だから、客単価3,000円で1日2回転なら、3,000×15×2=9万円/日」──この計算、全席が毎日埋まる前提です。

実際には2人テーブルに1人客、4人席に3人客が座ることも多く、座席の稼働率は平日50〜60%がリアル。それで再計算すると──

3,000 × 15 × 2 × 0.55 = 4.95万円/日 → 月130万円

9万円/日のつもりが約5万円/日。この差が、計画と現実のギャップを生みます。

間違い②:「自分の給料」を経費に入れていない

売上 − 経費 = 利益、と計算して「利益40万円!」と喜ぶ人がいますが、それは店主の人件費を入れ忘れている場合が多い。

個人経営の場合、店主の労働は経費に計上されません。でも実際は1日12〜14時間働いている。時給換算すると最低賃金を下回っていることも珍しくありません。

シミュレーション時には、店主の「あるべき給料」を固定費に入れて計算してください。月30万円なら30万円を固定費に足す。それでも黒字になるかが本当のテストです。

間違い③:季節変動を無視する

飲食店の売上は月によって大きくブレます。

傾向目安
1月正月明け、閑散−20〜30%
2月1年で最も客足が少ない−25〜35%
3月歓送迎会+10〜20%
4月歓迎会+10〜15%
5月GW後、閑散−10〜15%
6月梅雨、客足減−10〜20%
7月夏前回復±0%
8月お盆休み(地域差)±0〜−10%
9月残暑、閑散−10〜15%
10月回復基調+5〜10%
11月忘年会予約開始+15〜25%
12月忘年会ピーク+30〜50%

年間を通した平均月商で計算するのは危険。2月の売上が平均の65〜75%しかないなら、その月の固定費は払えるのか?──こういうワーストケースで検証してこそ、本物のシミュレーションです。


「現実的なシミュレーション」のつくり方

ここまで読んで「結構シビアだな」と感じた方、それが正しい反応です。

売上シミュレーションは3パターンつくるのが鉄則──

パターン稼働率用途
楽観75〜80%「うまくいった場合」の上限確認
標準60〜65%事業計画のメインシナリオ
悲観45〜50%最悪ケースでの資金枯渇時期確認

融資を受けるなら、金融機関は「標準」と「悲観」の間を見ます。楽観シナリオだけでは審査に通りません。

そして最も重要なのは、シミュレーションは「一度つくって終わり」ではないこと。開業後は毎月の実績と比較して、ズレがあれば修正する。この繰り返しが、赤字から黒字への最短ルートです。


この記事のまとめ

  • 売上 = 客単価 × 席数 × 回転数 × 稼働率 × 営業日数。稼働率は60〜65%で計算する
  • ラーメン店:利益率は高いが、損益分岐点が月商とほぼ同じ。薄氷の黒字
  • カフェ:手取り20万円台が現実。物販やテイクアウトで席に依存しない売上が必要
  • 居酒屋:ドリンクの粗利が命綱。人件費が重いので人の管理がそのまま利益に直結する
  • 焼肉店:月商は大きいが初期投資と原価率も最大。肉の仕入れ値が利益を左右する
  • 開業1年目は2〜3ヶ月目が最も苦しい。6ヶ月分の運転資金を確保してからスタートする
  • シミュレーションは楽観・標準・悲観の3パターンをつくり、毎月実績と比較する

今週やること──チェックリスト

  • 自分の業態で「客単価 × 席数 × 回転数 × 稼働率 × 営業日数」を3パターン(楽観・標準・悲観)計算する
  • 固定費を全項目書き出す(家賃・人件費・リース・保険・借入返済──漏れなく)
  • 損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)を計算して、「月いくら売れば赤字にならないか」を把握する
  • 1年目の月次キャッシュフロー表をつくり、最も売上が落ちる月でも固定費を払えるか検証する
  • 店主の「あるべき給料」を固定費に含めて再計算する

原価の計算を手作業でやるのは時間がかかります。KitchenCostなら、食材を入力するだけでメニューごとの原価・原価率を自動計算。損益分岐点の検証にも役立ちます。

よくある質問

飲食店の損益分岐点はどう計算しますか?

損益分岐点売上 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)で計算します。たとえば固定費が月80万円、変動費率が60%なら、80万 ÷ 0.4 = 200万円が損益分岐点です。これを下回ると赤字になります。

業態によって損益分岐点はどれくらい違いますか?

同じ飲食店でも大きく異なります。本記事の試算では、10坪ラーメン店が約152万円、12坪カフェが約140万円、20坪居酒屋が約250万円、25坪焼肉店が約306万円です。家賃と人件費の差が主因です。

飲食店の開業1年目は何ヶ月赤字が続きますか?

多くの飲食店で開業後2〜3ヶ月目に売上の底を迎え、半年〜1年かけて黒字転換するのが一般的です。日本政策金融公庫の調査では、軌道に乗るまでに6ヶ月以上かかった店舗が全体の約6割を占めています。

売上シミュレーションで最も大事な数字は何ですか?

「客単価 × 席数 × 回転数 × 稼働率」の4要素です。どれか1つが甘い見積もりだと、月の売上予測が数十万円ズレます。とくに稼働率(満席率)を100%で計算する人が多いですが、実際は平日50〜60%程度です。

今すぐ原価を計算してみましょう

材料単価を入力するだけで、レシピ原価・利益率・販売価格を自動計算します。